殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

うぐいす未遂

2010年09月28日 10時58分00秒 | 選挙うぐいす日記
私の住む市の市議選が近付きつつある。

毎回うぐいすで雇われる市議が、今回は出馬しないという。

もっと先で行われる、別の選挙に鞍替えする意向である。


そこで、今回出馬する別の候補2人から、依頼がきた。

2人という数からもおわかりであろうが

決して私に実力があり、引く手あまた…というのではない。


経験者で、一週間の選挙戦に耐えられる肉体を保持し

その上就労していないヒマ人というのが

この市内には滅多にいないからに過ぎない。

仕事を休んでもらい、日程をやりくりしながら気兼ねして使うより

期間中、べったり出られるヒマ人を一人二人確保し

忙しい人は添え物で使うほうが、混乱が少ないのだ。


プロに頼めばいいようなものの、そのプロというのが市内にいない。

同じ賃金を支払うなら、市内在住者を使って

たとえ一票でも増やしたいのが、各候補の人情であろう。


しかし、今回は断るつもり。

狭い田舎のこと…どちらかを選ぶより

あっさり断ったほうが、後腐れがない。


我が市の市議選は、別の意味で、いつも楽しみにしている。

選挙は小さいほど、そして身近なほど、下世話で面白い。

今回の私の目玉は、なんといっても自営業の新人、某氏。

彼おんみずから手作りしたプロフィールを入手し

それを読んで、手を打って喜ぶワタクシ。


「○○大学…首席卒業」

首席卒業の所に、アンダーライン。

もちろん大学は、あんまり聞かない所。

「○○社入社…営業成績トップ賞受賞」

しかし入社の翌年には、退職して実家を継いでいる。


「政策…港周辺の会社の資材置き場を移転させ

 そこに海浜公園を作ります」

彼の家業は、そのような公園ができると儲かる業種なのだ。

さすが、首席卒業のトップセールス!

私利私欲がはっきりしておられる。

嫌いじゃないわ…こういうあからさまなおかた。


…って、おいおい…この資材置き場って、夫の会社のことじゃんけ。

置いてある資材の名称も、ちゃんと明記してあるので

間違いではなさそうだ。

正確に言えば、夫の会社を含む計3社が対象。

夫の怒るまいことか。


彼の実益を兼ねた政策を実現するには、どうもうちらが邪魔らしい。

こういうことを言ったらどうなるか…

それをおもんばかる器量もなく、理想に走る人間というのは

いつもあわれである。


当選のあかつきには、移転の条件をぜひうかがいたいものだ。

市の自由にはならない場所を

一市議がどうやって公園にするのか

その手腕のほうも、ぜひ拝見させていただきたい。

そのために、まずは当選していただかなければ。


ところがここにきて、周りから猛反対され

出馬が危ぶまれているという。

人望が無いので、協力者がおらず

二人しか予定されていない落選が、確実だというのだ。

反対に負けず、どうか出てほしい。

なんなら、うぐいすをさせていただきたいくらいだが

残念ながら、お呼びが無い。
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快食生活

2010年09月24日 12時05分56秒 | みりこんぐらし
夫の両親には、相変わらず夕食と朝食を届けている。

最初はしおらしかった彼らも、だんだん本来の性質に戻ってきた。

もちろん、それは予測していた。

憎まれ口をたたくほど元気が出るのは、喜ばしいことである。


それでも、時には平常心を保ちにくい事態が起きる。

人間だもの…ムッとすることもある。

「この肉は、まずまずのを使ってるな」

などと、したり顔で批評されると

ゼニ出してから言えや…と思ってしまう。


残ったので、置いて帰った煮物。

翌日「食べてみて」と義母ヨシコが言う。

「味が薄いから、醤油と砂糖を足したら、おいしくなったわ」

死にたいんか…と思ってしまう。


三日前には、中国産の松茸が出ていたので、松茸ご飯にした。

「ま、こんなもんだろうな」

「中国産だから、香りがね」

ひ~!心は、ちゃぶ台をひっくり返す星一徹。


私もまた、本来の邪悪な性質が、頭をもたげてくるのである。

悪意を込めて、わざわざ投げられる言葉より

何気なく漏らしたひと言のほうが

激しく腹が立つから、困ったものだ。

その晩は、家に帰ったら熱まで出た。

自分で自分の毒気に当たってりゃ、世話はない。

まだまだ、修行が足りん。



そして一昨日、夫がサウナの感謝祭だとかで

くじ引きをしたら、こんなもんが当たった。



ラップに、保存パックに、タッパー。

夕食を届けるために、毎日欠かさず使うもの3点。





箱には「快食生活」の文字。

「毎日の食べるを快適に」とまで書いてあり、カッとする。

イヤミか!

いやいや、エールと受け止めようではないか。



昨日の朝、実家の母サーコと電話で話した。

「ちょっと、あんた…そっちのお義母さんが

 みりこんちゃんに感謝してるって言ってたわよ!」


そっちのお義母さん…というのは、もちろんヨシコのこと。

先日、サーコが梨を送った時、お礼の電話がてら話したのだという。

「あんたに感謝なんて言葉、あの人の口から初めて聞いたわ~」

サーコは上機嫌だ。

「みりこんちゃんが作ってくれる食事のお陰で

 私もお父さんも元気になって、本当にありがたい…ですってよ。

 “お陰”よ!“ありがたい”よ!

 花嫁の母をやって30年…私も嬉しくってねえ」


夫に愛されない、出来の悪い嫁の母親として

サーコにはさんざん苦労をかけた。

私の製造元の一員ということで、ヨシコにいつまでも責任を追求され

そりゃあ気の毒であった。

これで少しばかり恩返しができたなんて、夢にも思わないが

なんとなくホッとしたのは、確かである。


ヨシコもいいとこあるじゃん…などと思い

毎晩会っているのに、また会いたくなり、すっかりやる気になる。

自分のゲンキンさには、いつもあきれる。
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救護義務違反

2010年09月19日 12時35分04秒 | みりこんぐらし
このところ、なにかと話題だった保護責任者遺棄。

これが道路交通法になると、救護義務違反という罪になるらしい。

ひき逃げや、当て逃げなんかの時に摘要される。

ケガ人を救護する立場にありながら、見捨てた罪だ。

最近、この罪に問われた人物が、私の周辺にいた。


話はこうである。

主人公は、夫の従姉妹の元旦那、A氏。

離婚後も仕事上のつきあいがある上

夫と仲がいいので、事実上、我々の中では親戚のままである。


ある日の昼下がり、A氏は住宅街の道路を車で走行していた。

そこへ脇道から車が出てきて、彼の車とかすかに接触した。

A氏は車の接近を察知し、早めにブレーキを踏んでいたため

双方の車に、ダメージはほとんど無かった。


親切なA氏は「大丈夫ですか?」と車を降りて、相手に近寄った。

「大丈夫、大丈夫。ごめんね~」

運転していたおばさんは、手を振りながら言った。

「でも…」

「いいから、いいから。私が悪かったんだから~」

おばさんが何度も言うので、彼はその場を立ち去った。

ここが運命の分かれ道であった。


A氏のところに警察が来たのは、翌日である。

おばさんは、彼が立ち去った後

なんだか急に気分が悪くなったということで、救急車を呼んだのだった。

彼は社用車を運転していたので、所在はすぐに判明した。


A氏は、事故を起こしながらケガ人を放って逃げた、とっても悪い人…

ということになるらしい。

それで救護義務違反。

警官に「保護責任を遺棄した」とまで言われ、とてもショックだったそうだ。

オシオ未満の扱いである。

逮捕には至らなかったが、長い免停に加え、高額な反則金を支払うこととなった。


「どこまで運の悪い男だろう…」

「離婚の時の心労で、頭もはげたし…」

今回の事件を聞き、夫やその両親は、しきりに同情した。


離婚して十数年、子供の養育費のために再婚もせず

節約して弁当も自分で作っているA氏であった。

大人になったらなったで、子供達は次々と

やれ大学だ、車だ、結婚だ、孫だ…と忙しい。

気もフトコロも、休まる暇が無いのであった。


妻の好色に振り回され、ボロ切れのように捨てられた彼は

遠い県の出身でありながら、子供達のそばで成長を見守りたいと

この町で暮らし続けた。

そんな彼の生年月日は、私とまったく同じである。

うっかりこの一族に関わったばっかりに

どえらい目に遭った同志のような気分だ。


それはさておき、私は同情しなかった。

オバタリアンを甘く見ていたA氏にも、非がある。

その場その場で気が変わり、はたの迷惑かえりみず

ひたすら我が道を行くオバタリアンを、信用してはいけないのじゃ。

A氏は男性ばかりの職場に勤め、長らく一人暮らしをしているために

オバタリアンに対する認識が、充分ではなかったと思う。


不運というのは、どうにもならない場合もあるけれど

わずかな知識で避けられる場合もある。

このような例もあるので、どんな小さな事故でも

まず警察に通報することをお勧めしたい。



冒頭の写真ですか?

薄汚いものをお目にかけて、すみません。

背中に果物のアップリケがついている、私の好きなシャツです。

すごく古いので、ごくたまに、こっそり家で着ています。

パイナップルの葉っぱが取れかけていて、ブラブラなんですわ。

縫い付けるのを怠っているので、救護義務違反。
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みりこん・ことわざ辞典

2010年09月16日 10時01分05秒 | 前向き論
私が普段、常用している

オリジナルなことわざ?の一部をご紹介してみようと思います。


“木の○ナナのリップライン”

経験が長すぎて、周囲に遠慮が生じ

誰からもアドバイスや注意をされなくなったこと。

またはその人。


{補足}このおかた、口紅の輪郭を黒っぽい色、内側を薄い色で

    かたくなに描き続ける。

    昭和に流行した古い技法で、唇をふっくら見せる効果が

    あると言われていた。

    しかしその根底には、口紅が一度に2本売れるという

    化粧品メーカーの思惑が加味されていたと思われる。 

    非常に不自然な仕上がりとなるため    

    現在、その技法はすたれている。

                

“森昌○の涙”

みんなに励まされ「元気が出ました」と言うが

その舌の根も乾かぬうちに、別の場所へ行ってまた泣いていること。

        

“ス○ンヌの足”

パッと見の印象と、大きくかけ離れた面があること。

またはその人。



“清水○太郎の更正”

立ち直りも早いが、堕落も早いこと。



“加藤あ○の眉”

不安定で、こころもとないさま。



“ロンパールームのミルク”

たいしたことないものを、ほんの少量

もったいぶってくれること。


{補足}昔、ロンパールームという子供向け番組があった。

    「おやつをいただきましょう」と

    子供たちはテーブルへといざなわれるが

    おやつは、推定コップ3分の1程度しか注がれていない牛乳である。

    それでも大人は、おやつと言い張る。
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大誤解

2010年09月11日 10時48分17秒 | みりこんぐらし
                  “これ、茶碗蒸しの器よ”



「明日の昼は来客があるから、外で食べるよ。

 悪いけど、帰れないからね」

夫が言う。


了解~と答えてから、ハタと気づく。

     「あんた、今、悪いけどって言った?」

「うん、言った」

     「…なんで?」

「一人にさせて、悪いから」

 
えっえ~?!

私はガクゼンとする。

    「何とおっしゃる、うさぎさん!

     悪くない、悪くない、むしろいい!」


結婚30年…雨の日も風の日も、昼には必ず帰って来て

家で昼ごはんを食べる夫。

そりゃ合間じゃ、帰らない日や、別々に暮らした日や

弁当を作った時期もあったけど、やっぱり家がいいということで

昼には帰ってくる方針に落ち着いた。


そのために私は外出を控えたり、仕事や用事の時は、用意して出たりした。

いつも夫の昼食が頭の中にあるって、わりと消耗するのよね。

来客やゴルフや浮気で、昼に帰らない時は

解放されたような気持ちで過ごしたものだ。

それが…それが…毎日帰って来るのは、私のためだったと言うのかえ?

いつから、そんなにか弱い奧さんになっただ~!

知らんかった~!


    「あのね、悪くないからね。

     私は一人でも淋しくないから…平気だからね。

     いつでも外で食べていいのよ~ん」


…本当は…

だ~れがそんな気持ちで帰ってくれてると、思うものか。

夫は、昼メシを用意する女房の手間を、何一つ考えたことがないのさ。


昔、とある小冊子に載っていた話が、印象に残っている。

仕事から帰ってきた旦那さんに、奧さんが言った。

「あなた、今日は外でお食事したいの」


「じゃあ行こう」と言う旦那さんと

「僕は、君の手料理が食べたいな。いつもおいしいものをありがとう」

と言う旦那さん。

どっちが思いやりのある、いい旦那か…という内容。


当時の私は、後者だと思った。

しかし、いい旦那というのは、前者だそうだ。


後者は一見、さもよさげな感じがする。

しかし奧さんは、今日は料理がしたくない。

疲れているのである。

男は一旦家に帰ったら、出るのはおっくうなものだ。

ここで妻の気持ちを察知できる旦那と

口先でごまかして、結局自分の思い通りにする旦那。

この違いであろう。


我が夫は、もちろん後者。

なぜなら同じ状況で、まったく同じことを言ったことがある。

「母さんや、母さんや」と

柔らかい物腰で、優しく思い通りに持っていこうとする。

慇懃無礼(いんぎんぶれい)とも言えるが

それにだまされる私も私…とも言える。


が、そんなのはどうでもいいのだ。

今さらちっぽけなことで、ギャーギャーピーピー言うほど

ヤワではないわい。

喜ばしいのは、この頃、家事をよく手伝うようになったことだ。

気働きや思いやりが無いのを嘆くより

マメという長所を伸ばしてやるほうがいい。


何か買って来いと言っても、豆腐の種類や肉の部位が

だんだんわかってきた。

いつも、噛んで含めるように説明をしてから行かせるが

豚バラを買って来いと言ったら、肉屋と花屋を回って

豚肉とミニ薔薇の鉢植えを買ってきたり

コットンを頼んだら“さらさらコットン”という

私にはもう用の無い、生理用品を買って来たこともある。

それら数々の失敗を糧として、彼はずいぶん成長した。

近頃では、行く店を決めて

馴染みの店員さんに世話してもらうワザも身に付けた。

とても役に立つ。


さて先日、遊んで帰ったら、お客さんが来ていた。

家に居た夫が、お茶を出して談笑している。

お茶まで入れられるようになったのだ。

進歩、進歩…と、私は微笑んだ。


しかし、よく見ると、お茶が注がれているのは

茶碗蒸しの器なのであった。

湯飲みより、だいぶん大きいんだけど

夫も来客も、何の疑いもなくお茶を飲んでいる。

あわれにおかしいやら、かわいらしいやら。

私もさっそく、茶碗蒸しの器に自分のお茶を入れ

彼らの仲間入りをはたしたのであった。
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田舎の不倫嫁

2010年09月07日 16時09分06秒 | 検索キーワードシリーズ
検索キーワードにあった『田舎の不倫嫁』

笑わせてもらいました。

田舎の…というのが、いいダシ出てますね~。

不倫は、どちらかといえば都会的でイケてる行為と思ったら、大きな間違いで

本当は田舎風味漂う行為なのかもしれません。


田舎は娯楽が少ないので、楽しい火遊びは

あとさきさえ考えなければ、最高の娯楽になります。

そして人口が少ないので、好き者の数も限られており

これを逃したら次がいないという稀少感が

よこしまなハートに拍車をかけます。

そこでうっかり、つまらぬおっさんやおばさんでも

千載一遇の出会いと錯覚してしまい

執着が強まって、もつれやすくなります。

田舎ほど、色は濃いと言われる由縁でしょう。

♪やめられない 止まらない かっぱえびせん♪


『[実録]妻の浮気を知った瞬間~浮気現場の中心で離婚を叫ぶ』

『別居中の妻が妊娠 離婚をめぐって修羅場』

『サレ夫の反撃修羅場』『不倫 修羅場 サレ夫』

『妻の浮気そして離婚をめぐって修羅場』

『妻を釣った上司を退職に追い込んだ』『妻の浮気・不倫死の底から』


奧さんの浮気で悩む男性とおぼしきキーワードは

いつも深刻で詳細なものが多いですね。

男としてのプライドをストレートに出しながら、女よりも傷つきやすい面が

よく現われていると思います。

しかも、修羅場って言葉が好き?


「ねえねえ、僕、女房の浮気に悩んでるんだけどさ~」

なんて、男は気軽に言えないもんね。

女の罪深さを、まざまざと見るような気がします。


先の“田舎の不倫嫁”にも関連しますが

何年か前、県内ののどかな田園地帯で、殺人事件がありました。

以前から、パート先の社長と浮気していた奧さんを

ご主人が殺害してしまったんです。


そしてご主人は、自分の親と、成人した子供を道連れに

一家心中したのでした。

家族全員、覚悟の上だったようです。

翌朝、社内旅行に出かけるはずの奧さんが、集合場所に来ないのと

農業のかたわら会社員をしていたご主人が、出勤しないことから

事件は発覚しました。


その夜、ご主人は「小遣いはあるのか?」と、奧さんにたずねました。

旅行に出る妻に対し、ご主人なりに精一杯の歩み寄りを見せたと思われます。

奧さんは答えました。

「社長が出してくれるから、いい」

そこで事件は起きました。


こういうことを、離れた町に住む私が

なぜ知っているんでしょうねえ。

その場に居た人は、みんな死んでしまったんですから、わかるはずがないのです。

この話は、単に憶測から生まれた噂ではないような気がします。

人の口から口へ伝わる間に、死者の声も加わることが

時にはあるのかもしれませんね。


浮気する人は、どうでもいいでしょうけど

その家族は、スキャンダルに慣れていません。

ことに農村では、田んぼの水の配分や、頻繁な行事があり

近所との関わりが密接でないと、生活しにくい面があります。

人に後ろ指さされるという羞恥心や情けなさは、簡単に人間を追い詰めます。

誰も指をさしてまで、笑やしないんですけど

そのイメージに支配されて苦しむんですね。


奧さんのパート先は、家から目と鼻の先でした。

ご主人は、毎日どんな思いで眺めていたことでしょう。

引き離すために、先祖伝来の家土地田畑を残して

簡単によそへ引っ越すわけにはいかない…

ご主人は、思い詰めてしまったのではないしょうか。

浮気した二人は、ご主人や家族をナメきっていたと思います。

痛ましい事件でした。


これには後日談があります。

奧さんの遺体は家にありましたが、ご主人を始め他の家族は

車で家を出たまま、数ヶ月の間、行方不明でした。


そんなある日、私は、とある山あいのガケ下を撮影する

テレビ局の一行を目撃しました。

そのうち放映があり、その撮影の意味がわかりました。

海外から霊能者を呼び、迷宮入りの事件の真相を霊能にて探るという

報道バラエティでした。


この一家のことも霊視されており

一家は家から遠く離れた、このガケから転落しているかもしれない…

という話でした。

そこで、ガケ下を捜索していたわけです。

こういう番組の常で

「今日は見つかりませんでした…

 一家は、いったいどこへ行ってしまったのでしょう」

で終わりました。


甘いわい…私はそれを見ながら、思いました。

勝手な憶測ですが、この事件を知った当初から

土地を愛し、土地に縛られ

それゆえに起きた悲しい出来事だと思っていたからです。

絶対に遠くでは死なないと思いました。

私にも少々農家の血が流れているからか、その時は、感覚でわかりました。


数人の大人が忽然と消えているのですから

どこかへ落ちたか、沈んだであろうことは、誰でも予測がつきます。

水があって、木があって、白いビルのようなものがあって…

霊能者は、浮かんだ情景というのをスケッチブックに描くんですけど

そんなん、どこでもありますがな。

適当なことを言っておけば、誰かがうまく目星をつけて

番組はできあがります。


水田を守って生きてきた日本人の気持ちが

稲作の習慣の無い外国人に、わかるわけがないのです。

ちゃんと見えないのに、出てきちゃいけませんよ。

霊能者ともてはやされ、テレビに出てギャラを稼ぐ人を

完全に信用しなくなった一件でした。


やがて一家の車と遺体は、家の田んぼの水源である

ため池から発見されました。

事件が起きたのは初夏、これから田の水が気になる時期でした。

実りの秋…地道に、清らかに土地と生きる人々の尊さを

改めて実感しています。
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いきもの係

2010年09月02日 09時30分25秒 | みりこん昭和話
小学3年生の時、クラスで何か生き物を飼おうということになった。

少し前までは「カイコ」を飼っていた。

2年の時、理科の観察に使ったので

行きがかり上、余生の面倒も見たわけだ。


お世辞にもかわいいとは言えないイモ虫達は、毎日たくさんの桑の葉を食べ

やがてひっそりとマユにこもり

さらには小太りな白い蛾となって、死んでいった。

おおっぴらには言えないけど

今度はもっとかわいいものを飼いたいという願望が

クラスには、あった。


学級会で、先生が言った。

「家で飼っている生き物で、学校へ持って来てもいいという人は

 発表してください」

カエル、メダカ、金魚、ゲンゴロウ…色々な生き物の名前があげられた。


体温の無い生き物は、いまひとつ盛り上がりに欠ける。

その地味さに溜息が漏れる中、私は満を持して言った。

「カナリア」

…クラスで飼う生き物は、即座にカナリアと決定した。


家に帰って、その旨を家族に伝える。

うちにいる1羽のカナリアは、人が鳥カゴごと預けて行ったきり

長い間、取りに来ないものであった。

昔は「すぐに帰って来ます」と汽車に乗ったら、それっきり…

ということが、よくあった。


母チーコは「預かりものを勝手にはできない」とシブった。

「あんた、世話なんて、したことないじゃないの。

 今まで、そこにいるかとも言わなかったのに、急に…」

しかし私とて、もう後へは引けない。


翌朝、鳥カゴを持って、意気揚々と家を出るが

その直後、早くも挫折。

昔の鳥カゴは、鉄製で重たいんじゃ。

ハンドバッグじゃあるまいし、快適に持ち歩けるようには、できていない。

持ち手の輪っかが指に食い込み、すっかりイヤになった。

チルチルミチルは、すごいなあ…と尊敬した。

これを持って旅までするんだから、たいした力持ちだ。


「ほら、ごらん!」

チーコの勝ち誇った顔。

父か祖父を呼び、車で送ってもらおうとするが

チーコに阻止される。

「自分で持って行くと言ったんだからね!最後までやりなさいよ!」


途方に暮れる私を見かねた祖父の発案で、1本の太い木の棒が用意された。

1メートル余りのこの棒に、鳥カゴの輪っかを通してぶら下げ

姉妹で肩にかついで運べと言うのだ。

気の毒なのは妹だが、我が家の場合

ひとつ違いの姉妹は、常に一蓮托生の雰囲気があった。


学校までは、そんなに遠くなかった。

500メートルほどだろうか。

それでも、鳥カゴが傾かないように、妹に高さを合わせたら

こっちはヒザを曲げて歩くことになる。

やらせている手前、仕方がないが、大変しんどい。


ようようの思いで学校へたどりつき

得意満面で教室にカナリアを持ち込むと

みんな、歓声をあげて喜んでくれた。

ああ、満足。


さっそくカナリアの世話をする、いきもの係を決めることとなった。

一人の男子から、もっともな意見が出る。

「いきもの係は、みりこんさんがいいと思います。

 それは、カナリアの飼い方を知っているからです」

先生は、何か言いたげな表情だったが

他にめぼしい意見も出なかったので、私は栄えあるいきもの係に就任する。


実は、飼い方なんて、知ら~ん。

さわったこともない。

よく見たこともない。

それどころか、鳥は苦手じゃ。

しかし、いまさらそんなこと、言えやしない。


おっかなびっくり、カナリアを世話すること数日…土曜日がやってきた。

昔は、土曜日も昼まで学校があったのじゃ。

「日曜日は一日中、カナリアを放っておくことになる。

 さて、どうするか」

という話になった。


そこでまたまた、もっともな意見が出る。

「かわいそうなので、係の人が家に連れて帰ったらいいと思います」

私もなるほど、と思い、鳥カゴを持って帰ることにした。


棒が無かったので、手で持つしかなく

重さと指の痛さで、2、3メートル歩いては休むを繰り返す。

友達に協力してもらうという手もあったはずだが

なにしろ、いきもの係としての使命感に燃えていたので、思い浮かばず

持ってやろうと名乗り出る者もいなかった。

家に着いた頃には、息も絶え絶えであった。


月曜日の朝、いきもの係としては、またもやカナリアを

学校へ運ばなければならない。

また妹に、文字通り片棒をかつがせる。

文句も言わず、ただ、かつげと言われるから

かつぐというさまが、少々フビンであった。


そして土曜日はすぐにやってくる。

えっさ、ほいさと、カゴ屋のような姿は

往復のたびに、道行く人々の失笑をかった。

「何かがおかしい…どこかが間違っている」と思ったが

当時、それが何であるかは、よくわからなかった。


休日が来るたびの棒かつぎは、1ヶ月ほど続いただろうか。

夏休みが始まって、棒かつぎも休憩だ。

そして新学期…

私はもう二度と、カナリア様をかついで練り歩く気にはなれなかった。


学校で級友に「カナリアは?」と聞かれるのを恐れたが

誰一人、カナリアの消息をたずねる者はいなかった。

その時初めて、みんな、どうでもよかったのだとわかった。

バカなことをした。

しかし、その教訓は生かされることなく、現在に至っている。
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