時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

池上彰氏の集団的自衛権の説明について

2015-07-04 23:36:25 | 軍拡
本日の池上彰氏の番組では、集団的自衛権が認められると、

アメリカに撃たれた弾道ミサイルを迎撃できるようになると解説されていた。

2013年の2月に参院予算委員会で安倍首相が述べた意見を
そっくりそのまま伝えたものだが、

法的に可能になること技術的に可能であることは違う。



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集団的自衛権の行使を合理化するための事例の一つに、
米領グアムや米本土に向かう弾道ミサイルを
日本が撃ち落とさなくていいのかという議論があります。


首相は、「ミサイル防衛において、日本に飛んでくるものは
(撃ち)落とすけれども、グアムに飛んでいくものは(撃ち)
落とすことができてもパスをしてしまう。これでもう相当たくさんの死者が出る。
日米同盟はその段階において大変な危機を、終わるかもしれないという危機を迎える」
(2013年2月27日、参院予算委員会)と述べていました。


ところが、グアムに向かう弾道ミサイルは高高度を高速で飛ぶため、

日本のミサイル防衛システムで撃ち落とすことが技術的に不可能なのは、

政府自身も以前から認めていたことです。



もともと無理なことを集団的自衛権行使容認の口実にするのはおかしいとの批判を受け、
首相は、
「もし将来、技術的にそれが可能となった場合、
グアムあるいはハワイに向かっていくミサイルについて撃ち落とす能力が
あるのに撃ち落とすことはできないのか」(今年2月10日、衆院予算委)
と答弁を修正し、日本に迎撃能力がないことを認めました。


集団的自衛権の行使容認ありきで、
都合のいい事例を考え出したものの、破たんしたのが実態です。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-14/2014031401_05_1.html
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技術上、ミサイルの迎撃は無理だと述べるのが本来の解説だと思うのだが

どうして安倍首相の過去の言葉をそのまま採用してしまったのか、ちょっとわからない。



池上氏はあれでも、相当、参考文献を読んでいると思うが、
なぜ、安倍首相本人がお認めになったことを無視して話を進めるのだろう?



ちなみに、池上氏の解説は、利点と欠点を併記する構成になっていたが、
「良い集団的自衛権」と「悪い集団的自衛権がある」と語り、
「今、安倍首相が目指しているのは良い自衛権なんだ」と語る意見が
 極右雑誌Willに掲載されている。



本人が意図したかどうかは知らないが、池上氏の解説も
「集団的自衛権を容認するとメリットがある」という印象を持たせる内容になっている。



なお、Willのそれは佐藤優氏と岡本行夫氏の対談で岡本氏が発言したものだが、
佐藤氏は特に反論していない。


この佐藤氏と池上氏が最近タッグを組んで、
色々と本をだしているのだが、気が合うのだろうか?どうでもいい話だが。

池上彰氏のギリシャ債務危機の説明について

2015-07-04 22:50:36 | マスコミ批判
「究極の責任逃れ」
またもや、名言が生まれてしまった(汗
池上氏は、毎回一言は名言を言わなくては気がすまないのだろうか……


久々に日本を代表する名ジャーナリスト、戦うリベラリスト池上彰氏の番組を見た。
4つのテーマを扱っていたが、特に面白かったのが最後のギリシャ債務危機の開設。

少年Aの話も中々だが、とりあえず、今回は債務危機のことにだけ言及しようと思う。



まず、今回の債務危機に関して確認しなければならないのは、
明日行われる国民投票は、債務を返すかどうかではなく、
融資の条件として提示された更なる緊縮策の可否についてのものであるということだ。


おあつらえの記事があるので、紹介しよう。
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ギリシャでは明日5日、国民投票が実施され、人々は、
国の社会・経済政策を引き締めると約束すれば財政援助を与える
とする債権団の要求に
「イエス」と答えるか、それとも「ノー」と答えるか、決めなければならない。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/europe/20150704/535183.html#ixzz3evXCwS9o
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現在、ギリシャでは緊縮策が行われた結果、次のような現象が起きている。



・大増税⇒消費減退⇒約100万の失業者が発生(失業率が9%⇒25%に)

・医療予算の削減⇒大量の無保険者が発生⇒医療費を払えない人間の路上死が社会問題になる


つまり、大量の失業者と無保険者が発生したのだが、
この上、さらに緊縮を求め、EUは「主に」次の要求を行ってきた。


●年金需給年齢の67歳まで引き上げること

●低所得である年金生活者への追加支払いを削減すること

●ギリシャの島々のための消費税に関する優遇措置を撤廃すること

●ビジネスに対する税金を引き上げること

消費税を23%に引き上げること


これら要求を受け入れるかどうかの国民投票なのだが、
どうも池上氏の話では、ギリシャが金を借りておきながら
「借金を踏み倒そうとしている」と視聴者に受け止められるのではないか
と番組を見て感じた。(「金をよこせ」と言う言葉を多用してもいた)



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ギリシャの債務総額は3500億ドルに上る。
うち2700億ドルが欧州中央銀行、IMF、ユーロ圏各国に対する債務である。

この三者が交渉におけるギリシャの相手型である。
三者は、税率引き上げや予算削減などの緊縮策をギリシャ政府に求めている。


こうした緊縮策が導入されれば、長年にわたり
経済危機に苦しめられてきたギリシャ国民の生活が、さらに圧迫されることになる。

続きを読む http://jp.sputniknews.com/business/20150703/532882.html#ixzz3evamjOlg

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池上氏の解説では、
緊縮策=節約となっているが、実際には増税だ。



増税を巡って、それでも融資を受けるか受けないかの話なのだが、
なぜだか「返すか返さないか」の話にされていたので、一応補足しておいた。



では、この国民投票に関して、現首相のツィプラス氏はどうコメントしているか?
結論を述べると、「要求を呑むな」と語りかけている。




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ツィプラス首相は、国民に対し
投票では、国際債権団の提案を退けるよう訴えた。


彼の意見によれば、
もし有権者の大多数が緊縮財政措置に反対すれば、
それはアテネ政府がEUやIMFそして欧州中央銀行との交渉で、
相手側の歩み寄りを期待できる
との事だ。




一方欧州委員会のユンケル委員長は国民投票を前にコメントし、
ギリシャ市民に対し「自殺行為はせず」ギリシャ支援継続に関する
債権団の条件に賛成するよう求めた。



緊迫するギリシャ情勢を、現地の民間ジャーナナリスト
ヴァッソ・ポリフロノプロ(Vasso Polychronopoulou)氏に聞いた―



「我々は、債権団三者の条件に賛成することはできない、
我々の欧州のパートナー達は、我々に消費税を23%に引き上げるよう求めている。
我々の競争相手の税率は10%なのにである。


債権団三者は、我々が経済的に自滅するのを欲している。
おまけに今は、観光シーズン真っ盛りなのだ。


観光業は、百万もの失業者を抱えたギリシャ国民にとって
仕事にありつける唯一の分野なのだ。これは、政治ゲームである。


彼らが我々の政府を好きではないことは良く分かる。
彼らは、どこか他の国の政府であれば、こんな風には行動しなかったろう。


しかし多くのギリシャ人は、
こんな政府であっても国民の利益を強く主唱していると捉えている。

前の政府でさえ、それを試みなかった。
我々は、EUから抜けたくはない、しかし平等でない欧州も欲してはいない。

もし最も強力なパートナー達が、
弱い国々の意見より大きな発言力を持つのであれば、それはもう連合体ではない。」

続きを読む http://jp.sputniknews.com/business/20150630/518144.html#ixzz3evd1W826

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これ以上の増税は嫌だ、でも要求を呑まなかったら融資は受けられない。

一体どうしたらいいのだろうと右往左往しているのが今のギリシャだ。




池上氏はギリシャ人が「借金を返済しない」理由として
「ヨーロッパ文明が始まった土地はギリシャだというプライドがある」
「冷戦時代アメリカが援助してくれたので、また今回も助けてくれると思っている」
「EUを脱退し、中国やロシアの側へ向かってもいいのかと脅しをかけている」

とコメントしていたが、確かにそういう声が絶対に無いとは言い切れないが、
それは少数意見であって、更なる増税・福祉費削減がメインの反対理由である。



私が見た限りでは池上氏は
「返すのが常識なのに愛国心をむき出しにして返そうとしない」
と主張しているのだが、それは曲解なのだろうか……?



まぁ、確かにギリシャの反対派の民衆は、
一貫して緊縮策受け入れの拒否を唱えてきたわけだが、
「緊縮策は受け入れないぞ。金だけよこせ」と主張していると
解説するのはどうだろう?明らかに悪いイメージを与えているように見えるのだが……



古事記か何かだと勘違いしているような気がするのだが、それは邪推だろうか?



一番気になるのが、ツィプラス首相が6月の中旬に
緊縮財政の拡大が強調されれば、ギリシャはユーロ圏脱退を検討すると警告した
ことを無視して「責任逃れで国民投票をするのだ」と語ってしまったことだ。



「究極の責任逃れ」(開き直りだったかも?いずれにせよ同じことだが)をして
自分の立場を鮮明にせず、国民に決定を委ねたということを述べていたが、それは違う。


逆に彼は緊縮策の拡大に反対しろと自分の意見を述べているわけだが、
番組では「本来は政治家が決めるべきもの」と真逆の事実が語られている


要するに、いつもの池上彰だった。
(中立を装いながら、保守派の意見を代弁する、いつも通りの解説だった)


私は、なぜ彼が未だにメディアに登場できるのか不思議で仕方が無い。
そろそろメディア研究者や政治学者らが苦言を呈してもいいのではないだろうか?



しかも、彼の場合、明らかにギリシャ国民に悪印象を与える話をしているわけで、
(中国や少年Aに対してもそうだが)、一種のヘイトスピーチじゃないかとさえ思う。



「節約しろ」と「増税しろ」では反対者に対する印象が大分違う。
意図的に単語をチョイスしているとするならば、かなり問題がある気がするが……どうだろう?





・追記

もしかして池上氏は
「究極の責任逃れ」ではなくて、「究極の開き直り」と言っていたかもしれない。
 どちらにしても、ツィプラス首相を非難する言葉である。

 更なる緊縮策を受け入れないギリシャは悪だということだ。


・追記2

 文明の発祥地であるギリシャがEUの要求など呑めるかという
 自惚れた考えをギリシャ人がしているという言説は池上の創作だと思う。

 あるいは保守派の創作をどこかで耳に挟んだとか?
 少なくとも私は、そのような話は効いたことがない。