殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

手抜き料理・カリフラワーのスープ

2024年11月29日 11時22分12秒 | 手抜き料理
子供の頃、実家の食卓にはカリフラワーが頻繁に登場した。

似たような形状のブロッコリーは

田舎の八百屋にまだ流通してなかった頃だ。


私はカリフラワーが好きで、よく食べた。 

今と違って食の細い子供だったので、カリフラワーをモリモリ食べると

母はたいそう喜んだものである。


カリフラワーは、今でも好きだ。

幼少期の温かい記憶もさることながら

フラワーという優しい名前からして、好ましい。

寒い時期はカリフラワーの旬なので

真っ白でモコモコした姿を見ると

つい買ってサラダ、炒め物、グラタン…色々な調理法で食べている。


先日、仲良し同級生の4人が集まり

ファミレスで食事をしたことはお話しした。

何年かぶりに訪れたガストはメニューが様変わりしていて

大半がガッツリ系の食事になっているのに驚く。


実家の母サチコへの対応で、少々胃をやられている私は

今の自分でも食べられそうな物を見つけるのに苦労した。

穴が開くほどメニュー表を見つめても、それらしき物は発見できない。


思い出せば数年前

サチコを連れて市外のガストへ行ったことがある。

席に着いてメニューを見ていると

「食べる物が無い」

サチコが不機嫌にほざき始めたので、やむなく店を出た。

「ワガママ言いおって!」

当時の私は腹立たしく思ったが、今ならその気持ちがわかる。


皆を心配させると悪いので、無理だったら残せばいいやと思い

少食のモンちゃんと同じ

ハンバーグなどの盛り合わせを注文し、結局残した。


そのガスト、近頃のイチ推しはフレンチ風のコースらしい。

前菜、スープ、サラダ、ハンバーグなどのメインにデザート

ドリンクバーがついて2千円弱だそう。

客単価を上げるために努力してます…とでも言いたげに

そのコースメニューだけ、大仰にテーブルの上に立ててある。


「とても食べられない…」

そう思って却下しようとしたが、スープの部分を見て食いつく。

“カリフラワーのスープ”。

カリフラワーって、スープにできるらしい…

そういえば、どこかで食べたことがある…

確か、美味しかったような…

何より今の私の胃に、良さそうではないか…

以後、私の頭の中はカリフラワーのスープに支配された。


そして先日、ついにカリフラワーのスープを作成。



うちの冷蔵庫には、茹でたカリフラワーがあった。

前日の夕食でサラダにしたが、長男と私が少しつついただけで

ほとんど一房、残っているのだ。

もう少し小さく切り直してベーコンと共に炒め

バター醤油で味付けして昼に出すつもりだったが

これをスープにしてみようと思い立った。


作り方は簡単だ。

5人分の材料は

⚫︎タマネギ半分から1個

⚫︎茹でたカリフラワー半分から1房

⚫︎バター小さじ2杯程度

⚫︎コンソメスープの素2個

⚫︎牛乳200CC

⚫︎砂糖、塩、コショウそれぞれ少々

⚫︎仕上げに生クリームとパセリ少々


①細切りにしたタマネギを、バターでしんなりするまで炒める

②茹でたカリフラワーを小さめに切り、①のしんなりタマネギと一緒に

塩、コショウ、砂糖をそれぞれ少々加えて1〜2分炒める

③タマネギとカリフラワーに、水か湯をヒタヒタより少し多めに加え

コンソメ2個を入れて2〜3分煮たら、火を止めて冷ましておく

④冷めたらミキサーに入れ(熱々のままだと溢れるから)

30秒から1分ほどガ〜

水分が少なくて回りにくければ、水を少々加える

⑤ミキサーにかけた物を鍋に移し

牛乳200CCを加えて弱火で温め、味が薄ければ塩で整える

⑥火を止め、仕上げに生クリームをたらしてパセリを散らしたら完成



牛乳は豆乳でもよく、サッパリが好きな人は水を多めにするといい。

かすかな甘みのための砂糖

仕上げの生クリームやパセリは無くても大丈夫。

このやり方でカボチャ、アスパラガス、ブロッコリー

トマト、ジャガイモ、コーン、カブなど

残り野菜でさまざまなスープができる。

ミキサーを引っ張り出すのが難点といえば難点だが

うちはよく使うので、すぐに取り出せる食器棚に置いている。

ミキサーを気軽に使うようになると、レパートリーが広がる。


で、自作のカリフラワースープを食べてみたざんす。

これが、うまいのなんの!

旨味の出かたは、こないだ作ったカボチャスープの比ではない。

家族にも好評だった。
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みりこん、靴をもらう

2024年11月27日 09時03分17秒 | みりこんぐらし
仲良し同級生で結成する5人会の一人

横浜へ引っ越したけいちゃんが、親の法事で帰省した。

実家を片付けるために帰省した、去年の6月ぶりだ。

けいちゃんが法事を済ませた先日の夜

マミちゃんを除く4人のメンバーは町内のファミレスへ集合した。


料理屋でなくファミレスを選んだのは

翌朝からけいちゃんとマミちゃんが

一泊で四国の道後温泉へ出かけるから。

体力温存のため、カジュアルに済ませることになった。


「今回は帰省のついでに、道後温泉まで足を延ばしたいんやわ」

足が無いにもかかわらず、ドライブ旅行を希望するけいちゃんに

一同が少々鼻白んだのはともかく、急なことなので

ユリちゃんは「お寺の留守番がいない」

モンちゃんは「月末は仕事を休めない」

私も実家の母サチコを連れて病院へ行く日だったので

それぞれ不参加を表明。

残ったのが、旅好きのマミちゃんだった。


快く運転を引き受けた優しいマミちゃんは

翌日からの運転に備えて、この夜の会合は欠席した。

年を取ると運転がこたえるのよね。



さて、ホテル泊まりのけいちゃんを迎えに行き

ファミレスで待っていると、モンちゃんとユリちゃんもやって来た。

と、ユリちゃんは何やら大きな紙袋を持っていて

「これ、前に言ってたブーツ」

そう言いながら、私に差し出す。

何のことやら全く覚えが無いのだが

ユリちゃんの話では、親戚からもらった中古のブーツを

私にくれるということらしい。


「良いメーカーだし、あんまり履いてないから状態はいいのよ」

ユリちゃんは言う。

が、今でこそ寄る年並みには勝てずスニーカー派になったものの

レディース・マドラスや銀座ヨシノヤ

ランバンやカルバン・クラインの靴で生きてきた私だ。

あんまり聞かない国産メーカーの

しかも見ず知らずの他人が履いた中古のブーツなんていらないよ。

それでもユリちゃんの強い勧めで、とりあえず中身を拝見させていただく。



ウッ!紫色!

生地はスウェード風で

ブーツというより足首までのハイヒール。

これって昔、中森明菜が歌う時に履いてたようなやつじゃん。

いにしえ臭と使用感だけはたっぷりだ。

よう、こんなの買うたわ。

よう、こんなの人にやろうと思えるわ。

頭は大丈夫か?


突き返すわけにもいかないので、とりあえず受け取った。

家で捨てればいいことだ。

私もナメられたものよ。


「来年もいつも通り、3日にお雑煮会があるから、よろしくね!」

ナメついでに、ユリちゃんは正月の話をした。

毎年、正月の3日はユリ寺で初勤行が行われる。

その時、集まった檀家さんたちと

お餅を入れた鍋をいただくお雑煮会が恒例。

私がこの鍋物作りに駆り出されるようになって、数年が経つ。


ほら、うちらってバカだから

誘われるままに夫婦でノコノコ行ってたのよ。

二人してタダ食いでは申し訳ないので5千円のお布施を捧げ

集まった一同の食事をほぼ私一人で作っていたのさ。

食べるだけの夫は、なぜかこの会を気に入っていたけども

年々高まるユリ寺の要求に、わたしゃしんどかったさ。


ボロい靴を押し付けられた忌々しさもあって

この話は即座に断る。

「今回は無理じゃわ」


本当なのだ。

実家の母サチコがお世話になっているデイサービスは

年末年始の6日間、完全休業するという。

デイサービスと宿泊はもちろん、毎日、昼と夕方に届く弁当も休みだと

プリント1枚で伝えられた。

つまり大晦日から翌年5日までは

介護や食事の世話を家族がすることになるのだ。


“悪しからずご了承ください”

そう書かれたプリントを見て、愕然とした私。

大晦日から元旦は一人じゃ寂しいだろうから施設に泊まらせ

あとはデイサービスでやり過ごし…

などと皮算用していたというのに、ガラガラと崩れたでねぇか。


ガラガラと崩れたのは、私だけではない。

「私は行く所が無い…」

ようやく慣れてきたデイサービスの習慣が途切れると知ったサチコは

それ以来、非常に不安定だ。


普段は至れり尽くせり、鬱陶しいほど親切だけど

突如として、こういう素気ないことをする…

それが小規模多機能居宅介護施設。

プリントと一緒にもらった12月の予定表には

休業する6日間、赤い字で当然のように“家族支援”と書いてある。

やかましいわ。

「ショウタキは、ワンオペだと大変よ」

お寺の料理番仲間、梶田さんが言ったことを改めて思い出す私だった。


この措置に落胆した私だったが

お雑煮会の欠席を知ったユリちゃんの落胆も、負けずに激しかった。

「え〜?!じゃあ来年は、私と義姉がお鍋の用意をしないといけないの?」

当たり前じゃろが。

これを言い訳に、もう二度とお雑煮会には行かんもんね。


施設の正月休みはショックだったが

お雑煮会の悪習慣が終わった幸運を噛み締めながら

楽しい女子会は終わった。
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近時事・兵庫県知事戦挙

2024年11月18日 12時58分57秒 | みりこんばばの時事
兵庫県の知事選、不信任案で失職した前知事の齊藤元彦さんが

再び当選されたわね。

県職員の自◯を皮切りに

齊藤知事のパワハラ疑惑やおねだり疑惑が噴出して

とっても賑やかだったから注目して見ていたわよ。


あの方は東大卒だそうだから、頭がいいのは衆知の事実だけど

ヌメっとした肌や、形はいいけど薄い眉から

自分以外の人がみんなバカに見えちゃう典型的なタイプかも…

偏見かもしれないけど、そう思いながら興味深く眺めてたの。


だからって、悪い人だと言ってるんじゃないわよ。

兵庫県のことも本人のことも、全然知らないもの。


私が待ち焦がれていたのは、ただ一つ。

齊藤知事を告発して百条委員会に出る直前に

自◯されたという話の職員さん…

その奥様の登場よ。


国会で数年前、森友学園問題が勃発した時にも

省庁の職員さんが亡くなったわね。

その方の奥様が顔出しNGで

記者会見やインタビューにたびたび登場されてたわ。

あれが無きゃあ。


それはともかく、愛するご主人を突然亡くされて

心身共に大変だっただろうに

「ネイルサロンには行けるんだ…」

いつも綺麗な爪に、私は一種の感慨を覚えたものよ。


そりゃあね、ネイルが色褪せてきたら

自分で取るのは難しいからサロンへ行くしかない。

サロンへ行ったら新しいネイルを施すことになるんだろうけど

テレビでハンカチを握りしめる爪は

地味な色ではあるけど定期的に違う色に更新されてて

不謹慎を承知で言うなら、美しいから楽しみにしていたのよ。


で、一連の騒ぎがおさまったら、パタッとご出演が無くなった。

私なら夫の無念を晴らしたくて、ずっと訴え続けるけどな。


そういうこともあって兵庫県のケースも

亡くなった職員の奥様か、ご家族が登場されるのを

待っていたわけよ。

こういう生死に関わる大きな告発は

たいてい家族の涙の訴えがセットじゃないの。


それが無いから、だんだん尻すぼみになって

選挙戦が始まると、知名度だけは爆上がりしてるから

まるで無実の罪を着せられたヒーローみたいになっちゃった。

投票率も上がったし、ネットの威力ってすごいわね。

おしまい。
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デンジャラ・ストリート 嫁姑

2024年11月11日 10時45分18秒 | みりこんぐらし
同居する義母ヨシコは最近、青春を謳歌している。

我々の住む後期高齢者ばかりのデンジャラス・ストリートで

2年前から始まった老人健康体操のお仲間とすっかり仲良くなり

老婆の友情を育んでいるのだ。


中でも特に親しくなったのが、原さん。

私とは高校の同級生だった、原君のお母さんである。


彼女は、ヨシコと同い年の88才。

10年ほど前、ご主人に先立たれて以降

原君夫婦と未婚の孫が実家に帰って来て同居を始めた…

その経緯はヨシコと同じだ。

どちらも明るくおしゃべり好きで

のんびりしているところも似ているからか

二人は急速に仲良くなり、原さんはうちへよく遊びに来るようになった。

そりゃもうキャッキャと、女学生のように楽しそうだ。


同じデンジャラ・ストリートの住人でありながら

老人体操が始まるまで、お互いの存在を知らなかった原さんとヨシコは

「もっと早く知り合っていればよかったね」

ことあるごとにそう言い合う。

「お父さん、わたしゃ今楽しいけん、まだ迎えに来んとってね」

仏壇に向かって亡き夫にそう頼むのも同じだ。


私はそれを聞きながら、つい思ってしまう。

「え…まだあの世へ行くつもりはないのかよ…」

この気持ちは多分、原君の奥さんも同じではなかろうか。


原君も二人の睦まじさを喜んでいて

時には母親とヨシコを遠くへドライブに連れて行ってくれる。

嫁が一番嬉しいのは、姑の留守。

ヨシコが朝から夕方まで一日中いないなんて

近年には無かったことだから、これは私も非常に嬉しい。

普段は嫁に気兼ねで大っぴらに親孝行ができないらしき彼は

母親とヨシコを車に乗せ、3人であちこちを観光するのが楽しい様子だ。


そんなある日の午後、原さんはヨシコを自宅に誘った。

「いつもお邪魔してばっかりじゃあ悪いから、たまにはうちにも来て」

ホイホイと出かけたヨシコだが、秋の夕暮れは早い。

おしゃべりをするうち、あっという間に暗くなり

仕事から帰って来た原君が

ほんの100メートル余りの距離を車で送って来てくれた。


帰って来たヨシコは、いつになく神妙な面持ちである。

「原さんとこのお嫁さんはツ〜ンとして、私に挨拶もしないのよ。

原さんとも、ろくに口をきかないんだって。

食事は夜だけ用意してくれるそうだけど、お盆に乗せたのを渡されて

原さんは自分の部屋で一人で食べるんだって。

家族が食べる時に、台所へ行ったらいけないんだって」

いつも明るく楽しい原さんの現実を知って、ショックだった模様。


あんたもそうしてくれたら、どんなに静かだろう…

それを聞いた私は思ったが、今さら言えないので無反応を通す。

原君の奥さんは私より一つ年上だそうだけど、なかなかやるじゃん。

厳格なルールを決めないまま中途同居になだれ込んだばっかりに

上辺の愛想を浮かべて我慢する私より、ずっと潔い。



しかしヨシコの衝撃は、それでは終わらなかった。

翌朝、ヨシコの友だちである骨肉のおトミの娘、聖子ちゃんから電話が。

「おばちゃん、昨日は原さんの家に行って

暗くなるまで帰らなかったんだって?」

聖子ちゃんと原君の奥さんは同級生で、仲がいいらしい。

原君の奥さんは、ヨシコがなかなか帰らなかったことを

聖子ちゃんにしゃべったのだ。


もっとも聖子ちゃんの用件は、そのことではない。

彼女の母親おトミとヨシコの3人で、ドライブに行こうというお誘いだ。

おトミは認知症が進み、今では話をすることもできなくなったが

聖子ちゃんは週一のペースでヨシコを誘う。

しかし肝心のおトミが何もしゃべらないので面白くないヨシコは

何やかんやと理由をつけて

聖子ちゃんの誘いを断ることが多くなっていた。


この時も例のごとく、ヨシコが体調を理由に断ると

「おばちゃん、原さんの家には長居ができても

私とお母さんには会えないの?」

聖子ちゃんから鋭い指摘が。


なにしろ彼女の母親の友だちは、絶滅寸前である。

インスリンのおタツは3〜4年前に亡くなったし

尿漏れのおチヨは認知症で寝たきり。

バランスのおシマは旦那さんが暴力系の認知症で

精神病院へ強制入院となったため、急に一人暮らしになって

ドライブを貫徹する気力を失った。

聖子ちゃんは夢うつつの母親に少しでも刺激を与えたくて

唯一残ったヨシコを誘うのに一生懸命なのである。



「なんて恐ろしい…」

自分の行動が、思わぬ第三者に筒抜けだったと知り

電話の後で真剣に怖がるヨシコだった。


原君の奥さんは美人だけど、私にもそっけない。

旦那の同級生ということで警戒しているのか、それとも人見知りなのか

キラリと光るメガネの奥の目は、とっても冷たいわ。

暗くなってもお迎えに行かなかった私まで、非難された気分よ。


「これからは原さんの家へ行かずに、うちへ来てもらいんさい」

「そうする!」

共通の敵が出現し、結束する嫁姑であった。
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お泊まり・2

2024年11月06日 12時21分48秒 | みりこんぐらし
あんたが通ってるのは、本当は老人ホーム…

デイサービスはオマケ…

私にだまされたサチコは先週の金曜日

デイサービスの後で、そのまま初のお泊まりをすることになった。

夕方になったら「帰る」と言い出すかな?

と思っていたが、サチコからも施設からも連絡が無かったので

私は静かな夜を過ごすことができた。


そして翌日の午後、サチコから上機嫌で電話が。

「すごく安心して、よく眠れた!」

お泊まりがすっかり気に入った様子である。

「また泊まりたい」

とまで言うので、私は泊まりの回数を増やして欲しいと

ケアマネに頼んだ。

フフフ…こうしてお泊まりをどんどん増やすのじゃ。


しかし、そう甘くはなかった。

宿泊を2回に増やすのは、来月からという話だ。

コロコロと気が変わる人なので、急に増やすと不信感を持つため

様子を見ながら少しずつの方がいい…という理由からである。

さすがプロ、サチコの性格をよくご存知。


それから、ケアマネは言った。

「お母様が介護施設へ入りたいとおっしゃっている今のうちに

入れる所を何ヶ所か探して、申請しておいたらどうでしょう?

あちこち見学に行って複数の施設に申し込んでおかないと

なかなか空きが無いので入れないんですよ。

順番が来た時にお気持ちが変わられて、入りたくないと言われれば

後回しにしてもらうこともできます」


こういう話は聞いたことがある。

ユリ寺の料理番仲間、梶田さんもそれらしきことを言っていたし

うちに来るダスキンのお姉さんも言っていた。

デイサービスのお世話になっていると

「入居できる施設を探しておきなさい」

ケアマネから、そう勧められるのだそう。


「え?自分で?ケアマネは何もしてくれないの?」

私は彼女に聞き返したものである。

が、施設を変更する際は、家族が自力でやるのだそうよ。


ダスキンのお姉さんは4ヶ所を当たり、その全てに順番待ちの申請をした。

するとほどなく、その中の一ヶ所から入居の受け入れ許可が出たので

さっそく認知症の父親を入れて、現在に至るという。


こういう話も、複数人から聞いたことがある。

何ヶ所か申請しておいたら、たいていその中の一ヶ所から

早めに受け入れてもらえるという都市伝説である。


さらに言及すれば、都市伝説はもう一つある。

家族が口うるさかったり、横柄、横暴だったり…

つまり感じの悪い家族であれば

順番は永遠に回って来ないというものだ。


そういうわけで急転直下、今後はサチコの様子を見ながら

入所できる施設探しに取り組むことになった。

サチコは住み慣れた町内の老人ホームを熱望しているが

地元には要介護4以上の人が入る施設しか無い。


私の住む町に範囲を広げても、しょせん田舎なので施設が少ない。

そしてご多聞に漏れず、空きは無い。

入居者を選抜するために、無いということにしてあるのか

老人の多さと人手不足で本当に無いのか…

そこは介護ビジネスの闇なので、我々シロウトの知るところではない。


梶田さんお勧めのグループホームも考えたが

要介護2、つまり中軽度の認知症でも入れるグループホームは

9人のグループで掃除、洗濯、料理などの家事を

各自ができる範囲で分担して行うんだって。

あのサチコが、他人の洗濯なんかやるわけないじゃん。

四苦八苦して入所させても、嫌がって出てくる確率はかなり高い。


となるとサービス付き高齢者住宅、サ高住しか無いが

このサ高住、私の周りに入居した人は何人かいるものの

気に入って長期滞在した人は誰もいない。

飽きたり、途中で入院して住み続けるのが難しくなり

早々に退去した経験者ならたくさんいる。

帯に短しタスキに長し。


そういえば同級生の涼子ちゃんは、認知症のお母さんと一緒に数年間

サ高住で暮らしていた。

サ高住は施設でなく、賃貸契約のマンションなので

規定を満たせば介護する家族も一緒に住める所があるのだ。


しかしある日、仲睦まじいこの母娘に悲劇が訪れる。

入浴介助に失敗してお母さんは足を、涼子ちゃんは腕を骨折したのだ。


やむなくお母さんを老人ホームへ入れることになり

彼女はたくさんの施設を見て回った。

彼女は金持ちの娘だから、うちらド庶民とは感覚が異なる。

お菓子については一家言ある涼子ちゃん、施設を見学する時は

必ず午後3時に予約をした。

施設で、どんなおやつを出しているかを観察するためだ。


そして、一番良さげなおやつを出している施設に決めた。

数年後にお母さんは亡くなったが

「あの時の決断は間違いなかった」

彼女は今でも自信を持っている。


おやつに力を入れているか否か…

施設の実態を見極めるには

あながち見当違いの方法ではないかもしれないけど

私は見学に行く気など無い。

見学不可の施設もあるし、そこは他人…

あのワガママ婆さんをあちこち連れ回るのはかったるい。

サチコがどんな施設でどう過ごそうと、興味は無いのが本音である。


ともあれサチコの気が変わらないのに、なかなか入所できなければ

私が感じの悪い家族だから、ということになるのかもしれない。

《完》
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お泊まり・1

2024年11月05日 08時52分24秒 | みりこんぐらし
実家の母サチコは、週に3回のデイサービスに

ようやく慣れてきた。

最初は嫌がって、迎えが来ても行かずに帰ってもらったり

前日に自分で施設へ電話して断っていたが

困り果てた施設の人に要請されて、私が月水金の朝

実家へ行って送り出すようになったらシブシブ行くようになった。


行ったらすぐに身ぐるみ剥がされて風呂に入らされ

その後は昼食、体操、昼寝と半強制的な日課をこなすのが

気まま星人のサチコには苦行だったらしい。

が、行けばチヤホヤしてもらえるのを知り

今ではまんざらでもない様子だ。


デイサービスに慣れると、次の課題は宿泊。

毎週金曜日にはデイサービスの後、施設に残ってそのまま泊まり

土曜日のデイサービスを終えてから帰宅するプログラムである。

しかし泊まる日の午後になると泣き出して、連れて帰ってもらったり

「明日は泊まりません」

と施設に電話をかけて宿泊拒否が続き

一度も泊まることは無かった。


私はそれについて、気にしてなかった。

今の施設は毎日、昼と夕方に弁当を配達してくれ

デイサービスで週に3回もお守りをしてくれるのだ。

食事の世話がいらないのと、デイサービスに行っている間は

執拗な電話から解放されるだけで、私は十分ありがたかった。


しかし、そうも言っていられなくなった。

サチコ本人が、老人ホームに入りたいと言い出したからだ。

昼間をデイサービスで賑やかに過ごすようになると

一人ぼっちの夜が一層つらくなってきたのだった。


手のかかる老人が、自ら老人ホームへ入居したがっている…

これは私にとって、願ってもない朗報である。

要介護2でも入れるグループホームや

介護サービス付き高齢者住宅、通称“サ高住”は

すでにリサーチ済み。

どちらも月20万弱と高額ながら、空きはほとんど無いが

こっちには道路拡張による家の立ち退き問題が控えているので

優先的に入れてもらえる可能性が高いように思う。


が、一度も泊まったことが無いのに施設へ入所しても

続くわけがない。

入院した時と同じく、帰ると言って暴れたあげく

退所するのは火を見るよりも明らか。

サチコはそういう人間である。


「とにかく1回、今の施設に泊まって練習してみようや」

よって私は説得を続けたが、どうしてもその気になれないサチコ。

うちへ泣きながら電話をかけてきては

「老人ホームへ入れて欲しい」

と無いものねだりを繰り返すばかりだった。


こういう非生産的なことを口にし

あまりの執拗に周囲が動かざるを得ない状況にして

他者が自分のために尽力するさまを眺めるのは彼女の趣味。

そして願望が達成したあかつきには

「やっぱりやめる」と言い出して全てをひっくり返すのは

彼女の癖。

昔からそうなので、わかっている。

だから、本気にしてホイホイと乗ってはいけないのだ。


今の施設のケアマネにも

9月末まで入院していた精神病院の相談員にも相談してみたが

やはり答えは同じ。

「一回泊まってみて、話はそれから」

ということだった。


その間もその後も、サチコは相変わらず施設入所に憧れ続け

施設の人たちにも私にも

「入りたい、入りたい」と繰り返すばかり。

だけど本気で言っているのではない。

こういう爆弾発言をすると周りが驚いて

ちゃんと向き合ってくれるから言っているだけだ。


無駄な“入りたい発言”に辟易した私は、洗脳を試みることにした。

「あんたが今、通うとる施設は、本当は老人ホームなんじゃ。

デイサービスはオマケじゃ。

もう老人ホームに入っとるのと同じじゃけん

好きなだけ泊まって、飽きたら帰りゃええんじゃ」


嘘ではない。

サチコの通う小規模多機能型居宅介護施設は

在宅介護…つまり自宅で生活する老人のサポートが基本だが

泊まりたければ数日、あるいは数週間に渡って泊まることができる。

細かい規定はあるらしいが、自宅と施設の両方で生活できるので

うまく利用すれば、両方のいいとこ取りができる便利な所なのだ。


“本当は老人ホーム”…これは効いた。

騙されたサチコは先週、初めて泊まった。

《続く》
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