『笛物語』

音楽、フルート、奏法の気付き
    そして
  日々の出来事など

フルート奏者・白川真理

軽井沢彫り

2022-09-23 22:27:53 | アンティーク
先日、片付けの時に出た不用品を近所のリサイクルショップに引き取ってもらいに行きました。

ウクライナワンピースヘビロテになってから、めっきり使わなくなったカーディガン数枚など。・・せっかくの袖の刺繍が隠れてしまうので・・

査定を待っている間、ウロウロするのも楽しみのひとつです。

ここの雑貨コーナーでは過去にも、色々と掘り出し物に出会えました。


最近、ようやく骨董市なども再開されてきていて、行きたいなあとは思うものの、ネットでみると、かなりの人出、人混み。それがまた楽しいところではあるのだけれど、やはりちょっと用心用心ということで、行っていません。

そんなこともあり、一番の息抜き、そしてお気に入りの店は、このリサイクルショップ。

でも多分、半年ぶり?くらいか。

そして、先日、今回過去最高?の掘り出し物に出会うことが出来ました。

一目で、「あ!軽井沢彫り!?」と判った。
全部の面にびっちりと葡萄柄が彫り込まれ、小さな隙間にも軽井沢彫りの特徴でもある星打ちがなされている。
本当に、その繊細な仕事の素晴らしさに見入ってしまいました。
中の状態もきれいで、どこも欠けてもいない。ただ鍵が失われている、という注意書き。
抱えてみるととても重くて、トチの木か?樫か?あまり詳しくはないのですが、とにかく
ずっしりとした素晴らしい質感。











値段は一桁間違いを昔からよくやってしまうので、今回もそうか?と何度も見直したのですが、2750円。え?この箱だったら10倍の値段でもよい買い物したぞ、と思う。

もちろん即購入。

とても重いので、後で夫に車で 運んでもらおうかとも思ったのですが、その日はゴルフで、確か夜は「反省会」と言っていた・・

なので、キャリーを探し、丁度500円だったので、それも買って、箱を紐で括り付け、ガラガラと引っ張って帰宅しました。

重さを測ってみると4キロ。・・ピピと同じくらい・・

小さな刷毛で埃を祓い、固く絞った麻布でよく拭いて、あとは自分の手でなでなでして、ようこそ!と我が家に迎えました。

とにかく一目惚れなので、何を入れて、何処に置くかなど、全く考えていなかったのですが、フルート関係のグッズを入れることに。

下に引き出し、そして箱の上部には取り外しの出来る仕切りのあるトレイもついている。
そのどちらも、きちんと丁寧な造りです。



掃除用具、メトロノーム、チューナー、録音機・・

加えて、下駄、紐、麻糸、ファイテンの枕カバーから自作したドレスのインナー。




ネストテーブルの上がジャストサイズで、丁度良い具合に収まりました。



最近、奏法が変化し、以前より譜面台の高さが高くなったので、自作譜面台置きにもぴったり。



山葡萄のかごバッグ同様、なでまわしていると、艶が増してきている気もします。
それに何より気持ち良い。

調べてみると、葡萄柄は西洋人の宣教師からの希望で作られ始めたらしく、葡萄はキリストを表しているのだそう。

さらには、現代ではあっさりした柄が好まれるようになったけれど、軽井沢彫りが始まった当初19世紀後半、西洋人は全ての面にびっしりと彫刻されたものを好んだということ。

おそらく、この箱もその時代のものではないか?と思います。
初代ロットとほぼ同時代ではないかしら?
とにかく、気が遠くなるような細やかな彫りがびっしり。
デザインも素晴らしく圧倒されます。

軽井沢はここ数年、何度か行っていて、だから軽井沢彫りのことも知っていたのですが、
正直、お店で見ても、全く食指は動かなかった。やはり現代人なのでシンプル嗜好で。

でも、この箱は、そんな嗜好を突き抜けて、もう、ハハ~っとひれ伏すしかない。

今、これほどのものを作れる職人さんは居るのだろうか?
このあたりもちょっとロットに似ているね。

もの、それも古いものとの出会い運、本当に物凄くあると思います。

荷葉之一水

2022-09-23 01:23:53 | 気付き
蓮の葉の上の水滴のこと。

これは2004年、新潮社から出た、甲野善紀先生と田中聡さんとの共著
『身体から革命を起こす』を頂いた折、先生がサインと共に、書いてくださった言葉です。




私のことも取り上げていただいた、記念の本。

先日の音楽家講座でのマイナスのカーブのお話を伺っている時から、ずっとこの言葉を想い出していました。

そして本日やっと、フルートでドンジョンのエレジーを吹きながら気付いたのは・・


蓮の葉はマイナスのカーブじゃないか!?
 

ということ。
  ・・・遅すぎる・・・

裏と表が変わるだけで、本当にもうガラっとかわる解釈。

転がる水滴の丸さのことばかり考えていたけれど(プラスのカーブ)そうではなく、
蓮の葉(マイナスのカーブ)のことを考えなきゃいけなかったのか・・!?


そして腕、肩周辺の滞りが激減して、演奏も大きく変わる。

ドンジョンのエレジーは「落葉」という別名もある。
この感覚にとてもピッタリと合う楽曲で、短い詩が添えられています。

  暗くなった大気の中を、最後の葉が溝に沿って転がってゆく。
  私の幸福もまた!(リシュパン)

内容は、なんともやるせないけれど・・
でも、この詩も、自身のことを嘆いているというより、自身のことを俯瞰して眺め達観している様な解釈になってくる。音楽の解釈も当然変わり、より楽曲自体の魅力が浮かび上がる。

こうしたものをやる時の植村泰一先生の御注意は
「お涙頂戴になるんじゃないよ」だった。


枯葉はただ溝に沿って転がってゆくだけ。

そして水滴はただ蓮の葉に沿って転がってゆくだけ。

本日9月22日の気付きは、最高の誕生日プレゼントとなりました。

もう64才なんて実感は全くなく、不思議な気がするばかりですが・・
それもこれも、フルートを始めとし、日常生活含め、何もかもが未達成、未完成だからこそ、気持ちも若くいられるのかもしれません。

久しぶりに取り出した本の表紙の先生が、お若くて驚きました。
考えてみれば、18年前なのだから、今の私よりもずっと若い年齢な訳で。
ちょっと不思議な気もします。




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掲載された、先生と出会う前と後の演奏中の写真も久々に見ました。
私も若かった。
着ていたドレスは皆サイズアウトしたので処分してしまったものばかり。
ぐすん。
ローラアシュレイ、スキャパレッリ、ジバンシー・・
靴は、5センチヒール、3センチヒール、ぺたんこルームシューズという変遷。



・・下駄になったのはこの本が出た後のことで・・
今は下駄に,布を巻き付けただけの恰好で吹いているのだからなあ・・


当時の私に「あなたは将来・・」と教えても絶対に信じなかったと思います。

過去の演奏フォームを見ると、ギャっと叫びたくなる。
出会った後の「見返り美人反転フォーム」では、相当マシとはいえ、やはりまだまだ笛にしがみついている。どれもフルートが重たそう。
14金だったから実際重たかったけれど・・

今年3月のフォームも今見ると、もろもろ気になる箇所だらけ。

若い頃に戻りたい、なんて全く思えません!!

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(追記・実際の演奏で)
腕先でマイナス曲線を描きながら構える。

おしり、頭頂部、腕先がドーム内側の壁面に降れつつ揺れながら演奏。

手指の紐が、この感覚に至るための大きな助けになる。

荷葉之一水は常に球体ではなく、のびちじみもする。