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原発人材に採用熱 三菱重工、過去最多200人を確保へ

2024-09-18 12:14:12 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


関西電力の高浜原子力発電所。手前左から1号機、2号機と奥左から3号機、4号機(福井県高浜町)

 

三菱重工業は2025年3月期に原子力事業で過去最多となる約200人の採用を計画する。

東芝や富士電機も人員を増やす方針。福島第1原子力発電所の事故後、原子力を専攻する学生の減少に歯止めがかからない。

 

国の次期エネルギー基本計画で原発の新増設議論が進み、各社が事業拡大に備え始めるなか、技能伝承に必要な専門人員の確保が優先課題となってきた。

三菱重工の原子力事業の採用数(新卒とキャリア採用の合計)は24年3月期から約30%増え、過去最多となる見込み。

 

23年3月期の約100人に比べると2倍に増える。当面は200人規模の採用を継続する方針だ。

三菱重工の原子力事業の人員はグループ会社を合わせ約4400人。福島第1原発事故後は再稼働向け工事を中心に事業をつないできた。

 

政府が23年、グリーントランスフォーメーション(GX)基本方針に原子力活用を明記したのが転機となった。原子力事業は成長をけん引する「伸長事業」に位置づけが変わった。

原子力事業の売上高は24年3月期に3000億超となり、18年3月期の2000億円弱から1.5倍に拡大した。直近の24年4〜6月期も受注高が前年同期比28%増の686億円だった。堅調な成長が見込まれ、人材確保に力を入れる。

 

原発向け設備製造を手掛ける富士電機は関連事業の人員を増やす計画。

技術者の高齢化に加え「30年代の技術として注目される高温ガス炉の設備設計を担う人材獲得が急務」(同社)という。

 

事故を起こした福島第1原発と同じ型で、今秋にも事故後初の再稼働が予定される沸騰水型軽水炉(BWR)を手掛ける東芝も23年に比べ原子力関連部門の採用人数を増やす計画だ。

 

 

原発産業の景況感、大幅に改善

日本原子力産業協会(原産協、東京・千代田)が23年に実施した調査では会員企業など約240社のうち現在の原発産業の景況感を「普通」と答えた企業が44%と前年から15ポイント増加した。

「悪い」と答えた企業は48%と同20ポイント減少し景況感が大幅に改善している。

 

 

 

原発再評価は国内にとどまらない。原子力発電は気候変動対策に適した事業を分類する欧州連合(EU)の「EUタクソノミー」で条件付きで「適格」と認定された。

第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)で日米など22カ国が50年までに世界の原発設備容量を20年比で3倍にすることを表明するなど、各国が原子力活用にカジを切った。

 

モルガン・スタンレーは6月、「原子力ルネサンスがやってくる」と題したリポートを発表した。

00年代後半に世界各国で建設計画が相次ぎ、原子力ルネサンスと表されたが、その再来との見立てだ。50年にかけて総額1兆5000億ドル(約210兆円)の投資が行われる可能性があるとした。

 

 

原発人材の減少が課題

原発が再脚光を浴びる一方、日本の原発人材の減少が課題だ。

原子力白書によると22年度の原子力関連学科入学者数は185人と福島第1原発の事故後最低になった。事故が起きた10年度の317人から4割減少した。

 

国内の原子力関係従事者自体は5万人程度で推移するものの、同白書は「国内での原子力発電所の新規建設が中断していることから、建設計画の従事経験者の高齢化が進み、技術継承が課題となっている」と指摘する。

 

 

 

人材が不足するメーカー各社も技能伝承に知恵を絞る。日立製作所はIT(情報技術)を原発建設作業の技術伝承や人材育成に活用する。

例えば、メタバース(仮想空間)空間内に原子炉建屋や原子炉をデジタルデータで構築し、工事手順の確認などの情報共有に生かせるようにした。

 

 

デジタル技術で技能伝承

日立の国内原子力部門の従業員数は約4000人で、定期採用を続けてきたことで人員数は微増傾向という。

国内の新設計画が途絶えたことで社内の建設技術は低下していくとの危機感が強く、デジタル技術を駆使して技能継承を急ぐ。

 

東芝は若手・中堅といった現場での経験が不十分な人材に対し、3DCAD(コンピューターによる設計)を活用して技術継承している。

原発の操作室を模したシミュレーターを設け、プラントの操作などを定期的に学べる。プラントが稼働していなくても、工事やエンジニアリング技術も3DCADから習得できるという。

 

 

電力会社はサプライチェーン(供給網)全体の技術継承支援に動く。

関西電力は7基の原発が立地する福井県内の企業を対象に定期検査や廃炉作業の工事に関する技能研修をしている。

 

講師役はプラントの電気計装事業などを手掛けるクリハラント(大阪市)の技術者らで、受講者の経験年数や技能レベルを勘案しながらポンプの分解や点検、溶接などの実技研修に取り組んでいる。5社28人が参加した。

「ベテラン社員の大量退職が続くなか、運転ノウハウの継承も課題」(関電の原子力事業本部)。特に原子炉の起動作業に重きを置き、炉の昇温や昇圧のさせ方、制御棒の操作など手順書やマニュアルにはない技能の共有に力を入れている。

 

原発の新増設を見据え人材獲得や技能伝承に力を入れる民間各社。40年度の電源構成を決める次期エネルギー基本計画は日本の原子力産業の再興を左右する。

 

 

 

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

 

村上芽のアバター
村上芽
日本総合研究所創発戦略センター チーフスペシャリスト
 
ひとこと解説

筆者が社会人になった25年前でもすでに「原子力学科」といえば相当レア人物に出会った、という感覚でしたし、人材プールの減少はいまに始まったことではなさそうです。

工事や発電以上に気になるのは、廃炉や放射性廃棄物の処理プロセスに関われる科学者、技術者がい続けてくれるのかということです。

自分にはとても学び直せそうにない分野だけに「誰か」頼みにはなってしまうのですが、負の遺産処理のイメージが強く、どうビジョンを描くのか、心配なことだらけです。

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原発再稼働

原発再稼働関連のコンテンツを集めたページです。柏崎刈羽原発や女川原発などの状況や課題点などをお伝えします。

 

 

 

 

日経記事2024.09.18より引用

 

 

 

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フランスで新型原子炉が稼働 着工から17年

2024-09-04 18:50:55 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


フランス北西部フラマンビル原発のEPRの建設現場(2022年6月)=ロイター

 

【パリ=北松円香】

フランス北西部フラマンビル原発で3日、新型原子炉の欧州加圧水型原子炉(EPR)が稼働した。2007年に着工したが工事が大幅に遅れ、17年後にようやく稼働にこぎ着けた。

フランス原子力安全局(ASN)が2日、フランス電力公社(EDF)に対して核分裂の連鎖反応を始めるための作業を許可した。5月には試運転の許可を出しており、その後の査察で原子炉に問題がないことを確認したという。

 

EDFは今後出力を25%まで上げた後、送電網に接続すると説明している。

「今秋の終わりよりは前に」接続できる見通しだという。

 

ただしEPRの発電コストは1メガワット時(MWh )当たり110〜120ユーロ(約1万7600〜1万9200円)と、EDFの他の原子炉の2倍程度とみられている。

EDFにとってはEPRで発電するほど損失がかさむ可能性もある。

 

フラマンビル原発のEPRは元々2012年に完成予定で、建設予算は30億ユーロ程度だった。

事故で電源が失われても自動的に運転停止する機能を備えるなど、安全性の高さが売り物だった。

 

だが圧力容器の強度問題など様々なトラブルが浮上して工期が延び、総費用は132億ユーロに膨らんだ。

EPRを開発した仏原子力大手の旧アレバ(現フラマトム)の経営不振と解体の一因にもなった。

 

マクロン大統領は2050年までに、改良型欧州加圧水型原子炉「EPR2」を6基建設する方針だ。今年6月には今後の建設計画にさらに8基を追加する姿勢も示した。

フランスは欧州の他の国々にも電力を輸出する発電大国で、供給能力は欧州のエネルギーの安定性を大きく左右する。

 
 
 
日経記事2024.09.04より引用
 
 
 

日本製鉄、USスチールに1800億円追加投資 組合なお反発

2024-08-29 18:14:31 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


USスチールのモンバレー製鉄所

 

日本製鉄が米鉄鋼大手USスチールへの2度目の追加投資計画を発表した。

直近では著名政治家のアドバイザー起用など買収に向けて外堀を埋めてきたが、業績や雇用に直結するカードを新たに切った。

 

背景には2024年内の買収完了に向けて、買収計画に反対する全米鉄鋼労働組合(USW)を懐柔する思惑が透ける。

29日の発表では13億ドル(約1870億円)超を新たに投じるとした。

 

具体的にはペンシルベニア州のモンバレー製鉄所では製鉄の熱延設備の新設または補修に少なくとも10億ドルを投資し、同製鉄所を数十年以上稼働する計画だとした。

インディアナ州のゲイリー製鉄所では約3億ドルを投資して第14高炉を改修し、同高炉の稼働を今後さらに20年ほど延長するとしている。

 

日鉄は23年12月に2兆円での買収計画を公表し、USスチールがUSWと結ぶ26年までの労働協約を承継するとしていた。

この協約に盛り込まれていた10億ドルの設備投資計画に加えて、24年3月には14億ドルを追加投資すると発表。さらに今回13億ドルの新たな投資を発表した。

 

買収計画はUSWの関与で政治問題化している。

米大統領選を前に85万人が所属するUSWの組織票に秋波を送るトランプ前大統領らが買収計画を批判してきたためだ。

 

日鉄はこうした批判を軽減しようと国務長官経験者のマイク・ポンペオ氏をアドバイザーとして起用するなど買収機運の醸成に努めてきたが、直接的な追加投資を公表し一段とアクセルを踏んだ。

これまでとの大きな違いは「27年以降も大規模な支出を見込む」として、両製鉄所を今後20年以上にわたって長期稼働すると明記したことだ。

 

従来は既存の労働協約の期間内の26年までの投資としていた。長期間の製鉄所稼働を保証することで、長期の雇用維持をアピールする狙いだ。

新たな設備投資は製鉄所の操業効率の向上にもつながる。

 

ただ、USWのデービッド・マッコール会長はまだ満足していない。日鉄が日本時間の29日早朝に追加投資を発表すると、すぐさま「プレスリリースは契約ではない」と題した書面で意見表明した。

書面では「組合の懸念事項の一つにリップサービスをしているが、日鉄はUSWの意見を無視している」などと記した。

 

今後はUSスチールとUSWの間で8月から実施中の労働協約を巡る仲裁の結論が注目点となる。

日鉄は「仲裁の詳細は開示できない」としているが、労働協約ではUSスチールを承継する買収企業の規定を定めており、解釈などを争っているもよう。仲裁の結論次第では、日鉄とUSWの対話が前進する可能性もありそうだ。

 

 


究極の石炭火力発電、「悪玉論」覆し安定供給守れるか   編集委員 高橋徹 Nikkei Views

2024-08-18 10:06:02 | 資源メジャー、環境エネルギー、資源・素材、


CO2を排出しない石炭火力技術の実証が進む(広島県大崎上島町)

 

 

石炭ほど毀誉褒貶(ほうへん)の激しい資源はないだろう。少し前まで豊富・安価で地政学リスクとも無縁ともてはやされていたのに、いまでは二酸化炭素(CO2)をまき散らす「地球沸騰の戦犯」の扱いだ。

ロシアによるウクライナ侵略以降、エネルギー安全保障が改めて重視されるなか、脱炭素の奔流と折り合うことは可能か。

 

 

瀬戸内海に浮かぶ広島県の大崎上島。かつては造船で栄え、ブルーベリー栽培で西日本の先駆けともなった自然豊かな離島で「究極の石炭火力発電」の実証試験が進む。

Jパワー中国電力の共同出資会社「大崎クールジェン」が開発するのは、石炭を蒸し焼きし、高温高圧のガスに変えて使う技術だ。ガスの圧力、余熱でつくる蒸気で二重に発電できる。

 

 

天然ガス火力に似た「石炭ガス化複合発電(IGCC)」はそれだけでも高効率で、CO2排出を15%減らせる。実証試験が見据えるのはその先の先だ。

発電前のガスからCO2を最大90%分離・回収する。さらに木質バイオマス燃料を10%超混ぜれば、大気中のCO2をむしろ減らしながら発電する「カーボンネガティブ」が視野に入る。

 

 

 

 

石炭ガスからCO2を取り除けば、残るのは水素。究極の石炭火力とは、水素火力と同義だ。

燃やしてもCO2が出ない水素は完全な脱炭素燃料だが、海外で安く生産し、極低温で液化して運ぶ供給網の整備には、20兆円規模の投資と10年単位の時間が必要とされる。水素輸送の「器」として石炭を使えば、その難題を回避できる。

 

 

実証成果はまずJパワーの松島火力発電所(長崎県)で活用する。近く休止する2号機(出力50万キロワット)を改造し、2028年度の商用運転を計画する。

ただし当初導入するのはガス化炉のみ。脱炭素まで一気に進められない制約が2つある。

 

 

ひとつはガスタービン。水素は天然ガスより燃焼が速く、今の技術では25〜30%の濃度でしか燃やせない。水素専焼タービンの実用化は早くて30年ごろとみられている。

もうひとつはコストだ。3年前の経済産業省の試算では、大崎のような「CO2分離回収型IGCC」の30年時点の発電コスト見込みは1キロワット時あたり14.3〜14.9円。20年時点の石炭火力より2割近く高い。CO2の回収・貯留(CCS)の費用が上乗せされるためで、価格競争力を得るには政府の支援が必要になりそうだ。

 

 

それらを勘案すれば、究極の石炭火力の実現は35年以降になる見通しだ。

石炭火力にアンモニアを混ぜる方法もある。東京電力と中部電力が共同出資するJERAが碧南火力発電所(愛知県)で20%混焼を成功させ、比率をさらに高めていく計画だ。アンモニアも水素輸送の器だが、肥料原料として供給網は確立済み。ただし燃料用途は量がケタ外れに多い。製造や貯蔵設備にかなりの追加投資が必要となる。

 

石炭の脱炭素化に向けて、CCSという発電の「後工程」に投資がかさむのがガス化、燃料製造や貯蔵の「前工程」が重いのがアンモニアといえる。

 
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石炭は「地球沸騰」の元凶のように言われる半面、安価・豊富で地政学に左右されにくい
(愛知・碧南火力発電所の貯炭場)

 

もともと日本は「超々臨界圧」など高効率の石炭火力で世界をけん引してきた。ところが15年のパリ協定以降、発電技術への要求はそれまでの低炭素から脱炭素へと局面が一変し、石炭火力への風当たりが強まった。

中国電力の場合、大崎の成果の活用は未定という。「石炭と名がつくプロジェクトはやりにくい。政府が年内に策定する新たなエネルギー基本計画をみながら検討する」(同社幹部)

 

 

ガス化やアンモニア利用には、国内外から「単なる石炭火力の延命」との批判も浴びる。Jパワーの鈴木伸介執行役員は「石炭利用がいったん途絶えると、つくり上げた供給網を失ってしまう。

エネルギー安保の観点からも、どうすれば石炭を使い続けられるかを考えるのが大事」と強調する。

 

太陽光や風力などの再生可能エネルギーは発電量が天候に左右される。不安定さの調整弁は、出力調整が容易な火力発電が適任だ。

日本エネルギー経済研究所の寺沢達也理事長は「再生エネと火力はワンセット、というのは新しい常識。すでにある設備をどう維持・活用するかが日本の課題」という。

 

 

人口減で漸減していくとみられていた電力需要は、デジタル技術の普及で一転して増加する可能性が高くなり、安定供給のハードルは一段と上がる。

ましてや日本と同様に火力発電への依存が高く、経済成長で需要が伸び盛りのアジア新興国は、石炭との決別は容易ではない。

 

 

「石炭悪玉論」を技術革新で覆し、安定供給と脱炭素の両立の道筋を世界に示す。

そんな未来をたぐり寄せることができれば、国連の温暖化防止会議の会場で毎年、環境団体からやり玉に挙げられる「化石賞」の意味合いも変わってくるはずだ。

[日経ヴェリタス2024年8月11日号]