コラボできないかな
名古屋大学大学院工学研究科の坂井美紀研究員、竹岡敬和准教授らの研究グループは、安全な素材である非結晶性シリカ 注1)のみを用いて調製した三色の顔料を組み合わせることで、あらゆる色を発色可能になることを見いだしました。
生物多様性保全の観点から、これからの社会では、環境に配慮したものづくりが求められています。我々の生活を彩り鮮やかで豊かにしてくれる染料や顔料などの色材においても、人の健康や環境に有害になるものは、安全な材料から成る代替品に転換しなければなりません。本研究では、我々人間が、これまでの生活において利用してきた従来の色材に遜色ない鮮やかな色相の顔料を、安全な非晶性のシリカからできたコロイド粒子のみを用いて作ることに成功しました。この顔料は、球状でサイズの揃った約200nm(ナノメートル)から300 nmの異なる三種類のサイズの非結晶性シリカ微粒子が、それぞれ整然と配列した状態にある球状の二次粒子 注2)(球状コロイド結晶)として調製されたものです。その微細構造によって発色するため、“フォトニック顔料”と名付けました。シリカ微粒子のサイズの増大に伴って、これらの二次粒子は、それぞれ青、緑、赤色を示します。これらの三種類を混ぜることで、光の三原色に応じたあらゆる色を表現することが可能になります。
本研究成果で得られたフォトニック顔料は、安全な素材から作られた顔料であるため、現在、問題視されている重金属を含有する顔料や発がん性を示す染料に変わる新しい色材になることが期待されます。
本研究の成果は、2020年6月15日付けのアメリカ化学会が発刊する『ACS Applied Nano Materials』電子版に掲載されました。なお、本研究はAGCリサーチコラボレーション制度の元、AGC株式会社と共同で行われました。