少年Hと少年Aを読みました。妹尾河童さんと野坂昭如さんの対談形式というか、交互に彼らの語りが出てくるノンフィクションです。戦争体験だけでなく、その他のことについても、現代にいたるまで彼らの考えや暮らしのことなどもいろいろ語られています。PHPから1998年に出版された本ですが、市の図書館から借りて読みました。ともに昭和5年生まれ。しかも、戦争当時、神戸の東の地区(野坂さん)と西の地区(妹尾さん)に住んでいた。ことさらに、戦争反対を述べている本ではありませんが、戦時中のそれぞれの暮らしぶりが淡々と語られるなかで、あの戦争は開戦と同時にじわじわと国民の日常に入り込んできて、みんなのっぴきならない状態に追い込まれたんだと思いました。妹尾さんの少年時代については、かなり前に「少年H」を読みましたので細かいことはそれで知りましたが、野坂さんの書かれた「火垂るの墓」は、神戸空襲の後、養父が亡くなり、急に生活が窮乏して、疎開した福井で幼い妹が餓死した少年時代の実体験をもとに描かれたことを知りました。食べ物がなく盗みを働いたため少年院に送られた野坂さんは、実父が身元引受人になって少年院から出してくれて、いろいろ変遷を経て作家になられたと知りました。お二人ともお腹がすくことに今でも恐怖感を抱いているのは、戦争飢餓後遺症ともいうべきものでしょうか。昭和一ケタ世代。私の母は昭和3年生まれ。現在満87歳です。戦争の時代を自分の記憶で語れる人達は、だんだん少なくなっていきます。彼らが60歳代だったときの本ではありますが、若い人に読んでほしいと思いました。野坂さんは2015年の12月に85歳でご逝去なさいました。ご冥福をお祈りしたいと思います。
最新の画像[もっと見る]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます