一度は収束したかと思われた森友学園問題だが、財務省による森友文書書き換え問題の発覚により、安倍首相退陣を求める声が広がっている。

 9月に再選されれば在職歴代最長も視野に入る安倍首相だが、今回のスキャンダルでついに長期政権も終了するのではないか、と海外メディアは報じている。

◆政権崖っぷち。今度は本当に終わり?
 CNBCは、これまで様々な危機を乗り越え、安倍首相は常にしっかりと権力を握ってきたと述べる。

 しかし、NHKと読売新聞の調査では、森友文書書き換え事件により、政権の支持率が低下していると指摘し、縁故主義疑惑と結び付けられることで、首相の3期目はなくなるのではないかとしている。

 キャピタル・エコノミスト社のMarcel Thieliant氏は、これ以上支持率が落ちれば、首相は次の総裁選には出馬しない、

 または敗北するかのどちらかだろうと述べている。

 ブルームバーグも、今回のスキャンダルは早々には消えないと見ている。

 2週間前には在職期間歴代最長の首相となるのは固いと見られていたのに、今では政権を守るのに必死だとし、あっという間に立場が悪くなってしまったとしている。

 また、アベノミクスを歓迎した経済界からも批判が出ていると述べ、経済同友会代表幹事の小林喜光氏が、文書書き換えを「民主主義にとって非常に重要な問題」と述べ、民間企業ならやめるところだと、麻生財務相の監督責任に言及したことを紹介している。

 アナリストの間でも、スキャンダルが財務省内に留まれば安倍首相は安泰だが、これ以上広がれば、首相と自民党の地位が揺らぎかねないという意見があるという。

 ブラウンブラザーズハリマン証券のストラテジストも、スキャンダルは政権支持への重しとなっており、中国や北朝鮮への強い態度で安倍首相が得た人気も失われつつあると見ている(マーケット・ウォッチ

◆アベノミクスも終了か?待つのは円高
 CNBCは、安倍首相が退陣した場合の日本経済の行方を懸念し、日本再生を助けたアベノミクスに支障をもたらすと指摘する。

 政治リスクコンサルタント会社Teneo Intelligenceのトバイアス・ハリス氏は、首相が任期を満了して退いた場合、アベノミクスを継承する後継者へのサポートをすることができるが、途中退陣となった場合、強い関与はできないだろうとしている(CNBC)。

 マーケット・ウォッチは、安倍首相退陣となれば、アベノミクスが終わるかもしれないと見ている。

 そしてアベノミクスの量的緩和がもたらした円安から、円高に戻る可能性を指摘している。

 一方、フィナンシャル・タイムズ紙は、投資の観点から、安倍政権退陣でも1年前に比べればそれほどダメージはないという意見を紹介している。アベノミクスは投資テーマとしてはアクティブな魅力はすでに失っているうえ、グローバル経済のおかげで景況感は良いし、2018年度の予算も決定し、黒田日銀総裁の2期目も承認済みだ。

 日本経済は、株式ファンド、ウィズダムツリー・ジャパンのジェスパー・コール氏に言わせれば、「自動操縦モード」にあり、すぐには変わらないという見方のようだ。

◆挑戦者は実質なし?結局続投も
 ロイターは、岸田元外相、石破元防衛相が後継者と見られているが、どちらも安倍首相チームと同等のスキルで官邸パワーのレバーを引く資質はなさそうだというアナリストの意見を紹介している。

 結局以前の首相が次々と交代する回転ドア状態に戻りそうだと一部の専門家は指摘している。

 前出のコール氏は、党内に真の挑戦者はいないと述べ、安倍首相が再選されるのではないかとも述べる。

 これからの数週間が、安倍首相にチャレンジするには絶好の時期だが、だれもそれができるだけの首尾一貫した戦略をまとめていないため、結局出て来ないと予想している(CNBC)。