【読谷村編】ティンクティンク アッチャーアッチャー(琉球朝日放送:ザ・チャレンジ10月18日放送)
ついでに
赤犬子(あかいんこ) 物語
赤犬子は沖縄三線音楽の始祖とか、琉球古典音楽の始祖と讃えられています。
昔、楚辺村に赤犬子という人がいたそうだ。
この赤犬子というのは、どうして赤犬子と名がついたかという事だが、この赤犬子の母親は、親達から、(ある男と)「二人は夫婦になりなさい。」と、小さい時に結婚の約束をさせられていた。赤犬子の母親は、あまりにも美しく、村から、あるいは隣の村、大湾、古堅、大木あたりからも目をつけられていたようだ。しかし、いっこうに、この女は、他の男には心は動かさず、自分の婚約者である若者だけにしか思いをはせてなかった。
ある時、この別の男達が、「この若者を殺さない限り、自由にはならない。」との事から、殺害する企みをし、この若者を殺す事になったそうだ。
この女は自分の夫になるはずの若者が殺された後、毎日淋しい気持ちになり、自暴自棄の状態になった。
そこで、この女にはとてもかわいがっている赤い犬がいて毎日、毎日この赤犬を連れて気持ちをはらしていた。
その年はすごい被害年で雨がふらず、人民はたいそう困っていた。(その女は)いつものように、赤犬を連れて歩いていると、急にこの赤犬が楚辺暗川という所に入って行き、体全体濡れて戻ってきたそうだ。不思議に思っていると、再び入って体全体濡れてきて、この暗川の出入口で、何かあったように吠えていた。不思議なことだと思い、この犬が入って行く後を追って行くと、泉があり水が流れていたそうだ。これを見た女は、隣近所、一家族、村中の人達に知らせた。「そうか」と、たいまつを持って暗川に入って行き、この泉を捜しあてたそうだ。それから後は、楚辺村は水不足になる事もなく、日々の暮らしも充分にできたという話。
ただいまの話は、赤犬子が発見した楚辺暗川の話でした。
それから、この女は後に子を生んだが、当時、すでに婚約者の子をみごもっていた。すると、青年達は「これは婚約者の子ではないよう。赤犬を連れて歩くから赤犬の子だよ。」と、憎らしげに皆にいいふらしたそうだ。そこで赤犬子は、赤犬の子なんだという事から赤犬子と付いたようだ。
この赤犬子が、成長して若者になってからのこと、屋根から流れる雨だれの音を聞き、三味線を作ったという伝え話もあります。
三味線を作った後は、この赤犬子は三味線を弾きながら、国々をまわって歩いた。赤犬子が国頭方面に行って帰りでの話だが、始めは、瀬良垣に行った。船大工が昼食をとっている所に来て、「ひもじいので、食べ物を少し分けて食べさせて下さい。」とお願いした。「あなたのような者に、私達のものから分けてあげることはできない。」と、追いかえされた。そこで、赤犬子が詠んだ歌が、「瀬良垣水船」と、この船につけたそうだ。
そこから追い払われて谷茶まで来ると、谷茶でも同じように、船大工が昼食を食べているところだった。「分けて下さい。」とお願いしたら、「ひもじかったら食べなさい。」と分けてもらいごちそうになった。ここでは、「谷茶速船」と言い、船に名を付けたそうだ。それからというもの、瀬良垣水船で瀬良垣の船はいつも沈み、速度もおそかったという話。谷茶の船はよく走る船になったそうだ。これは赤犬子が予言したとおりになったそうだ。すると瀬良垣の人達は、「あいつの悪い願いでこうなっている。どこを捜してもみつけ出して、あいつを、うち殺さないといけない。」と捜し、捜し楚辺村まできた。そこに赤犬子がいると聞いたので、みんなで、棒、刀をあげてこの赤犬子を殺そうとした。現在、赤犬子神社といって楚辺の村にあるが、そこに行くと赤犬子は、急に煙となって天に昇っていったそうだ。瀬良垣の人達は、棒、刀を持っていたのに殺すことはできなかった。赤犬子は神の子で、精霊だったという話が残っている。
それから南の方に行き、中城での話。また北谷での話が残っている、まず北谷での話。ある時、赤犬子が道を歩いている時、のどがかわき、ある家庭に入って行き、「水を飲ませて下さい。」とお願いしたら、家の人はいなくて子供が一人残っていた。水を飲んでから、「お父さんはどこに行かれたのか。」と聞くと、「夜の目を取りに。」と言った。「お母さんは」と聞くと、「冬青草、夏枯れ草を取りに。」と言った。これでは赤犬子は意味はわからず、後でわかったが、夜の目というのはイザリに使うトゥブシ、松のトゥブシを取りにとの意味。冬青草、夏枯り草というのは麦の事のようだ。なるほど、麦は冬は青く、夏は枯れる。再び、赤犬子はその家庭に行き、「あなた達のこの子の言う事はただごとではない。この子は育ちが良く、賢くて後々は高官になれる子ですね。できたらこの子は坊主にしてはどうですか。」と言った。それから赤犬子が言ったとおり、その子は成長して坊主になり、のちのちの北谷長老という人になったという話がある。赤犬子の話、ただ知っている範囲お話して終ります。