miss pandora

ONE KIND OF LOVE

愛にはいろいろ種類があるの
全部集めて地球になるの

『初拉麺と 』

2022-01-07 15:04:59 | 詩文 マミーズモード
『初拉麺と 』

登場人物

すみれ 22才 大学生文学部哲学科・一人暮らし 身長157㌢
私   57才 カールのロングヘア・すみれの母 身長162㌢
オーサー58才 フィンランド出身 身長187㌢ プラチナブロンドのマッシュルームカット コイン入れを持っている 日本語堪能だが英語が出来ない
雅代  67才 オーサーの新妻 亡くなった前夫の子供3人にオーサーとの結婚を祝福されていない。 アイブローとアイラインを刺青してノーメイク。156㌢艶々のショートヘア。日に焼けた手にオニキスの四角い指輪他銀の指輪。長財布と手帳を持っている。
店員 28才 店のユニフォームを着こなしてキビキビ働く女性

三浦半島の保養地 正月3日

私 すみれ、もう自分で作ったお節料理飽き飽きしちゃったから、ランチに中華屋さん行って、餃子とラーメンのセット食べない❓
すみれ いいね、私もそう思ってたけど、好好堂まだお休みじゃない❓
私 昨日ね、ネットで調べたらもう昨日から開店してるんだって。働いている人の味方よ。
すみれ わぁ、そうなんだ。じゃぁ、ランチタイムの常連さんを避けて早めに行こうよ。
私 そうしよう!

二人は、11時に祖母のアパートを出る。

日差しの強い外は、風が吹くとキリッと寒い程度でスキップギャロップの春を現すような足取。
好好堂は、よい具合に2人席が空いていた。

店員 どうぞ、お好きな席へ♪

二人は、入口付近の2人席を確保してコートを脱いだ。楽しくてとても安いメニューを覗きながら、違和感のある60㌢隣の4人用席をチラ見した。そこには、仲良し?しかしない形態でびちびちふっついて並んで座っている凸凹カップル(雅代とオーサー)が居る。

私 好好セットのミニで
すみれ 好好セットのレギュラーで
私 ビールはありますか?
店員 ビールは中ジョッキの生だけになります。
私 では…ビールは無しでお願いします。(ジョッキ重さを想像してやめる)

こんな会話に紛れて、60センチ隣の仲良し席から意外にも日本語が聞こえてくる。男はソファ席側でも可哀想なほどの大男でジーンズで包んだ長い脚や大きなスニーカーをやっとテーブルの下に収納して、妙齢の御婦人の説教に消極的に相槌を打つ。

雅代 だから、私の子供は、私が生んだ子供だから決して縁を切ることは出来ないでしょう。あなたが受け入れてもらうには、あなたの努力しかないのよ。心を込めて努力して努力して、伝えていくしかないのよ。
オーサー ボクハ、努力シテイマス。
雅代 それが足りないの。足りていないから認めてもらえないの。あなたは、外国人だから、もっともっと努力して働かなくては通じないの。

私 うぁ、安定の優しいスープ! 美味しいな。
すみれ 餃子のタレふた皿作るねー
私 うん、酢多めにして下さい。(ぁぁ、ここで思いっきりラーメンを啜ってみようと思ったけど、隣が説教され中のオーベイ人だし、やりづらいなぁ)
すみれ 小樽の五香の謎タレ風にしたいけど、あれは酢で練った粉辛子ないと無理だねー。餃子も違うから、まぁいっか。
私 美味しい美味しい

店には、默食のポスターがあり、なんとなく目だけで私とすみれは話す

雅代 みんなね一生懸命働いて家を買って、そしてまた働いて働いてその家のメンテナンスしているの。私のお祖父さんの代であの家を建てたけれど、戦後間もない話よ。相続した叔父がボロボロにしちゃって、維持出来なくなって、それで売りに出したの。私の母がたった120万円で売りに出された思い出の家に心を痛めて…父が買ったのよ。家と言うより小屋よ。そして働いて働いて自分のお金で改築して、また改築して、家ってそう言うものなの。。。
オーサー うんうん (少しウワノソラ)
雅代 だからあなたも働いて自分で稼いだお金であの小屋を改築するべきよ。コツコツと働いて貯金して、そう言うあなたのお金で小屋を改築出来たら、子供たちも納得するしわかってもらえるの。
オーサー うーん…
雅代 そうあなたは、外国人よ。だれが見てもね。でもそれを理由に外人だから受け入れて貰えないとかって逃げていたらダメなのよ。ほら、今あの小屋の査定ね、いくらだったかしら…670万円…(ゴソゴソとハンドバッグを漁り、メモ帳を見つけてテーブルに出す)ほらっ、ここにちゃんと書いてあるわ、670万円。祖父も商売が上手くいかなくなって、家がどんどん荒れていって、そして親戚やご近所に悪く言われて、辛かった時があったって聞いたわ。それでも歯を食いしばって、働いて働いて少しづつお金を貯めて、家のメンテナンスして、その努力がみんなに伝わったとき、はじめて周りのみんなが受け入れてくれたのですって。家ってそういうものなのよ。。。

雅代の日本語の説教は、私とすみれがラーメンと餃子とチャーハンをほぼ食べ終わるまで続いた。私とすみれは、なにか別テーマの話をしようと努力していたが、自分の咀嚼音をはるかに超えて雅代の説教が聞こえるので、少しオーサーが可哀想になった。このような内容の話が自宅で出来ないから常連さんが来る前の中華屋は最適だろうよ、と納得する。

雅代 そろそろ出ましょう
オーサー (コインケースをリュックから出す)
雅代 あなたお金ないでしょう。消費税だけ頂くわ。(レシートを見ながら、きっちりお金を揃えて、オーサーに渡す)
オーサー (ダウンジャケットを着て、雅代からレシートとお金を受け取り)
すみません (と、私とすみれへ言って、レジに立とうと一歩踏み出す)
雅代 私に何かご馳走したい気持ちがあるなら、この後でコンビニの100円コーヒーをご馳走して。あなたにその気持ちがあるならね。
オーサー (会計でお金を払う。俯き過ぎて、窪んだ眼窩に埋まった目が何色かもわからない)ご馳走さまでした
店員 ありがとうございました、またのご来店をお待ちしていまーす
雅代 (すっくと立ち上がり、先に店を出る)

すみれ (目をパチクリ)なーに? びっくりした。ここっていつも何かしらカルチャーショックあるけれど、相席以来のショックだ。なに?なんなのー?
私 (レジを済ませて店を出て)ばかだね、すみれ。あれは劇団よぉ。あははは
すみれ はぁっ?お正月に? お金持ち町の中華屋さんは、お正月にサクラの劇団雇うの?!あはははっ、あはははっ…やるねぇ…!
私 当たり前でしょ。絶対忘れない日になるようにお願いされたってわけ。あの劇団員迫真の演技だったわ。ちなみに怖くてなに食べてるのか見れなかったんだけど、見た?
すみれ いやいや、私は斜め向側席だったから、目があったら心臓止まりそうで、見れなかったよ。ブルブル
私 謎の彼氏は何処の国の人かね
すみれ きれいなプラチナブロンドのマッシュルームカットだったよね。アメリカ人じゃない
私 うぁ、あの髪はウィッグよ。
すみれ えっぇー?!
私 だって劇団員でしょ。小物は重要よ。あはははははっっ!そうじゃなかったら、男の人可哀想すぎない?
すみれ ずっと日本語だったから、それが解る外国人だったら…日本でお金に困ることないと思う…小屋って言ってたのは、あのおばさんがアトリエに貸してたとか、あの人はアーティストだったとか? 
私 劇団だからね、コンテンポラリーな…
すみれ あはははあははは…そう言うこと?!! あはははっ

店を出るとすぐ側の神社から、法螺貝が響く

すみれ 生法螺貝の音だね、初めて神社で吹く法螺貝の音きいた
私 そうだね、この法螺貝って何回か鳴ってるけどどういうタイミングなのかな? お腹いっぱいだから、ちょっとお散歩してから帰ろう。
すみれ うん、海じゃなければ付き合うよ。
私 どうして海嫌なの?
すみれ 靴が…砂苦手な靴なの。
私 そお…じゃぁ、行ったことない山コースにしよう。今度はいつ劇団に出会うかなぁ…
すみれ えっつ!!あはははっ

二人は山コースに向かう。すみれは時折キョロキョロする。
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