けいちゃんの家じまいに関する作業は、合計5日かかった。
帰って来たら、まず処分する物としない物の仕分けに2日間
3日目にF工業が現地に行って見積もりを出す。
社長は山陰支社へ出張中だったので、けいちゃんの実家には部長が行った。
処分費用は4トントラック1台につき8万円
2トントラックだと6万円。
これは一般的な金額だ。
それを何台付けて何往復するかで、合計金額が変わってくる。
見積もりでは、合計で約50万円の金額が出た。
安いと思う。
実際にはトラックに積み込んでみないとわからないが
向こうも商売、最初に多めの金額を言っておいて
支払いが少なければ顧客は嬉しいので
高めの見積もりを出してくるはずだからである。
ここで気をつけたいのは、トラック1台分の値段がもっと安い所。
本当にその値段ポッキリで追加料金がいらないなら良いのだが
業者によっては処分場で処分してもらう処分料が
別料金になっている所もある。
安いからといって飛び付かず、作業にかかってもらう前に
処分料が別料金で上乗せされないかどうかをしっかり確認した方がいい。
また、家の立地も値段に影響する場合がある。
トラックが家に横付けできて
ドアや窓から直接積み込める家なら通常料金だけど
田舎の農家や豪邸ならいざ知らず
そのような便利な家は、ありそうであんまり無いものだ。
特に親が亡くなって無人となると
道が狭くてトラックが家のそばまで入らない家が多い。
車の乗り付けができなくて不便だから、誰も住まず無人になっちゃうのだ。
そのような家は、トラックを停めた場所まで人力で運搬しなければならない。
すると業者によっては処分料の他に、その手数料を請求する場合がある。
やはり見積もりの時に、ちゃんと確認する方が安全だ。
けいちゃんの実家も山の中腹で、細い坂道の上にある不便な場所。
しかしF工業は全部ひっくるめての値段なので
かなり良心的と言えよう。
そして2日間の作業が終わり、請求は36万円。
けいちゃんは自腹を切るつもりだったが、意外に安かったので
それまで沈黙を守っていたお兄さんが払ってくれることになった。
けいちゃんは、ものすごく喜んだ。
彼女が見積もりを出してもらった日の夜
我々5人会は集まって飲食にいそしんだ。
帰省後、初の女子会だ。
この日は珍しく、私が車を出した。
けいちゃんが横浜へ行くまでは
下戸の彼女が送迎をしてくれるのが習慣だったが
横浜へ引っ越してからは、うちの夫が送迎担当になった。
しかしこの日、忙しくて行けないと言っていたユリちゃんが
急きょ参加すると言い出したからだ。
「みんな揃って良かったね!」
と喜んだのも束の間、よく考えたら
いつもは居なかったけいちゃんが増えてるんだから
送迎係の夫を足したら、全員で1台の車に乗れんじゃないか。
うちもそうだけど、年を取ると大人数用の車は手放すのよね。
そこで、私が飲まずに運転することにした。
みんな「それじゃ悪いわ〜」とか言ってるけど、口先だけよ。
ともあれ夕方になったので、まずけいちゃんを迎えに地元へ。
急な坂道を車で上がれる所までバックで上がり
ルームミラーを見ながら彼女を待つ。
やがて、細い坂を下る彼女の姿が映った…
と思ったら、急に消えた。
マボロシを見たのかと思って車から降りてみると、違った。
坂道で転び、倒れていた。
「けいちゃん!」
駆け寄った時には、すでに流血。
額を少し切っていて、頬とアゴまで顔の半分は打ち身と擦り傷
腕と膝も怪我をしていた。
が、果敢にもこのまま行くと言う。
すごい根性だ。
そこで持っていたバンドエイドを貼ってやり
マミちゃん、ユリちゃん、それから私の町に戻って
モンちゃんを拾って女子会を敢行した。
次に会ったのは、けいちゃんの家じまいが終わって2日後。
怪我をしたし、家じまいが大変だったので
彼女が少し休みたいと言ったため、2日待ったのだ。
それからはほぼ連日、遊びほうけた。
ユリちゃんは最初の女子会だけで、後は忙しくて参加できないままだった。
お岩さんのようになった紫色の顔半分を
帽子と眼鏡とマスクで隠した怪しい姿のけいちゃんとあちこちへ行った。
大好きな車を手放して数年が経つ、けいちゃんの希望は高度だ。
「山陰へ行きたい」
しかし運転係を買って出てくれたマミちゃんが気の毒なので
「山陽で我慢せい」と言い、福山市にある鞆の浦(とものうら)へ。
鞆の浦は、坂本龍馬にゆかりのある港町だ。
この日、モンちゃんは参加しなかった。
ホテル鴎風亭(おうふいてい)のテラスで、はっさくレモンジュース。
日本海の代わりに瀬戸内海を眺めるのじゃ。

500円也。
ホテルのラウンジってお値段高めの設定かと思ったら
普通だったわ。
同じく鴎風亭のレストラン…名前忘れた…でランチ。

3850円也…だったと思う。
その翌日もまた、お出かけ。
この日はモンちゃんも参加した。
うどんが好きなけいちゃんは「四国に行きたい」と言い出したが
やはりマミちゃんに申し訳ないので、“四国に近そうな島”で誤魔化す。
島の名は、生口島(いくちじま)。
広島県内では瀬戸田(せとだ)と呼ばれる島だ。
日本画家、平山郁夫の生地であり、彼の美術館がある。
が、行ったことがあるのでそこはパスして
けいちゃんが食べたいと言っていた店でジェラート。

どうよ、この地味な色合い。
塩アイス、ピスタチオ、イチジク…
食べたいのだけをセレクトしたら、こういうことになっちまった。
750円也。
お昼はタコ飯が名物の店へ。

1400円也。
実はこれ、不本意。
私は味のついたご飯が、あんまり好きじゃない。
だから、こんなドンブリ飯級のタコ飯は頼んでない。
本来はモンちゃんが注文したものだ。
しかし配膳されたこれを見て、モンちゃんは言った。
「私、こんなに食べられない」
彼女の視線は、私の注文したうどんの隣に置かれた
ごく小さなタコ飯の入れ物に注がれていた。
「残したらええじゃんか」
私は言い、無視してうどんに取り組もうとした。
うどんも実は不本意なんだけど、タコ飯が控えめなメニューといったら
油もののタコ天丼や、暑いのに熱そうなレモン鍋の他にこれしか無く
うどん好きのけいちゃんが注文したので乗っかったのだ。
が、モンちゃんはブツブツ言うだけで手をつけない。
60年の長い付き合いだ。
節約家のモンちゃんの狙いはわかっている。
私のミニタコ飯と、彼女の大タコ飯を交換して欲しいのだ。
うどんと大タコ飯を腹に収めた私は
「悪いから両方払う」と言うに決まっている。
ミニタコ飯をもらったモンちゃんは、無料で済むというわけよ。
交換してくれるまで、絶対に動かない構え。
さっきアナゴ屋さんに入ろうとした時
「物入り…」
彼女がそうつぶやいたのを聞いて、けいちゃんは少し気にしていた。
だからアナゴ屋さんをやめ
幾分安いタコ飯屋さんで妥協した我々であった。
結果、モンちゃんの大タコ飯と私のミニタコ飯を換えてやった。
ただし言いなりになるのはシャクなので
うどんもひっくるめて全部換えた。
よって大タコ飯が私の前にある。
意地で食べた。
不本意だ。
モンちゃんは、私から渡されたうどんとミニタコ飯のお盆を見て
「そんなに食べられない」と抵抗したが、ペロッと完食していた。
不本意だ。
その後も、けいちゃんが横浜へ帰るまで遊びまくった。
この次は、いつ会えるかわからないのだ…
ひょっとしてこれが最後になるかもしれないのだ…
なんて思いながらも楽しかった。
しかし出かけ慣れない私が連続出勤すると
いつもそうなるように、何だか体調が…。
暑過ぎ、食べ過ぎ、はしゃぎ過ぎよ。
そろそろ体調が戻ってきたので、ホッとしている。
帰って来たら、まず処分する物としない物の仕分けに2日間
3日目にF工業が現地に行って見積もりを出す。
社長は山陰支社へ出張中だったので、けいちゃんの実家には部長が行った。
処分費用は4トントラック1台につき8万円
2トントラックだと6万円。
これは一般的な金額だ。
それを何台付けて何往復するかで、合計金額が変わってくる。
見積もりでは、合計で約50万円の金額が出た。
安いと思う。
実際にはトラックに積み込んでみないとわからないが
向こうも商売、最初に多めの金額を言っておいて
支払いが少なければ顧客は嬉しいので
高めの見積もりを出してくるはずだからである。
ここで気をつけたいのは、トラック1台分の値段がもっと安い所。
本当にその値段ポッキリで追加料金がいらないなら良いのだが
業者によっては処分場で処分してもらう処分料が
別料金になっている所もある。
安いからといって飛び付かず、作業にかかってもらう前に
処分料が別料金で上乗せされないかどうかをしっかり確認した方がいい。
また、家の立地も値段に影響する場合がある。
トラックが家に横付けできて
ドアや窓から直接積み込める家なら通常料金だけど
田舎の農家や豪邸ならいざ知らず
そのような便利な家は、ありそうであんまり無いものだ。
特に親が亡くなって無人となると
道が狭くてトラックが家のそばまで入らない家が多い。
車の乗り付けができなくて不便だから、誰も住まず無人になっちゃうのだ。
そのような家は、トラックを停めた場所まで人力で運搬しなければならない。
すると業者によっては処分料の他に、その手数料を請求する場合がある。
やはり見積もりの時に、ちゃんと確認する方が安全だ。
けいちゃんの実家も山の中腹で、細い坂道の上にある不便な場所。
しかしF工業は全部ひっくるめての値段なので
かなり良心的と言えよう。
そして2日間の作業が終わり、請求は36万円。
けいちゃんは自腹を切るつもりだったが、意外に安かったので
それまで沈黙を守っていたお兄さんが払ってくれることになった。
けいちゃんは、ものすごく喜んだ。
彼女が見積もりを出してもらった日の夜
我々5人会は集まって飲食にいそしんだ。
帰省後、初の女子会だ。
この日は珍しく、私が車を出した。
けいちゃんが横浜へ行くまでは
下戸の彼女が送迎をしてくれるのが習慣だったが
横浜へ引っ越してからは、うちの夫が送迎担当になった。
しかしこの日、忙しくて行けないと言っていたユリちゃんが
急きょ参加すると言い出したからだ。
「みんな揃って良かったね!」
と喜んだのも束の間、よく考えたら
いつもは居なかったけいちゃんが増えてるんだから
送迎係の夫を足したら、全員で1台の車に乗れんじゃないか。
うちもそうだけど、年を取ると大人数用の車は手放すのよね。
そこで、私が飲まずに運転することにした。
みんな「それじゃ悪いわ〜」とか言ってるけど、口先だけよ。
ともあれ夕方になったので、まずけいちゃんを迎えに地元へ。
急な坂道を車で上がれる所までバックで上がり
ルームミラーを見ながら彼女を待つ。
やがて、細い坂を下る彼女の姿が映った…
と思ったら、急に消えた。
マボロシを見たのかと思って車から降りてみると、違った。
坂道で転び、倒れていた。
「けいちゃん!」
駆け寄った時には、すでに流血。
額を少し切っていて、頬とアゴまで顔の半分は打ち身と擦り傷
腕と膝も怪我をしていた。
が、果敢にもこのまま行くと言う。
すごい根性だ。
そこで持っていたバンドエイドを貼ってやり
マミちゃん、ユリちゃん、それから私の町に戻って
モンちゃんを拾って女子会を敢行した。
次に会ったのは、けいちゃんの家じまいが終わって2日後。
怪我をしたし、家じまいが大変だったので
彼女が少し休みたいと言ったため、2日待ったのだ。
それからはほぼ連日、遊びほうけた。
ユリちゃんは最初の女子会だけで、後は忙しくて参加できないままだった。
お岩さんのようになった紫色の顔半分を
帽子と眼鏡とマスクで隠した怪しい姿のけいちゃんとあちこちへ行った。
大好きな車を手放して数年が経つ、けいちゃんの希望は高度だ。
「山陰へ行きたい」
しかし運転係を買って出てくれたマミちゃんが気の毒なので
「山陽で我慢せい」と言い、福山市にある鞆の浦(とものうら)へ。
鞆の浦は、坂本龍馬にゆかりのある港町だ。
この日、モンちゃんは参加しなかった。
ホテル鴎風亭(おうふいてい)のテラスで、はっさくレモンジュース。
日本海の代わりに瀬戸内海を眺めるのじゃ。

500円也。
ホテルのラウンジってお値段高めの設定かと思ったら
普通だったわ。
同じく鴎風亭のレストラン…名前忘れた…でランチ。

3850円也…だったと思う。
その翌日もまた、お出かけ。
この日はモンちゃんも参加した。
うどんが好きなけいちゃんは「四国に行きたい」と言い出したが
やはりマミちゃんに申し訳ないので、“四国に近そうな島”で誤魔化す。
島の名は、生口島(いくちじま)。
広島県内では瀬戸田(せとだ)と呼ばれる島だ。
日本画家、平山郁夫の生地であり、彼の美術館がある。
が、行ったことがあるのでそこはパスして
けいちゃんが食べたいと言っていた店でジェラート。

どうよ、この地味な色合い。
塩アイス、ピスタチオ、イチジク…
食べたいのだけをセレクトしたら、こういうことになっちまった。
750円也。
お昼はタコ飯が名物の店へ。

1400円也。
実はこれ、不本意。
私は味のついたご飯が、あんまり好きじゃない。
だから、こんなドンブリ飯級のタコ飯は頼んでない。
本来はモンちゃんが注文したものだ。
しかし配膳されたこれを見て、モンちゃんは言った。
「私、こんなに食べられない」
彼女の視線は、私の注文したうどんの隣に置かれた
ごく小さなタコ飯の入れ物に注がれていた。
「残したらええじゃんか」
私は言い、無視してうどんに取り組もうとした。
うどんも実は不本意なんだけど、タコ飯が控えめなメニューといったら
油もののタコ天丼や、暑いのに熱そうなレモン鍋の他にこれしか無く
うどん好きのけいちゃんが注文したので乗っかったのだ。
が、モンちゃんはブツブツ言うだけで手をつけない。
60年の長い付き合いだ。
節約家のモンちゃんの狙いはわかっている。
私のミニタコ飯と、彼女の大タコ飯を交換して欲しいのだ。
うどんと大タコ飯を腹に収めた私は
「悪いから両方払う」と言うに決まっている。
ミニタコ飯をもらったモンちゃんは、無料で済むというわけよ。
交換してくれるまで、絶対に動かない構え。
さっきアナゴ屋さんに入ろうとした時
「物入り…」
彼女がそうつぶやいたのを聞いて、けいちゃんは少し気にしていた。
だからアナゴ屋さんをやめ
幾分安いタコ飯屋さんで妥協した我々であった。
結果、モンちゃんの大タコ飯と私のミニタコ飯を換えてやった。
ただし言いなりになるのはシャクなので
うどんもひっくるめて全部換えた。
よって大タコ飯が私の前にある。
意地で食べた。
不本意だ。
モンちゃんは、私から渡されたうどんとミニタコ飯のお盆を見て
「そんなに食べられない」と抵抗したが、ペロッと完食していた。
不本意だ。
その後も、けいちゃんが横浜へ帰るまで遊びまくった。
この次は、いつ会えるかわからないのだ…
ひょっとしてこれが最後になるかもしれないのだ…
なんて思いながらも楽しかった。
しかし出かけ慣れない私が連続出勤すると
いつもそうなるように、何だか体調が…。
暑過ぎ、食べ過ぎ、はしゃぎ過ぎよ。
そろそろ体調が戻ってきたので、ホッとしている。