沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

沖縄県における最終処分場の整備に関する市町村の考え方の違い

2015-12-14 12:03:49 | ごみ処理計画

市町村のごみ処理計画において最終処分場の整備は重要な課題になります。したがって、各市町村のごみ処理計画における「最終処分に関する課題」のところを読むと、その市町村の「自治事務」に対する意識の違いがよく分かります。

そこで、今日はネット上に公開されている沖縄県内の市町村のごみ処理計画において、各市町村が最終処分場の整備についてどのような課題を持っているか、比べてみることにします。

浦添市(平成23年3月改正)

溶融スラグ及び飛灰にあたっては、引き続き、現行の体制どおり、資源化を実施していく。また、資源化を推進し、埋立ては行わない方針であるが、社会状況・経済的状況の変化などにより必要に応じて、最終処分場の整備等について検討していく。

西原町(平成24年3月改正)

町から排出されるもえるごみ等は、東部清掃施設組合に搬入され処理されていますが、焼却残渣や破砕残渣等は、倉浜衛生施設組合に最終処分を委託しています。現状では、最終処分を受け入れてもらっていますが、受け入れ先の事情によりその受け入れが出来 なくなるおそれがあるため、安定した最終処分が可能な最終処分場の確保が必要です。

宜野湾市(平成25年3月改正)

中間処理同様、最終処分も、倉浜衛生施設組合で行っているため、より一層連携を強化し、協力体制を構築していく必要がある。

うるま市(平成25年3月改正)

処分場を長期に渡って利用できるよう、ごみの排出抑制やリサイクル、適正な中間処理を行い、最終処分量の減容化を行います。

北谷町(平成25年3月改正)

中間処理により発生する「溶融飛灰」および「破砕残渣」は、倉浜衛生施設組合『エコボウル倉浜(最終処分場)』にて埋立処分が行われています。今後も、『エコボウル倉浜(最終処分場)』において最終処分を継続します。当該施設の延命化(埋立容量の確保)のために、特に「燃やさないごみ」、「粗大ごみ」について有価物などの【リユース(再使用)】、【リサイクル(再資源化)】を推進し、埋立対象物の減量化に努めていきます。

名護市(平成25年3月改正)

本市が整備する廃棄物処理施設における処理方式および構造は、平成24年度名護市環境審議会における審議の結果を踏まえ、ごみ焼却施設(ストーカ式)、リサイクルセンター(破砕・選別資源化処理方式)、最終処分場(クローズド型)とする。

北中城村(平成26年3月改正)

本村から排出されるごみは、中北清掃組合『青葉苑』にて処理され、「処理残さ」については、民間の最終処分場にて埋立処分を行っています。今後は、ごみの分別排出の徹底や適正処理を推進し、埋立廃棄物の減量を図る必要があります。

南城市(平成27年3月改正)

本市のごみ処理を行っている島尻消防、清掃組合及び東部清掃施設組合は、焼却残渣や破砕残渣等の最終処分を現在委託している。本市は、一般廃棄物最終処分場を所有しておらず、埋立処分については、これまで民間の処分場や他市町村所有の処分場に埋立処分を委託してきたが、沖縄県内の既存の最終処分場はその容量が逼迫しており、独自の処分場の所有が不可欠となっている。このような状況の中、本市を含む南部地区の6市町(南城市、糸満市、豊見城市、八重瀬町、与那原町、西原町)において、最終処分場の施設整備に向けて取り組んでおり、平成 25年1月に、南城市に最終処分場を建設することが決定し、平成26年度現在それに伴う測量・土質調査及び環境調査等が行われているところである。今後は、各市町との連携の元、最終処分場の目標年度の供用開始に向けて取り組んでいく必要がある。

この中で、北中城村だけは最終処分場の整備についてはまったく課題として考えていないことになります。同村は現在、溶融炉を休止して焼却灰の民間委託処分を行っています。そして、焼却灰のセメント資源化を前提にして浦添市との広域処理を検討しています。しかし、新聞報道によると広域処理がスタートするのは10年先とのことです。それまで同村は溶融炉を休止したまま焼却灰の民間委託処分を続けていくつもりなのでしょうか?

16日に同村の12月定例議会において、同村のごみ処理計画に関する一般質問が行われる予定ですが、当局の答弁によっては、広域処理の問題よりも、溶融炉の休止と焼却灰の民間委託処分の問題の方が今後の大きな課題になると考えます。

※ちなみに、北中城村のごみ処理計画は、焼却炉の長寿命化に当って国の補助金を利用できない全国でも極めて珍しい(多分、例がない)ごみ処理計画になっています。


沖縄県における焼却灰のセメント資源化を考える

2015-12-13 10:35:01 | ごみ処理計画

この記事は、一部書き換えを行っています。

ごみの焼却灰は脱塩処理を行えば、セメント原料の粘土の代替資源として利用することができます。ただし、利用可能量はセメントの生産量の20%くらいが限度です。また、セメントメーカーは従来から粘土の代替資源として火力発電所から発生する石炭灰を利用しています。ちなみに、沖縄県の火力発電所(沖縄電力)からの石炭灰の発生量は県内のごみの焼却灰の発生量の約2倍あります。

沖縄県には琉球セメントというセメントメーカーがありますが、仮に、ここでごみの焼却灰を資源化することになった場合はどうなるか?

今日は、その可能性について考えてみることにします。

琉球セメントのセメント生産量は年間約60万トン(平成25年度)です。そうなると計算上は約12万トン(約20%)の石炭灰やごみの焼却灰(脱塩処理をしたもの)が利用できることになります。琉球セメントが石炭灰をどのくらい資源化しているかは分かりませんが、公平性を期すために石炭灰とごみの焼却灰の発生割合に準じて2対1で考えると、ごみの焼却灰は約4万トン資源化できることになります。

そうなると、計算上は沖縄県全体のごみの焼却灰の約3分の2を資源化できることになります。

さて、ここからが問題です。

沖縄県内の市町村にとって、焼却灰のセメント資源化が他の方法よりも安価であり、環境負荷も低い(最少の経費で最大の効果を挙げることができる)とした場合、おそらく全ての市町村がセメント資源化を検討することになると考えます。そうなった場合は、当然のこととして、琉球セメントは各市町村(住民)の公平性を期すために人口の割合に応じて資源化を引き受けることになると考えます。

現在、浦添市と中城村と北中城村が広域処理による焼却灰の資源化を検討しているようですが、この1市2村の人口は合計で約15万人になります。ということは、この1市2村が沖縄県内において焼却灰のセメント資源化を行える量は10万人分程度が限度ということになります。

なお、この1市2村が広域施設を整備するときは国の補助金を利用することになります。ただし、国が市町村に対して補助金を交付する場合は、補助金適正化法の規定に基づいて公平性を期す必要があります。したがって、仮に、琉球セメントが1市2村の焼却灰を優先的に受け入れるとした場合であっても、国の補助金を利用するときにアウトになります。

以上はこのブログの管理者が勝手に計算して考えたことです。しかし、実際は計算では解決できない大きな問題があります。

それは、地域住民の理解と協力です。琉球セメントの工場は名護市にありますが、県内であっても市外から焼却灰が持ち込まれることについては感情的にかなりの抵抗があると考えます。そして、一部でも市外から焼却灰を持ち込むことを容認した場合は、自動的に市外の他の市町村に対しても持ち込みを容認することになります。

例えば、浦添市と中城村と北中城村の焼却灰は受け入れを認めるが、那覇市や沖縄市の焼却灰は受け入れないという「差別」を行うことはできないと考えます。

そうなると、住民感情としては、名護市の焼却灰はOKでも、他の市町村の焼却灰はNGということになりかねません。というか、多分、そうなります。

琉球セメントは県内の市町村から発生する焼却灰の資源化については、地元住民との合意形成を重視しているので、最終的にはその地元住民の理解と協力が得られなければ、沖縄県内(名護市を除く)における焼却灰のセメント資源化はほぼ不可能になると考えます。

※浦添市と中城村と北中城村は、セメントメーカーの多い九州において焼却灰のセメント資源化を行うことを考えていると思われますが、県外の民間企業に「外部委託」することになるので、その民間企業がある県や市町村との協議、そしてメーカー側との委託費の変動や長期継続委託等に関する協議を十分に行った上で、議会や住民に対して丁寧に説明する必要があると考えます。


佐賀県西部広域環境組合が焼却灰のセメント資源化を中止した理由

2015-12-12 11:52:57 | 備忘録

佐賀県の佐賀県西部広域環境組合(武雄市外3市5町)は、組合側がほぼ決定していた焼却灰のセメント資源化を武雄市の定例議会をキッカケにして中止しています。そのときの議会の議事録が武雄市の公式サイトに公開されていたので、備忘録に残しておくことにします。佐賀弁による一般質問ですが、質問に当って市民の代表である議員が懸命に調査をしてきたこともあり、焼却灰のセメント資源化(外部委託)のリスクがよく分かる質問になっています。

武雄市議会平成22年6月定例会議事録

<議員の一般質問の概要>

セメント資源化方式、これはトータルコスト183億円。とてもじゃないけど、この装置は入れるべきではない。将来を見据えたとき、大変なリスクを負う装置だということを説明しながら質問していきたいと思います。

用心しなければならないのは外部依存ですね、あくまで。焼却灰をセメント資源化などにした場合は、セメント企業の確保、保障根拠、これがちゃんとできなければならないということにつながっていくわけですね。

結局は灰の企業確保ということですね、セメント企業の確保ということ、確保しとかにゃいかんということでですね、やっぱり相談されたと思うんですね。そしたら、灰が出るのは五、六年後ですよね、灰が出るのは。だから、それまで待つことはでけんと、企業は。だから、ここに書いてありますけれども、来年度からでも既存の施設から──最終処分場ですね──焼却灰を出して枠の確保を行えと、こがん話が来とる。水面下で話が進んどっじゃなかですか、これは。

きのう言われた言葉は、セメント資源化を決定していると言われたですね、決めているて。何で議会も知らんとにそういうのが先に進むんですか。

資源化の中で一番問題になっているのが脱塩ですよ、市長。塩の濃度が非常に高いということです。水洗いは大量の水を使うし、結局はその水の処理をせにゃいかんとですよね。

セメントメーカーは水洗いして持ってこいですよ。その水はまた処理せにゃいかんでしょう。私はそのとき聞いてはならんことを聞いたんですけれども、じゃあ、重金属どこ行くですかと聞いた。重金属。答えは言いませんけどね、どっかに捨てるんですよ。

「セメント原料化システム」は焼却灰の受け入れ先であるセメント関連企業の確保が出来ない場合、システムそのものが成り立たないという「外部依存性」が極めて高いシステムであり」、外部依存そのものですよね。

「セメント関連企業の確保が今後の最重要事項になる。従って、選定するに際しては長期にわたって」、15年、20年。「安定的な受け入れ先の確保を確実に実現するための方策を講じた上で」、長期にわたる、つまりそれを保障せにゃいかん。保障する根拠が要る、なお担保が要る。

引き取り業者が引き取りを中止した場合。これはその時点から灰の処理がでけんごとなっですね。当たり前の話。引き取り業者が処理単価の値上げを言ってきたとき。これは自治体が言われるままに処理単価の値上げに応じなければならんですね。

それから、県外業者へ処理を委託する場合は、都道府県と事前協議ばせんばいかんですね。そしたら、大いにどうぞとはなかなか言葉に出てこないと思うんですね。そういう搬入許可が必要だし、将来にわたって毎年更新の許可が、大体1年に1回ということで更新の許可が必要になってきます。

災害が起こったとき、いろんなまざったとを燃やすんですね。これは異物混入でセメント会社が引き受けん。そしてもう1つは、災害ごみは塩素濃度が物すごく高いので、このままでは引き受けてくれん。そういう状況なんですね。

ガラス、陶器類、異物が入っている。エックス線検査と書いていますけれども、これはエックス線物質解析検査装置がですね、セメント会社に行ったぎ、中央制御室にぼとっとあっとです。絶えず物質を検査しよる。なぜか。JIS規格ですからね。一回触れたらセメント業界倒れますからね。だから、それだけ一生懸命しているけれども、そういう状態があると、問題点がですね。

また、セメント業界の情勢ですけれども、これ新聞ですけれども、実は21年の12月8日の新聞ですね。佐賀建設新聞、これによりますとセメント出荷量の減少続くと。来年度は4,000万トン割れの可能性も。その横にですね、廃棄物の受け入れにも支障の懸念と書いてある。

今請け負っても、あと請けんですよと書いてある。それは古タイヤなんか助燃剤て使いよるけどですね、そういうのをとらんとに灰なんかましてとらんですね。

今後セメントの需要減が一層進めば、受け入れ先に支障が発生する可能性が非常に高い、こういう時代背景もあるわけですね。つまり、社会性に左右されるんですね、外部依存は特に。

長期にわたって安全・安心・安定処理を確保するためには、さらには委託費の高額化の危険性、相手の言われるままですからね。

そういう多大な課題を持ちますので、ぜひともここは思い切って修正を思わなければ、私自身、そういう組合であれば離脱も視野に入れてでもこの問題に対しては徹底的にやっていくべきと思いますけれども、市長はどのようにお考えか、最後に答弁を求めます。

<市長の答弁>

非常に論理的な御説明で、私も考えていたことが一部自分も修正を迫られています。これからは佐賀県西部の広域圏の組合のほうで、修正の方向で議論をする必要があるというふうに認識をしました。


横浜市が焼却灰のセメント原料化事業を中止した理由

2015-12-11 12:36:55 | 備忘録

沖縄県では浦添市と中城村と北中城村が10年後から焼却灰のセメント原料化を行う前提で広域処理を検討しているようですが、神奈川県では数年前に横浜市がほぼ決定していたセメント原料化事業を中止しています。

そのときの記事が横浜市の公式サイトに残っていたので、削除されないうちに備忘録に残しておくことにしました。 

 焼却灰セメント原料化事業の中止及び特定事業の選定の取り消しについて

DBO方式による横浜市焼却灰セメント原料化事業は、焼却灰の埋立量を削減し最終処分場の延命を図るため、長期に安定した焼却灰資源化の手法として事業化を進めてきましたが、本市の財政状況が厳しいことを勘案し、事業を一時凍結して、再点検を行ってきたところです。

事業の再点検の結果、本市の財政状況が引き続き厳しい状況にあることに加え、資源化に関する新たな技術開発が進んでいることなどから、長期間(20年)にわたり同じ資源化手法により事業を実施していくことは適切ではないと判断し、本事業は中止することとしました。

なお、本事業は、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)第6条に準じた特定事業として選定していましたが、当該特定事業の選定を取り消しましたので公表します。

※横浜市が沖縄県で浦添市と中城村と北中城村が10年先のセメント原料化を前提に広域処理を検討していると知ったときは、この1市2村はよほど財政状況が豊かな自治体なのだと思うことでしょう。そして、資源化に関する新しい技術開発等については興味がない自治体なのだと思うことでしょう。このブログの管理者も、新聞の記事を読んだときはそう思いました。


ごみ処理の広域化と最終処分場の整備を考える

2015-12-11 10:14:22 | ごみ処理計画

新聞に浦添市と中城村と北中城村がごみ処理の広域化を検討しているという記事が出ました。

そこで、今日は、ごみ処理の広域化と最終処分場の整備について考えてみます。

現在、市町村がごみ処理施設を整備するときに国の補助金を利用する場合は、次の4つの方式からどれかを選ぶことになります。

(1)焼却炉+最終処分場

(2)焼却炉+溶融炉

(3)ガス化溶融炉

(4)焼却炉+焼却灰の資源化(セメント資源化等)

これ以外に、炭化方式や固形燃料化方式もありますが、普通はこの4つの中から選ぶことになります。ただし、(1)の焼却炉+最終処分場を選ばなかった場合は、国の補助金を利用するときに国から最終処分場の整備を「課題」として抽出することを求められます。なぜなら、上の(2)から(4)を選んだ場合は、事故や故障等が発生すると適正に最終処分を行う必要があるからです。また、(4)の場合は外部委託により焼却灰の資源化を行うケースが多くなるために、外部委託が困難になった場合はやはり焼却灰を適正に処分する必要があるからです。ちなみに、「焼却炉+焼却灰の委託処分」は国の補助金を利用できない方式なので、やはり最終処分場の整備が「課題」になります。

新聞によると浦添市と中城村と北中城村が検討している広域処理は(4)を選んでいるようです。そして、焼却炉は浦添市に整備することになるようです。そうなると、最終処分場は中城村か北中城村が候補地になると思います。しかし、現在両村が共同で整備しているごみ処理施設は中城村にあるので、普通に考えれば北中城村が候補地になると考えます。

新聞には、ごみ処理の広域化にこのような「課題」があることまでは書かれていません。

しかし、北中城村の議会や住民の皆さんがこのことを知らずに、後で知ることになったら、広域計画に大きな影響が出ると考えます。場合によっては、そのことで「白紙撤回」になるかも知れません。

今日から北中城村の12月議会(定例議会)が始まりましたが、16日には広域処理に関する一般質問が行われる予定です。したがって、当局はこのこと(どのような方式を選んだ場合であっても北中城村が最終処分場の候補地になる可能性があること)を前提とした答弁を行う必要があると考えます。