満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

「天使」「雲雀」 作:佐藤亜紀

2009-08-20 | 本の紹介
 

上に…2冊の本の表紙を載せているんだが、解るかの?
どっちも白が基調なもんで…大きさを変えてみたが…(ガハハハハハハ)
境目が解らんのは、遠近両用眼鏡だけでエエの~本だと訳が解らん(笑)

「天使」がメイン本で「雲雀」がオムニバス。
ところが作者の佐藤氏は「天使」を書きつつ「雲雀」も書いていたという
メイン本を書いていて広がったイメージを頭に留めておけず
オムニバス形式で「雲雀」を書いたようである。

ま、書き手はそれでも良いかもしれんが…
読み手は「天使」を読んでから「雲雀」を読む方が楽だと思う

それまで平然とあったものが、忽然と姿を消す時には
それなりの大きな出来事が起こるものである
そんな時代を描いた作品と言えると思う。

ベベンベンベンベン!

時は19世紀後半から20世紀初頭。
誰もが学んだあの1914年から始まった世界大戦をサンドしたお話しである~。

っと言えば「歴史小説か?」っと敬遠する御仁もござろうが…
ちょいと毛色が違っておる。

本書では「感覚」と呼ばれておる超能力を持った少年が主人公のお話しなのだ

「感覚」とは、人が何を考えているか透視でき、体や脳を攻撃することも出来る
また、人の記憶を操作することもでき、
その人が触った物から、思いや考えを読み取ることも出来るのだ

っとココまで言うと…コイツは天下無敵じゃろうっと思うのだが…
残念なことに、そんな能力を持った輩がゾロゾロと出てくるもんで
誰が何をやったかってのは、すぐにバレる(笑)

そんな「感覚持ち」の中でも、特に優れた能力を持った少年が主人公なのだ
名前は「ジョルジュ」
両親に捨てられ、養い親の元で惨めな生活を送っていたのだが
その養い親が死ぬと同時に、オーストリアのある組織に拾われる
その能力ゆえに、組織の長の秘蔵っ子として教育を受け
貴族的な振る舞い、教養を身に付け、まるで「地上へ降りた天使」のように育つ

そんな美丈夫な彼が「感覚」という能力も身につけておるんじゃから
やっぱり、向うところ敵なしじゃろうっと思ってしまうが

時は、落ちぶれたとはいえ貴族社会の真っ只中
ブサイクで、能力も知恵も持ち合わせていなかったとしても、
貴族であれば上に登れる世界
称号の男爵から、やっと人間とみなされる世界では
なんの称号も持たない「ジョルジュ」は人以下の扱いであった。

そんな彼のスパイ活動及び工作活動と…モテモテな生活に淡い初恋
SF小説ばりな精神戦もあるという小説である(笑)

正直。この時代のヨーロッパ諸国の歴史には疎いもんで…
チンプンカンプンな部分だらけ(ハハハハハハ)

そういゃ~この時代の歴史って言えば、
オーストリアとハンガリー帝国の皇太子夫妻がサラエボで暗殺されて開戦したのと
あとは日本の大隈重信が日英同盟を傘に、勝手に戦争始めました…
くらいしか、覚えておらん(アハハハハハハ)

しかも、作者の佐藤亜紀さんの書く文章ったら…

オーストリア人の子供が、祖父母からヨーロッパの歴史について聞き
ひょんな興味で、大学で近代ヨーロッパ史を専攻しちゃい
学校卒業後、図書館に勤めながら本書を書き
その本を、日本人が気に入って買い付け翻訳したかのようで…(笑)

作者の佐藤亜紀さんって…日本名だけど、オーストリア人かい?っと思っただ

多分、作者の力量による賜物だと思うのだが、句読点の使い方が絶妙で
主人公の「ジョルジュ」が「感覚」という能力を使うシーンでは
私も一緒になって意識を解放してしまい…軽い眩暈と頭痛がしたほどである(笑)

絶対的に面白い内容なのだが…時代背景に解らん所が多い作品なもんで
100%楽しめたかといえば…ウソになると思う(アハハハハハ)

しかし…作者の佐藤氏は読者に媚びないの~~~
普通は、少し読者のことを考えて、なにげな当時のヨーロッパ史についての
解説なんぞを載せるもんだが…そんな記述は一切ない(笑)



さて、もう一冊のオムニバス「雲雀」
ハッキシ言えば…コチラの方が日本人が書いたらしくって読みやすい(笑)

「雲雀」っといえば…夏目漱石「草枕」の一節を思い出す

※ウィッキペディアより
「あの鳥の鳴く音には瞬時の余裕もない。
のどかな春の日を鳴き尽くし、鳴きあかし、
また鳴き暮らさなければ気が済まんと見える。
その上どこまでも登って行く、いつまでも登って行く。
雲雀はきっと雲の中で死ぬに相違ない。登り詰めた揚句は、流れて雲に入って、
漂うているうちに形は消えてなくなって、
ただ声だけが空の裡に残るのかも知れない。」

本書は「王国」「花嫁」「猟犬」「雲雀」の4部作からなる

なかでも「雲雀」は主人公ジョルジュが尊敬と畏怖を持って接してきた
オーストリア組織の長が亡くなり、
枷が消えた彼の、組織からの足抜けのお話し。

その足抜けの仕方を読んでいて、漱石の「草枕」の一節を思い出した
それほど…「お前は雲雀か?」ってな組織からの抜け方なのだ(笑)

雲雀は天敵が現れると子供を守るために、
空高く舞い上がりピーチクパーチクと叫ぶが…
「お前が叫んでおる真下に、巣があるってバレバレだぞ」っと常日頃思っておった
そんな目立つ足抜けをジョルジュはするのである(笑)

「死んだってイイんだ」っという自暴自棄な思いと
「誰が僕を殺せるって言うんだ」っという高慢ちきなジョルジュの性格が
よく現れているお話しだと思う

最後に、どーしても納得いかないのだが…

「感覚」を持つ人間が本当に居たとして…
それらの人々と接触した普通の人は、正直、もっと怖がるハズである。
そんな人々の出演が少なすぎるのだ

自分の心の中まで見透かされるんだぞ~~。普通はもっと恐れるだろう。
作者が、そんなシーンを書きたくなかったのか…
本書では普通人より、感覚持ちの超人の方が多いもんで(笑)
「お前もかっ!?」っと何度も思った(ハハハハハハハ)

また、「感覚」を持って生まれたゆえの苦悩も数々あるはずである
有頂天になって失敗したり、逆に人の気持ちが読める分、普通に楽しめなかったり
そんなシーンや繊細な部分も一切書かれていないので
それが作者の思惑なのかもしれんが、読者としては、少々疲れた(笑)

ただし、細かい描写が少ない分
何時か誰かが「映画化」しそうだな~とも思った


こんな「人の心が読める人」が、本当にこんなに大勢いたら
戦争なんぞ、起きなかったんとちゃうか?っと、つい…突っ込みたくなった(笑)

時代が変化する波は、それほど大きくって、誰も手が出せないってことかの?

この高慢ちきで自暴自棄なジョルジュの性格なら
自分が焼かれても、大きな時代のウネリに突っかかって行ったんではないかな
っとフっと思った(笑)

だとすると…「天使」よりも…「イカロス」の方にタイトルが傾いてしまうか…

本書は「こどもの時間」のasagiさんに教えてもらいました
面白かったですだ~~。教えてくれて、ありがとうでした~~

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