標高2,500M付近で突如襲った両大腿筋の痙攣。(つり)
たぶん筋肉の疲労と、体の冷えによる血管の縮小が原因であろう・・・
しばらくその場にしゃがみ込んでマッサージ(血行促進)をしながら回復を待つこと10分、足が嘘のように楽になった。
若干の痛みはあるも歩行にはまったく支障ないので登山の再開です。
痙攣が治まったとはいえ、足に負担のかかる場所の連続。
コース上に横たわる岩をよじ登ってどんどん高度を上げていきます。
途中、イルカのような岩を発見!
標高2,600Mを通過。
足は今のところ特に全く問題なく、ここまで快調に登っています。
両側が切れ落ちた岩の刃渡り・・・ 真ん中の土で汚れている所を歩きます。
距離はありませんが、足を滑らせて落下すると無事では済みません・・・ 最初に神経を使う場所です。
この辺りから山の雰囲気がガラリと変わってきました。
急斜面に書かれたアルプスマーカー(ペイント)を手がかりに登っていきます。
早月小屋を出発して約1時間ちょっと・・・ ようやく核心部の入口に来ました。
先に登っていた方がこれからの岩場に備えて準備をしています。
やっぱり雨具を着込んでいる・・・ いいなぁ。
浮石も多く、足場を確認しながら一歩一歩確実に・・・ 落石させたら大変です。
標高2,800Mに到着。 白山(2,702M)を越えました。
あと700M・・・
山頂方面は相変わらずガスっていて、どこがゴール(頂)なのか解らず黙々と岩を登ります。
そして、いよいよここからが本格的な岩登りの始まりです。
山頂から数人のパーティーが降りてきましたが、雨で岩が滑るのか かなり慎重(お疲れ)な様子・・・ 落ちたら最後ですからね。
一方通行なので、全員が渡り終えるまでしばらく待機です。
そして今日一番の難所
カニのハサミ の岩場にきました。
(滑落事故が起きている場所の一つ)
ここは、岩壁に打ち込まれた鉄の杭を足場にして渡らないといけません。
今まで以上に慎重に進みますが、雨で濡れた鎖が予想以上に滑るのでとても不愉快。
こう言う時は、悪いイメージを払拭し平常心で進むのが一番です。
とは言え、真下を見るとこんな感じ・・・
ひえ~っ
高所恐怖症の方は無理かも・・・ 滑落すると命の保証はありません。
カニのハサミの岩場を無事に過ぎると、山頂付近が薄っすらと顔を覗かせましたが、
まるで悪魔の山が呼んでいるかようです。
これから山頂に向かうルートを書いてみました。(たぶんこんな感じです。)
チョンと見える
・ が人の大きさほどです。
岩の殿堂
剱岳 の険しさがよく解ります。
いよいよ、この主峰の土手っ腹に喰らい付きました。(ワクワク?)
ここでルートを間違えるとエライ目に合いますから、慌てずマーカーを確認しながら登っていきます。
ぐわーっ! 急でキツイわーっ
ガスがかかってマーカーも確認し辛いし、岩も滑るし風も強くなってきた・・・(
やっぱ薄着だと寒い
ザーーッ
と、ここに来て今日一番の雨が落ちてきた・・・ マジかぁぁぁ!
体に付いた虫を払い落とすかのような激しい雨に思わず足が止まる。
・・・「何やってんだろう?」 と、一瞬 愚痴をこぼすも、ここまで来たら戻ることもできない。
雨に打たれながら気力を振り絞って目の前に迫った頂を目指します。
ふぅ~ 何とか(有名な?) 別山尾根との分岐の標識が見えました。
風化して書いてある文字が読めませんが、ここまで来たら頂はもうすぐです。
やっと山頂が見えました。(雨に打たれちょっと半べそかいてます)
近道をしてペイントを無視して登ると浮石で滑落する恐れがあるので、
ここでもマーカーを確認しながら最後まで慎重に進みます。
そして、午前11時18分
標高2・999M の剱岳山頂に到着です。 ヤッター
馬場島の登山口を出発して5時間と33分。 足の痙攣や天候に悩まされたけど、何とか無事に登頂することができました。
う~ん・・・ 言葉にならない。 感無量!
生憎の空模様で下界はガスの中・・・ まったく展望は望めませんが山頂で食べるおにぎりは最高にウマイ!
この時は、先ほどすれ違った方と別山尾根から登って来た方3人・・・ 計5人で登頂を称え合いました。
12時18分・・・ しばらく待っても一向に晴れる様子もないので、名残惜しいですが来た道を戻ります。
登っている時は帰りのことは考えていませんが、来た道をまた戻ることを考えると気が遠くなりそう。
よくこんな険しい所を登ってきたよなぁ・・・ と関心しながら一歩一歩確実に下っていきます。
下りの方が事故も多く難しいので気が抜けません。
日本海側から吹き付ける風が尾根に当たって反対側では雲が発生しています。
帰りも長い道のりですが、達成感を味わいながらのびりと歩くことができました。
午後5時27分 出発地点の馬場島に到着。
足は下山の時の負荷がかかってパンパン・・・
体力的にはまだ余裕があっても足が悲鳴を上げています。
この頃には空も晴れ、夕日が登山のフィナーレを飾ってくれました。 陽がまぶしい。
「試練と憧れ」 登山口の馬場島には有名な石碑が立っています。
剱岳に向かう人の心境を表すには、これ以上の言葉は無いんじゃなかろうか・・・ ってくらいピッタりな言葉です。
下から北アを見上げるとその中で一際存在感を露にしている
剱岳 !
山に興味がない人も引き付けるその雄姿は、いつの間にか
憧れ に変わり、人を引きつけます。
・・・但し、そこには簡単には辿り着けない
試練 の連続。 まさにその通りになりました。(キモト)
※ 試練の先に憧れがあると言っても、無謀な登山は禁物です。
今回は軽装でしたが(反省)ちゃんと事前に準備をして登らないと予想外の事が起こります。
早月尾根ルートは急登で距離も長く、疲れた体の後に危険な岩場が待ち構えているので、
よほどの体力と集中力がないと日帰りは出来ません。(やっちゃいけません)
しかも水場は小屋以外になく、登山客も少なくて何かあっても戻って来れないのでオススメしません。