井上さん、山本さんがレポートをお寄せくださいました。
※まずは井上さんのレポートから。
1月の観察交流会は9日に行われました。参加者は4名。1都3県にはコロナ感染拡大で緊急事態宣言が発令されましたが、感染に注意してマスクをして、各自の車で乙女高原へ向かいました。林道には雪は全くありません。
途中、通称カエル池に立ち寄りました。例年なら氷が張っている池には水が全くありません。(夏になぜかボーリングをしていた影響か?)春のヤマアカガエルの産卵が心配です。このままでは産卵はできないでしょう。道の反対側の斜面に何かの毛が大量に散らばっているのを植原さんが見つけました。シカの毛とは少し違うようです。植原さんが採集しましたが、何でしょうか。ホオジロが数羽、樹上にいましたが、飛んで行ってしまいました。
次にサワラ林の所で観察。カメバヒキオコシに氷華が残っていました。12月20日に比べると小さくなっていましたが、花のようなものなど、かわいいものがたくさんありました。
法面の笹の葉にはクスサンの繭、スカシダワラがついていました。
またムラサキシキブの実がまだ少し残っていました。その根元あたりの土が湿っていて、水脈があるのではないかということです。苔むしたサワラ林の古木の幹はねじれたり、枝分かれしたりして、改めてこの森の歴史を感じさせます。
焼山峠では湿地はすっかり凍りついていて、氷の上が歩けます。
ミズゴケは白っぽい黄緑色できれい。カラマツにサルオガセがぶら下がっているのが目立ちました。アケボノソウのドライフラワーや根生葉がありました。そして、小楢山林道を歩いてみました。途中、霜柱が10段以上にも成長して30cmくらいになっているものもありました。いろいろな植物のドライフラワーも目につきます。ハナイカリ、ヤマホタルブクロ、ヤマハハコ、イタドリ、トモエソウ、ノコンギクなど。イケマの綿毛の種もぶら下がっていました。斜面にカメバヒキオコシの氷華がいくつか見られました。林道から見える金峰山や手前の山々には雪がついて、寒々しい感じです。雲が出てきて、太陽を隠してしまうと、風が冷たく痛いよう。寒すぎて観察する意欲がなくなりそうな感じでした。
乙女高原のロッジ前に到着したのはもう昼近く。看板裏の温度計を見ると-7℃、百葉箱を覗いてみると-9℃。あまりの寒さに各自、車の中で昼食をとりました。
昼食後、草原内の観察です。12月20日にボール状の巣(カヤネズミの巣?)を見つけた刈り残しのススキを確認。巣のあった位置は植原さんがメジャーで測ってみると、地上70㎝でした。
その後、ドライフラワーの確認をしながら、普段は歩かない斜面を登っていくと、雪が少しありました。数日前に少し降ったようですが、草原全体には雪はなく、枯草色でした。
展望台では富士山が見えましたが、山頂は雲の中でした。
ススキの中にカヤネズミの巣がないか探しましたが見つかりません。冬芽など観察しながら、ツツジのコースに下りました。雲の流れが速く、太陽はかくれたり、また出たりという中、彩雲を見ることができました。きれいでした。
強い寒気団に覆われて、日本海側には豪雪が降ったこの日、とにかく寒さがきびしく、草原をひとまわりしてくると、冷えきってしまい、いつもより早い2時過ぎには高原を後にしました。お日様のありがたさを感じた一日。寒かったけれど、楽しかったです。
※続いて、山本さんのレポートです。
スミレと同じようにキジムシロの仲間にもタネをアリに運んでもらうための付属体(エライオソーム)があるとの情報があり、焼山林道の氷華を見に行くついでに、道路脇にあったミツモトソウのタネにエライオソームがあるのか確認出来たらいいなと思っていました。ドライフラワーの中にタネが残っていたものが見つかり、確認したところエライオソームはありませんでした。
家に戻ってネットで検索したら、キジムシロとミツバツチグリには確かにエライオソームがありますが、ミツモトソウにはついていないとありました。
キジムシロの仲間でもヘビイチゴは小動物に食べてもらえるよう果肉を提供していることから、同じ仲間でもタネ散布の戦略がそれぞれ異なるようです。
エライオソームをつけるキジムシロとミツバツチグリはスミレ同様に早春の花で、茎高が低く地表近くに咲きますが、ミツモトソウの花期は遅く真夏から初秋にかけて、茎高が50~100cmと地表から高い位置に咲いています。アリの活動時期の違いなのかアリに運んでもらえなくても遠い所に落ちるようにしているのでしょうか。では、春先に咲くツルキンバイやイワキンバイなど他の仲間たちはキジムシロやミツバツチグリ同様にエライオソームがあるのかどうか、今年の観察テーマにしています。