殿は今夜もご乱心

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施設ジプシー・5

2025年02月23日 09時04分33秒 | みりこんぐらし
施設を手当たり次第に探すのではなく

サチコが居着きそうな確実な所を一発で決めたい…

そんな野望を抱くようになった私。

そう、これは野望よ。

一発で決めるなんて、ほぼ無理だとわかってるわよ。


が、一発で決めたいのには理由があった。

だって数打ちゃ当たるの方針だと、その度に見学がついて回る。

いや正確に言うと、見学という名の長い面談だ。

私は、できればこの面談をしたくない。

くたびれるからだ。

去年の秋、サチコが通うことになったショウタキから呼ばれて

最初に面談をした時も、2時間ぐらいかかって頭が痛くなったもんね。


ショウタキだけではない。

入院の時も、長い面談があって辟易した。

最初は私だけ、次はサチコを交え

相手は変わったり変わらなかったりの面談に継ぐ面談で

ヘトヘトになった。


年を取ると、初めての人に会うって疲れるのよ。

しかも面談では、かなり突っ込んだ話をする。

まず家族構成…うちは複雑だもんで長くかかるんじゃ…

それからサチコの経歴や性格、ライフスタイル、お金のこと…

プライバシーも何も、ありゃせんのじゃ。

だけど黙秘権は使えない。

問われるままに話さないと、申し込みのスタートラインに立てないもん。

知らない人と長時間、ほじくった話をするのは疲れるのよ。


とはいえ老人の家族にあれこれ話させて

胸の内を吐き出させるのは介護界の常識。

他人には簡単に言えないことを優しく聞いてあげると

何もかも知られた家族は従順になる。

そしたらその後の交渉が、スムーズに行くというわけ。

物品のセールスも同じで、顧客の話を存分に聞いてあげたら 

信頼関係ができるので、物が売れやすいってもんよ。


が、はっきり言って私は面談アレルギー。

長話でくたびれても、帰宅したら家事が待っている。

外で何があっても、家に帰ったら平常運転なのじゃ。

「疲れたから、ちょっと横になるわ…あとよろ」

なんて芸当はできないのじゃ。

疲れるわけにはいかない、特にあのサチコのことなんかでっ!

よって面談の回数はできるだけ少なくしたいのが、私の本音。

だからできれば、一発で決めたい。


さりとて当ては無し、介護界初心者の私が考えたって

名案が浮かぶはずもないまま数日…

やがてみんなの介護で電話をした隣市の有料老人ホームから

パンフレットが届いた。

近頃は郵便の体制が変わって、週末を挟むと郵送が何日もかかるのだ。


懇切丁寧なパンフレットを眺めつつ、また考える。

車で小一時間は遠いよな〜。

まず私が行って面談と見学、次に退院したサチコを連れて面談と見学

万一、それで決まったとして

今度は体験宿泊に連れて行って、連れて帰って…。


そうよ、体験宿泊!あなどれん!

本人が体験したいと言えば、家族は断れない。

同級生モンちゃんの姑さんも、体験宿泊をした。

暴力を振るう息子のキンテンから引き離すために施設入りとなったが

まずは体験ということで二泊三日、山の中の施設に泊まった。

その際、嫁のモンちゃんも一緒に泊まることを施設から促され

同じ部屋で寝起きしたという。

ひ〜!私には無理無理無理!


で、余談だけどキンテンのやつ、認知症の母親に苛立ち

殴る蹴るで何度も警察沙汰になりながら

その母親が施設に入ると、毎日面会に通ったそうだ。

ほら、無職で暇だからさ。

近くに居る時はいじめ、離れると恋い慕う…危ないヤツだ。


さらに余談だけどキンテンのやつ、毎日施設には通うものの

洗濯物を持って行ったり帰ったりは絶対にしない。

だからモンちゃんは仕事帰りに通って、洗濯物を届けたそうだ。

ほんと、役に立たない男!捨てて正解だ。


話は戻って、サチコが納得したら本格的に引っ越しとなる。

入居すれば、初めて入院した時と同じように

「あの服がいる、これが無い」と言ってジャンジャン電話がかかり

毎日のように実家と老人ホームを往復することになる。

距離があるだけに、大変だぞ。

もっと近くの方がいいかも。


そこで再び、“みんなの介護”を検索。

見切ったはずのサイトでも、施設の名前はたくさん出ている。

名前がわからないと、調べることもできんじゃないの。

そういう面で、みんなの介護はみんなの役に立っていると思う。


今度は私は、サチコを入れたい施設の条件を明確にしてみた。

第一条件は看取りがある所だけど

有料老人ホームは基本的に看取りがあるので、それ以外の条件だ。


①比較的近くにあり、運転が苦にならない所

遠いと時間がかかるし、車が多い所や道が細い所は怖いので

できるだけ近く、道中に難所の無い所が望ましい。


②姥捨感(うばすてかん)の少ない所

老人ホームは広い敷地が必要なので、山奥にあることが多い。

車が少ないので通うにはいいけど

サチコは「捨てられた」と反感を持つに違いない。

出るの帰るのと騒がれたら困る。


③低階層の所

マンションやアパートで暮らしたことの無いサチコは

エレベーターと高い所にある部屋を忌み嫌う。

今の病院へおとなしく入院しているのは、病棟が2階にあるからだ。

老人ホームの建物がビル様式で

部屋が高層階であれば、帰ると言い出すのは明らか。

というより高いのを帰る理由にしてゴネるのは目に見えているため

願わくば2階までが望ましい。


私の考えた条件は、以上の三つ。

スタッフの人柄なんて問わない。

介護の仕事をする人たちは、基本的に善良である。

善良でない私から見ると、よくわかる。

その善良が仕事上の上辺だけだとしても、仕事で善良ならば十分だ。

この条件のもと、私は再度、有料老人ホームを探すことにした。

《続く》

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2 コメント

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Unknown (日向ぼっこ)
2025-02-23 09:59:19
みりこんさん お疲れ様です

う〜ん悩ましいですね。
あとよろってお願いできるとこ見つかりますように!
私も願っています。
返信する
Unknown (みりこん〜日向ぼっこさんへ)
2025-02-23 16:04:12
ありがとうございます。

年老いた親のいる多くの人が通る道だと思いますが
こんなに難解で険しいとは思いませんでした。

ププ!あとよろってお願いできるところ?
日向ぼっこさんが一緒に願ってくださったので
見つかるかもしれません。
返信する

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