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最近、セシウムもカリウムも放射線を出すものだから、どちらも同じである、という暴論にも似た話が出回っていますが、両者は著しく違います。
そもそも人体はナトリウムとカリウムで塩分濃度の調整を行っています。
Na+/K+-ATPアーゼ(英: Na+/K+-ATPase, NAKA)は、2種のサブユニットからなる細胞膜輸送系の膜貫通タンパク(EC 3.6.3.9)である。この酵素は、細胞内でのATPの加水分解と共役して細胞内からナトリウムイオンを汲み出し、カリウムイオンを取り込むのでナトリウム-カリウムポンプ(Na+/K+ポンプ)または単にナトリウムポンプ(Na+ポンプ)とも呼ばれ、ヒトのすべての細胞でみられる共通の構造です。
カリウムは体内において、ナトリウムと共に細胞内外の浸透圧維持、エネルギー代謝、筋肉や神経の伝達、特に心筋において非常に重要な働きをしています。
カリウムは体内からナトリウムを排泄する働きがあり、高血圧の抑制に効果があります。また、カリウムを摂取する事で、脳卒中や糖尿病など生活習慣病の予防や、筋肉反射の向上、脳への酸素供給促進、利尿作用によるむくみの解消などに効果があります。
逆に不足すると、高血圧、糖尿病、不整脈、筋肉反射の低下、神経障害、ストレスの増大、むくみ、肌荒れ、消化不良など身体全体のバランスが崩れてしまいます。
ストレスを感じている方、お酒を飲む方、大量に汗をかく方、甘いものが好きな方はカリウムが失われやすいので、補給を心掛ける必要があります。
ところで、カリウムの放射線について説明します。
以下、東北大学臨床教授の岡山博氏の文章よりお借りします。(強調、筆者)
体内カリウムの放射線
カリウムは動植物の体内に多く存在し、細胞機能にとっ基本的で重要な物質です。
大部分は水に溶けて存在し、動物では細胞内液には細胞外液のセシウム濃度の20倍以上の濃度で保たれています。人間の体重の約60%は水で、細胞内に40%、細胞外に20%存在します。
細胞内外の水の量と、細胞内外のカリウム濃度はそれぞれほぼ一定に保たれているので、体全体のカリウム量も一定に保たれていることになります。
地球上のカリウムには1万分の1の放射性カリウムが均等に混じっています。
生体内には一定量のカリウムが存在しますから、人は必ずカリウムによる放射線の内部被曝を受け続けています。生体内の放射能のほとんどはカリウム由来で、60kgの成人では総量3000~4000ベクレルで、無視できるほどは少なくはありません。
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この部分についての誤解が出回っており、セシウムを摂取しても大丈夫だという意見が出回っているようですが、
生体内でカリウム濃度は通常は15% 程度の変動範囲内に調節されています。
食物に含まれるカリウム摂取が余分なときは尿として排泄され、摂取量が少ないときは、尿中カリウム排泄を減らして、体内のカリウム濃度を保ちます。
腎不全でカリウムを十分排泄できず体内にカリウムが増えすぎたり、食事をとれないなどによって長期にカリウム摂取が減ると、心臓が止まるなど重大な障害を生じます。
「カリウムには放射能があるから、どんな食物にどれくらいのカリウムがあるかを知り、摂取量を下げよう」と考える人がいますが正しくありません。
カリウムは生体にとって絶対に必要な物質で、体内の量は一定に保たれていますから、普通に生活している範囲では食物摂取によるカリウムは沢山摂っても、減らしても、体内のカリウムとカリウムによる放射線被曝は変わりません。
放射能セシウム汚染食物などを介して、体内に少量の放射線セシウムがあった場合、カリウムはセシウム放射線より高レベルであっても、カリウムを飲食すると、余分のカリウムは尿に排泄され、この時セシウムも一緒に排泄される傾向があり、カリウムは一定に保たれ体内セシウムを尿に排泄する効果があります。
カリウムは放射能があるからと考えて、カリウム摂取を減らしてしまうと、尿中排泄カリウムが減り、体内のカリウム量は下げずに、セシウムの排泄を遅らせて、生物学的半減期を延長させ、その結果、セシウムをより長期に体内にとどめることになります。
なお、カリウムを多く含む食品は下記になります。
果物類
この中で日々、カリウムを含む食品も摂取しましょう。 なお、くれぐれも産地などには気を付けて下さい。
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