完全にテレビタックルの後継番組と化したなぁ……
今日のテレビタック、じゃなかった、
池上彰氏のニュース番組を見て呆れてしまった。時事解説ですらない。
チャンネル桜の合法詐欺番組のほうがまだ開き直っていて潔い。
中国に足りないものはモラル(!)なんだそうだ。
経済では世界一になった!だが道徳心が足りん!
……だそうだ。お前は頑固おやじか。
池上氏は中国のモラル低下の具体例としてメラニンを混入した粉ミルク事件や、
2011年に起きた鉄道事故への対応などを列挙していたのだが、
それはないんじゃないのか?
同氏の理屈に従うと、日本についても同じことが言えてしまう。
原発事故の政府や東電の対応などはその典型だ。
原発事故は偶然おきた事故ではなく、その危険性は以前から問われていた。
しかし、一基につき5000万の金が動くプロジェクトであるためか、
無視や隠ぺい、つまり「安全神話」がささやかれていた。
起こるべくして起こったのである。
他にも、粉ミルク事件のように企業が起こした事件すらモラル低下の事例として扱うならば、
日本でも2013年にカネボウ化粧品が美白効果があるとして肌がまだらになる商品を売りつけ、
6808人から症状や不安を訴える申し出があり、うち2250人は、症状が重いのである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502V_V00C14A7CC1000/
カネボウは日本を代表する大企業の一つであり、その社会的責任は重大だ。
しかし、この事件をもって日本に足りないものはモラルと断定できるだろうか?
原子力発電に対する自治体や電力会社、経産省の動きも非道いものであるが、
それを理由に、日本人のモラル低下を主張できるのだろうか?
さらには、10年以上前から続いている歴史の否定および改善、
慰安婦問題へ対する不誠実な対応、靖国神社参拝、在日コリアンへの差別など、
モラルに欠けた行為を日本はいくらでもしているではないか?
しかし、これらをもって日本人のメンタル自体が劣化したなどと言えるのか?
絶対に言えないはずだ。そもそも、「日本人」というのは非常に大きなカテゴリーで、
その中には帰化した人間や、私のように武家の流れを組む人間もいるし、
網野善彦氏が指摘したように、東日本と西日本では文化も歴史も異なるのである。
このように、日本ですら地域ごと、階級ごとに多様な文化と歴史を
それぞれの人間が背負っているのであって、いくつかの大々的な事件を根拠に、
すべての日本人および日本社会のモラルが低下したなどとは主張できない。
ましてや、12億人もいる中国ならなおさらだ。
しかも、その12億はモンゴルや満州、回、ミャオ、漢などの
多民族で構成され、内陸部と沿岸部では歴史も文化も異なる。
「中国人は~だ」という言説は、中国の多様性を無視した極論であり、
それは日本人に対しても跳ね返ってくる差別的な発言でもある。
さて、池上氏によると、中国人のモラルの低さは歴史的産物であり、
毛沢東の文化大革命によるものなんだそうだ。馬鹿馬鹿しくて声も出ない。
池上氏の解説は、もはや在特会やつくる会、日本維新の会の解説と
同レベルの出鱈目と化している。完全に合法詐欺師となっている。
池上氏によると、文革は毛沢東による恐怖政治だったそうなのだが、
これは非常に文革の複雑性を無視したもので、嘘と言っても良いレベルだ。
実際には、文革は地方や都市の青年革命家を毛沢東が焚きつけたことで
起きたものであり、当時の中国社会に存在した党における幹部の腐敗や
行き過ぎた中央集権のために生じた非民主的な政治制度に反対して起きたものだった。
当時は世界中で学生運動が活発に行われていた時代だが、
この運動を毛沢東は積極的に支持したわけである。
日本の場合も同様であったが、いわゆる内ゲバが発生してくると、
エリート出身の学生と非エリート出身の学生、あるいは労働者や農民との間の
具体的な軋轢が問題化し、それを暴力によって解決する方向へと向かっていく。
内戦にも似た混乱が各地で発生し、きっかけを作った毛沢東は次第に
この混乱を鎮めるために、当初応援していたはずの改革派を弾圧していく。
加えて、四人組と俗に言われる権力者集団が実権を握り、
党内においても、毛沢東、四人組、反文革との間で抗争が続いた。
結果としては反文革が勝利し、周恩来と小平がその後の中国を築いていく。
このようにザッと説明しただけでも、非常に複雑な事件であることがわかるだろう。
実際に、この複雑性と運動の多様性のため、様々な視点から研究が行われている。
それなのに、中国人のモラルが低いのは文革で儒教が否定されたからだ
という妄言を電波に乗せて叫ぶのは、聴衆を惑わす詐欺行為に等しい。
小平以降の中国では文革は間違いだったと認めているのだが、
このような事実も池上氏はもちろん、触れていない。
また、現在の中国の識字率は95%なのだが、
池上氏は文革のせいで字が読めない人間が何人もいると、
まるで現在の中国が教育後進国であるかのようにウソをついている。
確かに12億の5%だから、6千万の人間が読み書きができないわけで、
これはこれで問題である。だが、そもそも識字率と道徳の間に関連性はない。
字が読めればモラルが上がるなら、日本人は善人だらけになるだろう。
中国にしたって11憶人の人間は字が読めるのに事件は起こすのである。
儒教やキリスト教が濃い韓国でも凶悪犯罪や腐敗は起きているし、
今の韓国政府のトップがあのパク・チョンヒの娘であることからも、
軍事独裁政権の記憶を美化し、反動化させる動きがあることを匂わせる。
要するに、池上氏の主張は言いがかりも甚だしいものであり、
到底、まっとうなジャーナリストなら言うはずがない内容のものだ。
氏は以前から中立性のある報道を心がけていたはずなのだが、
ここに来てついにメッキがはがれたような気がする。
中国を批判するのは構わない。
だが、それは専門性のあるもので、
ゴシップであってはならないと思う。
そういう意味では丸川哲史氏の『魯迅と毛沢東』は
現在の中国における批判的知識人が両名の著作を読みなおしていることを
紹介しており、また双方を事例に現代中国の思想史を叙述しており面白い。
私が以前、このサイトでも紹介したユー・ビン氏の資本論入門でも、
小平以降の開放路線によって、行き過ぎた資本主義が正当化されたと
いう批判が書かれており、仮にモラルが低下したとしても、
それは文革というよりも、文革以降によるものだという意見もある。
中国に関心がある者は、なるべく多角的な視点からこの国を見るべきだ。
池上氏の解説はウソと煽動に満ちたもので、とても中立な視点のものとは思えない。
池上彰のテレビタックルに改名しろと書いたこともあったが、
ここまで来るとさすがに笑えない。テレビ朝日の責任は重大だ。
今日のテレビタック、じゃなかった、
池上彰氏のニュース番組を見て呆れてしまった。時事解説ですらない。
チャンネル桜の合法詐欺番組のほうがまだ開き直っていて潔い。
中国に足りないものはモラル(!)なんだそうだ。
経済では世界一になった!だが道徳心が足りん!
……だそうだ。お前は頑固おやじか。
池上氏は中国のモラル低下の具体例としてメラニンを混入した粉ミルク事件や、
2011年に起きた鉄道事故への対応などを列挙していたのだが、
それはないんじゃないのか?
同氏の理屈に従うと、日本についても同じことが言えてしまう。
原発事故の政府や東電の対応などはその典型だ。
原発事故は偶然おきた事故ではなく、その危険性は以前から問われていた。
しかし、一基につき5000万の金が動くプロジェクトであるためか、
無視や隠ぺい、つまり「安全神話」がささやかれていた。
起こるべくして起こったのである。
他にも、粉ミルク事件のように企業が起こした事件すらモラル低下の事例として扱うならば、
日本でも2013年にカネボウ化粧品が美白効果があるとして肌がまだらになる商品を売りつけ、
6808人から症状や不安を訴える申し出があり、うち2250人は、症状が重いのである。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0502V_V00C14A7CC1000/
カネボウは日本を代表する大企業の一つであり、その社会的責任は重大だ。
しかし、この事件をもって日本に足りないものはモラルと断定できるだろうか?
原子力発電に対する自治体や電力会社、経産省の動きも非道いものであるが、
それを理由に、日本人のモラル低下を主張できるのだろうか?
さらには、10年以上前から続いている歴史の否定および改善、
慰安婦問題へ対する不誠実な対応、靖国神社参拝、在日コリアンへの差別など、
モラルに欠けた行為を日本はいくらでもしているではないか?
しかし、これらをもって日本人のメンタル自体が劣化したなどと言えるのか?
絶対に言えないはずだ。そもそも、「日本人」というのは非常に大きなカテゴリーで、
その中には帰化した人間や、私のように武家の流れを組む人間もいるし、
網野善彦氏が指摘したように、東日本と西日本では文化も歴史も異なるのである。
このように、日本ですら地域ごと、階級ごとに多様な文化と歴史を
それぞれの人間が背負っているのであって、いくつかの大々的な事件を根拠に、
すべての日本人および日本社会のモラルが低下したなどとは主張できない。
ましてや、12億人もいる中国ならなおさらだ。
しかも、その12億はモンゴルや満州、回、ミャオ、漢などの
多民族で構成され、内陸部と沿岸部では歴史も文化も異なる。
「中国人は~だ」という言説は、中国の多様性を無視した極論であり、
それは日本人に対しても跳ね返ってくる差別的な発言でもある。
さて、池上氏によると、中国人のモラルの低さは歴史的産物であり、
毛沢東の文化大革命によるものなんだそうだ。馬鹿馬鹿しくて声も出ない。
池上氏の解説は、もはや在特会やつくる会、日本維新の会の解説と
同レベルの出鱈目と化している。完全に合法詐欺師となっている。
池上氏によると、文革は毛沢東による恐怖政治だったそうなのだが、
これは非常に文革の複雑性を無視したもので、嘘と言っても良いレベルだ。
実際には、文革は地方や都市の青年革命家を毛沢東が焚きつけたことで
起きたものであり、当時の中国社会に存在した党における幹部の腐敗や
行き過ぎた中央集権のために生じた非民主的な政治制度に反対して起きたものだった。
当時は世界中で学生運動が活発に行われていた時代だが、
この運動を毛沢東は積極的に支持したわけである。
日本の場合も同様であったが、いわゆる内ゲバが発生してくると、
エリート出身の学生と非エリート出身の学生、あるいは労働者や農民との間の
具体的な軋轢が問題化し、それを暴力によって解決する方向へと向かっていく。
内戦にも似た混乱が各地で発生し、きっかけを作った毛沢東は次第に
この混乱を鎮めるために、当初応援していたはずの改革派を弾圧していく。
加えて、四人組と俗に言われる権力者集団が実権を握り、
党内においても、毛沢東、四人組、反文革との間で抗争が続いた。
結果としては反文革が勝利し、周恩来と小平がその後の中国を築いていく。
このようにザッと説明しただけでも、非常に複雑な事件であることがわかるだろう。
実際に、この複雑性と運動の多様性のため、様々な視点から研究が行われている。
それなのに、中国人のモラルが低いのは文革で儒教が否定されたからだ
という妄言を電波に乗せて叫ぶのは、聴衆を惑わす詐欺行為に等しい。
小平以降の中国では文革は間違いだったと認めているのだが、
このような事実も池上氏はもちろん、触れていない。
また、現在の中国の識字率は95%なのだが、
池上氏は文革のせいで字が読めない人間が何人もいると、
まるで現在の中国が教育後進国であるかのようにウソをついている。
確かに12億の5%だから、6千万の人間が読み書きができないわけで、
これはこれで問題である。だが、そもそも識字率と道徳の間に関連性はない。
字が読めればモラルが上がるなら、日本人は善人だらけになるだろう。
中国にしたって11憶人の人間は字が読めるのに事件は起こすのである。
儒教やキリスト教が濃い韓国でも凶悪犯罪や腐敗は起きているし、
今の韓国政府のトップがあのパク・チョンヒの娘であることからも、
軍事独裁政権の記憶を美化し、反動化させる動きがあることを匂わせる。
要するに、池上氏の主張は言いがかりも甚だしいものであり、
到底、まっとうなジャーナリストなら言うはずがない内容のものだ。
氏は以前から中立性のある報道を心がけていたはずなのだが、
ここに来てついにメッキがはがれたような気がする。
中国を批判するのは構わない。
だが、それは専門性のあるもので、
ゴシップであってはならないと思う。
そういう意味では丸川哲史氏の『魯迅と毛沢東』は
現在の中国における批判的知識人が両名の著作を読みなおしていることを
紹介しており、また双方を事例に現代中国の思想史を叙述しており面白い。
私が以前、このサイトでも紹介したユー・ビン氏の資本論入門でも、
小平以降の開放路線によって、行き過ぎた資本主義が正当化されたと
いう批判が書かれており、仮にモラルが低下したとしても、
それは文革というよりも、文革以降によるものだという意見もある。
中国に関心がある者は、なるべく多角的な視点からこの国を見るべきだ。
池上氏の解説はウソと煽動に満ちたもので、とても中立な視点のものとは思えない。
池上彰のテレビタックルに改名しろと書いたこともあったが、
ここまで来るとさすがに笑えない。テレビ朝日の責任は重大だ。