書評 「ファスト&スロー」 ダニエル カーネマン著

認知バイアスは、人々が情報を処理するときに生じるシステマチックな誤りや傾向のことを指します。以下にいくつかの一般的な認知バイアスの種類を示します：

1. 確証バイアス: 確証バイアスは、既存の信念や仮説を裏付ける証拠に過度に重点を置く傾向を指します。逆に、矛盾する証拠を無視したり軽視することがあります。

2. 選択的注意バイアス: 選択的注意バイアスは、個人が自分の信念や価値観に関連する情報に選択的に注意を向ける傾向を指します。他の情報を無視したり、見落としたりすることがあります。

3. 印象操作バイアス: 印象操作バイアスは、最初に形成された印象や情報に基づいて、後続の情報や経験を過度に評価する傾向を指します。初期の印象が正確でない場合、これによってバイアスが生じることがあります。

4. 想像力の欠如バイアス: 想像力の欠如バイアスは、未来のイベントや結果を予測する際に、既存の情報や経験に過度に依存する傾向を指します。新しいアイデアや可能性を探ることが難しくなります。

5. 過去の栄光バイアス: 過去の栄光バイアスは、自分や自分のグループの過去の成功や栄光を過度に評価し、将来の成功の確率を過大評価する傾向を指します。これにより、新しいアイデアやアプローチに対する抵抗が生じることがあります。

6. 帰属の誤り: 帰属の誤りは、他人の行動や性格の特徴を環境要因よりも内部的・個人的な要因に帰属させる傾向を指します。一方で、自分自身の行動や性格の特徴を外部的な要因に帰属させず、内部的な要因に帰属させることがあります。これにより、他人を過度に評価したり、自分自身を過小評価したりする傾向が生じることがあります。

7. 損失回避バイアス: 損失回避バイアスは、損失を避けることに対する人々の傾向を指します。人々は、リスクを取るよりも安全な選択肢を好む傾向があります。このバイアスにより、新しい機会やアイデアを見逃す可能性があります。

8. 集団思考: 集団思考は、集団内で一致を図るために個人の意見や批判的思考を抑制する傾向を指します。このバイアスにより、新たな視点やアイデアが欠如し、意思決定の品質が低下することがあります。

「計画の錯誤は、数ある楽観バイアスの一つに過ぎない。私たちの大半は、世界を実際よりも安全で親切な場所だとみなし、自分の能力を実際より高いと思い、自分の立てた目標を実際以上に達成可能だと考えている。また自分は将来を適切に予想できると過大評価し、その結果として楽観的な自信過剰に陥っている。意思決定に及ぼす影響としては、この楽観バイアスは認知バイアスの中で最も顕著なものと言えるだろう。」

第２４章 資本主義の原動力 ダニエル カーネマン
楽天にいる三木谷のようなもの。


資本主義の活力の為には「楽観的殉教者」が必要だ。外部基準を導入することで殉教は避けられるのだが、それでは誰もリスクを取らなくなってしまう。なぜなら平均的なスタートアップカンパニーの５年生存率は３５%にすぎず、他方でどのような慎重な新興企業のＭ＆Ａもほとんどは本体業績を悪化させ株価を低下させるという外部基準が確立されているからだ。

 

ゲーリー・クライン*の提案する「死亡前死因分析」presortem 「実行前に失敗を前提に分析するカンファレンス」を試みたとしても、リスクテイカーが起業に怯む事は無い。この無謀な楽観主義が資本主義の活力だ。

引用//ー「いまが一年後だと想像してください 。私たちは 、さきほど決めた計画を実行しました 。すると大失敗に終わりました 。どんなふうに失敗したのか 、5～10分でその経過を簡単にまとめてください 」と頼む 。クラインはこの方法を 「死亡前死因分析 （ p r e s t o r t e m ） 」と名付けている 。ー//引用終わり

楽観的殉教を避けるには、第一にコントロールの錯覚を反省してみること。第二に競争者の無視を点検することが冷静にできれば慎重な第一歩が踏み出せるかもしれない。しかし起業後の次の瞬間はそのような余裕がない。自分の作り出した前提に支配され始めるからだ。

*G a r y A . K l e i n , S o u r c e s o f P o w e r （ C a m b r i d g e , M A : M I T P r e s s , 1 9 9 9 ） . 〔 『決断の法則 ─ ─人はどのようにして意思決定するのか ？ 』佐藤洋一監訳 、トッパン 〕