時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

イスラエルの空爆行為をなぜか非難する国連

2014-08-05 22:55:10 | リビア・ウクライナ・南米・中東
今月の1日には、新たにイスラエルに対空ミサイル支援のための資金援助を
申し出たアメリカ。ガザ地区での人権侵害調査委員会構成に関する決議にて
棄権したヨーロッパや日本。さすがにやりすぎたと思ったのか態度を変え始めている。



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イスラエル軍が3日、パレスチナ自治区ガザ南部のラファにある
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校を爆撃し、
少なくとも10人を死亡させたことについて、国連をはじめ
イスラエル寄りともみられる米欧諸国からも異例の強い非難の声があがっています。


国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は3日、
イスラエル軍による爆撃を「道徳上の乱暴であり犯罪行為だ」と強く非難しました。
報道官を通じて発表した声明で述べました。


7月末の二度の国連運営学校砲撃に続くだけに、潘氏は
「またもや国際人道法の重大な違反行為が起きた」と指摘。
民間人が身を寄せている国連施設の場所についてイスラエル軍は何度も連絡を受けていたとし、
「この攻撃に関して、他の国際法違反とともに、直ちに調査し、
実行した者に責任を取らせなければならない」と強調しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-05/2014080507_01_1.html

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アメリカもここ最近のオバマ政権のやり方に批判がされたようで、
付近で武装勢力が活動している疑いがあっても、
 多数の罪のない民間人の生命を危険にさらす攻撃は正当化されない

 と指摘したようだ。


これらはウクライナの惨状を知る者にとっては噴飯ものの言動である。

今日のロシア・トゥデイのニュースでは、
ルガンスクにおける25万の他の地域へ避難できない人間が、
水や電気などのインフラがストップされている状態に陥っていることが判明した。


前々からキエフ軍が反対者たちに対して地域規模の水責めと兵糧責めを
していたことはわかっているが、改めて中央政府の残虐性に気づかされる。


さて、イスラエルのガザ地域への空爆が道徳上の乱暴行為であるならば、
キエフのドネツク・ルガンスク地域への空爆もまた道徳上の乱暴行為であるはずだ。

しかるに、なぜ前者は責められて後者は賛美されるのかが全く理解できない。

おまけに後者は10人などという規模ではなく、数千・数万の犠牲者が生まれている。
ロシアを悪漢に仕立て上げるなら何をやっても許されるのだろうか?

どうも納得がいかない。


ちなみに、最近、またキエフ軍から軍を裏切って自警団に参加した集団が
あったそうだ。これが主体と客体が逆だったならば、自由が奪われたロシアから
亡命した勇気ある人々として讃えられるのであろうが、現実は…ご覧のとおりだ。

パレスチナ虐殺を支援する朝日新聞

2014-08-05 00:30:25 | リビア・ウクライナ・南米・中東
未だにガザ地区への砲撃を止めないイスラエル。

この件について、朝日新聞と朝鮮新報の社説を比較すると面白い発見がある。
まずは、朝鮮新報から。


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パレスチナに対するイスラエル軍の無差別攻撃が続いている。
犠牲者の数は3日の時点で1700人を超えた。国連の発表によると、
パレスチナ側の犠牲者の8割以上が民間人で、そのうち約300人が子どもだ。
学校を含む100カ所以上の国連施設がイスラエル軍の攻撃を受けた。



英国のある議員がネット上で、「もし自分がガザで暮らしていたら、
(イスラエルに)ロケット弾を打ち込んだだろうか?-多分そうする」と発言。
これに批判が集まり、懲戒騒動にまで発展した。
数十人、数百人の命を一瞬にして奪うイスラエルの砲撃に対する非難よりも手厳しい。



▼「パレスチナの女性や子どもは、爆弾ベルトを身につけており、
イスラエルのカフェに入って自爆する」-米英の市民の大半がそう信じていると、
元米財務次官補で著名なコラムニストのポール・ロバーツ氏は指摘する。

パレスチナがイスラエルにより、巨大な壁で隔離され、
生活空間を日々侵食されている現実は無視されている。



米議会は1日、イスラエルの対空ミサイル支援のために
 2億2500万ドルもの資金を新たに提供する
ことを承認。


 米国防総省はイスラエルに戦車用の砲弾などを再補給することに合意した。
 米国はイスラエルに毎年、約30億ドルを支援しているが、それとは別予算だ。
 イスラエル政府は7月30日に攻撃拡大を閣議決定していた。
 大量虐殺を幇助する米国の大罪をあらためて非難する。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/sinbo-j_140804/

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次に朝日新聞の社説(2014年7月25日朝刊)を読む。




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ガザ紛争―流血拡大を防ぐ収拾を

▼どの国や地域であれ、人間の安全と財産、権利を守るのが政治の役割のはずだ。
 中東のイスラエルとパレスチナとの間で今起きているのは、その逆ではないか。
 政治の思惑で紛争が起こされる。市民が逃げ惑い、次々に命を落とす。


▼パレスチナ自治区ガザの紛争は悪化の一途をたどり、23日までの死者は700人を超えた。
 双方の指導者の責任は重い。


▼長く複雑な歴史をくぐってきた紛争である。根本的な解決は容易ではない。
 だとしても、いま眼前で続く流血を止めるのが何よりも最優先である。

 力の差を考えれば、紛争を収束させる主導権はイスラエルにある。
 ネタニヤフ政権は無差別の攻撃をやめるべきだ。

 一方のイスラム組織ハマスもこれ以上ガザの市民を危険にさらす行為を続けてはならない。
 ロケット攻撃などを控え、紛争の収拾を急がねばならない。

 
▼イスラエルが先週から踏み切った地上戦は、流血の規模を一気に拡大した。
 国内の強硬派をなだめる意図だったとすれば、なおさら無謀というほかない。

 ネタニヤフ政権はしきりに自衛権を主張しているが、
 いまの侵攻は明らかに自衛の範囲を超えている。
 犠牲者の大半がパレスチナ人で、23日までに700人余り。
 そのうち200人以上は子どもや女性だ。

 地上侵攻でイスラエル側も兵士を中心に被害が急増し、死者は30人余りに達した。
 イスラエル側もこれ以上、痛ましい犠牲を重ねるのは理不尽だ。


▼ガザの人口は約170万人。その地域全体がイスラエルの強いる検問と
 人工壁などで封鎖されており、「天井のない監獄」とも呼ばれる。

 抜本的にはその窮状の改善が必要だが、
 当面の域内ではハマスの側に重い統治責任がある。
 市民の犠牲をいとわず戦い続けて内外の同情を集めようとするならば、大きな間違いだ。


 侵攻前の先週、エジプトが停戦案を示し、
 今週からは米国のケリー国務長官も中東入りして
 仲介にあたっている。


 ハマスに影響力のあるペルシャ湾岸の国カタールやトルコも巻き込んで、
 一刻も早く安定化を図る必要がある。

 このまま悲惨な状態が続けば、もっと過激な勢力がガザに台頭するおそれもある。
 イスラエル側で誘拐やテロが頻発する事態も考えられる。


 長期的にはイスラエルとパレスチナの共存を探る和平交渉を復活させるべきだろう。
 そのためにもまず、今は双方が武器を置いて頭を冷やすときだ。

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朝鮮新報がイスラエルの蛮行を痛烈に批判し、その協力国の責任まで追及しているのに対し、
朝日新聞ではケンカ両成敗の論調を取っている・・・ように一見、みえるがそれは違う。


朝日の本音は末文にある。

つまり、
「このまま悲惨な状態が続けば、もっと過激な勢力がガザに台頭するおそれもある。
 イスラエル側で誘拐やテロが頻発する事態も考えられる。」

だから、
「イスラエルとパレスチナの共存を探る和平交渉を復活させるべきだ」

と主張しているのである。これは明らかにイスラエルの安全を考慮した見解だ


そもそも、虐殺を終結する主導権はイスラエルにあると自ら判断しているのだから、
理屈の上では、イスラエルにより責任を強く追及すべきではないか?

ところが、朝日は「当面の域内ではハマスの側に重い統治責任がある」として
パレスチナ側により問題があるかのような論調を取っている。これはおかしい。


ガザ地区を閉鎖したのも、同区域を砲撃しているのもイスラエルであり、
なぜその責任がハマスになすりつけられるのか?全くもって理解できない。


どうも朝日新聞は、中立性を装うためにわざわざパレスチナ側も批判したようだが、
被害者側の責任を強調することで、加害者側の責任を緩和させることは
侵略行為の弁護や支持をしていることと同然である



加えて、イスラエルを公然と軍事支援しているアメリカを
仲介者であるかのように演出する表現も現状認識を妨げるものだ。


朝日は本当に虐殺に心を痛ませているのだろうか?
もし傷んでいるなら、なぜ購読者をだます様な文章を載せるのか?
(しかも、記事ではなく社説にである)

試しに、朝鮮新報の次の記事を読んでみるといい。


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パレスチナ人に対するジェノサイド
●イスラエルのガザ攻撃
 イスラエルのパレスチナ人に対するジェノサイド(大量虐殺)がまた始まった。


●「ガザ紛争」の実態

7月8日から始まったイスラエル軍のパレスチナ自治区・ガザ地区の
パレスチナ人に対する無差別攻撃によりすでに1千人以上の死者が出た。

その大多数が民間人、とりわけ子ども、女性、老人である。
住宅、病院など民間施設が主な攻撃の的となっている。



2007年以来、ガザに住むパレスチナ人の現状は
「封鎖下で緩慢に殺されるか、軍事攻撃で一瞬で殺されるか」というところまで追い込まれている。




イスラエルは、今回のガザ攻撃がイスラエル人少年3人の殺害(6月12日)が発端で、
これはイスラエルのハマスに対する報復であり「自衛戦争」だと言い張っているが、
現実はまったく異なる。


この事件はヨルダン川西岸で起きた事件であり、
ガザとは関係なくハマスによる犯行だという証拠はない。



これを口実にイスラエルは、西岸で400人以上を逮捕、2200軒もの家を家宅捜査し
その過程で10人のパレスチナ人を殺すと同時に、西岸と東エルサレムに対する残忍な弾圧を加えた。
1千人以上の人民虐殺は2009年1月にも起きているが、イスラエルはガザに対する
こうしたジェノサイドを(定期的に伸びた)「芝を刈る」と呼んでいる。


●問題の本質

だが問題の根源は、イスラエル建国の歴史そのものにあり、
ガザに関して言うならば、国際法上違法な47年間の占領と8年間の封鎖にある。



今回のイスラエルのパレスチナ人大量虐殺の直接の動機は、
4月27日、ガザを「実行支配」しておりパレスチナ住民の大きな支持を受けているハマスと、
米国に支えられながら西岸を「統治」しているPLOの最大組織ファタハの
歴史的な和解、暫定政府樹立と1年以内の総選挙決定である。


抑圧された民族が自主権を回復するべく分裂より
大団結を選択したことをイスラエルが許さず、つぶしにかかったのだ。



ハマスが停戦の絶対的な条件として掲げているのは、
イスラエル軍の撤退、囚人釈放、封鎖解除
ハマスとファタハ和解合意へのイスラエルの介入禁止
経済開発の改善など至極当然な権利の保障である。


西側メディアは、「ガザ紛争」はロケット攻撃をやめない
「イスラム原理主義・テロリスト」のハマス側にあるかのように喧伝する一方、
朝鮮がハマスに武器を提供しているなどとデマを故意に流布している。

情報源はテロ国家・イスラエルと、この国に毎年30億㌦の無償援助
(その金で殺戮兵器を米国から大量購入している)を続けて支えている
世界最大のテロ国家・米国だ。


国連人権理事会は、ガザ地区での人権侵害調査委員会構成を
柱とする決議案を可決したが、結果は賛成29、反対1、棄権17だった。

反対は米国のみというのは当然だが、
EUの主要国と日本と南朝鮮が棄権した


この一つの事実にも国際政治の現実が如実に現れている。

http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/sinbo-j_140804/

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おそらく、パレスチナ問題の解説としてこれより優れた文章はないと思われる。

今の朝日新聞にここまで真っ向からイスラエルや
その支援国の卑劣な印象工作と侵略行為を否定することができるのか?




パレスチナ問題はウクライナ問題と同一の問題であり、
それは欧米およびその属国による東側への侵略問題なのである。


その本質的部分を朝日に限らず、日本の主要メディアは指摘することが出来ない。
なぜならば、それは必然的に自国の外交政策を否定するものだからだ。


よその国に対して、安全な所から一般論の範疇での
形ばかりの反対を叫ぶふりをして、購読者の同情を誘う。


それが結果的に読者の国際認識を歪ませることになっても知らぬ存ぜぬだ。


このように日本を代表する新聞社が醜態をさらす一方で、
朝鮮新報のような弱小メディア、それも悪の巣窟であるはずの
総連の機関紙のほうがジャーナリズムを貫く記事を掲載している。


誰かにこの奇妙な現実の説明を加えてほしいものである。