沖縄県は、琉球王国時代の精緻な美術工芸の製作技術を復元させる琉球王国文化遺産集積・再興事業を進めている。
現代の科学や技術を駆使し、2015~19年に絵画、木彫、石彫、漆芸、染織、陶芸、金工、三線の8分野65件の製作を通して失われた技を復元させる。
19~21年度はよみがえった工芸品を海外を含めて県内外に公開して王国ブランドを打ち出し、新たな文化観光拠点化を目指す。
16年度の成果品としては3種類の冠(はちまち)や聞得大君御殿雲龍黄金簪(きこえおおぎみうどぅんうんりゅうおうごんかんざし)など7件が県立博物館・美術館に納品された。30日には同館で16年度の事業報告会を開く。
事業は一括交付金を活用し、16年度の事業費は約1億5千万円。県立博物館・美術館が担当して、同年度は沖縄美ら島財団が委託を受けて県内外の約60の工房や作家が製作に取り組んだ。17年度も同程度の予算規模になる予定だ。
琉球王国時代の文化財は多くが沖縄戦で失われ、現存する資料は少ない。事業では、残された現物や文献を基に試作を繰り返しつつ微細な顕微鏡やエックス線などを使って科学分析もし、失われた物の姿や作り方を模索する作業が続けられている。
各分野の研究者や制作者は、分野ごとに定期的な監修者会議を開いて進捗(しんちょく)や課題を共有しており、学術的な裏付けにも念を入れる。
事業を担当する県立博物館の園原謙博物館班長は「作った人がいて物が残る。物に集約されている魅力を復元し、発信したい」と語った。
平敷昭人県教育長は「戦火などによって失われた文化財を復元し、後世の県民に伝えていくことは、意義のあることだと感じている」と話した。