沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

須賀川市(福島県)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由

2015-11-04 04:15:40 | ごみ処理計画

須賀川市(福島県)が溶融炉を選定せずに最終処分場を選定した理由を整理してみました。内地では「焼却炉(ストーカ炉)+焼却灰のセメント原料化」を選定する市町村が増えていますが、須賀川市は「焼却炉(ストーカ炉)+最終処分場」を選定しています。

須賀川市熱回収施設基本計画

以下が須賀川市の考え方の概要です。

(1)焼却方式には、ストーカ式と流動床式がある。

(2)ストーカ式については、40年以上の技術蓄積があり、実績年数及び実績数において最も豊富な機種となっている。

(3)流動床式については、流動床式ガス化溶融方式の登場により、その技術の多くは流動床式ガス化溶融方式に転用されてきており、平成15年度以降受注実績がほとんどない状況となっている。

4)平成12年以降は、ダイオキシン類特別措置法により国内のほぼ全てのごみ焼却炉がダイオキシン類対策に取り組むようになり、新設、改造を問わず、法規制値に十分対応している。

(5)最終処分場の残余容量の問題から、新設の焼却炉には灰溶融炉を付帯する事例も多いが、トラブル事例もあり、安定稼働に向けた対応が求められている。

(6)灰溶融方式は、一時期は、国の方針により焼却方式を採用する場合は必ず灰溶融炉を別途整備する必要があったが、生成物であるスラグのJIS化やランニングコストの高騰により廃止及び休止する施設も増えてきている。

(7)灰溶融についてはスラグ化による資源回収量の増加や最終処分量の減少が見込めるが、スラグのJIS化や全国的な廃止・休止の現状も考慮すると、本組合において望ましい処理方式とはいえない状況にある。また、全国的に見てもメーカーも積極的には営業してはいない。

(8)灰溶融方式は100件以上の実績があるが、近年は新規整備実績が減ってきているだけでなく、逆に運転休止に移行する件数が多い。

(9)灰溶融方式は高温管理が必要であり、耐火物等の寿命が短く交換頻度が上がりやすい。

(10)灰溶融方式は灰処理に電気又は燃料を大量に必要とする。

(11)灰溶融方式によって生成されるスラグは、JIS化されたスラグの性状に合致しない事例が多い。

(12)灰溶融方式はJIS化によりスラグの引取要件が厳しくなっており、資源化・最終処分量削減が完全に実施できていない例も多い。

(13)溶融飛灰の山元還元は他県処理になるため、処理や運搬で自区外の自治体に環境負荷を与える。

(14)焼却灰のセメント原料化は外部委託であることから、処理先都合による突発的な受入停止のリスクがある。

(15)廃棄物の自区内処理の考え方から、最終処分(埋立処分)を選択する。

以上が須賀川市の考え方の概要ですが、(13)の「処理や運搬で自区外の自治体に環境負荷を与える」という考え方は、東北人らしい考え方だと思います。また、(14)の「受入停止のリスクがある」という考え方は、セメント業界の実情を理解している適切なリスク評価だと思います。そして、溶融スラグについてもJIS化のリスクをよく理解している評価だと思います。

ちなみに、沖縄県における溶融スラグの利用率は毎年コンスタントに100%を達成しているようですが、県内に溶融飛灰の資源化(山元還元)を行う施設はありません。そのため、山元還元を行う場合は九州まで運搬しなければならない状況になっています。

※須賀川市は自区内に最終処分場を整備して焼却炉(ストーカ炉)からの熱回収を推進することにより、国の基本方針に即した環境負荷の低減を図ることができると考えています。



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