物造庵 ものつくりあん ナラ(楢崎賢)

ものつくり人「ナラ(楢崎賢)」による
絵や作品の制作過程、自作詩の発表、その他徒然…

詩3709「のめのめ節」

2024年03月20日 20時09分26秒 | 自作詩
晴れたぞ船を出せ

アイルランドのおじちゃんおばちゃん
今日も朝から陽気な調子で歌ってる

大声張り上げ貝売り娘は
昔に死んだモリーお姉ちゃん化けて出た

酒も飲めねえダニーの坊やが
お前の母ちゃんデベソと言われて怒ってる

ジグのリズムであのこと踊れば
話す言葉は分からずとも咲く恋の花

タイタニックの三等客室
おらの仲間ら狂ったように踊り出す

波に揺られて生まれた船唄
国に残した愛しきあのこも泡となる

夜も更ければ飲み屋の中では
朝まで飲めやとのめのめ節を歌い出す

酒を飲め

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詩3708「恋人」

2024年03月20日 19時59分56秒 | 自作詩
僕には恋人がいる
美人でかわいくて
スマートでカッコ良くて
でも時々ブサイクで

笑ったり泣いたりする
怒ったり暴れたりする
髪乱して踊ることもある
ただじっと座っていることもある

とても優しい時がある
とても厳しい時もある
どんなに絶望的な時でも
必ず少しの希望をくれる

恋人とセックスをする
キスをしたり抱き合ったりする
手が触れるのをためらった後に
突然乱れたりもする

恋人はおおらかである
僕の他にも恋人がいる
せいじという男の子や
リカっていう女の子や

恋人は愛されている
子どもからお年寄りまで
呼ばれたらどこにでも行く
向こうから寄ってくることもある

恋人は歳をとらない
いま何歳かもわからない
恋人は決して死なない
僕が死ぬまでそばにいてくれる

僕には恋人がいる
君にも恋人がいる
誰にも恋人がいる
ほら今ここに恋人がいる
今すぐそばに恋人がいる

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詩3707「黄金の鉄クズ」

2023年01月10日 19時57分42秒 | 自作詩
プラチナの針をつけて
銀の腕下りてゆく

黄金の音を鳴らし
眠る街叩き起こし

落ちてゆく
快楽の地

今ここにあるから
他にはいらないよ

素晴らしい仕事捨てて
くだらない歌を歌う

鉄クズをかき集めて
黄金の音を鳴らす

落ちてゆく
修羅地獄

今生きているから
明日はいらないよ

落ちてゆく
享楽の地

今ここにいるから
もう何もいらないよ

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詩3706「おもちゃの夢」

2023年01月10日 19時55分05秒 | 自作詩
壁の隙間に
開いた穴から
西日がひとつ
差し込んでいた

壊れて錆びて
電池が切れて
もう動かない
過去の面影

ああ僕の
友達だった君だけ

もしも願いが叶うのなら
子どもみたいに遊びたいな
錆びて動かない身体でも
君を笑わせるから

あの日に聞いた
静かな歌が
ドアを閉ざした
終わりの合図

暗い部屋には
淡雪に似た
ホコリを飛ばす
風待ちの夜

ああ僕は
まだ君に言えない

もしも願いが叶うのなら
最後にも一度会いたいな
壊れてしまったこの声で
さよならを歌うから

もしも願いが叶うのなら
子どもみたいに遊びたいな
錆びて動かない身体でも
君を笑わせるから

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詩3705「夏のスパイス」

2023年01月10日 19時53分17秒 | 自作詩
ブラウンマスタード弾けたら
生姜とガーリック摺入れる
網戸にとまるセミも汗をかく
玉ねぎを切って投げ入れて
狐に変わるまでただ混ぜる
名前も知らぬ歌を口ずさむ

人生は強火がいいね

自転車を漕いで汗かいて
知らない街にたどり着く
吸い込んでいる夏と街の匂い

迷い道は楽しいね

ああ生きている

お鍋に水入れて鶏ガラで
のんびり煮出して命の香り
海の向こうの空を思い出す
クミンにチリペッパーカルダモン
世界を包み込むコリアンダー
君はわがままで僕は君が好き

やりたいことは全部やる

ああ食べてやる

ああ生きている

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詩3074「ぬか漬け」

2023年01月10日 19時51分06秒 | 自作詩
ぬか漬けを混ぜたあと
君のこと忘れたよ
二人で詰めた宝箱
頭の中に開いた穴の中

夏の始まりに思い出す
南風に乗った鳥の声
潮騒にはしゃぐ子どもらは
自分が誰かも分からない

君の香りを

ぬか漬けを食べたあと
君のこと思い出した
奥まで染みて離れない
ぬか漬けと君の香り

忘れられない

ぬか漬けを混ぜたあと


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詩3703「酔いどれスローダンス」

2023年01月10日 19時48分50秒 | 自作詩
今日のお仕事も終わったよ
一生懸命やっつけて
あとはすべてを忘れよう
これからが一日の始まりだ

この道の角っこの行きつけで
とりあえず一杯をひっかけて
大将の話にうなずいて
揺れるネオンサインを眺めてる

酔いどれたこの街が大好きさ
明日のことは傍に置いといて
酔い潰れたら愛しいあのこと
も一度夢の中で踊るのさ

名前も知らない飲み仲間と
今日もバカ話で盛り上がる
余興で歌うふるさとの歌
歌い終わる頃には6杯目

夜のとばりに溶けてく口笛と
ゆらゆら歩くリズム混ざり合う
路地裏に誘われてドア開けて
あれ そういえば次は何杯目

酔いどれた足取りで踊り出す
街が歌うメロディの波に乗る
ちかちかネオンの灯が照らしてる
夢の中まで続くこのダンス

いつか終わりが来るのだから
終わらないこの夜に酔いしれる
千鳥足で夜空見上げたら
のんびり朧月も踊ってる

酔いどれて何かを忘れるなら
あの日の涙酒に流したい
出会いも別れも全部消えたなら
歌と笑い声だけ残るのに

酔いどれたこの街が大好きさ
明日のことは傍に置いといて
酔い潰れたら愛しいあのこと
も一度夢の中で踊るのさ

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詩3702「チリン」

2022年07月30日 09時59分33秒 | 自作詩
白いカーテンにつかまるバッタはこの広い世界でただひとり緑
真夜中よりずっと静かな真昼の光の中でとにかくひとりただ緑
世界とつながるというこの箱はやはり幻だったから
バッタの他に誰もいない部屋で僕はただひとり 緑

胸も背中も締め付けられたあの想いはもう何年前だったかな
心も枯れ果てて10年 いや20年はたったかな
今でもまだ指先に残るあなたの頬の熱
夜の暗がりに浮かび上がっては消えていくだけ

もういない
あなたに
届かない
言葉
探せない

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詩3701「からみつく」

2022年07月30日 09時58分09秒 | 自作詩
磯の匂いが鼻につく港の淵から上がってきた蛸の身体のような粘性の強い指が
絡みついてくる 身体の隙間まで

くねくねと曲がりくねるアマゾン川の流れに似た蛇の身体のようなざらついた肌のその腕が
絡みついてくる 心の隙間まで

ぐるぐると渦巻き続ける世界の絶望の陰 殻を打ち破ったかたつむりのような身体で僕に
絡みついてくれ 全て忘れさせてくれ

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詩3700「行進マーチ」

2022年07月30日 09時56分43秒 | 自作詩
いつの間にか生まれていつの間にか食べたり飲んだり歩いたり
いつの間にか歳をとっていつの間にか死んじゃうなんてつまらない

行進だほら行進だ 世界の果てまで見に行こう
行進だほら行進だ 今すぐ

僕の命 僕にあげる

君のために誰かのために世界のためにお金を稼いでも
お金はただの幻だから世界の誰一人も救えない

行進だほら行進だ 地獄に行くときゃみな手ぶら
行進だほら行進だ 今すぐ

僕の物は どぶに捨てる

歌いながら踊りながらお酒を飲みながら僕は歩いてる
藪の中もどぶの中も嵐の真っただ中でも笑ってる

行進だほら行進だ 死ぬまでどこまで行けるかな
行進だほら行進だ 今すぐ

僕の歌を きみにあげる

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