今月の始め、同級生女子と食事会をした。
男子も混ざる公の会合は年に2〜3回あるが
近年、男子と飲むのは面白くない。
地元に残っている男子といったら、大半が自営業の跡取り。
小さな田舎町の景気がどんなものかは言うまでもなく
どいつもこいつも酒量が増える一方で、うるさいったらありゃしない。
そんな男子に見切りをつけた我々女子は
数年前から月に1回のペースで食事会を行っている。
役員会と称した公の会合には一応参加するが
心は別の日に行われる女子だけの食事会に向けられており
話題はそっちの出欠や店選びだ。
その食事会で、けいちゃんがポツリと言った
「私、クリスマス・イブとクリスマスが休みやねん。
淋しいわ〜」
病院の厨房で一緒に働いていたけいちゃんは、バツイチの一人暮らし。
大阪暮らしが長かったので、大阪弁である。
「なんでそんな日に休み取ったん」
「たまたまやん」
「なら、24日に晩ごはんでも食べようや」
「ほんま?家族と一緒に過ごさんでええのん?」
「ええの、ええの。
よう考えたらイブに単独で外出したことないけど
子供らも親がいるような年でもないし、やってみたい」
「うれしいわあ」
話を聞いていたマミちゃんも参加したいという。
「どこも混んでるから、うちでクリスマス会やらへん?」
ということで、けいちゃんのアパートに集まることとなった。
当日、料理とケーキはけいちゃんが用意するというので
私は果物、マミちゃんはお菓子を持って夕方5時に集合。
サラダ、鶏の竜田揚げ、クリームシチュー、茶碗蒸しなど
心尽しの手料理がところ狭しと並ぶ。
初めてけいちゃんのアパートを訪れたマミちゃんは
新築のおしゃれな部屋に歓声をあげ
「離婚して一人暮らしした〜い!」
と口走る。
「けいちゃんは公務員だから住宅手当が出るけど
うちらはボロアパートしか住めんよ」
「あ、そっか〜!」
と言って笑う。
3人でケーキを囲み、ロウソクを吹き消すと子供に戻ったような気分だ。
「いつまでも、こうして仲良くしたいね!」
「お婆さんになってもね!」
「きっとよ!」
などとしみじみ言い合う。
話は尽きなかったが、一番盛り上がった話題はなっちゃんのことだ。
なっちゃんは、地元の小学校教師とお見合い結婚した同級生の女子。
ご主人はうちの長男が小学生の時、隣のクラスの担任だったし
役員でも世話になった、すごくいい先生。
裏表が無くて温かく、長男も大好きだった。
本当にいい先生だけに、妻が惜しい。
なっちゃんは悪い子ではないんだけど、自分も先生のつもりでいるのか
指図や命令が好きで、ちょっとしたことに引っかかっては人を叱る。
私なんか「さっきの発言だけど、あれはどういうこと?」
「ちゃんとしなさい」などと、しょっちゅう怒られている。
私は平気だが、怖がる者もいて
なっちゃんの出欠をたずねてから自分の出欠を決める賢者もいる。
しかしなっちゃんは、同級生の集まりがイノチ。
自分が行かなければ始まらないと信じている。
イノチであるからには、リサーチもしているわけで
呼ばれなかったことが知れると地獄絵図は間違いない。
幹事役の私はこの問題を解消すべく、食事会の2回に1回は
「ノーなっちゃんデー」を作ったところ、大盛況。
が、全く呼ばないとなると、いつか必ずバレるので
参加者の少ない「なっちゃんデー」も開催する。
私はなるべく隣に座って、命令されたり怒られる役になるのだ。
なっちゃんと皆のミゾは、埋められない。
彼女は中2で転校してきたからだ。
中途というのは、どうしても嫁みたいな微妙な立場になる。
中途の醸し出す遠慮に、生え抜きの配慮が添えられて
雰囲気が良くなるものだが
遠慮どころかセンターで仕切りたがると融合は難しい。
「今頃、なっちゃんは星のやじゃね」
私はふとつぶやいた。
食事会の途中、彼女は「注目!」と皆を鎮め
おごそかに言ったのだ。
「今年は京都、星のやデ〜ス!」
なっちゃん夫婦の結婚記念日はクリスマス。
毎年、この時期には夫婦で旅行する。
京都にある『星のや』という所は、渡月橋から舟で渡る豪華な宿だそうで
今年はそこに行くという発表なのだった。
「やっと予約が取れたの。
二泊!どう?うらやましがっていいわよ?」
「星のやはうらやましいけど、旦那と行くのは嫌じゃ」
ついそう言って、例のごとく厳しく叱られるワタクシ。
人の幸せを喜べないのは、いけないらしい。
「そうよ!なっちゃんは今頃、旦那さんと星のややわ!」
けいちゃんが叫ぶ。
「あんなヤツが!」
私も叫ぶ。
「クヤシ〜ッ!」
マミちゃんも叫ぶ。
「キ〜ッ!」
と言いながら3人で立ち上がり、レスリングの取り組みのように
手と手を合わせてグルグル回った後、我にかえる。
「やっぱり、うらやましくない」
「友達の方がええわ」
「うちら、幸せじゃね」
楽しいクリスマス会だった。
男子も混ざる公の会合は年に2〜3回あるが
近年、男子と飲むのは面白くない。
地元に残っている男子といったら、大半が自営業の跡取り。
小さな田舎町の景気がどんなものかは言うまでもなく
どいつもこいつも酒量が増える一方で、うるさいったらありゃしない。
そんな男子に見切りをつけた我々女子は
数年前から月に1回のペースで食事会を行っている。
役員会と称した公の会合には一応参加するが
心は別の日に行われる女子だけの食事会に向けられており
話題はそっちの出欠や店選びだ。
その食事会で、けいちゃんがポツリと言った
「私、クリスマス・イブとクリスマスが休みやねん。
淋しいわ〜」
病院の厨房で一緒に働いていたけいちゃんは、バツイチの一人暮らし。
大阪暮らしが長かったので、大阪弁である。
「なんでそんな日に休み取ったん」
「たまたまやん」
「なら、24日に晩ごはんでも食べようや」
「ほんま?家族と一緒に過ごさんでええのん?」
「ええの、ええの。
よう考えたらイブに単独で外出したことないけど
子供らも親がいるような年でもないし、やってみたい」
「うれしいわあ」
話を聞いていたマミちゃんも参加したいという。
「どこも混んでるから、うちでクリスマス会やらへん?」
ということで、けいちゃんのアパートに集まることとなった。
当日、料理とケーキはけいちゃんが用意するというので
私は果物、マミちゃんはお菓子を持って夕方5時に集合。
サラダ、鶏の竜田揚げ、クリームシチュー、茶碗蒸しなど
心尽しの手料理がところ狭しと並ぶ。
初めてけいちゃんのアパートを訪れたマミちゃんは
新築のおしゃれな部屋に歓声をあげ
「離婚して一人暮らしした〜い!」
と口走る。
「けいちゃんは公務員だから住宅手当が出るけど
うちらはボロアパートしか住めんよ」
「あ、そっか〜!」
と言って笑う。
3人でケーキを囲み、ロウソクを吹き消すと子供に戻ったような気分だ。
「いつまでも、こうして仲良くしたいね!」
「お婆さんになってもね!」
「きっとよ!」
などとしみじみ言い合う。
話は尽きなかったが、一番盛り上がった話題はなっちゃんのことだ。
なっちゃんは、地元の小学校教師とお見合い結婚した同級生の女子。
ご主人はうちの長男が小学生の時、隣のクラスの担任だったし
役員でも世話になった、すごくいい先生。
裏表が無くて温かく、長男も大好きだった。
本当にいい先生だけに、妻が惜しい。
なっちゃんは悪い子ではないんだけど、自分も先生のつもりでいるのか
指図や命令が好きで、ちょっとしたことに引っかかっては人を叱る。
私なんか「さっきの発言だけど、あれはどういうこと?」
「ちゃんとしなさい」などと、しょっちゅう怒られている。
私は平気だが、怖がる者もいて
なっちゃんの出欠をたずねてから自分の出欠を決める賢者もいる。
しかしなっちゃんは、同級生の集まりがイノチ。
自分が行かなければ始まらないと信じている。
イノチであるからには、リサーチもしているわけで
呼ばれなかったことが知れると地獄絵図は間違いない。
幹事役の私はこの問題を解消すべく、食事会の2回に1回は
「ノーなっちゃんデー」を作ったところ、大盛況。
が、全く呼ばないとなると、いつか必ずバレるので
参加者の少ない「なっちゃんデー」も開催する。
私はなるべく隣に座って、命令されたり怒られる役になるのだ。
なっちゃんと皆のミゾは、埋められない。
彼女は中2で転校してきたからだ。
中途というのは、どうしても嫁みたいな微妙な立場になる。
中途の醸し出す遠慮に、生え抜きの配慮が添えられて
雰囲気が良くなるものだが
遠慮どころかセンターで仕切りたがると融合は難しい。
「今頃、なっちゃんは星のやじゃね」
私はふとつぶやいた。
食事会の途中、彼女は「注目!」と皆を鎮め
おごそかに言ったのだ。
「今年は京都、星のやデ〜ス!」
なっちゃん夫婦の結婚記念日はクリスマス。
毎年、この時期には夫婦で旅行する。
京都にある『星のや』という所は、渡月橋から舟で渡る豪華な宿だそうで
今年はそこに行くという発表なのだった。
「やっと予約が取れたの。
二泊!どう?うらやましがっていいわよ?」
「星のやはうらやましいけど、旦那と行くのは嫌じゃ」
ついそう言って、例のごとく厳しく叱られるワタクシ。
人の幸せを喜べないのは、いけないらしい。
「そうよ!なっちゃんは今頃、旦那さんと星のややわ!」
けいちゃんが叫ぶ。
「あんなヤツが!」
私も叫ぶ。
「クヤシ〜ッ!」
マミちゃんも叫ぶ。
「キ〜ッ!」
と言いながら3人で立ち上がり、レスリングの取り組みのように
手と手を合わせてグルグル回った後、我にかえる。
「やっぱり、うらやましくない」
「友達の方がええわ」
「うちら、幸せじゃね」
楽しいクリスマス会だった。