昨日は、家族でテレビを見た。
南の島へ移住した大家族のドキュメンタリーだ。
多少の演出があるにしても、お父さんのマメさや
子供たちのけなげさ賢さ、お母さんの脳天気ぶりは楽しくて
つい見入ってしまう。
夫婦というのは、二人足して100なのかな…と思う。
何でも出来る手八丁口八丁のお父さんと暮らしていたら
お母さんはいまだに家出するしないの次元で、ウロウロするしかないのだろう。
Tシャツから透けるきつそうな黒いブラジャーが
妙になまめかしいのはご愛嬌か。
以前、長男は子だくさん家庭の実録ものを嫌っていた。
「他人の無計画と貧乏を笑う番組だ」
と一人で怒って別室へ行った。
「生活が苦しいと言いながら、親はタバコを吸って酒を飲んで
髪まで染めている」
おかしい…と言うのだ。
ところが茨城のイシダさんちあたりから、わりと鷹揚になってきた。
ここは経済力がある上に、会話が豊富。
親はもちろん子供の考えもしっかりしていて
「みじめ」や「あわれ」が皆無だ。
それらが理由なのか、長男がオトナになったのかは不明である。
20年余り前だろうか…
この方面の元祖とも言えるミヨシさん一家がきっかけで
テレビ界に大家族ブームのようなものが起こった。
とり散らかしたよその家をのぞき見る楽しみ…
炭水化物中心の偏った食事…
その中で、泣いたり笑ったり鼻をたらしたりする幼児…
年かさの子供はなぜかお決まりのヤンキー道…
出演料がかさまないので、テレビ局は経費が抑えられ
視聴者はそこそこ感動できる、お得な企画だったと思う。
以来大家族が続々と取り上げられ、各局が競って放映した。
そのうちの一軒の子供に、知り合いがいる。
私は見ていなかったが、数年に渡り放映されたと言う。
今は知らないけど、当時は
取材されている間、毎月なにがしかの出演料が支払われたという。
彼の家は10万くらいだったそうだ。
しかし、両親はそのお金を全部パチンコにつぎ込んでいた。
放送されると、全国からお金はもちろん米やおもちゃが届いたそうだ。
テレビ局の人はそそのかす…「もう一人、頑張りましょう」
赤ちゃんが出来れば、視聴率が上がると言う。
彼の両親は、それに応えて次々と頑張った。
「生まれたから取材されるんじゃなくて
お金をもらい続けたいから作って生む…うちの場合、すでに逆なんだよね」
彼は回想する。
「親のいない時にチビたちがケガしても、カメラマンはまず撮る。
電気が止められて、ろうそくで火事になりかけても
何でも、撮ってからだよ。
子供心に、いつも何か不幸を期待されてる気がした」
幸せのシーンはどうにでも作れるので、意外な不幸が欲しいらしい。
やがてブームもひと段落した頃、お母さんは無理がたたって体を壊し
両親が離婚して、放送も終了した。
他人の目があると、後に引けなくなる部分があるのかもしれない
凝視され続ける生活は、思いのほかストレスが強いようだ。
そういえば、あのミヨシさん夫妻も離婚したっけなぁ。
その点南の島の家庭は、過去に一度壊れているので柔軟性を感じる。
子供の増加に生活設計が追いつかないハラハラ感の中で
起きたことを当たり前として受け止め、転がされて行く…
一種達観の境地が小気味よい。
愛情を照れや忙しさでうやむやにしないところが立派だと思う。
みんなで黙って見ていると、夫はだんだんソワソワしてきて
「金が無いと開き直って放任か、反対に手を掛けるしかないよな」
などとけん制する。
あの親父さんと比べられちゃ、たまったもんじゃないと思うのだろう。
比べやしないって。
自分のやることに絶対の自信がある人は、それだけ口うるさいもん。
だからあんたは開き直って放任したんだね…ひひひ…と思うが
私もオトナ…そんなこと言わない。
息子たちは、ふふふ…と笑う。
それぞれの思いを胸に、秋の夜長は靜かに更けていくのであった。