1993年、私は妻と一歳になる娘と共に、ロンドンへ向かうJALの機内にあった。
娘の事を思い、外国のキャリアではなく、JALにした私たち夫婦の気遣いを知ってか知らぬか、娘は穏やかな表情で眠っていた。
今回の目的地は、アーサー・ランサムの少年小説の舞台となった湖水地方(ピーター・ラビットの故郷としても有名)とネス湖である。アーサー・ランサム全集は、私が転校生としてイジメられていた時、二宮金次郎の様に小学校から自宅まで、歩きながら読み耽った本である。
ロンドン・ヒースロー空港に着き、タクシーでヒルトンホテルへ。
ヒルトンホテルと言っても、ピンキリである。そんなに豪華さは無いけど清潔なホテルであった。ホテルに着いて分かった事。イギリスは明日12/26が「BOXING DAY」だと言う。要は「12/25まで飾ったクリスマス飾りを箱にしまう日」。その為、全国の鉄道が止まってしまうのである。今日一泊して、明日鉄道で湖水地方に行こうと思っていた私たちのプランがガラガラと崩れ落ちた。
ホテルのカウンターに相談すると、ロンドンから500キロある湖水地方へはレンタカーしかないとレンタカー屋にあたってくれた。そして、有難い事に車の予約までしてくれたのだ。
翌朝、早くに起きてレンタカー屋へ。少し受付で並んだが、VOLVOのワゴン車を借りて、無事ロンドンを出発。郊外へ出るまでVOLVOは国産車より大きいので緊張したが、出てしまえば逆に安定感があって、頼もしい味方になってくれた。途中国道沿いのサービス・エリアで昼食を取り、500キロをひたすら走る。一人で運転しているので、最後の方は睡魔と闘いながら、運転。何度か、凍っている路面で滑りそうになりながらも、湖水地方の中心・ウィンダミアに到着。予約しておいたホテルに雪が積もっていて、「白いお菓子の城」に見える。娘は車中でも大人しい。
翌朝、アーサー・ランサムの著書にいちばん多く出て来る「ウィンダミア湖」と御対面。著書では「ハリハウ」という名前で登場する町から観光船に乗って、湖上遊覧。やっと憧れ続けた場所に来られた喜びに思いっきり浸る。
車でグラスゴーへ移動。ここも泊まりはヒルトンホテル。翌朝のバイキングでは「味噌汁」「海苔」「梅干し」「白米」など日本食のコーナーがあり、有難い。グラスゴーに日本企業が多いせいだろう。
ここから先は道が凍結している危険性もあるので、レンタカーを返して、電車で北上。目的地はネス湖観光の拠点・インバネスだ。インバネスで鉄道を降り、駅前に出るとすぐ左手にあったのが「カラオケ」という赤い提灯。日本の「カラオケ」がここインバネスにも進出していた。
ネス湖の観光はバスで。冷たい風が吹き荒び、木々がしなう様に低く生えている。
車窓から目を凝らしてネス湖の湖面を見据えるが、さすがに「ネッシー」は出て来ない。しかし、不気味な事に変わりはない。お土産屋でネッシーグッズを買い漁り、インバネスから電車でグラスゴーへ戻る。グラスゴーで一泊後、飛行機でロンドンへ。ロンドンの遊園地に行く。新年を迎えた。
ロンドンでフリー・アナウンサーの逸見政孝さんの逝去の報に接する。
帰路もJAL。しかもエコノミークラスに乗客を乗せ過ぎたのか、席のみ、ビジネス・クラスへアップデート。機内食はエコノミー。
娘は今27歳。このイギリス旅、憶えていないだろうなぁ・・・
(1993年)
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