風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

雪のニューヨーク

2009年01月11日 16時45分38秒 | エッセイ、随筆、小説
変化



水はけの悪いトイレに
隙間風が入り込む古い窓枠、
すべてがニューヨークらしくて好きだと受け入れいた
7年前の私ではないことに
一番驚いたのは自分だ。


世界中で一番の大国で、
一番の都市の実情がこの有様なのかと
失望が胸を鋭いナイフで
ぐさぐさと突き刺し続けてくる。
期待に反する行為は
決して反則技ではないことくらい
私でもわかっていたというのに。
それでもなにか以前との違いに戸惑ってしまうのだから
私は質が悪いのだと自分を思う。

隙間風が行き来する窓から外を眺めると
雪が舗道を白く埋め尽くしている光景が
無情さをも運んでくる。

私は…といえば
長いフライトで疲労した
心身が限界を超え、
とうとう頚椎が熱を帯び、
激痛を呼び起こしてしまったようだ。


もう3日、寝たきりのまま
ニューヨークにいるだけの時間を費やしている。
盟友は言う。
誰しもが瞑想に耽る時間など持てない中で
生きなければならないというのに
何もしない時間を授かっただけ幸福ではないか、と。

孤独と向き合う作業は私には思いの他
苦手だと今さらながらにわかったわけだが
だからといってどうすることも
出来ない歯痒さが私を眠らせてはくれない。

体調の限界を超え、
灰色の街が私には飛び込んでくる。
色彩の奪われた冬のニューヨークだ。