風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

過去からみた未来への掛橋

2008年11月02日 07時51分56秒 | エッセイ、随筆、小説
どこの出身だ?と
私より3つ歳の若旦那が聞く。
東京は下町生まれで
父は伝統工芸を生業にする江知左衛門です、と
私は小さな声で返す。

なぜここに?
というもんだから
吉原の女子たちとは身分が違うのですが
社会勉強のつもりが
人間の性や業をみる毎日に
ときどき戸惑っておりやす、と胸のうちを明かした。

次の日、若旦那の虎之助が迎えにきてくれた。
おとっさんも一緒だ。
私が客を取るほかの女子とは身分が違ったが
そう簡単にここから出られるわけでもなかった。

虎之助の匂いは懐かしかった。
虎之助の声も温もりも知っていたものだった。