※井上さんがレポートを書いてくださいました (写真も)。
厳しい寒さが続いていて、乙女高原は日中でも零下という予報。防寒対策をしっかりして出かけました。牧丘の道の駅に集まったのは3人。植原さんの車に乗せてもらって出発。林道を登っていくにつれ、道路わきには雪、日陰は凍っているようなところもありました。
乙女湖のところで、まず車を止めました。ダム湖は3分の2くらい結氷して白くなっています。見ていると不思議な音が聞こえてきます。鳴くような、ものが鈍くぶつかるような音です。大きな音もしました。氷の下で何かぶつかっているのでしょうか。
金峰山は雪で真白。青空に映えています。柳平からの先の林道は雪がうっすらと積もって凍っていました。運転には気を遣ったことと思います。
乙女高原に到着。気温は-3℃。草原はまだら状に雪が積もっています。草原に入ってみると、雪が解けて氷になったところと雪が残っているところ、刈った草の根元が見えているところとで、まだら模様になっていました。氷は薄くて、下が空洞になっており、端は丸いような複雑な形に解けています。
氷の上は冷え込んで、下(地面のほう)が温かくて、下から溶けて上だけ残って氷になったのでしょうか。どのようにできたのか不思議な光景でした。スパイク付きの長靴を履いて、その薄氷や雪の上をバリバリと音を立てて歩きました。
冬の楽しみの一つは冬芽観察です。まずレンゲツツジ。枝の先端には赤い花芽が、芽鱗(がりん)と呼ばれるうろこ状のものに覆われて、ろうそくの炎のような形についています。その花芽の下には葉痕(ようこん)と呼ばれる葉の落ちた三角形の痕があって、その中には維管束痕(いかんそくこん)がニコちゃんマークみたいに見えてかわいいです。葉痕のすぐ上には葉芽が小さくついています。枝の所々にこの葉痕と葉芽がついていて、枝には細かい毛もついています。花の咲く時期にはあまり枝の様子など観察しませんでしたが、枝だけになったレンゲツツジはとてもおもしろいし、かわいいです。
森のコースではオオカメノキを観察しました。この冬芽は対生(向かい合って出ている)で万歳しているように見えるのがかわいいです。裸芽(らが=芽鱗に包まれていない芽)で、寒さを防ぐために細かい毛に覆われています。ベージュ色でビロードのような感じです。葉芽には葉脈が見えていて、花芽は丸く擬宝珠(ぎぼし)のような形で葉芽の真ん中にあります。印象的なオオカメノキの冬芽です。
鋭いトゲがたくさんついたハリブキもありました。先端にはえんじ色の固い芽がついていました。ニワトコの冬芽は細い枝の両側に対生しています。先端に芽はついてないので、上には伸びないで横に広がっていく樹木だと植原さんが言っていました。冬芽で樹木のでき方もわかるというのは深いですね。他にはウリハダカエデやミズナラの冬芽を観察しました。
展望台へのゲートは地面が凍って開けにくくなっています。二人で少し扉を持ち上げながらゆっくり開けて、展望台に出ました。富士山がくっきり、きれいに見えました。下の盆地は少しかすんだよう。富士山は白く光ったところと黒く影のようになったところがあります。黒いところは尾根のようで、雪が少ないので、黒っぽく見えたのでしょうか。
ヨモギ頭からは樹冠越しに南アルプスがよく見えました。白根三山や甲斐駒ヶ岳、鋸岳などがかっこよく、仙丈岳は真白。中央アルプスや八ヶ岳も真白でした。
ブナ爺さんの所へ降りていく途中のダケカンバの太い幹には、縦に1mくらい裂け目ができていました。寒さで裂けたのでしょう。葉を落としたブナ爺さんの枝は直角に曲がったり、カーブしていたり、くねくねしているのがよくわかります。どんな人生・・・でなく樹生を送ってきたのでしょうか。ブナ爺さんから少し下ったところにも太くて、幹の片側が大きく割れ、根元はごつごつして苔むしたブナがあります。植原さんいわく、ブナ婆さんだそうです。
水が森林道に出ました。木をつつく音がするので、探すとコゲラがいました。キバシリらしい鳥も。カラ類の声もしました。
林道はうっすら積もった雪が凍っています。そこに動物の足跡がたくさん残っていました。冬のもう一つの楽しみはアニマルトラッキングです。動物にとっても、林道は歩きやすい場所なのでしょうね。2つが重なったもの、真っすぐ一直線に進んでいるもの、道路を横切るもの、間隔の狭い細かい足跡が一直線に続いていると思ったら、途中で二つに分かれてしまっていたり。テン?キツネ?タヌキ?シカ?何が通ったのかな。どんなふうに歩いたのかな、走ったのかな。想像するのも楽しいです。
雪の上に赤い実のほぐれたようなものがありました。これはテンの糞を小鳥がほぐして食べたのではということ。赤いのはツルウメモドキの実。肉食のテンがツルウメモドキを食べるのですね。しばらく行くと、雪の上に糞がたくさんあります。赤い色のもの、黒っぽい色のもの(ヤマブドウを食べたもの)、茶色いようなものなど。ここはトイレかと思ったら、植原さんが「おおっ」と声をあげました。ガードレールの外、道路下に鹿の死骸発見。もう背骨と足の骨と毛皮ばかりになっていましたが、動物たちにとってはごちそうがたくさん食べられた場所だったのでしょう。糞がたくさんあるわけです。動物たちの足跡を見ながら、凍った雪道をザクザクと音を立てて歩きました。
ロッジに戻って、玄関前で昼食にしました。風もなく、穏やかです。太陽のおかげで思いがけず、暖かい。時々、太陽が雲に隠れることがありましたが、そんな時は雲の端がピンクや緑になる彩雲が見られました。
午後はツツジのコースを歩きました。太陽が南にまわって、草原の雪面は陽に反射してまぶしいです。青空をトビやカラスが飛んでいきました。ツツジのコースの山際は陽当たりが悪いので、雪がたくさん残っています。10cmくらい積もっていたでしょうか。ここでは遊歩道の杭の上に残った雪の造形がおもしろかったです。上部表面は氷で内部は空洞のもの、上部が傘状で下が細くなってきのこ雲のような形になったもの、三段のきのこ雲のようになったものもありました。
フクロウがいたというモミの木を植原さんに教えてもらいました。フクロウが止まっていたという枝には、白い尿痕がありました。
谷内坊主を見に行きました。
雪の中にボサボサ頭の谷内坊主がいっぱい。なかなか壮観です。ここでは水が凍らず流れていました。水に手を触れてみると冷たいけれど、びっくりするような冷たさではありませんでした。水は凍っていないので、0℃より高いし、気温は0℃より低いので、あまり冷たく感じなかったのかな。
谷内坊主の近くから、斜面を見上げると不思議な光景が。斜面が長く大きくえぐれています。まるで、イノシシが土を掘りおこしたよう。土は30cm以上も盛り上がっていて、穴があいています。下側の土は下へ崩れています。穴の奥は霜柱が段々に見えているところもあるので、霜柱の仕業ですがどんなふうにできたのか、不思議でした。
ロッジに戻る途中、草原には土の小山がいっぱい。モグラ塚です。たくさんのモグラがいるのかと思いきや、1匹のモグラが50m四方くらいのテリトリーを持っているらしいです。冬は寒いから深いところにトンネルを掘るので、土の量が増えて、モグラ塚が目につきやすくなるとのこと。地下にはモグラの作ったトンネルが伸びているはずですね。
帰り道では所々に小鳥がいました。ホオジロ、カシラダカなどです。野鳥も見やすいのが冬です。ということで、おもしろいことがたくさん見られた観察会でした。もっとたくさんの人が参加してくれるといいですね。