今月号の中央公論の対談。
ラディカル・ポリティクスというシリーズの一環らしい。
ラディカルというより、典型的なコンサバティブな対談だった。
しょっぱなから、難民キャンプをテロのリクルートセンターと断定。
「ISISが難民と称してテロを送り込んでくる」とのたまっていた。
難民のふりをしたテロの入国という主張はネトウヨのそれと同一のものである。
ちなみにドイツ連邦情報局は難民の中にISISはいないと断言している。
では、佐藤と山内は難民受け入れに反対なのかと言うと、そうではないようで、
シリア難民を一人も受け入れない(山内談)イランは、
セム族優越主義の差別国家なのだそうだ。
イランが本当に一人もシリア難民を受け入れていないかどうかは定かではないが、
少なくともヨルダン、レバノン、イラクのシリア難民に救援物資を届けている。
Iran’s Red Crescent Sends 150 Tons of Aids to Syrian Refugees
Red Cross commends Iran for humanitarian aid to Syrian refugees
そして、山内は現在、世界で最も難民を受け入れている国の中に
イランがある(世界第2位)ことになぜか触れようとしない。
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2012年末時点の世界における難民は約1,540万人であり,前年同時期より約130万人増。
主要な難民発生国は,
ア アフガニスタン(約256万人),
イ シリア(約247万人),
ウ ソマリア(約112万人)。
主要な難民ホスト国は,
ア パキスタン(約160万人),
イ イラン(約86万人),
ウ レバノン(約86万人),
エ ヨルダン(約64万人),
オ トルコ(約61万人)。
(外務省のHPより)
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あまり知られていないが、イラン・イラク戦争、
イラク・アフガン戦争とこれまでイランは多くの難民を受け入れてきた。
イランはアフガニスタンの隣国であり、
公式で約86万、非公式も含めると約300万の難民を国内に抱えている。
この間、経済制裁によって国内の経済事情が危うくなり、難民へのサービスが低下し、
そのことで人権団体から非難されているのも事実ではあるが、それでも受入国の上位に位置する。
そもそも、イランに向けて経済制裁を下したり、
アフガニスタンを攻撃したりしたのは一体どこの国なのかと思えば、
大国の戦争のツケを途上国が払わされている現状に対して一切文句を言わず、
イランの対応が不十分だとふてくされる人権主義者様の皆様にはウンザリさせられる。
「よその国よりはマシではあるが、それでもなお不十分」という一文の
「不十分」の文字だけ切り取り、あれやこれやと騒ぎ立てる。品の無いことだ。
こうした事情を山内が一切知らないとは考えづらい。
意図的にシリアに味方する国家を悪漢として描こうとしているように見える。
(本当に無知のせいで語っていたならば、それはそれでよくプロを気取れるなと思うが。
彼は岩波書店にも多くの著作を残しており、また事典も編纂している本物のプロだ。
その彼が、イランがアフガンの難民を20年以上も受け入れていることを知らないはずがない)
山内は他にもロシアに難民が向かわない理由として、
「シリアをモジャモジャにした張本人だから」と決め付けた上で、
シリア人以外も行こうとはしませんけどね(笑)とコメントしているが、
その説明では、シリア国内の反体制武装組織に訓練を施し、
武器を与える欧米に難民がなぜ向かうのかが説明できない。
中央公論の別のページでは、西側の軍事支援も難民発生の原因として語る識者もいたが、
佐藤と山内は終始、プーチン、アサド政権の非難一辺倒で全然ラディカルではなかった。
佐藤にいたっては、先の難民=テロ発言もさることながら、
ヨーロッパは多宗教が共存している地域だからイスラム教徒には合わないという、要は
「イスラム教徒は他の宗教を認められないから日本やヨーロッパに来ても
他人と共存するこどなど不可能であり、孤立感を覚えるに決まっている」
と言う理屈でシリア難民のEUへの移動をたしなめている始末だ。
(こういうヤツに原稿料を払って沖縄問題を語らせている『週刊金曜日』って何なんだ?)
しかも、佐藤は「欧米の反アサド派武装組織への支援が難民を発生させた」という
ロシアやシリアの言い分を知っているのである。
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シリアのジャアファリ国連大使が、一部の国連加盟国による
テロ組織への支援を無視しているとして国連のパン事務総長を批判しました。
シリアのテレビチャンネルによりますと、ジャアファリ国連大使は国連の非公式の会合で、
「パン事務総長は報告の中で、国連加盟国が100以上の国から
多くのテロリストをシリアに派遣しているという事実を無視している」と表明しました。
ジャアファリ大使はまた、
「パン事務総長は、これらのテロ組織がシリアで人々に対する最悪の犯罪を行っており、
最終的にシリアとその基盤を消滅させるということについて、まったく触れていない」としました。
さらに、シリア難民が海域で苦しんでいるのは、西側諸国の責任だとして、
彼ら難民は外国の支援を受けたテロリストの手から逃れようとしていると述べました。
ジャアファリ国連大使は、
「人権を叫ぶ多くの国は、難民に対して国境を閉ざしており、
彼らを海で救出するのも控えている」と語りました。
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/57936
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こういう意見を知りながら、どうせムスリムが来たって
ヨーロッパ社会で協調できないんだから来るなと遠まわしに言っているのが佐藤&山内。
実にラディカルである。どちらかと言えばウルトラナショナル(極右)だが。
(同化できない人間を排除しようとするのは立派な排外主義である)
終始、このような論調で、アサドだけを攻撃するテロリストは善で、
アサドだけでなくヨーロッパでもテロを起こす集団は悪という認識のもとで話されていた。
ラディカルというよりは、産経や文春で語られているような偽善的な対談。
もっとも、私は山内氏や佐藤氏だけを非難しても意味がないと考えている。
本当に問題なのは、戦後日本を代表するであろう左翼出版社である岩波書店が
両者を好意的に受け入れ、しばしば本を書かせているという事実だろう。
岩波には、岩波現代文庫と題して、既存の出版物から
次世代の人間に伝えるべき作品を厳選収録したシリーズがあるのだが、
山内も佐藤もバッチリこの文庫に著者として参加している。
しかも山内は日本の軍事に直接コミットする国家安全保障局の顧問を務めたり、
歴史問題に関しても「中国や韓国は日本の悪事を殊更に強調している」という内容の
評論文を読売新聞に寄稿したり、産経で同じ趣旨のコラムを書いたりしている人物なのだが、
彼に何度も本を書かせた岩波書店とは一体何なのだろうか。これは避けて通れない問題だと思う。
ラディカル・ポリティクスというシリーズの一環らしい。
ラディカルというより、典型的なコンサバティブな対談だった。
しょっぱなから、難民キャンプをテロのリクルートセンターと断定。
「ISISが難民と称してテロを送り込んでくる」とのたまっていた。
難民のふりをしたテロの入国という主張はネトウヨのそれと同一のものである。
ちなみにドイツ連邦情報局は難民の中にISISはいないと断言している。
では、佐藤と山内は難民受け入れに反対なのかと言うと、そうではないようで、
シリア難民を一人も受け入れない(山内談)イランは、
セム族優越主義の差別国家なのだそうだ。
イランが本当に一人もシリア難民を受け入れていないかどうかは定かではないが、
少なくともヨルダン、レバノン、イラクのシリア難民に救援物資を届けている。
Iran’s Red Crescent Sends 150 Tons of Aids to Syrian Refugees
Red Cross commends Iran for humanitarian aid to Syrian refugees
そして、山内は現在、世界で最も難民を受け入れている国の中に
イランがある(世界第2位)ことになぜか触れようとしない。
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2012年末時点の世界における難民は約1,540万人であり,前年同時期より約130万人増。
主要な難民発生国は,
ア アフガニスタン(約256万人),
イ シリア(約247万人),
ウ ソマリア(約112万人)。
主要な難民ホスト国は,
ア パキスタン(約160万人),
イ イラン(約86万人),
ウ レバノン(約86万人),
エ ヨルダン(約64万人),
オ トルコ(約61万人)。
(外務省のHPより)
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あまり知られていないが、イラン・イラク戦争、
イラク・アフガン戦争とこれまでイランは多くの難民を受け入れてきた。
イランはアフガニスタンの隣国であり、
公式で約86万、非公式も含めると約300万の難民を国内に抱えている。
この間、経済制裁によって国内の経済事情が危うくなり、難民へのサービスが低下し、
そのことで人権団体から非難されているのも事実ではあるが、それでも受入国の上位に位置する。
そもそも、イランに向けて経済制裁を下したり、
アフガニスタンを攻撃したりしたのは一体どこの国なのかと思えば、
大国の戦争のツケを途上国が払わされている現状に対して一切文句を言わず、
イランの対応が不十分だとふてくされる人権主義者様の皆様にはウンザリさせられる。
「よその国よりはマシではあるが、それでもなお不十分」という一文の
「不十分」の文字だけ切り取り、あれやこれやと騒ぎ立てる。品の無いことだ。
こうした事情を山内が一切知らないとは考えづらい。
意図的にシリアに味方する国家を悪漢として描こうとしているように見える。
(本当に無知のせいで語っていたならば、それはそれでよくプロを気取れるなと思うが。
彼は岩波書店にも多くの著作を残しており、また事典も編纂している本物のプロだ。
その彼が、イランがアフガンの難民を20年以上も受け入れていることを知らないはずがない)
山内は他にもロシアに難民が向かわない理由として、
「シリアをモジャモジャにした張本人だから」と決め付けた上で、
シリア人以外も行こうとはしませんけどね(笑)とコメントしているが、
その説明では、シリア国内の反体制武装組織に訓練を施し、
武器を与える欧米に難民がなぜ向かうのかが説明できない。
中央公論の別のページでは、西側の軍事支援も難民発生の原因として語る識者もいたが、
佐藤と山内は終始、プーチン、アサド政権の非難一辺倒で全然ラディカルではなかった。
佐藤にいたっては、先の難民=テロ発言もさることながら、
ヨーロッパは多宗教が共存している地域だからイスラム教徒には合わないという、要は
「イスラム教徒は他の宗教を認められないから日本やヨーロッパに来ても
他人と共存するこどなど不可能であり、孤立感を覚えるに決まっている」
と言う理屈でシリア難民のEUへの移動をたしなめている始末だ。
(こういうヤツに原稿料を払って沖縄問題を語らせている『週刊金曜日』って何なんだ?)
しかも、佐藤は「欧米の反アサド派武装組織への支援が難民を発生させた」という
ロシアやシリアの言い分を知っているのである。
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シリアのジャアファリ国連大使が、一部の国連加盟国による
テロ組織への支援を無視しているとして国連のパン事務総長を批判しました。
シリアのテレビチャンネルによりますと、ジャアファリ国連大使は国連の非公式の会合で、
「パン事務総長は報告の中で、国連加盟国が100以上の国から
多くのテロリストをシリアに派遣しているという事実を無視している」と表明しました。
ジャアファリ大使はまた、
「パン事務総長は、これらのテロ組織がシリアで人々に対する最悪の犯罪を行っており、
最終的にシリアとその基盤を消滅させるということについて、まったく触れていない」としました。
さらに、シリア難民が海域で苦しんでいるのは、西側諸国の責任だとして、
彼ら難民は外国の支援を受けたテロリストの手から逃れようとしていると述べました。
ジャアファリ国連大使は、
「人権を叫ぶ多くの国は、難民に対して国境を閉ざしており、
彼らを海で救出するのも控えている」と語りました。
http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/57936
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こういう意見を知りながら、どうせムスリムが来たって
ヨーロッパ社会で協調できないんだから来るなと遠まわしに言っているのが佐藤&山内。
実にラディカルである。どちらかと言えばウルトラナショナル(極右)だが。
(同化できない人間を排除しようとするのは立派な排外主義である)
終始、このような論調で、アサドだけを攻撃するテロリストは善で、
アサドだけでなくヨーロッパでもテロを起こす集団は悪という認識のもとで話されていた。
ラディカルというよりは、産経や文春で語られているような偽善的な対談。
もっとも、私は山内氏や佐藤氏だけを非難しても意味がないと考えている。
本当に問題なのは、戦後日本を代表するであろう左翼出版社である岩波書店が
両者を好意的に受け入れ、しばしば本を書かせているという事実だろう。
岩波には、岩波現代文庫と題して、既存の出版物から
次世代の人間に伝えるべき作品を厳選収録したシリーズがあるのだが、
山内も佐藤もバッチリこの文庫に著者として参加している。
しかも山内は日本の軍事に直接コミットする国家安全保障局の顧問を務めたり、
歴史問題に関しても「中国や韓国は日本の悪事を殊更に強調している」という内容の
評論文を読売新聞に寄稿したり、産経で同じ趣旨のコラムを書いたりしている人物なのだが、
彼に何度も本を書かせた岩波書店とは一体何なのだろうか。これは避けて通れない問題だと思う。