日田市議会12月定例会。
一般質問、議案質疑、委員会での議案審査とそれぞれに全力を尽くしました。さらに、閉会日は、討論を行いました。
12月定例会には、大分県教職員組合日田支部執行委員長を請願者とする「教職員が保護者や地域とつながり、地域に根ざした学校教育活動ができるための環境づくりに係る意見書の提出を求める請願」が付議されました。
「教育の継続性、効果的な教育活動、保護者や地域と学校の連携、教職員の労働安全衛生等の観点から、頻発かつ行き過ぎた広域異動は行わないこと」「新採用教職員に対する人事地域間異動や学校事務職員の勤務替えを短期間で行わないこと」について、意見書を提出してほしいとの請願でした。
紹介議員は、党派こそ異なれ、常に日田市の向上、発展についての意見交換を行い、共に現地に足を運び、私が最も信頼する議員の一人です。私は、市に関する内容に、イデオロギーは一切関係ないと思っています。だからこそ、心苦しさがありましたが、私なりの筋を通したいと考え、この請願には反対の立場を取り、討論を行いました。
請願の要旨に示された内容には、子供を学校に通わせる保護者の立場として、十分理解できるものがたくさんありました。また、紹介議員が、議会運営委員会に、現場の実態を示した資料を提示しており、個人的な心情としては、むしろ請願内容通りだと思える部分もありました。
しかし、県の中心部から見た時、周辺部の自治体となる日田市の教育水準の維持向上には、広域人事異動という仕組みが必要です。そして、その意見を本会議で述べる必要があると考え、討論を行いました。
ちなみに、この請願は、賛成10人、反対9人で採択されました。そして、意見書の提出を求める請願でしたので、改めて、それについても採決を行い、県や関係機関に対して提出することが決まりました。
県としても、総合教育会議での議論等を通じ、広域人事異動についての見直しを検討していることから、今、県などの関係機関に対して、意見書を提出するのは妥当ではないというのが、私の考えでした。
残念ながら、意見書の提出をストップできませんでしたが、私の討論全文をお示ししたいと思います。
【反対討論】
通告に基づき、請願第4号 教職員が保護者や地域とつながり、地域に根ざした学校教育活動ができるための環境づくりに係る意見書の提出を求める請願について、反対の立場から討論を行います。
学校が保護者や地域とつながり、ともに知恵を出し合い、一緒に協働しながら、子どもたちの豊かな成長を支える「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みとして、大分県内ではコミュニティ・スクールが推進され、日田市でも平成28年度に導入されました。また、学校現場の環境の整備、教育人材の育成・確保が求められ、少人数学級の推進やスクールソーシャルワーカーなど専門支援員等の拡充、部活動指導員等の制度化などの新たな人材支援が進められております。
さて、大分県教育委員会では、平成20年の教員採用選考試験等に係る贈収賄事件を受けて、大分の教育に対する信頼回復、再生に向けた改革に取り組み、平成24年度からスタートした芯の通った学校づくりの取組みと合わせて、広域人事異動を開始しました。
私は、広域人事異動という制度のそもそもの目的は、教員の均質な配分を通じた教育の機会均等であると理解しています。大分県における広域人事異動は、①教員という人材が大分市を中心とした都市部に偏在している中、全県的な教育水準の向上を図る ②採用から早い時期に、異なる環境で多様な経験を積ませ、若手職員の人材育成を図る ③長期間にわたる同一地域・同一教育環境の中では生まれない教職員の意識改革を図る、の3つの観点からの取組みとなっています。複数勤務地の経験は、キャリア育成においても大事な取組みであると考えます。その成果として、周辺部の市町村の教員確保に繋がり、正規教員の確保による臨時講師比率の格差が平成20年度には27%と最大であったものが、令和2年度には7.4%にまで縮小し、教育人材の地域間格差は是正されてきました。
提出された請願の件名は「地域に根ざした学校教育活動ができるための環境づくり」であります。しかし、その内容は、教職員と子ども、保護者、地域との関係の希薄化、学校の避難場所としての役割、教職員の異動の負担、教職員志望者の大分県での受験敬遠などを理由とした広域人事異動の見直しを求めるものとなっています。
新採用から概ね10年以内に3つ以上の人事地域で勤務するという大分県の広域人事異動には、将来的な大量退職時代を見据えた若手職員の人材育成という目的もあったと考えます。本請願を審査した議会運営委員会では、紹介議員から、日田市の教職員の実態調査の結果が示され、年齢層や10年後の傾向予測を分析するとともに、広域人事異動の課題が指摘されています。これは、現場の実態であり、貴重な資料であることは、十分認識しています。実際に、日田市においても、50代以上のベテラン教員及び大量退職に伴う採用増による20代の若手教員の割合が高く、必然的に広域人事異動の対象者が多くなることから、教育現場の管理、人材育成、子どもたちへの教育・指導とあわせて、若手教員をどう育成するか、10年3地域の制度をどのように活かせるかのマネジメントが難しいとの声を伺います。
一方、大分県教育委員会では、平成27年以降、これまでに「2地域目以降の異動年数を原則3年から原則4年に変更」「臨時講師経験、他県での教諭経験を1地域としてみなす」など、異動ルールの見直しを行い、教職員の結婚や育児、介護などの個別事情にも十分配慮しながら、広域人事異動を進めたいとする方針を示しています。さらに、大分大学によると、本年3月に教育学部を卒業した学生のうち、県内出身者は全員が大分県の採用試験を受験しているとのことです。
先の第4回定例県議会の一般質問に対する答弁で、広瀬知事は、「周辺部の市町村教育委員会からは、教育水準の維持向上には広域異動が必須だと聞いている」「他方、10年の間に広域異動を繰り返すことは、教員への負担が大きいという意見があることも耳にしている」「広域異動の制度を維持しながら、教員の負担感を軽減するよう、改善する必要があるのではないか」「教育委員会には、教員の人材確保のため、教員の負担軽減の観点も踏まえつつ、市町村教育委員会の意見も聞きながら、魅力的な職場環境の構築に向け検討を進め、できるだけ早く結論を出してもらいたい」と述べ、岡本教育長も「来年1月に予定する市町村教育長会議を皮切りにできるだけ早く検討を進めたい」と述べました。
県内すべての子どもたちが等しく一定水準の教育を受けられる環境を作っていく、すなわち、教育の機会均等を図り、守るためには、一定の広域的な調整としての広域人事異動は必要だと考えます。もっと早く、教員の負担軽減の観点からの検討ができなかったのかという思いはありますが、今後は、大分県教育委員会が責任をもって、何らかの取組みを行うものと強く期待します。
したがって、私は、日田市議会として、大分県及び関係機関に対し意見書を提出することは、妥当ではないと考えますので、請願第4号に反対いたします。