①近距離、②姥捨感薄口、③低階層…
探す条件を明確にし、優先順位を付けた上で
再び有料老人ホームの検索を始めた私。
今度は“みんなの介護”で施設の名前を知ったら
そこのホームページを熟読して
ピンときた施設へ直接電話をしてみるもんね。
みんなの介護を経由したらもらえるという
最大10万円の入居祝い金はいらないわ。
もうね、そんなこと言ってる段階じゃないのよ…
と思いながら探すけど、やっぱり思わしい施設は無い。
だってまず、第一条件の“近距離”で撃沈さ。
初めにパンフレットを送ってもらった、小一時間かかる所が一番近い。
ダメじゃん。
小一時間の運転ぐらい、若い人なら何でもないかもしれない。
私も若い頃は平気だった。
でも年を取ると臆病になるし、疲れやすくなって
昔はバンバン行っていた所が地の果てのように感じてしまう。
何しろサチコが、この先何年生存するかは未知数だ。
めでたく施設入居となっても、それで終了ではない。
何につけ用事ができて呼び出されるのは
老人ホームで30年近く生活した夫の祖母で知っている。
夫の祖母は病院と市外にある複数の施設を転々とした後
町内の外れにある特養に落ち着き
義父アツシとその兄が交代で対応していた。
欲しい物がある、墓参りに行きたい、小遣いが足りない…
そんな本人の希望で面会がてら行ったり
親戚が面会したいと言えば送迎したりもあったが
施設からの呼び出しもよくあった。
「置いていたお金が無いとおっしゃっています」
たいてい“物盗られ妄想”と呼ばれる、認知症あるある。
「職員が盗ったと興奮しておられるので、来てください」
近いというのもあって、施設はトラブル回避のために気軽に呼び出す。
最初はこれらの要請に、アツシとその兄が交代で対応していたが
兄が60代で他界した後の20年ほどは、アツシが一人で引き受けていた。
彼は週5でゴルフに興じる生活だったが
呼び出しがあると、いつも帰りに施設へ立ち寄っていた。
そして兄亡き後は施設の対応に加え
兄と折半していた入居費も、アツシが一人で支払うようになった。
母親がビタ一文、払わないからだ。
彼女の年金は全額、生活力の無い娘…つまりアツシの妹に注がれていた。
子供が複数いる場合
親が搾取子(さくしゅし)と愛玩子(あいがんし)に区別するのは
珍しいことではない。
お金と時間を奪って貢がせる搾取子と、ひたすら与え可愛がる愛玩子だ。
アツシは明らかに搾取子であった。
私はサチコの子供ではないものの、搾取子という立場においては
哀れなアツシに共感を持っている。
しかし、子供を区別する姑に憤慨していた義母ヨシコも
姉を愛玩子、弟の夫を搾取子で区別している。
よって私は、我が子に搾取子と愛玩子を作るまいと日々
自分を戒めているわけだが、認知症になったあかつきには自信が無い。
祖母は101才の長寿を全うし、特養で亡くなった。
アツシの会社が危なくなったのは
もちろん商売のやり方がまずかったからだ。
しかし、なかなか終わりが来ない母親のために
月々十数万円の入居費を払い続けたことも大きな原因だと思っている。
それはさておき、私が高齢になってもサチコが生存していたら
免許を返納して車に乗れなくなるから、遠くは無理だ。
それよか、私の方が先に◯ぬことだってある。
明日のことは誰にもわからない。
このままサチコに自宅生活を続けさせたら
こっちが息絶える可能性は大きい。
サチコの世話は、本人のことだけでなく
家事その他、多くの雑用が付いて回る。
自分の家のことだけでも疲れるお年頃なのに
もう一軒、実家まで引き受けると、マジでしんどい。
だが施設に入れても、全面解決にはならない。
何につけ呼び出されては通うようになる。
なぜって施設は、精神病院と違って携帯電話がフリー。
寂しい、帰りたい、あれが欲しい、どこそこへ行きたい…
思いつくままに電話がかかり、こっちが従うまで容赦ない生活は
サチコの生命が尽きるまで続く長丁場。
どっちにしてもしんどいのだから
もう諦めて、今のショウタキのデイサービスに通わせながら
頼み込んで宿泊を増やしてもらい
時々、また精神病院へ入院させてもらって綱渡りの日々を送ろうか…
いよいよ立ち退きとなったら、その時にはその時の風が吹くかも…
そんな思いも駆け巡る。
しかしその端から
「いや!そうはいかん!」という思いが湧いてくる。
考えてみろ、みりこん!
立ち退きになったら、どうせどこかへ入れることになるんだ。
しかもショウタキは、また年末年始を休業するぞ。
盆休みだって、やらない保証は無い。
その時、病院の3ヶ月ルールで入院できなかったらどうする。
(3ヶ月ルールとは、一旦入院したら最長3ヶ月までしか入院できず
退院後の3ヶ月間は、再び入院することができないルールのこと)
鬱病が悪化するのは、木の芽どきの春と落ち葉どきの秋だけではない。
暑い真夏と寒い真冬は、春と秋以上に悪化するんだぞ。
3ヶ月ルールをうまくすり抜けられるのか。
やっぱり同じしんどいなら、施設の方がマシ…
この結論に達した私は、検索した有料老人ホームの名称と
施設に直接繋がる本来の電話番号を紙に書いてリストアップ。
◯◯の里、◯◯の園、ナントカ苑にナントカ荘…
どれも同じ隣市の郊外にあって、距離は似たり寄ったり。
もはや①の近距離にこだわる意味は無いため
私は②の姥捨感薄口と③の低階層を重視して、絞り込むことにした。
《続く》
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