殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

大家族

2009年09月29日 15時15分51秒 | みりこんぐらし


昨日は、家族でテレビを見た。

南の島へ移住した大家族のドキュメンタリーだ。

多少の演出があるにしても、お父さんのマメさや

子供たちのけなげさ賢さ、お母さんの脳天気ぶりは楽しくて

つい見入ってしまう。


夫婦というのは、二人足して100なのかな…と思う。

何でも出来る手八丁口八丁のお父さんと暮らしていたら

お母さんはいまだに家出するしないの次元で、ウロウロするしかないのだろう。

Tシャツから透けるきつそうな黒いブラジャーが

妙になまめかしいのはご愛嬌か。


以前、長男は子だくさん家庭の実録ものを嫌っていた。

「他人の無計画と貧乏を笑う番組だ」

と一人で怒って別室へ行った。

「生活が苦しいと言いながら、親はタバコを吸って酒を飲んで

 髪まで染めている」

おかしい…と言うのだ。


ところが茨城のイシダさんちあたりから、わりと鷹揚になってきた。

ここは経済力がある上に、会話が豊富。

親はもちろん子供の考えもしっかりしていて

「みじめ」や「あわれ」が皆無だ。

それらが理由なのか、長男がオトナになったのかは不明である。


20年余り前だろうか…

この方面の元祖とも言えるミヨシさん一家がきっかけで

テレビ界に大家族ブームのようなものが起こった。


とり散らかしたよその家をのぞき見る楽しみ…

炭水化物中心の偏った食事…

その中で、泣いたり笑ったり鼻をたらしたりする幼児…

年かさの子供はなぜかお決まりのヤンキー道…

出演料がかさまないので、テレビ局は経費が抑えられ

視聴者はそこそこ感動できる、お得な企画だったと思う。


以来大家族が続々と取り上げられ、各局が競って放映した。

そのうちの一軒の子供に、知り合いがいる。

私は見ていなかったが、数年に渡り放映されたと言う。


今は知らないけど、当時は

取材されている間、毎月なにがしかの出演料が支払われたという。

彼の家は10万くらいだったそうだ。

しかし、両親はそのお金を全部パチンコにつぎ込んでいた。

放送されると、全国からお金はもちろん米やおもちゃが届いたそうだ。


テレビ局の人はそそのかす…「もう一人、頑張りましょう」

赤ちゃんが出来れば、視聴率が上がると言う。

彼の両親は、それに応えて次々と頑張った。

「生まれたから取材されるんじゃなくて 

 お金をもらい続けたいから作って生む…うちの場合、すでに逆なんだよね」


彼は回想する。

「親のいない時にチビたちがケガしても、カメラマンはまず撮る。

 電気が止められて、ろうそくで火事になりかけても 

 何でも、撮ってからだよ。

 子供心に、いつも何か不幸を期待されてる気がした」

幸せのシーンはどうにでも作れるので、意外な不幸が欲しいらしい。


やがてブームもひと段落した頃、お母さんは無理がたたって体を壊し

両親が離婚して、放送も終了した。

他人の目があると、後に引けなくなる部分があるのかもしれない

凝視され続ける生活は、思いのほかストレスが強いようだ。

そういえば、あのミヨシさん夫妻も離婚したっけなぁ。


その点南の島の家庭は、過去に一度壊れているので柔軟性を感じる。

子供の増加に生活設計が追いつかないハラハラ感の中で

起きたことを当たり前として受け止め、転がされて行く…

一種達観の境地が小気味よい。

愛情を照れや忙しさでうやむやにしないところが立派だと思う。


みんなで黙って見ていると、夫はだんだんソワソワしてきて

「金が無いと開き直って放任か、反対に手を掛けるしかないよな」

などとけん制する。

あの親父さんと比べられちゃ、たまったもんじゃないと思うのだろう。

比べやしないって。

自分のやることに絶対の自信がある人は、それだけ口うるさいもん。


だからあんたは開き直って放任したんだね…ひひひ…と思うが

私もオトナ…そんなこと言わない。

息子たちは、ふふふ…と笑う。

それぞれの思いを胸に、秋の夜長は靜かに更けていくのであった。
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加賀屋

2009年09月26日 17時29分49秒 | 前向き論


検索キーワードは、依然として楽しい言葉の宝庫。

『天王寺 ナンパ待ち』 『杉本彩 既婚 お歯黒』 『篠原涼子 玄米』 

『選挙事務所 タダ飯』 『“好きな人がいたけど”戦後』 

『毎や夫を誘惑する嫁』 『お葬式 誰も来ない』 『我 乱心にあらず』

『股開く プロレス技』 『爬虫類の目をした男』などなど…


『るみりぬのはぴよかい』

2個ある…なんかのマジナイか?

気を取り直して早口で言ってみる…言えやしない。


ドロドロ系も健在だ。

『不倫 りこん』 『姉妹の禁断の恋』 『義母との関係告白』 

『伯母との禁断の思い出』 『倒錯夫婦』 『少年野球 不倫 裁判』…

おぉ、おぉ…お盛んなこと。


接遇関連も多い。

中には『平○都 死ね』なんてのもある。

○は私がつけた。


『子連れ 住み込み』 『住み込み 子連れ 就職』… 

相変わらず続いている。


私は昔、万一の時は和倉温泉の「加賀屋」へ行くつもりでいた。

女性週刊誌を見ると、ホステス募集…年齢30才まで…などの広告に混じって

  ●客室係募集 年齢不問 掃除、布団敷き等の雑用は一切ありません

  ●お客様への応対に専念していただきます 

  ●母子寮、託児所完備

みたいなことが書いてあった。


さすが、いい宿日本一に輝いた加賀屋。

掃除や布団敷きが無いのは、お客様への献身に重点を置いているからであろう。

気は使うけど、いたずらな体力の消耗は防げるので

慣れない土地での子育ても可能かもしれない…と考えたものだ。


家で辛抱できなくなったら、子供たちを連れてここへ行こう。

一生懸命働いて、子供たちを育てよう。

冬は寒いらしいけど、休みには3人で雪合戦をしよう。

おのれの技量もわきまえず、同じ行くなら一流へ…などと決める。

戦いの日々の中で、時にそんな空想をすると楽しくなった。


加賀屋…私の半生を支えた魔法の三文字。

今、募集しているかどうかは知らないけど

いくら年齢不問とはいえ、さすがにもう雇ってもらえないだろう。

ははは。


『不倫夫人の集まり』

フリンフジン…なにやら心地よい響き。

歩くと「フリン♪」「フジン♪」って音がする下駄なんてどう?

集まりといったって、集合したら喧嘩になっちゃうぞ。

みんな自分の不倫が一番美しくて特別だと思ってるから。


『不倫 成り行き 職場 後輩』

あの~、成り行きで不倫なんて、絶対ありませんから。

ひそかに期待満々で酔って見せたり

断われば何事も起きないものをノコノコ社外で会ったり

あげくはおんみずからパンツ脱いじゃったところをはしょって

「成り行き」で片付けちゃいけませんねぇ。


ここらへんの表現の“ずる甘(あま)”が、不倫愛好家特有。

後輩に手を付ける不倫…安くつきますこと。

最低ですわね…ほほほ。


『慰謝料 払わない 夫の心理』

払わないんじゃなくて、払えないか、払いたくないかでしょ。

本気で取りたいなら、心理をまさぐるよりも法的手段を使えばいいこと。


本当は、慰謝料よりも愛が欲しいのではないですか?

弾尽き矢折れ、疲れ果てて責める言葉も無くなると

相手が反応してくれるフレーズは「慰謝料」だけなんですよね。


この地点まで来てグズグズしているのは

奥さんにまとまった貯金が無い場合もあるでしょうね。

不安で動けないんですよ。


不仲の原因が切羽詰まったものでなければ

これから貯めたりちょろまかしたりして、体勢を整えてくださいね。

お金があると気持ちに余裕が出て、また違った展開になりますよ。


なぁに、焦ることはありません。

高カロリー・高塩分・高プリン体の特別食を与えながら様子を見ましょう。

観察も楽しみのひとつになることでしょう。


あ、冒頭の絵ですか?

杉本彩でお願いします。
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待てど暮らせど

2009年09月24日 10時29分20秒 | みりこんぐらし


友人と、夫婦や男女関係について語り合う。

彼女は夫や周囲の男性から

「君は何でも出来るからな…」とよく言われるそうだ。


確かに仕事も家事も、何でも出来る子だが

それではいかにもカワイゲが無いみたいだ…と彼女は言う。

「少し甘えてみるのもいいかもよ」

何も出来ない身の上でありながら、私は偉そうに言う。


剛柔にわたって何でも出来ることは

イクサやキキンの無い現代日本において、プラスばかりだとは言い切れない。

社会で、家庭で、人々が求めるのは自分よりちょっとダメな人間。

自分の存在価値が高められる人間。

自分のほうが優れていると思わせてくれる人間。


上司は、バリバリ仕事が出来て人気のある部下を嫌い、芽を摘む。

自分を差し置いて評判が上がったり、追い越す懸念があるようでは

カワイゲが無くて憎たらしいからだ。

いまどきデキがいいのを喜んでくれるのは、親だけだ。


もしも職場で、心当たりがないのにつらい思いをしている人がいたら

試しに一度、トロいダメオやダメコを演じてみるといい。

上司が口でなく、本心で求めている人材になるほうが

解決する可能性がある。


テレビに出ている男たちを見よ。

軒並みブサイクなおじんのオンパレード。

でなければチビかデブかハゲかヅラだ。

この条件に該当していたら、人気者にしてくれる。


視聴者が求めているのではないのだ。

男の制作者がそれを求めている。

同性を起用するにあたり

自己嫌悪や劣等感を持たずに心地よく仕事が出来る者を選ぶ。

よく出ているので、視聴者もうっかり人気者と認識する。


自分よりちょっと気の毒…と思える者に優しくしたり

引き立ててやりたいのが男の心理である。

あくまで自分比なのが感じ悪いが、本人がそう思いたいのだから仕方がない。


この現象は、ことに某国営放送のアナウンサーに顕著だ。

出来高に大きく左右されないサラリーマン世界だからではないか…

などと勝手に考える。

私は、美しい男は入社試験の段階でハネられると踏んでいる。


男は案外ヤキモチ焼きなのだ。

女にもそんなところはある…

しかし男のほうが、あまり表に出さない分、ずっと強いと思う。

イケメンは、そんな男たちの魔の手を逃れ

ジャニーズ事務所あたりに保護されている。


これらが事実であってもなくてもいいのだ。

そんなことを考えながらテレビを見ると、面白いぞ。


かつて、夫は愛人が出来るたびに言った。

「おまえは一人でも生きていける…

 けど、あいつはオレがいないと生きられないと言うんだ…」

我々母子を捨て、愛人と一緒になりたいために

そんな理由をつける。


何回目かに言われた時、私ははたと気づいた。

「カワイソウ」は「カワイゲ」の母ではないかと。

どうやら夫から見て、私はカワイソウではないらしい。

よって、カワイゲが無いから別のカワイソウを探すのだ。


いや、カワイソウだよ…私だって。

邪魔にされても行く所が無いし、愛人よりよっぽど気の毒さ。

でも、それを表に出すのは恥と思い込んでいた。


誰も喜ばない、自己満足のちっぽけなプライドにこだわって

おいしい所を全部他人に持って行かれていたのだ。

いやはや…間違いであった。


以後、強がるのは控えることにした。

「できな~い」「わからな~い」「おねが~い」と言えば

喜んで頑張ってくれる。

楽だ…。


それはさておき…

オレがいないと生きていけないということは、別れたら死ぬということか…。

楽しみに待っているのに

どいつもこいつも、別れたっていっこうに死なない。

どうなっとるんじゃい…まったく。
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相談

2009年09月21日 19時30分35秒 | みりこんぐらし


時おり、人さまから“相談”を持ちかけられる。

しかしこれは、私が博学で人格優れ、口が堅いからではない。

家でブラブラしているからだ。


古い知り合いのヒロコから、5年ぶりに電話がかかってきた。

「会いたいわ~!食事でもしない?」

変に明るいこのテンション…絶対なんかあるのだ。


「ちょっと相談したいこともあるし~」

ほれ…これが相談じゃ。

5年も音信不通の者に相談して、どうにかなることなどありゃ~せんのじゃ。

中年女の相談事など、ろくなことではない。

金か男か家のこと…でなければ変な商売か宗教じゃわい。


本当に相談したいなら、いい年をしてシロウト相手につべこべ言うよりも

それ相応の機関に行けばよいのだ。

「相談」と言えば、人の悩み知りたさにノコノコ来ると思っている。


しかしまあ、私も鬼ではない。

会いたいと言う者には会う。

仕事が忙しい…の口実が使えないし

会うまで何回も電話がかかってきてめんどくさいからだ。


車で30分ほどの待ち合わせ場所にノコノコ行く。

おいしい和食の店ということであったが、どうも雰囲気がおかしい。

入った時、ヒロコはいかつい系の若い店主に目配せをした。


「みりこんさん、仕事する気、無い?」

出た…。

「人を健康にして、幸せにして、自分もハッピーになる

 まったく新しいシステムのネットワークビジネスなの。

 私、みりこんさんにぜひビジネスパートナーになってもらいたいの」

美しげな横文字を使いたがるのが、こやつらの特徴じゃ。


「頭のいい人は、この話を聞いてたいていピンとくるのよね」

      「あ、私、バカだから」

「不況だし、年金もあてにならないし、将来が不安じゃない?」

     「全然」

「今頑張っておけば、終生お金が入り続けるのよ」

     「いらない」

「知り合いを勉強会に連れて来るだけでいいのよ」

     「わたしゃ嫌われ者だから、誰も来ないよ」


やれやれ…。

こういう人間は洗脳されてしまっているので、しつこい。

これさえやれば老後が安心と言うなら、自分だけでやれ。

そして輝かしい老後を迎えたあかつきには

誘っても話に乗らなかった馬鹿者をあざ笑えばいいではないか。


早々に席を立つのも良かろうが、それでは面白くない。

それに、ここの食事はボリュームもあってなかなかいい。

次はデザートだし、まだ帰るわけにはいかんのじゃ。


店主がデザートを持って、にこやかに席に来る。

「ステキな方ですね…店に入ってこられた時からオーラを感じていました」

などと、今まで何人にも言ったであろうお世辞を言う。

いかつい系がこういうことを言うと、女性にはかなり効果があるのを

よく知っているのだ。


雰囲気から察するに、この男がヒロコの組織のボスらしい。

この店は、一味のサロンだったのだ。

自分の店をどう使おうと勝手だけど、せっかくいい味出してんのに惜しいのぅ。


「ボクもこれを知って、もうこれしかない!と思いました。

 社員も賛同してくれて、仲間にも恵まれて…」

男は熱く語る。


おや…私はかわいく!問う。

    「この“味ひとすじ”というのは?“包丁一本”というのは?」

テーブルに店主や従業員のポーズをとった写真が貼ってあり

そんな文句が並んでいるのだ。


「それは店をやっていく上での心構えで…

 もちろん、この気持ちに偽りはありませんよ」

     「まあ~…では2足のワラジということですの?」

「そうなんです…世の中、いつどうなるかわからないですからね。

 経営者としては保険みたいなもんです。

 今じゃ店のほうが保険になりそうですけどね…はっはっは」

    「お~ほほほ…じゃあ味ふたすじ、包丁じゃなくてワラジ2足と

     書き換えなすったらよろしいのに」

「…」

顔を見合わせる店主とヒロコ。

デザートも食べ終わった…帰るべ。


駐車場までヒロコが追いかけて来て言う。

「ボスはバツイチで養育費が必要なの。

 別れた子供さんのために、このビジネスをやってるのよ」 

泣き落としのつもりらしい。


それがどうしたというのだ。

    「養育費だけじゃなくて、あんたがくっついたから

     ますますものいりなんだろっ」

んじゃ!

さっさと帰る。

ああ、今日も楽しい1日だった。
   
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うりこひめの場合

2009年09月19日 12時13分44秒 | みりこん童話のやかた


「ほんに、きれいな娘になって…」

おじいさんとおばあさんは年ごろになった娘…うりこを眺めて目を細める。

「まさかここまでになるとは…」

「良かったのぅ」


二人には子供が無かった。

瓜畑で泣いていた赤ん坊を家に連れ帰り

「うりこ」と名付けて育てた。


うりこはすくすくと成長し、界隈でも有名な美女となった。

結婚の申し込みは引きも切らず、男たちからの貢ぎ物だけで

家は充分に潤っていた。


やがてうりこの美貌は殿様の耳にも届く。

ぜひ城に迎えたいと言われ、おじいさんとおばあさんは飛び上がって喜んだ。

ここらで手を打とう…これで老後も安泰じゃ…。


うりこは殿様の元へ行く日を待ちながら

不安な日々を過ごしていた。

自分はこの家の娘ということになっているけど、本当は素性が知れない。

殿様には内緒にしているけど

自分が拾われた後でひょっこり生まれた、素行の良くない弟もいる。

格を上げるために、家族からは姫なんて呼ばれてるけど

お行儀もたしなみも知らないし

窮屈なお城でやっていけるのだろうか…。


それに…うりこは庭の柿の木に目をやる。

「あいつ…」

青々と茂った柿の葉っぱの陰で、こちらをうかがいながら

夜になるのを待つあまんじゃく。


おじいさんとおばあさんが寝てしまうと

今夜もうりこはあまんじゃくと、町へ遊びに出かけるのだ。

うりこはとっくにあまんじゃくとねんごろになっていた。


みんなはあまんじゃくのことを

バカでウソつきでどうしようもないヤツと言う。

でも、私はあいつと居ると、すごく落ち着くのよね。

私が一番自分らしく振る舞えるのは、あいつのそば…。


若者の集う酒場では、うりこはたいした人気だ。

「うりぴぃ」と呼ばれ、行けばチヤホヤしてくれる。

うりこの家に日参するいいとこの坊ちゃんたちとは違う刺激だ。

これぞ私の求めていたもの…という気持ちになる。

可憐で清楚な姫というのは世を忍ぶ仮の姿…

本当の私はイケイケのあばずれなの~!


無理して背伸びした玉の輿より、こっちのほうが気楽でいいかも…

だって、あまんじゃくは不思議な匂い袋を持っていて

時々かがせてくれるんだもん。

あのニオイをかぐと、すごく元気が出て気分が良くなっちゃうの…。

いけないモノらしいけど、かまうもんですか。


…殿様からの縁談は立ち消えになった。

とても釣り合わない…と、うりこが辞退したという説もあるし

殿様側がうりこの本当の姿を知って断わったという説もある。


やがてうりこはあまんじゃくの子供を生んだ。

あまんじゃくは怠け者だったので

うりこは美貌を生かして唄を歌ったり、芝居小屋に出たり

絵草紙の表紙になるのを頼まれたりしてお金を稼いだ。

生活費ももちろん必要だが、あの匂い袋の中味を新しいのと取り替えるのは

案外お金がかかるものだ…と知った。


年月が経った。

うりこは子持ちの人気者として不動の地位を築き上げていたが

ご法度の匂い袋を使っていたことがばれて

あまんじゃくもろともお縄になる。

騒ぎにはなったものの

初犯だし、美しいしで、たいしたおとがめは受けなかった。


うりこは思う。

困ったことは全部あまんじゃくのせいにしておけばいい。

私はダメな男にだまされた可哀相な女…この路線でまだ当分はいけるわ…。

みんな、罪を犯した美しい私を見たいはず。

お客が呼べるんだもの…涙を流して謝っておけば、大事にしてくれるはずよ。


困ったら絵草紙に裸を載せてもいいし

かわら版に暴露手記を書いてもお金になる。

いざとなったらしんすけ社中に頼み込んで

お笑い芝居「へきさごん」だって出ちゃうわ。

たけし劇団に拾ってもらって、もな太夫と共演もいいわね。

人情家だから、ちょっと泣けば保護してくれるわよ。


でも大丈夫…この国は「子供のため」と言っておけば

たいていはまかり通るんだもん。

うりこはにっこりと微笑むのだった。
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悪気は無いのよ

2009年09月17日 11時17分03秒 | みりこんぐらし


夫の会社の給料は、昔から手渡しだ。

振込にして…と誰が何回頼んでも、却下され続けた。

月に1度、社員に給料袋を渡して威張り散らすという

商大卒の優秀な経理係…夫の姉カンジワ・ルイーゼの大好きな儀式が

無くなるのがイヤなのだ。


ここ10数年は若手が多いので、これがやりたくてしょうがない。

給料を捻出しているのは決してルイーゼではなく、実際に働く人たちだが

完全に勘違いしている。


それはいいけど、しょっちゅう明細と中味が合わない。

今月は2千円少なかった。

同じ間違えるなら過剰に間違えばいいものを

必ず少なく間違える。


諭吉や英世の人数が違うことも多いが、計算が違うことはもっと頻繁。

社員も慣れっこなので、毎月末には自分のタイムカードをコピーしておいて

明細と照らし合わせるのが習慣になっている。

特に残業や休日出勤の多い月は危険だ。


社員のサワダ君の奥さんは、よそで経理の仕事をしているので詳しい。

給料日の翌日には、社員を代表していつもルイーゼとやり合う。

ルイーゼはサワダ夫人を「細かい」と言って恨み

義母は「娘は女性経営者の会で副会長をしているから忙しい」とかばう。

亭主が汗水流して働いたお金を間違えるルイーゼが悪い。

耐えられない社員は、ルイーゼと大喧嘩して早々に辞めていく。


それもまあいい…良くないが仕方がない。

今月の「カンジワルイデ賞」は

シモ3ケタ…435円が全部1円玉と5円玉だったことだ。

下方がパンパンにふくらんだ給料袋…ずっしり重いで…。


どこまでがミスで、どこからが故意で

どの時点で喧嘩売ってるのか、よくわからない。

生きてることそのものが嫌がらせになる…それがルイーゼさ。


私は一応身内という責任上!少々の不足は気にしない。

厳しい経営状態の中、たとえ明細より少なくても

毎月いただけることに心から感謝している!のよ。


フッフッフ…実は夫の厚生年金は、去年から一ケタ間違えている。

数万円引かれるところが、数千円になっているのだ。


イケメンの営業マンにのぼせて、会社の会計ソフトを変えた。

苦しいとボヤくわりには、そういう所へ大枚はたく。

その時に間違えて入力されたまま、現在に至る。

会社は社会保険事務所に正規の金額を収めているのだから、将来困ることは無い。

2千円でヤブヘビになるより、発覚するまで黙っておくに限る。

おねえたま…大好き♪


どうやって帳尻を合わせているのか不思議ではあるが

気づかれても絶対返すものか。

ルイーゼと同じ「知らなかった」「あんたが悪い」「無い」でやり通す所存だ。


目先の金を惜しんで、大事なところはダダ漏れ…

ただでさえ不景気なのに、これで経営がうまくいくわけがない。

それでも今のところまだ倒産していない奇跡を喜ぼうではないか。


ところで先日、仕事から帰って来た夫がぼやく。

「会社に女を連れ込むのはやめて!」

とルイーゼにいきなり怒鳴られ、喧嘩になったと言う。


「身に覚えの無いことを決めつけて言いやがる」

夫はかなり頭に来ている様子だ。

    「ほほほ…前科があるからじゃない?」

「そりゃそうだけど、本当にやってないから腹が立つ」

給料もまともに計算出来ないくせに、ウソばっかり言うな!と言い返し

激しい口論になったそうだ。


確かに夫はホテル代わりに会社のソファーを利用し

毛布まで常備していた時期もあった。

フトコロが淋しい時の苦肉の策であろうが

非日常的な雰囲気が女性には意外に人気だ。

レンタルモップのズべ公や介護職のおばはんなど、特に喜んだらしい。


“今は”やってない…“今度ばかりは”潔白だ…夫は悔しそうに言う。

    「そもそも何でそういうことになったの?」

「それがさ~…ゴミ箱に口紅のついたティッシュがあったと言うんだ」


昨日は無かったのに、今朝見たらある…

夜の間に女を連れ込んだろう…

私の会社でもあるんだから、勝手な真似はしないでちょうだい…

ルイーゼのモノマネをして見せる夫。


はっ!

前夜、私は例のアルトサックスの練習で会社を使った。

リードに色が付くのは嫌なので

練習前に口紅を拭き取って、ついゴミ箱へ…。

たら~り…黙っとこ。

気が済むまで喧嘩せぇや。
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おとな帳

2009年09月15日 10時03分58秒 | みりこん昭和話


子供の頃、大人はいろいろと大変らしい…と気がついた。

働かないといけないし、結婚もしないといけない。

挨拶だって「その節は…」とか、難しいことを言わないといけないようだ。

そこで、将来ちゃんと大人になるために「おとな帳」をつづることにした。

大人に必要と思われることを書く。


まず『あいさつ』の部に続き

『おつとめにいったら』

   かみはカールする。ハイヒールをはく。

   おこられてもなかない。


『おとこのひとがすきになったら』

   あなた、かれとよぶ。くるまでどこかへいく。おしゃれをする。

   ばらいろ。みずいろ。


『おわかれをしたら』               

   きょうと、きたぐに、みずうみのどれかへいく

   のりものはよぎしゃ。おさけをのむ。まちをでる。       
      
これらは、商店街にいつも流れていた歌謡曲が元になっている。


そのうち母チーコに見つかり、燃やされる。

     「ああっ!おとな帳がっ!」

「そんな先のことを今から心配せんでいい!」

もう大人になれない…私はさめざめと泣いた。


変な子供だったので、学校でも色々あった。

気にしない子は気にしないが、ちょっと塩のきいた女の子数人は

私を格好の餌食にした。

着るもの、容姿、言動…すべてが気に入らないということで

周囲にひと気が無くなると、時々囲まれた。


母チーコは、結婚するまでドレメ式とかいう洋裁学校の教師だったので

いつも妹とお揃いの洋服を縫って着せてくれた。

「そんな服着て、いい気になるな!」

「服は町内のカジハラ衣料かヤマムラ洋品店で買え!」


ああ言った…こんなことした…と責められるのは平気でも

こういうことはカンにさわる、やはり変な子供の私よ…当然抵抗する。

その関係は、そのまま中学へ持ち越された。


1年の時、ある事件が起きた。

深夜の駅に身を潜めていた某国からの密入国者集団を

祖父が偶然発見し、警察に通報したのだ。


正直なところ「じいちゃん、カンベンしてくれよ」の心境だったが、あとの祭。

新聞に大きく載り、私は翌日から完全にヒールとなる。

意地悪組に、やはり同じ国の女の子がいたからだ。

「同胞を警察に売り渡した!」

彼女は泣きながら叫ぶ。


おおっぴらな理由が出来て、調子に乗った集団は

人数を増やして、にわかに国際的社会派とあいなる。

「命がけで来たのに、見逃す優しさはないのか!」

「ひとでなし!」

口々に糾弾され、私は「密告者」というあだ名で呼ばれた。

私が通報したのなら言われてもいいが、えらい迷惑だ。


登校したら席に花が置かれ「死ね」と書いてある。

机にゴミ箱が逆さまに置いてある…持ち物を隠したり捨てる…

椅子に画ビョウ、弁当に砂を入れるなど、いじめのお決まりメニューと共に

学校帰りに囲まれて、延々と文句を言われるイベントが待っていた。

すべてが用意周到で、他の級友や教師は気づいていなかった。


…あるいは、気づいた者もいたかもしれない。

しかし、下手に首を突っ込んで、こじれたら身の破滅。

賢い者ほど気づかないふりをしたのかもしれない。


理不尽に応戦しようにも、私にとってこのテーマは上級すぎた。

彼女たちもよく理解しないまま、薄っぺらな友情を振りかざしたが

私もまた、お門違いの主張を跳ね返す知識や表現力が備わっていなかった。

余計なことを言って「差別発言」といっそう騒がれるより

黙っていたほうがいいと思った。


暴力こそ無かったが、彼女たちは

泣かないし謝らない…つまりかわいくない私の根性を

何とかしてたたき直そうと団結し、連日歪んだ正義感に燃えた。

こっちはこっちで、やつらの望む展開にさせてなるものかと踏ん張った。


大人に言えば、祖父は怒ってやつらの家を訪問する事態になるだろう…

頭の柔らかい小学生時代から続く彼女たちの行為は

結局親の姿そのままなのだということを私は肌で知っていた。

親からして腐っている血統書付きを他人がどうにか出来るわけがない。

祖父はピエロになり、日々の仕打ちはもっと陰湿になるだろう。

いいことなんかひとつも無いのだ…当時はそう考えた。


ところが、捨てる神あれば拾う神あり。

2年になった途端、男子から「告白」なるものが相次いだ。

モテたのではない…「錯覚」という一時的現象だ。

しかしそれは、天の助けでもあった。

人生には思わぬ方向から、必ず救いが用意されているものだと、その時知った。


男を敵に回したら損だと思ったのか「成敗」は急におさまり

「紹介して…」と手のひらを返してすり寄ってくる者まで出始める。

団結は崩れた。


その後、彼女たちとは普通に接した。

やつらはすっかり忘れており、私は忘れたふりをした。

傷ついた素振りを見せることを私の幼いプライドが良しとしなかった。

そのうち本当に忘れて、同じ高校へ進んだ者とは仲良くしていた。


成人してからは、ほとんど全員地元にいないので会っていない。

日本各地で、親譲りのそれなりの人生を送っているらしい。

主犯格が一人だけ地元に残っていたが、事故で永遠に会えない所へ行った。


さて、あれほど心配していた大人となった。

「あの時よりマシ」という感覚がついて回り

実際やってみると「子供やってるよりチョロい」と思った。
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ラザニア

2009年09月13日 14時20分44秒 | みりこんぐらし


次男が小学生の時、同級生の女の子が不登校になった。

本人はいじめに遭ったと言い、周囲はそんなことは無いと言う。

やった、やらないでもめまくり、こじれにこじれたあげく

クラスの保護者が招集された。


一人の保護者の提案で、みんな子供と一緒に手紙を書いて女の子に送ろう…

ということになった。

私はさっそく次男と共に手紙を書き、女の子に送った。


後になってわかったが、その時手紙を書いたのは我が家だけであった。

以来女の子と文通みたいなものが始まって親しくなり

やがて遊びに来るようになった。


その女の子…アサミちゃんは、私の子供の頃によく似ていた。

非常に多感な上、口が達者…しかし語彙がまだ少ないので誤解を受けやすい

言うなれば損なタイプだ。

他人とは思えない。


不登校をどうにかしてやろうなんて、だいそれたことは夢にも思わない。

何も聞かないし、学校の話もしない。

二人で好きなマンガや絵を描いたり、他愛のないおしゃべりをして過ごす。

損な女同士のつきあいだ。


「おばちゃん…生きるってつらいね…」

アサミちゃんはつぶやく。

「んだな…」

そんなことはない…今経験していることは将来きっと…なんて

もっともらしいことは言わない。

アサミちゃんとの時間は、むしろ私にとって安らぎであった。


ある日、アサミちゃんは言う。

「お母さんと会ってほしい…」

私がどのような人物なのか、母親がいぶかしんでいる様子であった。

無理もなかろう。

当時、私は九州出奔から帰郷したばかり。

長男の高校進学に合わせ、次男も転校させて

隣の市とはいえ知らない場所で家族4人、新しい生活を始めたばかりだった。


そこは農村地帯だったので穏やかな人も多かったが

少々封建的な部分も残っていた。

その土地ではアパート住まいの者を「住宅の人」と呼び

学校でも近所でも、よそ者扱いする雰囲気があった。

この土地で代々商売をしているアサミちゃんの親が

心配する気持ちもわからないではない。

では、うちで昼ご飯を一緒に食べよう…ということになった。


晴れた日曜日、アサミちゃん母子はやって来た。

部屋に上がると、アサミちゃんのお母さんは手に持った箱を開けて言った。

「これ…ご存知かしら?ラザニアです」

「お母さんはね、結婚するまでお料理の先生だったんだよ!」

アサミちゃんは得意そうだ。

    「本当?すごいねぇ!」


私はすき焼きの用意をしていた。

「まあ!すき焼きですか?せっかく作って来たのに…」

    「一応準備はしましたけど、ラザニアをいただきたいですわ」

「娘から住宅にお住まいだと聞いたので

 ごちそうは出ないと思っていたんですよ。

 ラザニアなんか食べたこと無いだろうと思って、腕をふるいましたのに」

聞き違いかと思ったが、まったく悪意は無い…無邪気なもんだ。


お母さんは、食事をしながらしゃべりまくる。

うちは地元の名士で、よそとは違う…

実家はもっとすごい…などの、まあ自慢話。

あとはひたすら旦那と姑の悪口だ。

アサミちゃんの顔が見る見る曇り、下を向いてじっと聞いている。


「この子の不登校もね、父親や姑が悪いんですよ。    

 冷たくて外ヅラがいいんです。

 アサミは敏感なので、そこらへんを見抜くんですよね。

 学校へ行けないのも、みっともない、恥ずかしい、ばっかりで

 あげくには全部私の責任にするんですから」


もしかしたらこれが長引いてる原因?と思うが

他人が余計なことを言っても、このお母さんは永遠にわからないだろう。

仲良くせぃ、よそで悪口を言うな…と言われて

そうできるのならとっくにしている。

そして両親が不仲という現実は

アサミちゃん自身が受け止めて越えていくべきものなのだ。


それからもアサミちゃんはうちに来たが

私の仕事が忙しくなったので、だんだん疎遠になっていった。

来なくなった頃、アサミちゃんは学校へ行くようになった。

どうしているかな…と、時々思う。
     
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受難

2009年09月11日 20時43分26秒 | みりこんぐらし
先日から、私の美貌!は存続の危機に瀕しておるのじゃ。

急に目の周りが腫れたのじゃ。

原因はわかっている…おとといつけたアイカラー。


私は今、シルバーとゴールドが組み合わせになってるやつを使っていて

色がつかずにラメだけがキラッとするシルバーの部分ばかりをつけていた。

なにしろ上品!で控えめ!な私であるから

あんまりお派手なのは嫌だけど、少しは流行も取り入れたいじゃない…。

ラメはメイク落としに一手間かかるけど、ボロがよく隠れるんじゃよ。


しかし、お気に入りのシルバーは当然減っていく。

底の見え始めたシルバーと、まったく手つかずのゴールドが

小さな容器の中でせめぎ合っている。


「フン!私はみりこんさんのお気に入りだもんね!」

「何言ってんのよ!私なんてね、処女よ!使い古されたあんたとは違うのよっ!」

「私らはね、使われてナンボよっ!」

「もうじき無くなるあんたに花を持たせてあげてんじゃないのっ!」


金さんと銀さんは、激しく争う…ように見える。

オーナー!である私としては、二人に仲良くしてもらいたい。

そこで、今後は金さんも平等に使用することにした。


使用感…銀さんより粒子が細かくてフワリとしており、なかなか良い。

ラメ感…粒子が細かい分おとなしく、むしろパール感に近いので発色が良い。

仕上がり…ここが問題…目の周りは輝く黄金色となりにけり。


…ま、彫りの浅いツタンカーメンってとこか。

やはり使えないという結論に至る。


異変は翌朝起こった。

上下のまぶたが真っ赤に腫れている。

「なんじゃこりゃ~!」


その時は「季節の変わり目」「老化」という慣れた理由で一応納得し

こういった万一の時におすがりする副腎皮質ホルモン配合の塗り薬を使用。

危険と言われる薬品だが、よく効くので

放置して触ったりかきむしったりするよりはダメージが少ない。

これで改善しなければ病院だ。


翌日…つまり昨日、少しマシになっていたので化粧をしてみる。

金さんは似合わないとわかったので見捨て、いつもの銀さん使用。

なんか、目の周りが時々かゆい。


そして夜…風呂上がりに自分の顔を見てぶったまげる。

メイク落としをした時もちょっとおかしかったが

風呂の熱で悪化したのであろう。

そうね…お岩さんが京劇に出演している感じかしらん。

やばいで…こりゃ。

得意満面で家族に見せびらかし、同情を欲しいままにする。


そして今朝…またおさまっていたので化粧をする。

アイカラーまで進んで、はたと気づいた。

もしかして原因は…金さん?


おとといはべったり塗ったから腫れた。

昨日は直接つけなかったけど、チップは同じものを使った。

アイカラーをつけた範囲そのまんまが腫れた。

またこのチップを使うと、京劇に逆戻りだ。

慌ててチップを捨てる。


金さん…長い間放置していた私を恨んでいたのかもしれない。

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接遇

2009年09月09日 23時20分58秒 | みりこんぐらし
テレビ番組で最近話題のおかた…平林都女史。

接遇教育のプロだそうだ。

相手が誰であろうと、歯に衣着せずポンポン言うのは小気味よい。

仏頂面だった男や女が、見る見る変化していくさまも面白い。

他人事だから笑っていられるんだけどね。

自分だったら…我が子だったら…泣いちゃうかもねん。


接遇…これを身につければ、自分も周りも幸せになれるとおっしゃる。

仕事だけでなく、家庭にも必要だとおっしゃる。

もっともだ。

なにより、野生社会人の意識改革において

大きな功績を果たされていると思う。


このところ我が家でも、少々異なる意味で平林女史がブームである。

彼女が出演する番組を子供たちが見たことから始まる。

あれ以来、私は家族から「平林さん」と呼ばれているのだ。


「笑え!」「返事せぃ!」「ボヤボヤすな!」

などと早口に短く言う所がそっくりだと大笑いする。

うっ…否定できない。


弁解になるが、そんな言い方になったのには理由がある。

それは3世代同居をしていた頃にさかのぼる。


祖父母というのは、嫁が孫にガミガミ言うのを一番嫌がる。

うるさいのと孫がかわいそうなのとでいたたまれなくなり

「ご近所に聞こえる」などと割って入って、うやむやにしてしまう。

たまにはいいが、いつもだと躾にならない。

元々キツい性格もあり

短くて効率の良いこの方法が自然に編み出されたのだ。


「小学校の時、子供会で海へ行ってサンダルが流れた時も怒られた」

次男が恨めしそうに言う。

そんなことあったっけ?とうそぶく私。

「金で解決できることで泣くな!って言われた…

 こっちはショックで嘆き悲しんでるのによぉ」


ビーチサンダルは、海の家でたくさん売っている。

無くした物を惜しんで涙を流すヒマがあったら

さっさと買いに行けばいいのだ。

人命に関わる思いがけない不幸というのは、時として

取るに足りない物に執着した瞬間に訪れる。


しかし、いったんは抱きしめてお上手をし

サンダルのお悔やみを言う必要があったかもしれぬ。

子供への接遇…まるでなっていない。


長男は中学の時、学校へ行きたくない時期があった。

思春期にありがちな反抗だろうが

気にいらない原因を探しては、足音高く自室に入り

鍵をかけて閉じこもりやがる。


私は金属バットを取り出す。

まず飾りガラスの部分を割り、手を突っ込んで鍵を開け

ネジ回しでドアごとはずす。

学校へ行かないのは勝手だが、鍵をかけて閉じこもるのはダメなのじゃ。

     「ドア無しでやってみぃ」


ドアが無いと、スースーしていまひとつ気分が出ないらしく

攻防は終了した。

「あの時はジェイソン(映画『13日の金曜日』に出て来る殺人鬼)

 みたいだった」

といまだに言う。

これも接遇どころの騒ぎではない。


そういうことを平気でするから、夫にも夫の両親にも嫌われるのだ。

両親は「家を破壊した」と言って、当分の間怒っていた。


一族の嫌われ者でありながら、子供には

「人には好かれてナンボじゃ!」などと言う。

ああ…恥ずかしい。

せめて残りの人生は、他人にはもちろんのこと

家族にも「接遇」の2文字を頭に入れて接しよう…といつになく謙虚に考える。


そう考えたハシから

その心持ちが適用できそうにない人々の顔が浮かぶ。

困ったものだ。
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DSコンパクト

2009年09月07日 19時05分52秒 | みりこんぐらし
先日、久しぶりに数人の友人と集まった。

男女混合、気の置けない仲間たちである。


家族ぐるみで温泉旅行の計画があるが、日取りがなかなか決まらない。

女性特有の都合があるからだ。

「月初めは…」

「中旬は…」

と“現役”の女たちはグズグズ言う。

「あ~!めんどくさい!女は気の毒ねぇ!」

去年子宮を取ったヤスコと、アガッた私は勝ち誇ったように言う。


「え~?それじゃおまえら、もう無いんか!」

男性陣は心底驚いた様子で口々に言う。

男はたいてい年下の奥さんをもらうので

まだ別世界の話なのだ。


   「そうじゃ。避妊の必要もないが、使い物にもなりゃせんで!」

「うへ~!ショック!みんなもうそんな年か~!」 

みんなじゃない、この子たちだけだ…と現役の女たちは反論する。

フン…開き直るヤスコと私。

無くなっていかに気楽かを力説する。


「あ、みりこん、ほっぺにソースがついてるよ」

隣りに座っていたカズヤが、おしぼりで拭いてくれる。

カズヤはいつも優しい。


彼は晩婚だったので、子供がまだ小さい。

慣れた手つきで拭いてくれるが

育ち盛りの子供と私を一緒にしてもらっては困る。

すっぴんの小学生と、色々塗りたくった私の土台は異なる。


「わはは!化粧が取れた!」

と、一部ベージュに変色したおしぼりを見て笑うカズヤ。

    「おのれ…よくも仮面をはいだな!」


話題は、孫が生まれておじいちゃんになったメンバーのことから

老眼鏡を買うのはどの店がいいかに移っていた。

    「孫も老眼鏡もあきらめるけど、ボケるのは嫌よね~!」    

などと笑いながら、おもむろにバッグからコンパクトを取り出す。

    「せっかく塗った仮面を…」

ダメージ確認のため、パカッと開けてのぞき込む私…。
 

「おまえ、何…それ…」

「DSじゃん!」

     「…うぅ…そうとも言う…」

「ギャハハハ!」


仕方なく、パタパタと粉をはたく真似をする。

どうも間違えたらしい。

出かける前に、ひそかな趣味…桃太郎電鉄をやっていた。

今使っているファンデーションの入れ物とDSは、白くてよく似ている。

重さは全然違うのに、まったく気がつかなかった。


「頭、大丈夫か…?」

といたわられる。

メイク直しをあきらめ、笑われるに任せる私であった。
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ササエさん

2009年09月05日 13時16分23秒 | みりこんぐらし
3年前…顔見知りのサナエは、出会い系で知り合った彼氏に夢中だった。

バツイチ35才…中学生の女の子が1人…パート勤めを転々。

将来のことを考えれば、何かと揺れやすい時期ではある。


「彼はね、中国でIT関係の会社を興す準備をしてるのよ」

たまに町でバッタリ会えば、二言三言会話する程度だが

サナエ、その時は絶好調。

嬉しくて誰にでも聞いてもらいたいのだろう。


「私に一緒に来て欲しいんだって!

 彼の仕事をサポートして、支えていくつもりよ!」

ドブでダイヤを拾ったような勢い。


ウソぴょ~ん…と言いたいが、グッと我慢。

海外で起業しようかという男が、出会い系なんかやってるヒマは

ありゃせんわい…

などと人の幸せに水を差すようなことを言ってはならん…言いたいが。


それが周囲から見て非常に危ういものであっても

人に指摘されたくはないだろう。

若くなければなおさらである。


彼の写メも見せてくれた。

顔で判断しちゃいけないけど…

とてもじゃないが、異国で一旗揚げようなんて顔じゃねぇぞ。

しかし恋とはそういうもの…

コケた頬やキツネ目が、鋭く精悍に見えるんじゃろうな。


    「良かったわねぇ…いい人と知り合えて。

     そりゃ中国語を習いに行かねば」


「…中国語?」

サナエは意外…という顔をする。

    「そうよ。言葉ができないと、支えるどころかお荷物じゃん」

まだまだ夢の中で遊んでいたいのを

現実に引き戻されて、目が泳ぐサナエ。

幸福をねたんでいると思われては心外なので

     「じゃあね~!日本を発つ前には知らせてね!」

と、こちらも急いで切り上げる。


それから数ヶ月後、またバッタリ会った。

まだ日本にいるの?などと意地の悪いことは言わない…言いたいが。

「彼ね…信じていた部下に大金を持ち逃げされて

 すべてがダメになったらしいの…」

     「あら、大変だったねぇ」 


ほっほっほ…壮大な絵巻ですこと…

大金ねぇ…千円?二千円?…なんて言わない…言いたいが。


「でも夢はあきらめないって。

 私、彼が夢を叶えるまで支えることに決めたの!」


起業する前から部下がいるなんて、たいしたもんだ…と言っておく。

もちろん、サナエにその真意は伝わっていない。

     「あまり遠くへ行きなさんな。寂しくなるから」

と言って別れる。


次に会ったのは去年。

「彼、執行猶予中だったのに事故を起こして、こないだ拘置所に入ったの。

 刑が終わるまで支えるつもり…」

と言っていた。


罪状…免許失効中のひき逃げ。

執行猶予中に海外起業を豪語していたわけだ。

なかなかの度胸じゃんけ。

ま、オリの中なら安心だ。


面会は身内以外無理なので、会えない…と嘆く。

出しゃばりな私は、つい「内妻ということにすればイケるらしい」

と口走りそうになるが、耐える。

大ウソつきのひき逃げ男になんぞ、もう会わんほうがいい。


しかしサナエはその後、警察で聞いて内妻として申し込んだ。

でもダメだった。

彼が既婚者だったからである。

サナエからそう聞いて「もうよしな…」と言った。


「う…ん…」

と下を向く彼女…今度は彼の妻にこだわっているのだ。

「きっと奥さんが別れたくないと言い張ってるんだわ。

 彼はとっくに別れたと言ってたもん。 

 離婚が成立するまで支えるつもり…」


何をどうやって支えるのやら…。

支える支えると簡単に言う者に限って、ちゃんと支えになった試しは無い。


あれから会っていない。

本当に会わないのか、避けられているのかは知らない。
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余計なお世話

2009年09月03日 12時46分30秒 | 検索キーワードシリーズ
検索キーワードが、また貯まってきたぴょん♪

余計なお世話、いきま~す!


総選挙があったせいか、うぐいす関係多し。

『選挙 ウグイス コツ』『選挙 ウグイス 服装』

『選挙 ウグイス 当選コメント』『ウグイス娘 選挙』など…。


すでに遅いかもしれないが、今後のために大事な言葉を言っておこう。

「クッション」


普通に座ると、手を振るたびに窓ワクに腕が当たり

脇の下が半日で腫れ上がる。

窓ワク…凶器じゃ。

よって、最初から堅めのクッションで座高を上げておく。

特にシートが柔らかくて体が沈む普通車の場合は、必須である。



深刻なムード漂うものにはエールを送ろうかいのぅ。

『家族の浮気を目撃』

霊やUFOより刺激的ではある。

私も子供たちも何回かデート現場を見たが、とりあえず健康に害は無いようだ。

はからずもこのような事態に遭遇した際は

珍しいものが見られた…と思っていただきたい。



『不倫相手から近所に言いふらされた』

不倫相手本人が何軒も訪問して話すより

聞いた者が喜んでふれまわるほうが、数が多いと思う。

しかし気にすることはない。

言われるのはタダじゃ…痛くも痒くもない。

楽しい話題を提供してやった…感謝せぃ…と思っておればよい。


バカとつきあったんだから、仕方がない。

あきらめて開き直っていれば、いずれ静かになる。



バカで思い出したが、長男は小学生の時

父親と教師の不倫が原因で大好きだった少年野球を辞めた。

夫がコーチになったからだ。


話があった時、おとなしくしておけ…と強く止めたが、隠れて引き受けていた。

案の定、別のコーチを推していた親から

「教師を誘惑するような人間が子供の指導者になる資格はない」

と糾弾される羽目に陥る。


いやはや、ごもっとも。

夫の不倫相手は長男の副担任…チームメイトたちの先生でもあるのだ。

長男は、その日のうちに退部させた。


断腸の思いであったことは言うまでもないが

つまらぬことでチームを反対派と肯定派に分裂させるくらいなら

腸の1本や2本、どうってことない。

長引くと他の子供たちに良くないと思い、早急な解決策を選んだ。

今ならプラカードとメガホン持って、毎日グラウンドに立つかもしれないが

当時の私には、それしか思いつかなかった。


長男の退部を聞いて、糾弾組は慌てふためき

「子供まで追うつもりは…穏便に…」と引き止める。

子供の人権問題に発展するのを怖れているのだ。

人を攻撃するなら、シカバネまで予想しろと教えてやった。

夫を辞めさせて長男だけ残すのは、みじめったらしいではないか。


当の夫はケロッとしている。

こういう父親の元に生まれてきたからには

子供にも覚悟を持ってもらわねば、無事に生きては行けない。

それでも、買ったばかりのキャッチャーミットやプロテクターを眺めると

黙って退部に従った長男に胸が締めつけられた。


表向きは円満退部を装ったので、ホッとした彼らは

「もう必要ないだろうから、用具をチームに寄付して欲しい」と言ってきた。

バカというのは、そういうもんだ。

さっさと燃えないゴミに出す。


ショックだのトラウマだのと

自分はおろか息子まで悲劇の主人公に仕立ててしまうと、立ち直りが遅れる。

わざわざメゲた所を見せて、バカどもにサービスしてやる必要は無い。


その後長男は、柔道の道を歩んだ。

成人してからは、野球チームにも入った。

実は、長男が再び野球をするようになって、胸をなで下ろした私である。


糾弾組は20年近く経った今でも、私たち母子を見るとコソコソ姿を隠す。

後ろめたいことをすると、後が忙しいようだ。

私も長男もバカをいつまでも相手にするほどヒマではないので

気にしないでいただきたいと思う。

人のことをバカバカ言っているが、我々こそバカ一家だと自負している。



『子宮頸癌 夫の浮気が原因』

ウィルス感染が大きな原因だと聞く…ワクチンも開発されたそうだ。

よその亭主と簡単にくっつく女は、他の男とも簡単にくっつく。

よその女が気になる男もしかり。

そして浮気した亭主を介して妻に感染するという。

まこと、リスクの高いお遊びである。


妻のほうはたまったもんじゃないが

浮気者の多い私の周囲に、この病気の人はまだいない。

それだけで判断するのは乱暴であるが、確率はそう高くないのかもしれない。

むやみに怖れるより、予防と早期発見だ。


ウィルス感染が原因ということで

以前は、遊んだ女性がこの病気になるという偏見があった。

確かにそういう人もいたかもしれないが、そうでない人もたくさんいたと思う。

誤解を受けた女性たちの冥福を心から祈る。


『姫を思いやれるあんたはなかなかいい男じゃねぇか』

映画かドラマのセリフでしょうかね…じゃ、うちに居るのは

よその姫を思いやるとってもいい男ということに…へへへ。


『竹輪の耳』

鼻はぜひハンペンかツミレでお願いします。


『夫がスカートはいた』

おお!次は何を着るか楽しみですね!


『不倫した夫を利用する』

うちはせいぜいゴミ出しと荷物持ち、飲み会の送迎くらいですが

他にあったらぜひ教えていただきたいものです。

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お引っ越し

2009年09月01日 11時45分06秒 | みりこんぐらし
朝、家でいつものごとくタラタラしていると

「ワ~ッ!」という叫び声と共に

「ガラガラ…ガシャン!」

大きな音がした。


何事か!

足取りも軽く外へ出る物見高い私よ。

な~んだ…向かいのアパートが引っ越しの最中。

2階から運び出した家具が、地面に落下したのだった。


「あ~あ…」

数人の業者が、その残骸を囲んで立っている。

私もつられて、つい「あ~あ」と言ってしまった。


黄色の作業着と帽子を被った5人が、いっせいに振り返る。

…おじいさんばっかり。

おばあさんの私が、人をおじいさんと呼ぶのは失礼だろうが

こうまでおじいさん揃いだと、派手な作業着も痛々しさすら漂う。


引っ込みがつかないので

「暑いのに大変ですね!」

と元気に言う。

涼しいけど、このさい仕方がない。


「いいの、いいの。

 ここの荷物、どう処分してもらってもいいと言われてるから」

わたしゃびっくりして出てきただけだ。

荷物がどうなろうと、知らんわい。


でも…と、彼らは言う。

「ホウキが無い」

散らばったカケラを掃除したいが、ホウキを忘れたと言う。

こういう作業に慣れていないらしい。

    「ああ、貸してあげますよ」

出しゃばりな性分ゆえ、さっそくホウキと缶ジュースを持って行く。


彼らが言うには、元は別の会社だったのが

昨年から引っ越しの仕事も請け負うようになったらしい。

「こないだまで内勤だったのが、いきなり引っ越しをやれと言うんじゃ」


あ~…わかるよ…。

事務職が長かったんでしょうね。

同じく驚いて、顔を出した近所の人たちに

「すみません」も言えないもんねぇ。


新しく人を雇う余裕が無いので、年配の社員が駆り出されていると言う。

おそらく退職を促されているのだ…

年取って、初めての肉体労働はコタえるだろうな…と思う。


「この部屋は、荷物を残したままドロンしたんじゃ」

こんな依頼が時々あるそうだ。

近所の人たちも交えて、不況だもんねぇ…などと楽しくおしゃべり。


「欲しい物があったら言いなさい。家まで運んであげるよ」

と親切に言ってくれるが、ドロンした人の家財道具なんか欲しくないぞ。


頑張ってね…ホウキは古いからあげる…

と言い、お互いに手を振って立ち去る。


トラックには“お引っ越しのワカイ”と書いてあった。

…若くないだろ。
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