時事解説「ディストピア」

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小保方晴子氏は荒このみ氏や加藤哲郎氏よりも有害か?

2014-04-30 00:07:56 | 反共左翼
「あらゆる必要な手段を用いて行われる便乗商法」というタイトルで、
 マルコムXとバラク・オバマの間に思想上の連続性があるという
 珍説を唱えた荒このみ氏への批判記事がある。


http://hakuainotebook.blog38.fc2.com/blog-entry-22.html

『マルコムX―人権への闘い』という本が岩波新書から2009年に出版された。
 終章の最後の三つの小見出しに至っては「オバマの心に響いたマルコムXの言葉」
「オバマの複眼的思考」「地球市民の連帯を望むマルコムXとオバマ」などと題され、
 あたかもオバマとマルコムXが同じ側に立つ人間であるかのように書かれている。


しかしながら、その後のオバマの行動、すなわち、

米軍基地に対する沖縄住民への冷淡な態度、
アフガン・パキスタンへの増兵(無人戦闘機による民間人殺害)、
グアンタナモ強制収容所の閉鎖に対する曖昧な態度、
リビアの爆撃・文字通りの消滅、
シリアへの爆撃未遂、
ウクライナ国内へのネオナチの支援、
アメリカに有利なTPP締結の強要、
フィリピン・日本と協力しての軍拡

などなど、やってることだけ列挙すると、
ブッシュと大して変わらないのでは?と怪しみたくなるほどだ。

日本でもオバマ旋風が吹き荒れた時期に出版されたので、
便乗したのではと思えてならない。仮にも日本の知の番人とも言える
岩波書店から、こんな便乗商法をマルコムX研究者が行うのは、
日本の研究者の信用を著しく貶めるものだと言えよう。


また、前記事でも「結局、アメリカの利益になることしか言っていない」
と批判した加藤哲郎氏が出版した岩波全書の『日本の社会主義』でも、


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『日本の社会主義ーー原爆反対・原発推進の論理』では、
(1)労働力を摩滅・破壊する放射線被曝労働の不可避、
(2)絶対安全はありえない巨大なリスクを持つ装置産業で、
人間の完全制御はありえない、
(3)10万年後も残される「未来への暴力」としての核廃棄物、

をあげて「核と人類は共存できない」と主張しました。

地震列島の日本国民全体が当事者であるのみならず、
地球と文明そのものが危機にさらされている、という意味です。

その観点から20世紀日本の平和運動・社会主義を見直し、
「原子力は、日本の社会主義のアキレス腱だった」と結論づけました

(2014年4月15日の日誌より)
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と書いているが、ここでも国際原子力機関(IAEA)に代表される
アメリカをはじめとする先進諸国の核戦略という視点が抜け落ちている。


換言すれば、原子力問題で必ず言及しなければならない
先進国による核の独占、政治利用という問題を度外視されており、
あたかも問題が日本だけの問題(日本の政治変革だけで解決できる
問題)だと錯覚させる危険性を孕んでいる(というか、そうでしかない)。


歴史的には、先進諸国の核戦略という大きなプランがあり、
そのプランに従った形で日本の原発が推進されているのだから、
脱原発を掲げたって、アメリカなどの大国の意向に対して
ノーを叩きつけなければ、反核も脱原発も難しいだろう。

こういう肝心な問題、本当に戦うべき敵を見えなくさせるのは、
非常に問題がある行為ではないだろうか?


加えて、同氏は日本共産党が80年代に原子力の平和利用を主張したことを
「日本が社会主義国化したあとにも核を温存させるためだった」という
珍説をとなえているが、当の共産党は現在の原発推進が日米の核戦略に
従った形で行われており、核の放棄を行わなければ原子力の平和利用は
できないと、当時、出版物を通して主張している。

正直、震災以降、急に原発をネタにして
正義は我にありと称する知識人が増えたが、
加藤氏本人も、震災以前には軽く言及する程度で、
自身の研究で原子力と戦後の左翼運動の関連性を指摘したことはなかった。

これもまた、立派な便乗商法である。



はっきり言って、日本の社会主義の妨げになったのは、
戦後の冷戦構造の中で戦うことを強いられたこと、
反共主義と容共主義との対立だったことは明白である。


冷戦という大きな構造の中で、制限がかけられた中で
行動せざるを得なかったことが、結果的に容共左翼と反共左翼
という二種類の潮流を生ませて、連携が取れないまま潰し合ってしまった。

これが最大の原因である。

しかも、反共左翼が主流になる、すなわち、
天皇制と比肩する大日本帝国の国是、反共主義を受け継ぐ形で
日本の左翼運動が展開されていったのも見逃せない。

ここでいう反共とは「反・日本共産党」であり、
不思議なことに、彼らは共産党を否定する一方で、
マルクス主義や、日本共産党と対立するソ連・中国、
北朝鮮と連携をとるなどの矛盾した行動を行っていた。


「日本の社会主義のアキレスけんは原子力」などという言葉は、
 当時の文化大革命や学生運動を支持した反共左翼の責任を
 はぐらかしてしまう危険なものだと言えよう。

また、議会制民主主義を維持したままでの選挙による革命を唱えた
日本共産党と、直接の武力行為を通じての革命を実行した新左翼の
間の対立は、決して原子力ではなく、革命の手段を巡るものだった。

安田講堂事件の中心人物であるにも関わらず、
この点をうまーくごまかしているのは、何ともいえないものがある。


「核と人類は共存できない」、
「原子力は、日本の社会主義のアキレス腱だった」という、
 人類の問題、原子力の問題として片付けようとする姿勢は、
「誰が核を推進しているのか」「なぜ推進させるのか」といった
 主体者や構造をはぐらかす性質を持つものであり、非常に問題だ。


疑うものは、このようにして考えてみればよい。

「ミサイルと人類は共存できない」、
「ロケットは、日本の社会主義のアキレス腱だった」

軍事目的に転用できるからといって、
ロケットの容認が軍拡に拍車をかけただなんて暴論だし、
ミサイルと人類が共存できないのは常識の範疇であり、
問題なのは「どこの国が」「なぜ作るのか」である。

実際には、加藤氏は核を容認するか否かで敵・味方を判別しており、
北朝鮮やキューバ、ベネズエラといった悪の枢軸+αに対して
核保有を認めるというただそれだけの理由で否定的な態度をとっている。

これがアメリカにとって都合のよい態度であることは言うまでもない。



以上、両氏の行動を俯瞰してみると、
バラク・オバマの個人崇拝や、先進諸国の核戦略の度外視といった
重大かつ致命的なミスを犯していることに気づかされる。


これは、日本の左翼運動、社会改革運動、あるいは
それを目指すであろう青年運動化を育てるにおいて害悪であるとしか言えない。

実際に、彼らが掲げる正義は、アメリカの戦略を妨害しない範囲のものだ。
本当に必要なのは、その範囲を飛び出て毅然と立ち向かう正義なのだが…

これに比べれば、個人的なミスで論文に誤りを作った小保方晴子など、
人畜無害の女性である。そもそも、この論文が載った科学雑誌、
ネイチャーのレフリー(論文を審査する人)や、共同研究の同僚、
理研の上司などのチェックの不備が招いたことであり、
小保方氏本人よりも、そういう論文を載せた他の連中の責任のほうが重大だ。


私は、小保方氏に対して非常に同情している人間の一人だ。
今回の騒動では、下手をすれば小保方氏が手違いではなく、
意図的に論文の資料をねつ造したことにされてしまう。

もし、そのような事実が公式の見解になってしまえば、
小保方氏の研究者生活はお終いだ。結婚していればまだマシだが、
そうでないならば、転職するしかない。安定した職業に就ける保証もない。


弱冠30歳の女性が日本でも一流の研究所で活躍している。
これは本当に素晴らしいことで、バックアップすべきことだが、
共同研究であるにも関わらず、全責任を若手の研究者に転嫁して、
今後の人生まで潰してしまいかねない事態を皆、面白がって見ている。

悪趣味としか言いようがないではないか。

こういう若手を潰される一方で、上の連中が珍説を唱えて
ふんぞり返っている限り、理系のみならず、文系の研究者も
優秀な人材を自らの手で葬ってしまっているといっても過言ではないだろう。


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