時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

そうだったのかぁ?東京裁判 (池上氏の説明への素朴な疑問)

2015-07-25 23:53:44 | マスコミ批判
思いっきり右翼的な見解を示しているのに、
なぜだかリベラルの星ということになっている池上彰氏。

池上タブーでもあるのか?


だいたい、『ビートたけしのTVタックル』の後継番組が
彼のニュース解説番組である時点で、お察しだろうが

と思うのだが・・・

まぁ、それはともかく、今日の彼の番組は、なかなか面白かった。

前半の村山談話の解説では村山氏本人のメッセージを流したり、
テレビならではの工夫された演出がされていた。

他方、後半では東京裁判を否定的に評価し、
その後、ドイツの戦後教育を肯定的に評価するという矛盾に満ちた構成になっており、
小林よしのり流の「ナチスは悪!でも日本は正義!」という歴史観に則ったものになっていた。


公正中立をモットーとする池上氏だが、
弁護人と被告の言い分のみを強調して審議内容について触れなかったのは興味深かった。


例えば、池上氏(&VTR)は、侵略という言葉は曖昧に定義されており、
東條英機の自衛戦争論を取り上げることで、暗に侵略戦争ではないと主張している。


この点については、同裁判における
東郷外相とキーナン検察官との答弁を引用するだけで十分だろう。



東郷「日本としては米国に対して戦を開くほか行き途がなかったというふうに
   見受けられる。これは日本の存在のみならず、日本の名誉にも
   かかわる問題であったので、……自衛戦争としていたしかたない
   ということを……全員一致して決めた」


キーナン「自衛のための戦争という表現を使って、
     あなたはいわゆる『日華事変』(日中戦争のこと)、
     あるいはハッキリ言うと『対中戦争』を考えているのか?」

東郷「当時私が知っていた事実からは、どんな場合でもというわけでは
   ないにしろ、『日華事変』には自衛の要素があったと結論できる」

キーナン「戦闘は中国の中心部で行われたとすれば、
     どんな自衛だと言えるのか


東郷「……その問題に関して言えば、そのような行動はあまりに行き過ぎたものだと思った」



当時の日本は日中戦争の最中であり、中国各地やインドシナを占領していた。
いわゆる南進というものだ。その撤退を要求し、結果的に開戦になったのだが、
実は、開戦直前の12月6日にローズベルトは昭和天皇あてに親電を送っている。


この親電では、アメリカは日本に対して、インドシナ、タイ、オランダ領東インド、
マレーの中立化だけを要求しており、両国の上にたれこめている暗雲を共に吹き払い、
死と破壊を予防しようではないかと問いかけている
。どう見ても脅迫文ではない。

これはハル・ノートの後に送られたものだ)



つまり、直前までアメリカは対話と妥協を模索しているのだが、
これを池上氏は完全に無視し、東條ら戦犯の言い分だけを絶対視している。



そもそも、日本の対米戦争は数年前から計画されているものであり、
そのルーツを辿ると、最終的に張作霖謀殺事件に行き着く。


東京裁判では、A級戦犯、すなわち侵略戦争を計画・実行した者を裁くものだった。
当然、アジア・太平洋を占領しようとする計画がいつ練られたのかを検討することは重要になる。


この点で採用されたのが田中メモと俗に呼ばれる対外膨張政策の綱領で、
そこでは、当時、首相であった田中義一大将が昭和天皇にむけて、
満蒙(満州)、中国、東南アジア、インド、南洋の順番に、
段階的に占領地を広めていくという方針が語られている。


つまり、日本のアジア侵略は、張作霖の謀殺から始まる
満州・中国の領土奪取から進んでいったものとみなしているのだが、
池上は、はるか昔の戦争にまで遡らなければ、
A級戦犯(平和に対する罪=謀議の罪)を立証することが不可能だったと説明する。

これは、裁判の内容を知るだけでも、完全なウソだとわかる。


例えば、検察官たちが入手していた1937年に陸軍省が作成した基本要綱では、
太平洋周辺地域での戦争に備えるという内容が記されている。


1940年9月の枢密院会議の秘密議事録では、対米戦争は不可避のものとして決定された。


このように、日本がずっと前からアメリカやフランス、イギリス等の植民地を
狙っていたことは、裁判のために入手した各資料から明らかにされたのだが、
この辺の説明を池上氏は全くしなかった。


つまり、侵略戦争なのか自衛戦争なのかは、
日本が実際に行った内容を検証することで裁判中、明らかにされた
のだが、
池上氏は徹頭徹尾、具体的な審議の動向には触れず、
被告や弁護人の見解を強調し、裁判を否定している。




そういうわけだから、VTRでは終始、
A級戦犯は善玉、判事側は悪玉として描かれている。



しかも、具体的な答弁を語ると都合が悪いので、判事たちは黙してにらんでいるか、
あるいは「被告(弁護)の言い分は却下された」との結論だけ示して、
さも不当な判決が下されたかのように印象付けている



本業はどうした?と思いたくなる北村弁護士にいたっては、
原爆投下の罪を問いただした弁護人の発言を取り上げ、
東京裁判の良いところはここだけだといきまいていた。



しかし、東京裁判の最大の意義は日本の戦争犯罪を、
豊富な資料によって明らかにしたことであった。


もちろん、731部隊の細菌兵器の使用や人体実験など、
アメリカにとって都合の悪い(有罪にしてしまうと、後の戦争で、
自国が細菌兵器を使用できなくなる恐れがある)事件は無視されたし、

皇族や財閥など、思いっきり戦争に加担している人間は、政治的配慮から免罪された。


ニュルンベルク裁判と比べても、東京裁判は甘い裁きに終わっている。


このように問題は多々あったし、池上や北村が述べるように
戦勝国の戦争犯罪は特に問われることが無かったという欠点もあった。


だが、それを根拠に裁判全体を否定的に評価するのはおかしい。


結局、「東京裁判は勝者の裁き、復讐だ」という右翼の言い分を
そのまま繰り返すだけの内容で、戦後70年を迎えて池上氏が
どのような歴史観をもっているかを確認するには、うってつけの番組
だった。



それにしても、北村弁護士の熱弁には驚かされた。

この番組のゲストは終始、池上氏の言い分を黙って聞き、時おり
「そうだそうだ!」と言うだけのチョロい仕事を任されているのだが、

他の芸能人と比べて、北村弁護士は随分と積極的に池上氏を援護している。


芸能人は生活もかかっている&業界の体制に慣れきっているから、
空気を読むのはわからなくもないが、弁護士として自活していける彼が、
なぜあそこまで池上の肩を持つのかはちょっと意味不明。


本人は「ええ仕事したで~」と思っているのだろうか?
池上氏よりも北村弁護士のスネ夫っぷりに驚かされた二時間だった。


・追記

ちなみに、番組で「降伏か、さもなくば死を」という内容として紹介された
ポツダム宣言だが、原文はここから読むことができる。

http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html
(国立国会図書館のホームページより)


番組では、戦勝国が敗戦国を裁く口実として利用されたかのごとく説明されたが、
その肝心の部分、すなわち、次の箇所


吾等ハ日本人ヲ民族トシテ奴隷化セントシ
 又ハ国民トシテ滅亡セシメントスルノ意図ヲ有スルモノニ非サルモ

 吾等ノ俘虜ヲ虐待セル者ヲ含ム一切ノ戦争犯罪人ニ対シテハ厳重ナル処罰加ヘラルヘシ

 日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ
 復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スヘシ
 言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルヘシ


青色の部分が省かれている


また、ポツダム宣言の次の箇所が紹介されていない。


「合衆国、英帝国及中華民国ノ巨大ナル陸、海、空軍ハ西方ヨリ
 自国ノ陸軍及空軍ニ依ル数倍ノ増強ヲ受ケ

 日本国ニ対シ最後的打撃ヲ加フルノ態勢ヲ整ヘタリ

 右軍事力ハ日本国カ抵抗ヲ終止スルニ至ル迄
 同国ニ対シ戦争ヲ遂行スルノ一切ノ連合国ノ決意ニ依リ
 支持セラレ且鼓舞セラレ居ルモノナリ」


つまり、日本を攻撃する態勢を整えました、
日本が抵抗をやめるまで戦いますという内容なのだが、
これを池上氏は「降伏か、破壊か」の二択を迫ったものだと説明している。


これは明らかな曲解だろう。

戦後70年、池上彰氏からのメッセージ

2015-07-25 21:37:31 | マスコミ批判
白々しいやっちゃなぁ~
というのが正直な感想。

池上氏が言うには、日本は戦後一切戦争を行ったことがなかった。

戦争をしていない。その意味をこめて「戦後」70年という言葉がある。
今後も、戦後80年、戦後90年、戦後100年と続いていけばいいですね。


大体、こんな言葉だったが、
憲法前文に驚き記述 創られた反日建国神話とか
中国人に欠けているのはモラルとか
思いっきり、他国への憎悪を煽っているのはどこの誰だったのだろうか?

極め付けに、
集団的自衛権にもメリットがある(!)として
安倍政権の言い分をそっくりそのままコピー&ペーストして説明した
のは
どこのどいつだったろうか?私の記憶が正しければ池上氏だったような気がする。




池上氏は集団的自衛権のメリットとして、
日本が資源を確保するために重要な地点である
ホルムズ海峡の機雷掃海が出来るようになると説明した。

実は、この説明は安倍の言い分をそっくりそのまま述べたもので、
すでに論破されているものだったりする。


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安倍政権が集団的自衛権行使で唯一念頭に置いている
実例としてあげているホルムズ海峡の機雷掃海に関して、
外務省は
機雷敷設による海峡封鎖自体、“現実性が乏しい”とみていたことが
10日の衆院安保法制特別委員会で初めてわかりました。



日本共産党の穀田恵二議員が、
「取扱厳重注意」とされた外務省の内部資料から明らかにしたものです。


穀田氏が暴露した外務省資料は、2012年に
日本が米軍主催のペルシャ湾での国際掃海訓練に参加するにあたり、外務省がまとめたもの。


同資料には、
「イラン原油輸出はホルムズ海峡経由で行われており、
海峡『封鎖』はイラン自らの経済活動を封殺するものであり、
ホルムズ海峡『封鎖』はイランにとっても重大な決断を要するもの」
と明記されています。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-07-12/2015071202_03_1.html
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外務省が否定している妄想を前提にして、
「集団的自衛権が認められればこんなことができるよ!」と説明する池上彰&安倍。


彼らのやり方を真似れば、
集団的自衛権がなければ、地球を侵略する宇宙人に応戦できないじゃないか!
なんてアホみたいな理屈も通用してしまうだろう。



この他にもアメリカに向かう弾道ミサイルを迎撃できると説明していたが、
これは技術上無理だということがすでにハッキリしている。



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集団的自衛権の行使を合理化するための事例の一つに、
米領グアムや米本土に向かう弾道ミサイルを日本が撃ち落とさなくていいのか
という議論があります。



首相は、
「ミサイル防衛において、日本に飛んでくるものは(撃ち)落とすけれども、
グアムに飛んでいくものは(撃ち)落とすことができてもパスをしてしまう。
これでもう相当たくさんの死者が出る。日米同盟はその段階において
大変な危機を、終わるかもしれないという危機を迎える」
(2013年2月27日、参院予算委員会)と述べていました。


ところが、グアムに向かう弾道ミサイルは高高度を高速で飛ぶため、
日本のミサイル防衛システムで撃ち落とすことが技術的に不可能
なのは、
政府自身も以前から認めていたことです。



もともと無理なことを集団的自衛権行使容認の口実にするのはおかしいとの批判を受け、
首相は、「もし将来、技術的にそれが可能となった場合、
グアムあるいはハワイに向かっていくミサイルについて
撃ち落とす能力があるのに撃ち落とすことはできないのか」
(今年2月10日、衆院予算委)と答弁を修正し、日本に迎撃能力がないことを認めました。

集団的自衛権の行使容認ありきで、都合のいい事例を考え出したものの、破たんしたのが実態です。


グアムに飛んでいく弾道ミサイルを撃ち落とす例を挙げられなくなったためか、
最近、首相がよく持ち出すのは、“公海上で日本に対する弾道ミサイル攻撃の
警戒に当たっている米国のイージス艦が攻撃を受けた際、
近くにいる日本のイージス艦がこれを防がなくていいのか”という議論です。


これも、専門家は、日米のイージス艦が近くで
一体的に活動していれば日本側への攻撃とみなして反撃できる
と指摘しています。

首相は、両艦が水平線を越えてお互い見えないほど
離れていることがあると反論していますが、それほど離れている場合には、
逆に、米艦への攻撃を防ぐのは技術的に不可能
だといわれています。


首相は、“朝鮮半島有事で米軍を攻撃している北朝鮮に
武器弾薬を運んでいる船舶が日本の目の前を通過しているのに
これを阻止しなくていいのか”という例もしきりに挙げます。


これも、朝鮮半島が戦闘状態になれば
日本海は船舶が武器を運べるような状況ではないと、非現実性が指摘されています。


http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-14/2014031401_05_1.html
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要するに、
「宇宙人が責めてきた時に、今のままじゃダメだろうが!」
同レベルの詭弁を池上氏は集団的自衛権の説明に採用している。




池上氏がどういうつもりで、安倍の説明を無批判に取り上げたのかは謎だが、
彼の説明は集団的自衛権の容認にも良い所があると印象付けるものになっている。


というより、安倍の説明が正しいことを前提にしている
ここには、政府の見解は間違っているのではないかという批判精神がない。


まぁ、彼のスタンスは中立らしいので、それほど強く非難するものでもないが、
実に不可解なのが、自分がさも平和主義者であるかのように演技をすること。



冒頭の言葉にしたって、東京裁判を否定的に評価した後の言葉であり、
要するに日本の戦争が侵略戦争と呼べるかどうかは微妙なんだというスタンスの上での発言だ。



そういう表面的な平和論者は、簡単に権力に媚を売って軍拡を支持してしまうし、
現に池上は集団的自衛権に関しては全力で安倍をサポートする説明を行っている。


また、戦争をしなければそれでいいというわけでもなく、
アジア人に対する差別意識の払拭も今後、我々に求められるものだと思うが、
この点に関しても、池上は払拭どころか助長させるコメントをしているわけで、
本当に彼がアジアの人々と争いを望んでいないのか、かなり怪しい。


どうも、安倍と同じく国力による力ずくの平和を望んでいるように見えるのだが……

アメリカ人の強制連行被害者にはペコペコ平謝りする誇り高き日本人2

2015-07-25 00:13:17 | 国際政治
前回の記事を書いた矢先に今度は
中国やイギリス等の強制連行被害者への謝罪を三菱マテリアルが表明し始めた。


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三菱マテリアルの岡本行夫・社外取締役は
22日、第二次世界大戦中に強制労働をさせた側として、
元中国人労働者の生存者と遺族に対して謝罪の意を示したいと述べた。


同社高層部の数人は19日、同じように
第二次大戦中に強制労働をさせたとして、元米兵捕虜に謝罪した。

三菱マテリアルは、終戦から70年が経過し、日本の大企業で初めて、
この戦争で犯した罪を認めて陳謝したことになる。新華網が報じた。



AP通信の報道によると、三菱マテリアルの岡本行夫・社外取締役は、東京で22日、
弊社は、第二次大戦中に強制労働をさせた外国人元労働者に対して
陳謝する意向を持っている。機会があれば、我々は彼らに直接お詫びの言葉を伝えたい
」と述べた。


元中国人労働者について、岡本氏は、
個人的には、強制労働をさせられた中国の人々に、深い同情の気持ちを抱いている
使用者として、我々は陳謝しなければならない。
彼らは、損害賠償を求めて訴えを起こしており、裁判が進んでいる」とし、
賠償金を支払う方針を明らかにした


一部の生存している元中国人労働者および遺族が昨年、
北京で三菱マテリアルと他の日本企業1社に対して裁判を起こし、
日本側に陳謝と損害賠償を求めた。岡本氏は、
「我々は、被害者との和解が成立するよう、最善を尽くしたい」としている。


岡本氏は、戦時中に日本の企業が外国人労働者に過酷な労働を強いて、
奴隷のように酷使した罪を認めている。

我々は、捕虜や一般民衆に最も酷い仕打ちをした企業のひとつだ。
したがって、彼らに陳謝するのは当然のことだ」と、同氏は見解を述べた。
http://j.people.com.cn/n/2015/0724/c94475-8925839.html
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前の記事で私は白人と黄色人に対する右翼の態度が違いすぎる点を指摘し、揶揄したが、
中国に対しても謝罪すると表明した途端に、案の定、右翼が騒ぎ出した。

http://matoch.blog.jp/68414884.html


な、なんてわかりやすい人たちなんだ……(汗



一方で、三菱マテリアルは朝鮮人の強制連行に関しては、
当時の朝鮮人は日本人だから謝罪しないという右翼的見解を示している。

この辺りの往生際の悪さは、さすが誇り高き日本企業といったところか……


前にも述べたように、強制連行に関しては資料が豊富にあるので、
その事実自体を否定することはできない。そこで、当時の朝鮮人は
日本人だったから、これは動員の一環だとして居直るのが最近のトレンドになっている。

これは詭弁以外の何者でもない。


朝鮮人の強制連行には文字通りの暴力的連行もあり、
また、退職の自由が約束されない奴隷労働が特徴的だった。


その詳細は、山田昭次氏らが編著した『朝鮮人戦時労働動員』に詳しい。
この本では「強制連行」という言葉ではなく「戦時労働動員」という言葉を使っている。


いわゆる朝鮮人強制連行とは、朝鮮人に労働を強制した事件であり、
先述の通り、朝鮮人を奴隷的に使役し、日本人より過酷な労働を強いたものだった。
(休職も離職もできず、監視体制が敷かれていた)


「どのような労働を強いられたか」が争点なのだが、
「どのように連れて来られたか」に論点が微妙にずらされている。


この点を踏まえ、研究者も「戦時労働動員」という言葉を使用しているわけだ。


つまり、「動員の一環だからいいんだもんね!へへーん!」という逃げ口上は
「連れて来られた後に奴隷労働を強いられた」という肝心の点を無視しており、
 言い訳にすらなっていないということだ。


わかりやすく例えれば、イジメを苦に自殺した児童の親に対して学校側が
「登校しろとは言っていませんでしたよ(ニヤリ)」と言っているようなものか……?


合法だからOKという屁理屈は、ここには通用しない。論点がズレている。


ちなみに、朝鮮人や中国人と同様に、日本人の中にも強制連行された人間がいた。
その典型的な例が治安維持法で逮捕された政治犯(思想犯)で、
彼らの中には、トラック島という島に連行され奴隷労働を強いられた。

この辺は、窪田精の『死者たちの島』あたりを読むといい。


政治犯や思想犯といっても、何かテロを行ったわけでもなく、
大半は政府や軍を批判しただけで非国民のレッテルを貼り付けられたのだが、
こういう人たちと朝鮮人、中国人は境遇が酷似している(同一ではないが)。


つまり、大きな構図として大日本帝国では、
社会的弱者に重労働を強いる&拒否すれば厳罰を下すシステムになっており、
この点を追及すると、強制連行という事件は私たち日本人にも共通する問題になる。


ひめゆり学徒隊などが有名だが、国に動員されて戦場で放置され死亡した少女たちと、
戦時労働動員を受けたコリアンは同じカテゴリーに区分される。


非国民のレッテルを貼られ、弾圧を受け獄死した日本人と
炭坑でろくに食べ物も与えられず死んでいった朝鮮人は同じ被害者である。


真剣に考えれば、日本人とコリアンは共通の問題を抱え、共闘できる間柄でもあるのだが、
現実では、ちょっと政府を批判するだけで「反日」認定する連中がそれなりにいて、
なかなか大きな流れとして日韓共闘の戦後処理が遅々として進まない。


ついでに言えば、日本の植民地支配を反省することは、韓国に当てはめれば、
植民地時代に日本に追従していた親日派が戦後、主を日本からアメリカに変え、
支配体制を維持し、軍事独裁のもと、多くの民衆を弾圧した責任を問うことにもつながる。


つまり、日本の植民地主義の清算は、その産物である
戦後の韓国の支配者層の糾弾にリンクし、右翼がやりたがっているであろう
韓国の政治批判を堂々と行える機会を与えてくれるものと思うのだが……