時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

靖国について

2014-08-15 23:44:43 | 軍拡
8月15日は「敗戦」の日であるのだが、さすがに「記念日」とするには
「不謹慎」だからか、メディアでは「終戦」記念日と言われている。

よそのサイトで靖国神社の話題になった。
この神社の異様性はいくらでも指摘できるが、一言言うならば、
この神社は大日本帝国の誕生と共に建設された(明治二年)もので、
その目的は官軍のために戦った官軍の兵士を祀るものであった。

裏を返せば、実は日本人の中のごく限られた層(薩長の侍)のためのものであり、
それに属さない東日本(つまり朝廷に侵略された幕府側の地域)の人間は、
原則として勘定に入れられていない。それが日清・日露と大日本帝国による
他国への侵略戦争が進むにつれて次第に「私たちの」靖国神社となったわけだ。


この点について、結構うまい文章を書いたと思うので、以下に転載する。

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靖国神社がテーマになったので、一つ豆知識を紹介すると、
あそこには大村益次郎という人物の銅像が建っています。

この人は、大日本帝国の陸軍を創設した人物で靖国神社の創建に尽力した一人でもあります。


銅像は大村が指揮をとった彰義隊討伐時の姿を描いたもので、
その目線は上野や東北地方を睨んでいると言われています。


彰義隊とは簡単に言うと賊軍の一つで、
新撰組十番隊組長を務めた原田左之助も参加しています。

さて、時代は経って戦時中、国内で鉄が不足し、各々の持つ銅を提供せよとの
いわゆる金属供出という命令が下されました。

その際、今も靖国にある第一鳥居(当時日本一の大きさの鳥居でした)は
「戦力増強のため」撤去されたにも関わらず、大村の銅像はそのままだったのです。


要するに、靖国神社というのはどこまで行っても官軍の視点で建てられたもので、
皇軍の皇軍による皇軍のための施設なんですね

(「靖国」という言葉も「安国」、つまり、戊辰戦争が終わり
  天皇の国になった日本が安らかでありますようにとの意味が含まれている)

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天皇に従う兵士のみを英雄視する宗教施設。それが靖国神社であり、
逆を言えば、天皇に忠誠を誓わない限り、奉じられることはない。


その点を指摘しないから、話がこんがらがっているような気がする。
よく右翼は、「この国のために戦った人々の死を悼み~」と話すが、
正確には、この国のために戦った人々の中で
自分の意に沿う形で死んだ人々を祀っているのであって
(病死や餓死した兵士は除外されている)、選別的なのである


もし仮に、本当に心からあの戦争で亡くなった全ての人の
犠牲を受けとめるのならば、靖国神社という場所はあまりにも不適切だ。

メディアは単純に参拝に賛成か反対かの大衆の反応だけを報じがちであるが、
仮にもメディアならあの神社の歴史的性質を懇切丁寧に解説すべきなのだが……


そういえば、平凡社新書から新刊で靖国批判の書が出るはずなのだが、
なぜか18日にまで延期され、しかも本屋の店頭に並んでいない。

だいたい、この手の本は発売日の数日前には店にあるはずなのだが、
代わりにあるのは新潮社や文春、角川から出た美化本のみ。

間違いなく今年はハズレ年だ。良い本があまり売られていない。
残念至極極まりない限りである。