鹿児島県湧水町にある霧島アートの森で「ナムジュン・パイク展」が12月3日まで開かれています。
霧島アートの森は九州自動車道の栗野インターから車で約20分、自然いっぱいの栗野岳の中腹に位置しています。広い敷地内に点々とアート作品が展示された野外美術館で、特別展や常設展などを行う建物棟・アートホールも備えています。1日ゆったりと過ごせる施設として人気があります。
ほぼ3年ぶりに訪れたのは、まだ実物を観たことのなかったビデオ・アートの父といわれるナムジュン・パイク展が開かれていたからでした。
パイク氏は1932年韓国で生まれ、東京大学卒。ドイツに渡り音楽家のジョン・ケージらと交流、国際的な芸術運動「フルクサス」に参加。63年には世界初のビデオ・アート作品を発表しました。その後もメディアやテクノロジーを使ったインスタレーションなど多くの作品を残し2006年アメリカで逝去。
会場にはいくつものブラウン管のモニターを使った「ケージの森/森の啓示」をはじめ、さまざまなビデオ作品、現代美術のヨーゼフ・ボイスと関わった作品、ドローイングなどパイク氏が歩んできた道をたどる貴重な作品が展示されています。
意表をつく作品など存分に楽しめましたが、会場をめぐりながら、メディアと個人の関わり、記憶性、表現の可能性などいろいろなことを考えさせられました。また、このアーチストには音楽や文学などを融合させる自由なパワーと深い思索、繊細で詩的な感性を感じ、新鮮な刺激を受けました。
パイク氏没後10年が過ぎました。この間を振り返るとインターネットを利用したメディアの進展ぶりは目を見張るものがあります。これからの世界はどんなふうになっていくか、そんなことも思わせる展覧会でした。
ナムジュン・パイク展会場