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北海道新聞(夕刊) 2019年(令和元年)9月27日(金曜日) より

2019-10-09 12:01:03 | A●●-PUNKs
北海道新聞(夕刊) 2019年(令和元年)9月27日(金曜日) より
市立小樽美術館・文学館の建物を考える/保全活用 歴史まちづくり法などで

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駒木 定正


 小樽の市街地を横断する旧幌内鉄道(手宮線)跡地は遊歩道として整備され、市民や観光客の憩いの場になっている。市立小樽美術館・文学館(色内1)は遊歩道に続く広場を包み込むように建ち、一面をガラス張りにする解放的な階段室が特色である。
 この美術館と文学館は、市民による設立期成会の呼びかけで40年程前に開館し、小樽にゆかりのある美術家の作品と小説家などの著作を収集、展示する市民の芸術・文化の拠点であり交流の場になっている。
 両館は小樽地方貯金局の庁舎(1952年築)を再活用したものであ、正面玄関は線路と交差する通りに面し、向いには日本銀行小樽支店がある。第2次大戦後に、郵政省が鉄筋コンクリートの庁舎を建てた最初期のもので、外観は平らな壁面と窓、煙突に至るまで四角形や幾何学的な形で統一し、事務所は間仕切りのない開放的な室内であった。現在は、文学館のホールにこの室内空間が再現されている。
 設計者は郵政建築部設計課長の小坂秀雄(1912~2000年、東京出身)。設計の基本は「科学と技術と云う合理的方法」と述べ、それを表現したのが小樽地方貯金局であり、当時では際立って新しいデザインだった。小坂は、35年に東京帝国大学建築学科を卒業し、設計事務所に勤務後、逓信省(後の郵政省)に入庁している。
 その頃の郵政建築は、ヨーロッパで広まっていた合理主義の設計手法を、東京中央郵便局や大阪中央郵便局で取り入れて新しい形を率先して手がけていた。
 小坂はその影響を受けながら独自の形を生みだし、小樽地方貯金局管制の前年に、東京逓信病院看護学院で、わが国で最も権威のある日本建築学会賞を受賞。同局完成年には、外務省庁舎の設計競技で一等入選をはたし、50年初頭に昇り龍のごとき勢いがあった。外務省庁舎はコンクリートの柱と水平のひさしが特色であり、広く知られた現役の建物である。
 世界の建築界では、20世紀の建物と環境を記録し保存するための国際学術組織DOCOMOMO(ドコモモ)ができ、日本支部は大阪中央郵便局や旭川市庁舎などを選定。2016年には、東京・上野の国立西洋美術館(ル・コルビュジエ設計、1959年)が世界遺産に登録された。小樽地方貯金局は、それよりも7年前にできた合理主義の建築であり、美術館と文学館に転用されるのにふさわしい貴重な建物である。
 しかし、創建から67年が経過し、地下室などが傷んでいる。さらに耐震補強の問題や、芸術・文化施設としての設備の充実が課題になっている。小樽では小樽地方貯金局をはじめとする歴史的建物とまちなみを後世に伝えるために、国の制度と法律の活用について検討を始めたところである。
 個人的には伝統的建造物群保存地区制度と、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(愛称・歴史まちづくり法)による国からの支援と経費補助を得て、保全と活用を図れるのではないかと考えている。
 計画、実施までには数年かかる見込みだが、現在、市立小樽美術館では外部から借りる作品を展示するために、室内環境を一定に保つ設備が必須となっている。かつて市民の呼びかけで開館した経緯もあり、著名な作品を直近で鑑賞するために設備費用の一部をクラウドファンディングで募ることも一案である。
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