星くず雑記

日々の出来事は煌めく星くずのように…

令和6年9月浅草公会堂『The 北翔まつり』

2023年09月24日 22時02分32秒 | OSK・宝塚(OG含む)

北翔海莉25周年公演に行ってきました。

2018年の『蘭』での共演のご縁で、

俳優の藤山扇治郎さんとご結婚。

お二人には長男:美治ちゃんが2020年にご誕生になってます。

…で、この藤山扇治郎氏は、藤山寛美さんの孫であり、

松竹新喜劇の重要な俳優さんです。

ただ、近年は松竹新喜劇も芳しくない中、

出自や話題性で申し分ない美治ちゃんの

将来に期待がかかるところ。

北翔海莉自身も、実力派とは言え

個人事務所であり、松竹・東宝系ミュージカルは

すでに宝塚OGで大混雑しているので、

違う路線、すなわち「和」で頑張っている所。

このような中、ご自身のメモリアルとして

松竹新喜劇ゆかりの演目を、

松竹ゆかりの国立文楽劇場や浅草公会堂で演じ

息子さんのお披露目の場も作るという

絶妙なバランスのもとに企画された(と思われる)公演です。

加えて、「今の」彼女の集客力とかも含め

ファンや出演者の方も含めた「内輪向け」の公演でした。

さて第1部『先づ健康』。

いやー、元トップが高齢者役って、

北翔海莉以外には出来ないよなあ、と言う

彼女のセンスが炸裂。

扇治郎さんは次男役ですが、

ジャケットがどうもサイズが大きすぎる。

もしかしたら藤山寛美ゆかりの衣装かも知れませんね。

美治ちゃんは場面は短いながら、等身大の子供役。

第2幕は和物ショー。

幕開きが、「清く、正しく、美しく」で始まる

あの初舞台口上でお馴染みの曲。

北翔海莉のソプラノを初めて聴いたかも知れない…

凄く良かったし、宝塚では口上の間はピアノ演奏なので

フルバージョンの歌としても初めて聴きました。

『JAZZYな妖精たち』のピクシー役で、高い裏声だったことはありました。

ほんの一節だけでしたが。

次に扇治郎さんにより、北翔実父(海自OB )が

合格発表の一日を振り返った『いちばん長い日』

の朗読。お馴染みのエピソードなんですが、

初めて聞くキーワードもあり、興味深かったです。

最近指摘されつつありますが、合格発表が4月だと

必然的に大学や高校の入学手続き・費用がかかり

クラス編成や学用品準備などで、学校側にも迷惑がかかります。

宝塚音楽学校の入試スケジュールも改革が必要な時期に来ていると思います。

そして、宝塚時代の和物メドレー

新人公演の『飛鳥夕映え』や、バウ単独初主演『想夫恋』

から『風の次郎吉』『桜花に舞え』、さらに『蘭』まで、思い出が蘇ります。

宝塚OGや松竹新喜劇系の俳優さんも

みなさん日舞の素養があるので、一緒に踊り、華やかでした。

バウWS初主演『恋天狗』は和物なのに無かった気がします。

退団後の『ふたり阿国』も。

また2014年当時、公演ラインアップ(公演予定)で

当て書きの「大江戸夜飛翔」の文字を見たたとき、いよいよ退団かと思ったのですが、

まさかの星組トップ就任で、本当に驚き、嬉しかったです…

美治ちゃんの日舞「桃太郎」は独りで踊りきれず、

傍らの扇治郎さんは冷や汗(途中から一緒に踊る)。

扇治郎さんと美治ちゃんの「パパとあそぼう」は

微笑ましいものの、美治ちゃんの動きはフリーダム。

私は歌舞伎も観ますので、その子役達と比較すると

お目見えは時期尚早だったと思いました。

ただ、「内輪向け」とは言え、

舞台出演が、楽しく、やり甲斐あるものだと

幼いなりに幸せな記憶として残って欲しいです。

ペンライト禁止タイムになり、

再登場の北翔海莉による、棒術の演舞。

ライトセーバーみたいで格好良かったです。

北翔・扇治郎夫妻で「深川マンボ」を踊ると

風莉じんの歌で共演の皆様「お祭りマンボ」

『蘭』から「大阪ラプソディ」のフィナーレで幕。

宝塚時代からずっとそうですが

北翔海莉は口元が「ありがとうございました」

とはっきり言っているのが分かります。

幕が開いて、ご挨拶。

美治ちゃんがフリーダムに動いても、

母北翔海莉は動ぜず、父扇治郎が冷や汗。

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ところで、宝塚OGのセカンドキャリアは

長年の大きな課題です。

特定の方を指すわけではありませんが、

退団後、年々ファンが減っていく中で

元スターが宝塚時代の栄光を引きずり続け、

「落ち目」になっていくのは、残念な姿です。

また宝塚時代の若々しいイメージを引きずり

年齢相応では無い姿(言動、ファッション)も痛々しいです。

取り巻きの「ファン」も、疑似恋愛的にチヤホヤするにもかかわらず

OGジェンヌの人生にまで責任を持たないので

お花畑を作り出してはいけないと思います。

永遠に若く美しく大人気のスター、等あり得ないのですから…

潔く芸能活動から距離を置き、スター時代のイメージを大切にするのも、

また一つのセカンドキャリアの有り様だと思います。

その点、北翔海莉は「身の丈」「持ち味」や

扇治郎さんを含めた「周りの状況」を理解しながらも

公私共に充実し、実に楽しそうに活動していて、

安心して観ていられます。

コロナ禍で、副業として?

美容サロン経営・エステティシャンも始めましたしね。

もともと多趣味で努力家の方なので

ご本人の興味関心と実益が両立できてるんだろうなと思います。

今回は冒頭から何度も書いたとおり「内輪向け」で、

共演の方々も含め、実力があるものの

上手く肩の力を抜いていて、程よく楽しかったです。

北翔海莉さんが、今後も手堅く、楽しみながら

「天職」である舞台人として活躍なさることを

期待しています。

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令和5年六月大歌舞伎(昼の部)引き込まれる演技

2023年06月14日 21時50分53秒 | 歌舞伎

昨年のスキャンダルから再起をかける市川中車(香川照之)に加え

その妻役は、先月の事件の影響で、4代目市川猿之助から

配役変更で中村壱太郎に。

初日を迎え、評判がかなり良いので、急遽チケットを取りました。

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ところで『傾城反魂香』「土佐将監閑居」の主人公

浮世又平は、「吃音症」の設定です。

今日では、程度により障害者手帳取得も

可能な症状の一つです。

本作が、特定の疾患(障害)を題材にしていますが

差別への苦悩や、支え合う夫婦愛、又平の意外な特技等を描いており

現代に通じる、普遍的な内容だと感じました。

(ただし古語である特性上、一部は今日では差別用語もありました)

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吃音症の絵師である又平(市川中車)には、

おしゃべりな妻おとく(中村壱太郎)がいる。

又平は、師匠を見舞いに訪れたが、

「土佐」の名字を授かることが叶わない。

そこに農村の村人たちが虎を追ってやって来る。

又平の弟弟子修理之助(市川團子)が、

絵から逃げ出した虎に対し、宙に虎を描き

見事に退治し、この功で土佐姓を授かる。

弟弟子に先を越されたばかりか、農民に侮辱される。

序盤のかなり長い時間、又平には台詞がありません。

上手く話せないもどかしさや、屈辱的な仕打ちを

台詞なしに表現する中車は、さすが現代劇の名優だと思いました。

最初に話し出すところでは、観客にも笑いがあり

残念ですが、多くの方が「差別する側の視点」で観ています。

又平夫婦の登場タイミングは、今回は澤瀉屋型であり、

一般的な音羽屋型と異なるそうです。

初代猿翁はこの澤瀉屋型を演じ、一方の

現猿翁(3代目猿之助)は合理性やリアリティからこれを廃し

澤瀉屋としても久しぶりだそうです。

(※詳しくは市川猿三郎さんブログをおすすめします→記事

 

さらに雅楽之助(歌昇)が現れ、

誘拐された姫君の窮状を伝える。

師匠は吃音の又平にも、若い修理之助にも

姫君救出に向かわせることを躊躇う。

又平は強く姫君救出の任を願い出るが、これも聞き入れられない。

結局、修理之助が遣わされるが、又平は修理之助に

すがりついてまで、激しく同行を願い出る。

修理之助は又平を振り切って、救出に向かう。

師匠も退出する。

中車の熱演が圧巻で、涙を流しながら無念さ悔しさが

吃音の台詞と共に、ここぞとばかりあふれ出てきます。

修理之助も、又平の激しさに困惑した様子(の演技)。

歌昇が、場面は短いのですが、激しい動きや見得で

重厚な芝居の中で、印象に残ります。

それにしも、ジャンプしてお尻から落ちる振りは

(そう見えないけれども)痛そう…

 

夫婦二人きりになると、絶望した又平は死を決意する。

おとくは師匠の筆と硯を借り、夫に手渡す。

又平は手水鉢に自画像を描くと、それが反対側に映る。

いよいよ死のうと、おとくが水盃を交わすため

手水鉢に向かうと、

絵が反対側に抜けていることに気づく。

これをコミカルなやり取りで又平に伝えると、

師匠が再び奥から現れ、又平の技能を認め、土佐性を授ける。

修理之助とのやり取り以降、

死を覚悟した夫婦のやり取りに、観客席も静まり返り

「差別される側」に共感して中車に引き込まれていきます。

二人が見つめ合い、おとくが死を共にする決意を述べるところなど

夫婦の強い信頼関係を感じさせる演技でした。

おとくが小声で「お借りいたします」と、筆を借りるところも、感情移入しながら観ました。

ただ、おしゃべりで早口な役柄もあいまって、

僅かに台詞が聞き取りづらいところもありました。

長い間、重厚な演技が続いたところで、手水鉢の奇跡に気づいたところから、

コミカルな温かいやり取りに戻ります。

 

女中お百(寿猿)が裃を手渡し、又平が着替える。

又平は実は、節(メロディ)があると滑らかに喋れるので

姫君救出に支障は無いらしい。

意気揚々と出発しようとする又平の歩き方を注意するが、

結局、いつもの又平らしい、ちょこちょこ歩きをするのだった。

裃の着付けの構造が分かり、感心しながら見入ってしまいました。

中車は非常に、表情の表現が豊かな方ですね。

寿猿さんは出演してることが、もはや奇跡。

 

又平の家に、姫君:銀杏の前が逃げ込み、夫婦は姫を匿う。

追っ手が現れるが、大津絵の精が現れ対決する。

大津絵の精4人のうち、3人が澤瀉屋のベテラン幹部俳優で、

ここに各家の御曹司達が絡む組み合わせ。

次世代の育成を兼ねたキャスティング。

先月『不死鳥~』でキュートな女形だった男寅は立役に。

新悟の鯰の精(垂らした髪の女性)も、長身が活きて不思議と妖艶。

中車はその日舞経験から「踊れない」とされ、見得で何とかしている振付ですが

前幕に続き、ストーリーの連続性を感じ、

またコミカルでもあり、とても楽しく拝見できました。

修理之助は、救出できず、どこで何してるのかな…?

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『児雷也』

山中の庵で、児雷也(芝翫)は、

美しい女性(孝太郎)と惹かれ合う。

二人の腕には同じ様な痣があり、互いが許嫁であると気付く。

児雷也は、ガマガエルの妖術を授かり

追っ手と探り合う。

ガマガエルに変身して難を逃れると、再び人間の姿に戻る。

約30年前、特撮戦隊もの『カクレンジャー』に登場した、

アメリカ出身忍者のジライヤ(演ケイン・コスギ)は、

当時人気でした。しかし、歌舞伎座の演目としては

かなり珍しいようです。

短時間にまとめようとして、かえってよく分からないまま

終わってしまった印象。

芝翫も孝太郎も恰幅があり、若々しさに欠けるのが残念。

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『扇獅子』

5人の芸者達の舞い。

せり上がりで、フェアリーゴッドマザーのごとく

福助が登場。花の枝を振ると

芸者達が赤獅子の頭を被って再登場し、毛振り。

前半はそれぞれの芸者に性格が見えて、個性的。

特に最初の三人(児太郎、壱太郎、新悟)がそれぞれ魅力的だし、

続く二人(種之助、米吉)は、あどけなさが残る。

ただし、後半の毛振りになると単調でつまらなかった。

米吉と新悟が、ここでは全く上手に見えず残念。

(※日舞素人による、あくまでも印象です。)

 

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福助が病に倒れた以降、初めて観ました。

歌右衛門襲名目前に大病を発病、

さらに深刻な後遺症を患ったことは

なによりご本人やご家族が無念なことと思います。

 

私は「美貌の女形」として福助をよく覚えていますので

フェアリーゴッドマザーのごとき姿に感動しました。

ただ、かつての福助のような、

存在感ある女形が全然いないことに、寂寥を感じます。

 

以前、福助SNSにアップされた、児太郎時代の画像が

現児太郎にそっくりで驚きました。

私は児太郎に期待しているのですが、

実父は病で、おじ達(芝翫や、18勘三郎)も…

となると、活躍の場が少なく残念です。

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演目全体として、『児雷也』と『扇獅子』が今ひとつ。

『傾城反魂香』は、劇場の空気そのものを変えるような演技が印象深く、

中車の代表作になり得ると思いました。

 

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OSK日本歌劇団100年史が届きました

2023年06月09日 20時03分01秒 | OSK・宝塚(OG含む)

5月に劇団公式サイトで購入した『100年史』が届きました。

6月分の購入受付が始まったとのことで、

いつ注文したっけ?発送予定いつかしら?

とスマホをぽちぽちしていたら、ちょうど宅配便が届き

通販等の心当たりが無かったので、送付元を見たら

びっくり!ちょうど100年史が届いたのでした。

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90年史と比べると、厚みは一目瞭然。

まだ読み比べには至っていませんが、

秋月恵美子&芦原千津子のページは

大幅に増えているのが、すぐ分かりました(^^)

全体に写真がふんだんに用いられ、

歌舞伎の演目(白浪五人男、狐忠信、連獅子など)で

古今のOSKスターの写真が「競演」する企画は見応えあります。

現役スターの楊さんらのインタビュー記事も豊富。

 

巻末に在阪企業を中心とした「OSK日本歌劇団支援委員会」の一覧があり

実に頼もしい限りです。

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歌舞伎とのゆかりでは、上記の写真ページ他

1986年近鉄劇場『楊貴妃』が

「13代目片岡仁左衛門 総指揮」「5代目片岡 我當 演出」で、

記者会見の様子が、時代を感じさせます。

 

また市川右團次の実父である、日舞の家元

飛鳥峯王氏の名前が資料に見えるのも嬉しいです。

 

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身体的な性に基づき、現実にはあり得ない「異性装」

で創りあげるファンタジーが、

歌舞伎や女性歌劇の魅力です。

 

長い歴史の中で築き上げられた不変の魅力を信じ

これからも応援していきたいです。

 

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令和5年六月大歌舞伎(幕見席復活!)夜の部のみ

2023年06月05日 21時57分15秒 | 歌舞伎

歌舞伎文化を応援したい気持ちから、

何とか行く機会を増やせないか、と思った矢先、

6月より幕見席復活 ゜∀゜!!となり、

しかも初日の6/3にちょうど都心で用事があることから

帰りがけに『義経千本桜』の狐忠信のみ観てきました。

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なお私は、歌舞伎座新築後、幕見席ははじめてです。

エレベーターも設置され、

入口もロビーも、とっても綺麗ですね。

新システム初日は、

「前日券(指定席)」は、コアな歌舞伎ファンと

ライトな観光客(欧米系の方多し)が半々くらい。

「当日券(サイドのみ自由席)」は外国人観光客ばかりでした。

幕見席後列からの眺めです。

手すりは残念(新築時に、ガラスタイプにならなかったのね…)。

前列だと、座高が低いと残念な位置に手すりがかかるので、

後列の方が良いかも知れませんね。

大向こう(かけ声)が前から聞こえるのも、新鮮な感じ。

お値段の割りに、大満足です。

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三代目猿之助が大胆なケレン(宙乗り、早変わり)を取り入れ

それを継いだ四代目猿之助のライフワークのため、

澤瀉屋の派手な演出ばかり印象に残ります。

私も、團子のどこに三代目の面影を感じたのか検証したく

三代目の狐忠信をDVDで観たばかりでした。

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主演の松緑は、ここ最近、舞踊の評判が良く

素人目にも安定感があり、動物の躍動感に加え

そして精霊としての神秘性を感じます。

(私は日舞未経験なので詳しく分かりません…)

 

澤瀉屋とは引っ込む/再登場する位置が違い、

屋敷中を駆け回る、俊敏な狐(の化身・精)としての印象を受けました。

最期も宙乗りではないので、どうやって幕切れになるかと思ったら、

花咲か爺さんのように、桜の木に登っていくのですね。

文字通り、地に足が着いたシンプルさが心地よく、

とても楽しめました。

幕見席からだと、欄干が少し太かったり、

頭を伏せた松緑が手をもにょもにょしてる

(=早変わりのための準備?)が見えたり、

舞台機構も楽しめます。

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4月、連獅子で沸きに沸かせた左近は、

若々しく、まだ少年らしい声。

(祖父・父世代と同じく三之助で売り出すより、

より年齢の近い染五郎や團子と組んだら、

三者三様の魅力が引き立つと思うのですが…

大事に育てて欲しい、若手俳優さんです)

 

静御前の魁春は、登場時には年齢を感じたのですが、

芝居が進むに連れて、どんどん美しく見えて不思議でした。

(例えるなら、写真加工アプリで

自動的にフィルターがかかっていくような感じ)

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来週は幕見で昼の部『傾城反魂香』…と思ったら

元々の予定がキャンセルになってしまい

浮いたお金で、2等席を買い足しました。

(残念、なのか何なのか…w)

四週連続の歌舞伎鑑賞ははじめてですf(^_^)

 

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令和5年5月明治座代役公演と『この恋は雲の涯まで』②

2023年05月28日 16時02分48秒 | 歌舞伎

<第2幕:下の巻>

金国の宮廷。幼王衛紹王(中村米吉)の傍らには、姉紫蘭姫(壱太郎:二役)がいる。

乾竜の紹介で、知盛一行が王の前に参上する。

紫蘭は知盛に一目で心惹かれ、舞を披露させるが、

紫蘭の婚約者で金国乗っ取りを画策する宰相武完(下村青)が、非礼であると止めさせる。

部下らは反発するが、知盛は素直に慣習の違いと無礼を認めて引き下がる。

紫蘭は武完に、知盛に心惹かれたことなどを告げる。二人の歪な関係が露わになる。

設定が完全に『この恋は~』と同一(笑)。発表の時系列では『不死鳥よ~』が先なので

これが後に『この恋は』第2部の原型なんだなあと思いました。

紫蘭が心惹かれた一方、知盛は紫蘭への反応が薄いです。

 

紫蘭は知盛を自らの元へ呼び寄せ、酒を口にさせる。毒が入っていると脅すが、

知盛は紫蘭のような高貴な方がそのようなことをするはずは無いと告げ、

また信頼の証として、一人で参上したと話す。

紫蘭は知盛の誠実さと度胸に、さらに魅了され誘惑するが

知盛は「紫蘭様にうり二つの女性」を想っていると、姫の誘惑を拒む。

想い人を告げるくだりは、『この恋は~』と(以下略)

この中国?モンゴル風衣装が、長身の團子に実に似合っていました

「匂い立つような」という表現がぴったりの美しい姿とオーラでした。

動き始める際に、マントを胸下あたりで少しつまむ仕草がたまらないです。

※さらに脱線:

 OSKの桜花昇ぼる悠浦あやとに、雰囲気がそっくりです。

 長身でスタイルが良く、品があり、周囲を明るくする陽の雰囲気、

 柔和さと凛々しさを併せ持つような…。宝塚とは、また違う、歌劇向きの雰囲気。

 

落胆した紫蘭の元に武完が現れ、高貴な姫君が異国の男に拒まれた惨めさを煽る。

「俺は蛇遣い、お前は蛇」とマインドコントロールしていき、

紫蘭は「知盛を殺して!」と絶叫するに至る。

この様子を紫蘭の妹蓮花(男寅)が見ており、蓮花は衛紹王に報告する。

武完は怯むことなく知盛殺害の必要性を述べ、揉み合いの中で蓮花が死ぬ。

武完役の下村青は、劇団四季出身とのこと。

圧倒的な歌のパワーと、禍々しさで、紫蘭の乙女心を踏みにじり

マインドコントロールしていきます。歌は『エリザベート』の「最後のダンス」にそっくり…

男寅もキュートさが印象に残る。

 

武完は乾竜に知盛殺害計画を告げる。

一方、宋の官吏も、この5年のうちに情勢が変わり、源氏の世となった今、

宋で知盛を受け入れられないと、説明する。

板挟みになった乾竜は、せめて自らの手で知盛を介錯したいと申し出る。

あくまで武人としての名誉を尊重しようとする乾竜。

ここで、隼人のルックスの良さや貴公子ぶりで、乾竜の高潔な振る舞いが際立ちます。

 

しかし、衛紹王が単独で知盛の幕舎を訪れて危機を告げると、

そこを武完が襲撃(クーデター)する。

知盛は武完を倒し、自らと王を守るが、乾竜と王に自らを殺すよう依頼する。

このまま宋に行っても、宰相不在の金が攻め込まれるのは不可避。

金を守るため、立派な君主となるよう王を説得する。

御伴するという部下に、知盛は「壇ノ浦以来死に場所を探していた」と話し、

「死んではならぬ」「生きよ」と説得する。

再びの激しい立ち回り。殺陣は模造刀とは言え、棒を振り回すわけですから、安全管理上

振付は全て計算されたものです。團子本人はもちろん、周囲の方も良く合わせたと思います。

説得のくだりのセリフ回しが、三代目猿之助(現猿翁)にそっくりでした(※歌舞伎役者としての最大級の賛辞)。

第1幕同様、今の状況と重なり、場内すすり泣き。

 

乾竜はなおも拒むが、知盛はあえて剣を取り、彼に襲い掛かる。

二人の立ち回りは互角だが、知盛が乾竜の剣を自らに刺す。

瀕死の知盛は、乾竜の腕の中で不死鳥を思い描き、やがて絶命する。

瀕死の知盛が、最初は片手(左手の指)だけを小さく、しかし細かく動かし、

最後は両手を動かして、ついに事切れる。

この演技は誰のものを手本にしたのだろうか…

 

美しい幻想(スモーク)の中、若狭をはじめ大勢の人々に見守られる中

知盛は不死鳥となって昇天する。(第2幕:幕)

團子がとにかく美しかったです。

急遽の代役、しかも事件の帰結が見えない中、

とにかく澤瀉屋を中心とした出演者の団結の核心になろうと

必死に務めたことがうかがえます。

(寿猿によれば)中車”若旦那”が出演者に団結を促す声を発したそうですね。

なお、こんな感じの動線でした。

花道のスッポンから、一度垂直に上がって、腕を広げてスパンコールも眩い衣装がはためくと

瞳を閉じて(若狭の形見の)笛を取り出して口にし、少し下ってから

またゆっくりと3階の鳥屋に羽ばたいていきました。

 

宙乗りって、こんなに高くまで上がるっけ…?

高所恐怖症だったら大変だろうなあ…等と思っているうちに昇天。

ミラーボールの輝きや、スパンコールの煌めきが眩く幻想的で

本当に美しい宙乗りでした。

笛を取り出して口に当てた瞬間の、

その伏し目がちな表情が心に焼き付きます。

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余韻の中5分弱位拍手したところで、「夜の部の準備がございますので…」という趣旨のアナウンスがかかり

徐々に退場していく人が増えました(私もここで退場)。

報道では、4分半→5分→7分、とどんどん長くなっています(笑)

最後まで残った方が7分くらい続けたんですかねえ。

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作品そのものの話に戻ると、

邦楽を使っていない、等、古典歌舞伎の枠組みからは外れています。

しかし、三代目猿之助がスーパー歌舞伎を新ジャンルとして確立した今となっては

より広義の「歌舞伎」の一つとして、十分受け入れられるものです。

(歌劇ファンでもある私個人としては「歌舞伎スペクタクル」と言うより

「歌舞伎ミュージカル」とか「レビュー歌舞伎」の名称がしっくりきます)

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先週の隼人の記事でも述べましたが、舞台公演は上演を中止すれば

収入が完全に断たれます。映像作品のように、配信やレンタルで根強い人気や収益を、となりません。

この日も団体客が入っていました。

"The show must go on"の慣用句のように、舞台公演は続けざるを得ないのです。

 

そういう中で、主演を引き受けた團子はもちろんのこと

相手役として受け止めた壱太郎や隼人、脇を固めたベテラン陣、

激しい立ち回りを合わせた出演者の方々、稽古代役の方

(猿之助とは身長体重が違うので)急遽衣装をサイズ直ししたり、宙乗りの調整をしたりと

大勢の裏方さん、劇場のスタッフさんら

大勢の方の力で成し遂げた代役公演だと思います。

改めて、公演を続けたこと・歌舞伎文化を繋いだことに、感謝と敬意を表します。

 

芸達者で人気も知名度もある猿之助主演でしたから、キャンセル多数でもやむを得ない所ですが、

「せっかくだから代役も観てみたい」と思わせたのは素晴らしいことです。

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今回は團子個人の、技術より、とにかく熱量(勢い・気迫)が圧倒的で、

すさまじい輝き・香気を放っていました。

(以前團子本人も、澤瀉屋は熱量がすごい、と語っていましたね。)

今回、中一日+1週間でここまで三代目や四代目を彷彿とさせる演技になったのも

彼がSNSにアップしていたように、日頃から古い映像などで研究した賜物でしょう。

 

昼の部代役公演で團子に劣らずキラキラしていた

20代以下の歌舞伎俳優は、隼人くらいのもので、

團子の熱演に呼応した壱太郎・米吉も大健闘(この二人は30代前半組)。

※名誉のために、夜の部の米吉は、揺れ動く心を熱演しすごく良かったです。

 隼人は一回り年上で、テレビドラマ主演もしているわけですから

 その安定感や煌めきは、非常に貴重な存在だと思います。過小評価されて欲しくないです。

 

昨年来、福之助も芝居が上手いなあと思っていたのですが

4人組セット扱いなこともあり、今回はすっかり霞んでしまいました。

團子が思いがけず(しかも嫌な形で)全国的な注目を受け、ファンの動揺や期待を背負う中、

それらに見事に応えた姿に、若手の皆さんも良い刺激を受けて奮起して欲しいです。

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晴れやかな舞台ではありましたが、

四代目猿之助休演の経緯が経緯だけに、今後の澤瀉屋一門の行く末や、

来月以降の猿之助出演公演の変更(代役?演目変更?)等

現実には課題が山積しています。

 

これらの諸課題や、澤瀉屋の負の部分、再興の期待を

若い團子一人に負わすことなく、彼の学業や

(年齢相応の)修練の機会が確保されることを願ってやみません。

 

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歌舞伎は特殊な世界で、ファン以外の方に忌避されがちな「世襲」

後継者を幼少から確保し、ファン(特にタニマチ/パトロン)を繋ぎ留め、

稽古場(不動産)や演目(著作権)等の様々な「遺産」を円滑に継承する点で

優れた制度である面もあります。

世襲や男性のみ、というルールを廃した団体が大きな勢力になっていないのが

一つの答えになっています。

一方、主演なのにポスターの扱いが小さい、等弊害があるのも事実です。

 

いま歌舞伎が嫌な形で注目されており、ファンとして本当に残念に思います。

改善すべき点を改善し、今後も続く芸術であって欲しいと期待します。

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令和5年5月明治座代役公演と『この恋は雲の涯まで』①

2023年05月28日 13時32分24秒 | 歌舞伎

段四郎ご夫妻と四代目猿之助の件に関する考えは、

先週時点と変わりありません。

5/18午前中に事件があり、5/18-19昼の部は中止、

5/20以降は未定という状況でした。

5/19昼頃、5/20昼の部も市川團子の代役で続行と発表があり、

直ちに、夜の部と共にチケットを購入しました。

5/20、團子代役主演の昼の部初回が大好評で、その後一気に完売しました。

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先週夜の部で中村隼人主演を観た際の様子を

舞台ファン以外の方に伝えると、何故観劇に行くのかピンと来ない様子。

①出演者やスタッフを、金銭・座席を埋める点で応援したい

②休演の四代目猿之助が作り上げたものを見届けたい

(③もともとチケットを持っていた/ツアーに組み込まれていた)

(④稀有な事件なので、興味本位で)

と言った所ではないでしょうか。私は①②です。

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そもそも、本公演歌舞伎スペクタクル:不死鳥よ 波濤を越えて』の特徴は

植田紳爾による作品であり、宝塚歌劇『この恋は雲の涯まで』との類似性が高いことです。

<植田作品時系列>

1973年(昭和48年)宝塚『この恋は雲の涯まで』 ※振付に二代目尾上松緑

落ち延びた義経が蝦夷経由で中国へ渡ろうとするが、船が悪天候に見舞われる。

海神の怒りを鎮めるため、静が入水する(1幕のみ※1)。

1979年(昭和54年)歌舞伎『不死鳥よ波濤を越えて』

落ち延びた知盛が中国へ渡ろうとするが、海の神の怒りを買うと愛妾若狭の乗船を拒まれる。

知盛は「命よりも大切な」若狭を選ぶが、その言葉に満足した若狭は自決する(第1幕※1)。

宋を目指す一行は、途中の金で足止めされる。金には幼帝と悪い大臣がいる。

知盛は悪い大臣を倒すが…(第2幕へ※2)

1992年(平成4年)宝塚『この恋は雲の涯まで』全2幕の一本ものに再構成。(※2025.3.2訂正:1部2部にタイトルが新たに付いた、金国の場面が加筆された(悪い大臣①=張栄勲、は新キャラ)、が正確なようです)

第1幕は初演と同じ。

宋を目指す一行は、途中の金で足止めされる。金には幼帝と悪い大臣2人がいる。

義経は静と再会する。しかし「命よりも大切な」という言葉に満足した静は悪い大臣①の愛妾である身を恥じて自決する。

義経は悪い大臣①を倒すが、国王に尽くす彼の真意を知る。

悪い大臣②の攻撃に、義経は宋ではなくモンゴルの民のために決起し、ジンギスカンと名乗りを上げる(第2幕※2)

…ということで、この両作品の類似性を踏まえると、より楽しめるかと思います。

なお、本作はツケ打ちこそあれど、邦楽がほとんどなく、さらに歌唱もあるため

「歌舞伎」というより「歌劇」です。

(ここまで前置きw)

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5/20昼時点で、明治座公式サイトから取れた席(1x列4x番)です。

澤瀉屋系の宙乗りがあると、2階席が被ってしまうのは残念ですが、まあまあ観やすいと期待。

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<第1幕:上の巻>

スクリーンにタイトルが映されただけで盛大な拍手。

幕開き、白拍子の華麗な舞(※女性舞踊家も数名いる)で平氏の優雅な世をイメージさせる。

不死鳥の船に乗った平知盛(市川團子)と愛妾若狭(中村壱太郎)が登場し、知盛の歌唱。

平通盛の愛妾で白拍子の一人:陽炎役の笑也の瞳が潤んで見えた。目の下にキラキラしたワンポイント有るが…

四代目猿之助のキーのままなので、團子は歌い辛そうだが問題なし。

途端に荒々しい源平の戦い(壇ノ浦の戦い)の場面。

知盛も血まみれになって奮戦、海に飛び込む。

若狭は側近と共に自決しようとするが、源氏方に捕らえられる。

再登場した血まみれの知盛が、長刀をペロリと一舐めする。

そっと口づけるようであり、上品かつ耽美でゾクゾクした。

(猿之助なら、もっと濃厚な感じだったのかなあ…)

知盛は小舟に一人。

敗戦を悟り、碇の綱を体に結び付けて、碇を頭上に持ち上げる。

ここの團子が素晴らしい熱演でした。

重い碇を持ち上げるまでに、美男が苦悶する表情の美しいこと。

(実際に必死に演技しているはずですので、現実の熱演と、役柄の苦悶が相まった姿)

なお、持ち上げる所で、暗転になってしまいますが、古典歌舞伎の『碇知盛』のオマージュですので、飛び込んだのは明らか。

その後、知盛は宋の宰相の息子:楊乾竜(中村隼人)の支援で、屋島に落ち延びる。

一方、若狭と陽炎は置屋に拾われた。陽炎は通盛を想いつつもすでに客を取っているが、若狭は拒み続けている。

二人の元に知盛の部下が訪れ、二人を連れて行こうとするが陽炎は残る。

置屋の主は実は源氏方の武将で、陽炎に若狭らの行方を問いただす。陽炎は殺される。

「お約束の展開」ですが、陽炎の覚悟が泣かせます。

まあ貞操観念は『この恋は~』と全く同じです。

(いつの間にか)再会した知盛一行の元に、乾竜の率いる船団が到着するが、

水夫たちは「海の神の怒りを買う」と、女性の乗船を拒む。乾竜は知盛を説得するが、

知盛は「命よりも大切な若狭」や乳母:師の尼を置いて行けぬと、逆に中国行きを取りやめようとする。

尼らは若狭を説得するが、若狭は「自ら別れを告げることは無い」と言い放ち、小屋に閉じこもる。

知盛が若狭を捜しに訪れると、白拍子姿になった若狭が現れ、

愛された喜びと感謝を胸に抱き断崖から身を投げる。

知盛は発狂寸前となり、断崖で「お前が死んで私が喜ぶと思うのか」と絶叫する。(上の巻:幕)

乗船を巡るやりとりは、声の抑揚が四代目猿之助そっくりでした(※歌舞伎役者としても、代役としても最大の賛辞表現)。

(広く公開されている)代役公演初日の写真と異なり、澤瀉屋風に赤いラインを目の下にハッキリと太く入れており

それがまた、最後の絶叫のシーンで声の裏返り具合の演技が四代目や三代目を感じさせ、

かつ自殺を嘆くセリフに場内すすり泣き。

【次の記事に続く】

ところで、知盛は、どんな態度で

やっぱり中国に連れていってもらいたいと、乾竜に頼んだんですかねえ…

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令和5年5月歌舞伎座&明治座②

2023年05月21日 11時19分31秒 | 歌舞伎

まず、四代目市川猿之助の「「事件」に関する事実」について

現時点(R5.5.21現在)で、何も確定していませんが、

猿之助の長期的な不在は不可避だと認識しています。

今はただ、段四郎ご夫妻のご冥福をお祈りいたします。

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急遽チケットを購入し、歌舞伎座昼の部から、明治座へ梯子しました。

まだ幟もポスターも差し替えられていません。

 

もともと宝塚でいう新人公演的企画として「花形公演」が予定されており

すでに代役3日目の5.20では、知らなければ違和感を感じないクオリティでした。

一方、その隼人の代役である門之助は、準備期間がなかった(即日代役)そうなので

出演者・スタッフ・ファン皆が衝撃を受ける中、本当に、たくさんの方々の努力で

公演を繋いで下さったのだと思います。

 

冒頭、「澤瀉屋!」の掛け声(大向こう)がかかった瞬間、

私は涙ぐんでしまいました。

「澤瀉屋」というカンパニーを存続させたいと願う

ファン(歌舞伎ファン、澤瀉屋ファン)や、出演者・裏方さんの思いが溢れています。

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歌舞伎観劇時は、イヤホンガイドはしませんが

チラシを片手に配役や物語の設定を確認しています。

しかし、既にチラシがどこにもなく、

全く予習せず、途中確認もせずに、感激しました。

 

たまたま先月の歌舞伎座『陰陽師 滝夜叉姫』を観ていたので

登場人物や時代が重なることから、設定・ストーリーは掴めました。

セリフにところどころ、「猿之助」「澤瀉屋」を想起させるところがありました。

なお、この日の大向さん(一人)は、澤瀉屋の方に時々「猿弥!」等と下の芸名でかけていたので

出演者が分かり大変ありがたかったです。澤瀉屋への愛にあふれた大向こうでした。

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この日は、澤瀉屋の最長老:寿猿の93歳の誕生日であり、それにちなんだアドリブも。

「(隼人に)あなたの3代前から、(團子に)あなたの5代前からお仕えしています」

には大きな拍手。

事件当日の『報道ステーション』で、寿猿さんにしつこくインタビューした報道姿勢に憤りを感じています。

猿翁と(亡くなった)段四郎兄弟が幼い時から、猿之助や中車が生まれる前から

喜熨斗一家や澤瀉屋というカンパニーを深く知っている方です。

本件で何も感じていないわけがない、そういう方に敢えて取材をする行為自体に加え、

事件について誰も何もコメントできないことが明白な段階であり、余りにも酷いです。

(この時点での取材は、どの出演者に対してもすべきではありません。)

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米吉は凛々しい姿と裏腹に、けなげで儚く。

福之助は、(昨年も思いましたが)演技力に長け。

そして團子はおきゃんで可愛らしく。

(昼の部代役主演を果たしたばかりで、登場時には盛大な拍手)

猿之助の下で共演し、成長した若手が頼もしくもありました。

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物語は小休憩10分ありの、(歌舞伎座でいう)1.5幕位の長さで終わり、

最後は1時間弱の『蜘蛛の絲宿直噺』。

OSKでいう「ストーリ性のあるレビュー」といった感じで、五役早変わりが目玉。

花形公演のために準備していたのか、隼人は萬屋の着物も着ていました。

 

もちろん隼人は見事なんだけれど、

同時に猿之助が「余裕たっぷりで楽しそうに」舞う姿も容易に想像できます。

(実際には大変な体力・気力を消耗しているはずで、そう見せないことが「芸の力」)

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不意の休演・不在に対し、

テレビや映画であれば、円盤や配信で収入を得ることができますが

生の舞台は観客がチケットを買わなければ完全に赤字です。映像が残るとも限りません。

直接舞台に携わる方のみならず、劇場内外の飲食店、交通(タクシー)にも影響が波及します。

安易に打ち切りに出来ない選択についても、私は理解します。

また、出演者・関係者とファンが心を一つにする場としても重要です。

 

代役公演でアンコールには応じないことは、代役公演初回から明らかなので、

長いスタオベは無く、盛大な拍手ですぐ散会となりました。

代役公演がどんなに素晴らしいクオリティであっても、経緯が経緯だけに

残念ながら純粋に楽しむことはできません。それでも公演・文化を

繋いでくれた隼人はじめ出演者・スタッフへの感謝の気持ちは、きっと伝わっていると信じます。

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澤瀉屋ファンの方は、パッと見渡して女性が多い印象ですが、

客席や幕間ロビーに悲壮感はあまりありませんでしたが、数名泣いている方がいました。

舞台写真コーナーは長蛇の列ができていました(代役公演の販売予定はなしとのこと)。

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猿之助は、「舞台の上では」紛れもない大スター・ヒーローであり、

コロナ禍の3年余り、苦境の舞台芸術・歌舞伎界のために獅子奮迅の活躍をされていました。

心身とも活力を維持するのは、本当に大変なことだったのだと思います。

 

今回の「事件」や、その直前の週刊誌報道に関し、

業界・個人間における問題は、まず当事者間や司法の場で、客観的・中立的な見解の下に解決すべきであり、

一方の見解のみで他方が社会的制裁を受ける風潮に危機感を感じます。

本件とは無関係の例として、既婚男性著名人と不倫(=合意の上で肉体関係)した上で、

それを「被害者」として週刊誌等で暴露する匿名女性等。言うまでもなく本当の「被害者」は、正当な配偶者・家族です。

男性著名人と匿名女性間でトラブルがあった場合、当事者・司法の場で解決を図るべきです。

本件における事実の部分に対しては、必要に応じ、業界内で適切に改善を図って欲しいと願います。

(それ以上は、細部の事実が確定するまで、一ファンとして述べることはできません)

 

来週は、團子代役主演の昼の部を観に行きます。

関係者の皆様、どうぞ心身を大切になさって下さい。

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最後に、私は熱心な澤瀉屋ファンではありませんが、

余りの出来事と、急遽明治座に行ったことで、心身が疲れてしまいました。

歌舞伎ファン・澤瀉屋ファンの皆様もご自愛ください。

(観劇して応援する以外に、距離を置いて休むことも大切ですので…)

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令和5年5月歌舞伎座&明治座①

2023年05月21日 09時01分44秒 | 歌舞伎

歌舞伎座昼の部を観ました。

『寿曽我対面』

仇討ちまでしないので、どうも不完全燃焼。

曽我兄弟役の松也・右近はもちろん、玉の声や容姿

巳之助の重厚さが目を引きました。

 

『若き日の信長』

團十郎を観るのは、10年ぶりくらい(と思われる)。

プライベートのスキャンダルもあり、好きな俳優さんではありません。

でも、悔しいくらいルックスが良い。

圧倒的に(舞台や公私を含み)「映える歌舞伎俳優」なのは間違いないです。

昭和中期の新歌舞伎であり、演劇面の要素が大きく

孤独感や迫力はさすがでした。

主君信長(團十郎)を諫める忠臣(梅玉)の死は、

今の歌舞伎界に重なります。

 

『音菊眞秀若武者』

今回の目玉!尾上眞秀の初舞台公演です。

(前半あらすじ)

大伴家茂(團十郎)・藤波御前(菊之助)夫妻の前で開かれる藤の宴。

美しい腰元(梅枝)が舞、重鎮(團蔵、時蔵、楽善)が居並ぶ中、

渋谿監物(彦三郎)に連れられて突如現れる謎の美少女(眞秀)

殿夫妻とも舞い踊るが、何故か少年の所作が出てしまう。

そこに村の若い衆(萬太郎、巳之助、右近)が狒々被害の陳情に訪れる。

美少女がその正体:岩見重太郎であることを明かし、狒々退治に名乗りを上げる。

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居並ぶ俳優さんが豪華ですねえ。

團菊祭だけあり、團十郎と菊之助は久々の共演かと。

初舞台公演として、それぞれの世代の俳優さんに見せ場があるのが良いです(後述)。

村の衆も『寿曽我対面』と打って変わってコミカル。

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(後半あらすじ:ネタばれあり)

少年剣士:岩見重太郎が、長坂趙範(松緑)と手下の悪党たち・狒々の本拠地へ。

手下たちをバッタバッタと切り捨て、狒々とも戦うが危うし!

そこに滝の中から弓矢八幡(菊五郎)が現れ、重太郎にゴッドパワーを授ける

すると重太郎は見事に狒々を退治し、趙範も捨て台詞と共に退散する。

重太郎は、親の仇でもある趙範を追うため、諸国を巡る旅に出る(幕)

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以上「正義のヒーローが悪党をやっつける、チャンバラ活劇」でした。

眞秀自身が小学生であり、客席には学校かお稽古繋がりか、

子供グループ(親御さんも)がたくさん来ていました。

大人だけでなく、子供たちにとっても

分かりやすく、楽しいお芝居だったのではないでしょうか。

 

いつ菊五郎が出てくるのかワクワクしていたので、

孫に芸を伝授するイメージと重なり、とても良かったです。

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中村屋『桃太郎』、音羽屋『牛若丸』に次ぐ、

御曹司の初舞台公演として定着して欲しい演目だと思いました。

数十年後、菊之助が八幡神になり、眞秀が殿か渋谿監物か…

また、成長した眞秀が、10代後半や20代となった時に

続編(成人男性ならではのより激しい立ち回り)を観てみたいと期待させます。

 

歌舞伎の醍醐味の一つは、ファンも俳優も年齢・世代を重ねながら応援できることです。

当代の菊五郎は、若い頃は超人気スター(三之助のひとり&大河ドラマ等主演)で人間国宝となり、

また娘は国際的評価を受けた名女優、息子は美貌と実力を兼ね備えた歌舞伎俳優であり、

それぞれのお子さんたち(丑之助・眞秀)も愛嬌と歌舞伎への情熱を持ち、音羽屋は盤石です。

破滅的なスキャンダルもありません。実施の系譜である尾上右近も素晴らしい俳優で、層が厚いです。

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今週は澤瀉屋にショッキングで哀しいニュースがありました。

音羽屋がいかに恵まれているか、喜びの中で考えさせられました。

(もちろんご本人達や、一門を支える方々の努力があるからです)

 

急遽、予定になかった明治座<市川猿之助 奮闘歌舞伎公演>を買い足し

夜の部をハシゴしました。

 

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宝塚80周年記念CDを聴く

2022年12月30日 13時24分57秒 | OSK・宝塚(OG含む)

宝塚80周年記念CDを中古で買いました。

宝塚歌劇団は1987年から主題歌CDを発売しており、

それ以前はレコード…

 

この80周年記念CDでは、レコード時代の主題歌が含まれ

特に大地真央の「Luck be a lady」に期待していました。

1980年代は私の両親が熱心に宝塚を観ていたこともあり

写真や台本は知っているのに音や映像を

観たことが無いものばかりなのです。

 

麻実れいさんは、男臭い顔立ちなのにソフトな歌声、

ニヒルなイメージの平みちさんは、二枚目ボイス…

と言う風に、声のギャップが素敵。

 

 

そして異次元は大地真央さま。

声や歌い方が、宝塚のスタンダードな男役

のそれでは無いです。

運命の女神を誘う歌の、なんとも耽美なこと…

 

何回もリピートしてしまいました。

勢いで、北翔海莉の歌と聞き比べるのですが、

何かが違う。

北翔海莉のそれは、ライブ盤なのもあり

(彼女らしからぬ)激しく、スリリングな感じ。

でもそれだけじゃない……?

 

もう一度、大地真央版を聞いて分かりました。

歌詞が違う!

再演以降「俺はあんたのもの」が、

初演「あんたの男になる」

 

大地真央さまに、こんなこと言われたら、

たまりませんね

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OSK100周年『春のおどり』と歌舞伎『新三国志』②

2022年03月28日 22時37分46秒 | 歌舞伎

歌舞伎『新三国志』を観た。

保守的な歌舞伎ファンである両親の影響もあり、

三代目猿之助のスーパー歌舞伎=新橋演舞場でやってる派手なアクションを取り入れた現代歌舞伎であり、

歌舞伎座を中心とした古典歌舞伎とは別物、という認識でした。

 

しかしながら、正月に観た四代目猿之助が素晴らしく、

ひとつの極みにいる「今の猿之助」が、

スーパー歌舞伎に臨む姿を観たいと思いました。

また、市川笑也も、高卒の養成所出身者でありながら

三代目猿之助に見いだされたヒロイン役者であり

『新三国志』が彼のための宛書きであることも興味を引きました。

 

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ところで、宝塚と歌舞伎、そしてミュージカルの3つは

ベン図にすると重なり合う部分があります。

宝塚と歌舞伎の重なるところにいるのが、

片岡仁左衛門と汐風幸父娘であり、

そして香川照之こと市川中車です。

三代目猿之助と宝塚の娘役スターにして大女優の浜木綿子の一人息子。

「歌舞伎界に行かなかったのはもったいない」と言われていたのですが、

四代目の襲名に合わせ、長男の団子とともに、

46歳で歌舞伎界入りするとは思いもしませんでした。

確かに、幼いころからの経験がない分、古典歌舞伎は厳しいものがあります。

しかし、彼が歌舞伎界入りして良かったと思わせる活躍を見せていると思います。

 

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今回、「スーパー歌舞伎」とは銘打っていません。

四代目猿之助のインタビュー等を見る限り

「三代目猿之助四十八撰の『新三国志』」と言えば、これ

と言えるような作品になったということでしょうか。

 

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『新三国志』

原作者の羅貫中(ら・かんちゅう)ならぬ、

羅こんちゅう、として、中車が長台詞で歴史背景の説明。

演劇キャリアを活かした、堂々たる説明で世界観に引き込みます。

 

そして桃園の誓い。

劉備すなわち三代目が見出した:笑也(=いまや澤瀉屋の古参・中核の俳優)を中心に、

関羽すなわち三代目の芸を継ぐ:四代目猿之助

張飛すなわち三代目の血を引く:中車が、

手を取り合って固い絆を結ぶのは、

中車が映像作品や昆虫ビジネスで稼ぎ、

芸は猿之助が中核となって、笑也らが澤瀉屋一門が舞台で奮闘する

という姿に重なって胸が熱くなりました(笑)

本作のテーマである「夢」≒「平和で民が飢えぬ国」が明確になります。

 

三顧の礼:

諸葛孔明が劉備をじっと見つめ、「真実の姿」を知る。

静かな場面で、鳥のさえずりで、正体を暗示。

 

赤壁の戦い:

本来は、京劇を取り入れたスペクタクルシーンと思われるが

照明や布の使い方で、少人数でも大会戦を表現。

 

劉備と香渓の結婚:

孫権は劉備に対し優位を維持しようと、気が強く美しい妹:香渓を政略結婚させる。

劉備は香渓に真実を明かし、香渓は劉備に心酔する。

香渓(右近)の声の美しさの衝撃たるや!

そして、関羽と劉備が手を取り合い、そこに桃の花びらが舞い散ることで

二人が相思相愛であることを暗示。

 

以上、第1部。

後半第2部は、冒頭から関羽が死亡フラグを立てまくる、苦しい展開。

香渓の命がけの願いもむなしく、孫権は張飛や関羽を死に追いやります。

絶望する劉備。

しかし、関羽(と劉備)の養子である関平が志を継ぎ(将来の澤瀉屋の継承と重なる)

関羽の幻が劉備を包みこみ、立ち直る。

順に登場人物が花道を歩き、最後に関羽(猿之助)が宙を舞う。

そこに桃の花びらが舞い散り、昇天。

私はここで号泣しました。猿之助が発光しているのです。

 

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笑也:

立ち姿のスタイルの良さ、透る声。

そして、その声を「男装の麗人」「ひとりの女性」と使い分ける見事さ。

正直、主役は彼です。

(無論、それを包み込む猿之助があって、物語が成立します)

それでも、ポスターの写真が小さいのは、

閉鎖的な歌舞伎界を象徴していて残念です。

 

団子:

終盤に目立つ若武者役。初演では、亀治郎(現:四代目猿之助)

声は実年齢通り、十代の少年なのですが、

顔がとても小さく、そのスタイルの良さにびっくりしました。

歌舞伎役者としては顔が大きく、恰幅が良い方が、

舞台映え・メイク映えするので、「小顔で長身」

であることが求められているわけではありません。

しかし、新しい歌舞伎役者の姿を体現できる可能性を秘めた

団子に期待大です。(もう、団子ちゃん、と気軽に言えないですねw)

 

右近:

おそらく、初めて(成人の俳優としての)右近を観たので、

その声の余りの美しさにびっくりしました。(笑也の素晴らしさを上回る驚き)

歌舞伎を長年観てきて初めて「男性がこんな美しく高い声を出せるのか」

と本当に驚きました。

清元の家系であり、また、六代目菊五郎の血を引くとのこと。

(※当代の菊五郎は、六代目の養子の系譜)

清元の稽古を積んでいるからなのでしょうか、

とにかく声が美しいのに心奪われますが、容姿も美しいです。

こんなに素晴らしい若手を知ることができて、良かったです。

 

福之助:

孫権はもっと年配の役者かと思い込んでいたので、

福之助だと知りびっくり。

存在感も、孤高さや狡猾さも良く出ていました。

 

猿之助:

多くは語りません。圧巻でした。

古典もスーパーも、現代劇も何でもできる。

今の猿之助を、もっと心に焼き付けたい。

 

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女性同士の宝塚やOSKならば、

キスや手足を絡ませることや、ベッドシーンも普通にあるわけです。

でも歌舞伎はそんなことは、滅多にしない。

そんな暗黙のルールの中で、どうやって関羽と劉備の愛を表現するか。

手を繋いで花弁が舞うなんて、なんて美しい表現なのだろうと思いました。

桃の花びらが二人の心の象徴になります。

現代的でありながら、慎ましく風雅な愛の表現に感動しました。

 

劉備が女性である設定は、

諸葛孔明に忠誠を尽くさせる神秘性を表現するために着想されたそうです。

笑也が劉備の持つ多面性を声で表現していたのはさすがでした。

でも多くの人が気づいていたのですね(笑)

 

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今回は、本来4時間ある大作を、約半分にした短縮版です。

おそらく、戦闘シーンはもっと大人数だったのでしょうし、

例えば猛女四天王のように、本当は見せ場が多かったと思われる役もありました。

 

大人数での演出が、出演者・スタッフ、また稽古において

コロナ対策による制約があると思うのですが、

潔くカットしたことで、「平和な国」という夢が際立ったように思います。

 

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100周年で新スタイルに挑んだOSKの姿を重ねつつ、

全く新しいスタイルの現代歌舞伎を創始した三代目猿之助は偉大だと、

改めて確信しました。

 

彼自身の演技力、企画力、統率力があってこそスーパー歌舞伎が成立しました。

そして、四代目がそれを良く受け継いだことは

本当に素晴らしいことですし、

離別した息子である中車が、実父である三代目に敬意を持ち続け

澤瀉屋に帰還したこともドラマチックでした。

 

ますます澤瀉屋(と尾上右近)から目が離せません。

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