日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 薬師堂通吉 Michiyoshi Katana

2017-07-10 | 
刀 薬師堂通吉


刀 薬師堂通吉

 修験鍛冶の影響は九州諸国に及んでいる。日向国の薬師堂は、京の歌人が病気平癒の祈願に訪れたという伝承があるように有名な修験行者の地。この薬師堂の門前辺りで刀を製作していたのが通吉である。銘に「薬師堂」と切り添えるという。地鉄は板目が流れて柾状に揺れ、地沸が付いて頗る古調。肌立つ風が強く、実戦の武器という印象がある。斬れそうだ。刃文は互の目。刃境が複雑で、沸付きやはり匂口が潤んだ態となる。日州通吉は伝説的な鍛冶であり、作品をほとんど見ない。本作は、そういった意味でも貴重な作例だ。70□





太刀 武州住照重 Terushige Tachi

2017-07-08 | 太刀
太刀 武州住照重


太刀 武州住照重

 戦国時代末期の武州下原鍛冶の照重。この一派にも地中に杢を配した鍛えがある。如輪杢などと呼ばれている。拡大写真でその様子が判ると思う。実際にはさらに綺麗な、杢目が密集した地鉄もある。本作などはかなり古調な綾杉の鍛え肌に見える。このような鍛えがいかに創案されたのか、あるいは何らかの作風を手本としたのか、興味深いところである。戦国時代であることから、斬れ味を高める目的があったことは確かだ。下原鍛冶の源流は相州鍛冶で、室町時代の相州伝が基礎にある。匂口が沈んで凄みがあり、いかにも打ち合いに強く、しかも切れそうだ。

短刀 月山宗近 Munechika Tanto

2017-07-07 | 短刀
短刀 月山宗近


短刀 月山宗近

 天正十一年紀の月山宗近在銘の短刀。穏やかに揺れる程度の綾杉鍛え。先に紹介した無銘の月山に比較すると戸惑うかもしれないが、明らかに奥羽の地鉄だ。造り込みを見ても研ぎ減りは判るが、茎の先端が張った独特の仕立て。揺れるような肌目に地沸が絡んで地景が穏やかに起ち、その肌目が刃中に及び、刃肌、ほつれ金線沸筋などを形成している。刃境の沸は地中に湯走りを成し、なかなか良い出来と言えよう。

短刀 月山 Gatsan Tanto

2017-07-06 | 短刀
短刀 月山


短刀 月山

 生ぶ茎無銘の短刀。古研ぎで、地鉄の様子が分かり難いところもあるが、綺麗な綾杉鍛えとなっている。現品を手にとって見てほしい作品の一つだ。刃文も特徴的な細い直刃で、綾杉肌によるほつれが刃先にまで現れている。50□


刀 月山 Gatsan Katana

2017-07-05 | 
刀 月山


刀 月山

 室町時代の月山在銘の刀。地中に杢目が連続して焼刃辺りで綾杉肌となっている。とても古調な、しかも綺麗な綾杉鍛え。こうしてみると、綾杉鍛えの本質が杢目の連続であることが判る。とはいえ、どのように杢目を連続させるのかは、刀工の秘伝と言われる。現代でも綾杉鍛えをする月山系の刀匠がおられるも、筆者は訊ねたこともない。不思議さが充満した技術であるわけで、知らない方が良いのかもしれない。地中の杢から変化した綾杉肌に目を奪われるのも良いが、刃中のこの綾織りのような複雑な景色に感動したい。これこそ奥羽鍛冶の魅力の一つだ。

刀 月山 Gastsan Katana

2017-07-04 | 
刀 月山


刀 月山

 横手筋を設けない冠落しの造り込み。凄みのある陰影だ。地鉄が凄い。いかにも実用の武器と言った様子で、截断能力の追求が窺える。棟重ね一分八厘に対して鎬重ねが二分四厘だから、断面が菱型。打ち合いにも強く、斬り込んだ刃の抜けも考慮されている。南北朝時代から室町初期の作だ。物打の焼刃が深く乱れが強いのは単なる焼刃の美観を考慮したものでないことは、想像できよう。疵気など全く気にしていない武器だ。綾杉鍛えが鮮明で、古調な映りが立ち、刃文は直刃で、鍛え肌と感応したほつれが働きとなっている。

刀 舞草 Mogusa Katana

2017-07-03 | 
刀 舞草


刀 舞草

 鎌倉時代の舞草の特徴が表れている作。地景を交えて大きく揺れる板目肌は、総体に良く詰んでおり、綾杉鍛えの上作と言い得よう。細直刃の刃境には肌目によりほつれが現れ、繊細に揺れて流れる。帽子も揺れて掃き掛けている。直刃だが、刃中にも肌目が現われており、ほつれ状の働きを成している。刃中の働きはそのまま帽子へと連続し、先端は掃き掛けが鮮明で丸みを帯びて返っている。



薙刀 宝寿 Hoju Naginata

2017-07-01 | その他
薙刀 宝寿


薙刀 宝寿

 鎌倉時代の薙刀。先反りが強く、いかにも掻き切る武器といった印象だ。鋒は、刃幅からもちろんもう少したっぷりとしていたと思うが、茎穴の位置や焼落としの様子から身幅が極端に減っているとは考えられず、古い薙刀の一面を改めて知った思いがする。地鉄は板目肌が大きく揺れて綾杉風になり、物打辺りは比較的穏やかな肌合い。刃文は沸の強い湾れに互の目交じり。刃中は明るく、これが奥羽の刀かという印象。中央と奥羽の作風の違いを比較し精査しなければならないと思う。