(本頁は「・・・花図鑑(2)初夏続き」の続きです。)
【盛夏編】
七月になると、大焼砂ではコマクサが見頃を迎える。
大焼砂のコマクサ群生。 2017/07/10
大焼砂のコマクサ群生。 1980年代、撮影年月日は不明。
大焼砂のコマクサ群生。右上の残雪をご記憶下さい。 2017/07/10
コマクサ Dicentra peregrina 2017/07/10
コマクサが自生するのは、
東北では岩手山と秋田駒、蔵王の三箇所のみ(尾瀬・燧ヶ岳も加えると四箇所か)。
株の大きさとトータル量では岩手山の方が勝っているが、
残念ながら他の植物と混生している(こちら参照)。
コマクサが単独で、しかも密に群生している点では、秋田駒の方が素晴らしいかなと思う。
七月はコマクサの他に、小岳や女岳斜面のチングルマも素晴らしい。
それを見るためには、ムーミン谷(馬場ノ小路)に下りる必要がある。
小岳斜面のチングルマ群生。 2017/07/10
チングルマのこの群生は三枚目写真の右上に見える雪渓の下、木道近くに発達したものである。
チングルマ Geum pentapetalum 2017/07/10
場所によっては、下写真のようにイワカガミも混生している。
イワカガミ Schizocodon soldanelloides とチングルマ。 2017/07/10
ミヤマキンポウゲ Ranunculus acris var. nipponicus 2017/07/10
(右上)カラマツソウ Thalictrum aquilegifolium var. intermedium 2017/07/10
カラマツソウは八幡平では多いが、秋田駒では少ないように感じる。
個人的にはムーミン谷の底部で見かけた。
シラネアオイ Glaucidium palmatum 2017/07/10
シラネアオイは新道コース、しゃくなげコースではほとんど見ないが、
ムーミン谷の奥地、男岳斜面に群生している。
この場所は雪消えが遅いせいか、盛夏に咲く。
古い時代(約40年前)の記憶だが、男岳の西斜面に大群生があったように記憶している。
馬ノ背の稜線に上がると・・・
イワヒゲ Cassiope lycopodioides 数は少ない。 2017/07/10
(右上)マルバシモツケ Spiraea betulifolia 2017/07/10
ハクサンシャクナゲ Rhododendron brachycarpum 2016/07/10
七月の秋田駒には、花に関して大きな見どころが三つある。
ひとつ目は大焼砂のコマクサ、二つ目はムーミン谷のチングルマ、
そして三つ目はあちこちに生えているエゾツツジだ。
エゾツツジは名前からもわかるように北海道に多い花で、本州にはごく少なく、
秋田駒は分布の南限にあたる(厳密にはもう少し南の和賀山塊でも発見されたとのこと)。
南限だから、細々と生育していると考えたら大間違い。
全山至るところ(と言っても高い場所だけ)でドミナント(優占種)になっている。
平らな草叢から、岩場までびっしり生えているので、
秋田駒ヶ岳から蝦夷躑躅ヶ岳とでも改名したくなるほど。
ツツジとは言っても、背がとても低く、蕾の形もずんぐりしている。
よく調べると普通のツツジとはいろいろ違うところがあるようで、最近は別属に分類された。
エゾツツジ Therorhodion camtschaticum 2017/07/10
エゾツツジとミヤマダイコンソウ。 2017/07/10
エゾツツジは、秋田駒では、ミヤマダイコンソウと一緒に生えている。
このような組み合わせは、他の山では見たことが無い。
ミヤマダイコンソウ Geum calthifolium var. nipponicum 2017/07/10
ミヤマダイコンソウを私は奥羽山系では焼石岳、日本海側では朝日連峰で見かけたが、
それほど多くない。しかし秋田駒では何故だろう。
異常なまでに多いと感ずるのは私だけだろうか。
アカモノ(イワハゼ) Gaultheria adenothrix 2017/07/10
(右上)オノエラン Orchis fauriei 2017/07/10
オノエランは栗駒山、焼石岳など奥羽山系には多く、秋田駒や乳頭山でもよく見かける。
ムシトリスミレ Pinguicula vulgaris var. macroceras 2023/06/26
ムシトリスミレに黄色いスミレ(キバナノコマノツメ)が混生。 2017/07/10
ムシトリスミレは前出のタカネスミレなど四種類とは違い、
食虫植物のタヌキモ科である。
時間が有ったら食虫の様子も観察してみよう。
阿弥陀池の周りの平らな湿原に多いが、男岳では垂直の岩場にもへばり付いている。
コバノイチヤクソウ Pyrola alpina 2017/07/10
(右上)ベニバナイチヤクソウ Pyrola asarifolia subsp. incarnata 1980年代、撮影年月日は不明。
イチヤクソウの仲間は他にカラフトイチヤクソウも見かけている。
いずれも数は少ない。
「・・・花図鑑(4)盛夏2」へ続く。
秋田駒ヶ岳大好きの私としては、実にうれしいシリーズ記事です。ありがとうございます。
秋田駒は花の種類が多いのでまだ半分にも達してません。
七巻(頁)の予定です。
引き続きよろしくお願いいたします。