新たに共和党上院のトップに就くジョン・スーン議員=ロイター
【ワシントン=飛田臨太郎】
米連邦議会選で上院多数派を奪還した共和党は13日、上院トップとなる次期院内総務にジョン・スーン議員(63)を選出した。
トランプ次期大統領が発表した閣僚人事などを巡り共和からも反発が出ており、スーン氏は党内調整を迫られる。
トランプ氏との対立が目立ったマコネル議員(82)は院内総務の座を降りる。上院共和トップの交代は18年ぶり。
穏健派のスーン氏はマコネル氏の右腕として上院共和で主導的な立場を担ってきた。トランプ氏を支持する実業家イーロン・マスク氏が推すリック・スコット議員や、マコネル氏のもう一人の腹心であるジョン・コーニン議員を破った。
1回目の投票でスーン氏が23票、コーニン氏が15票と続き、スコット氏は13票と及ばなかった。過半数に達した候補がおらず、スコット氏は脱落した。2回目の投票は29票対24票でスーン氏がコーニン氏に勝った。
スコット氏はトランプ氏に忠誠を誓い、最も関係が近い候補とみられていた。トランプ氏が指名する人事をできるだけ早く通過させると表明していた。スーン氏がスコット氏に勝利したことで、上院共和はトランプ氏から一定の独立性を保つ可能性を示した。
マコネル氏は2007年から上院共和のトップを務めた。米国が世界で指導的な役割を発揮するのを重視した。ウクライナの追加支援法案は超党派での成立を目指し、反対するトランプ氏と対立した。21年1月の連邦議会議事堂襲撃事件の後にはトランプ氏を「不名誉な人物」と非難した。
スーン氏も20年大統領選でバイデン大統領に敗れた選挙結果を認めないトランプ氏と一時、距離を置いた。トランプ氏から「共和党を裏切る議員」とやゆされた。ただ、今年に入り関係の修復に動き、春に南部フロリダ州にあるトランプ氏の別荘を訪問した。
最近はトランプ氏寄りの姿勢に傾いている。スーン氏を支持したケビン・クレイマー議員は13日、スーン氏がウクライナ支援でトランプ氏の意向に従うと明かした。米紙ワシントン・ポストが伝えた。25年末に期限が切れる「トランプ減税」の延長や国境管理政策でも協力する。
大統領選と同時実施された連邦議会選は上院、下院ともに共和が多数派となるのが確実になった。上下両院の共和のリーダーがトランプ氏の指示をどこまで受け入れるかが今後の焦点になる。
下院共和はトランプ氏に忠誠を誓うジョンソン議長がトップを務める。マコネル氏を筆頭にトランプ氏と一定の距離を置いてきた上院の対応が特に重要になる。
上院は伝統的に下院と比べて時の大統領が影響力を示しづらいといわれてきた。下院の選挙区は細かく、2年ごとに全議席を改選するが、上院は任期が6年で州単位で選出する。上院議員は「一国一城のあるじ」の意識を持ちやすい。
トランプ氏は大統領選に勝利後、上院への圧力を強めている。政府高官の任命に必要な上院の承認を省略できる「休会任命」の手続きを導入するよう唱えた。実現すれば大統領が上院の意向に関係なく、人事権を振るえるようになる。
スーン氏は記者団に上院の独立性と大統領の意向の間でどうバランスをとるのか問われ「上院は少数派が発言権を持つ場所」と説きつつ「大統領と協力し、新しい政策を導入する」と答えた。
米メディアによると、トランプ氏が発表した閣僚人事には早速、上院共和から反発の声が出ている。
司法長官となる予定のマット・ゲーツ下院議員は過去の違法行為の疑惑、国防長官のピート・ヘグセス氏は経験不足などが理由に挙がる。
人事を迅速に承認するか否かは上院共和とトランプ氏の関係を巡る最初の試金石となる。
専門家からはスーン氏がトランプ氏に逆らうのは当面は厳しいとの見方がある。米調査会社ユーラシア・グループのクレイトン・アレン氏は「(スーン氏は)トランプ氏の政策実現に重点を置くことになる。トランプ氏が選挙で大勝利を収めたばかりだからだ」と予測する。
上院の新たな議席は共和53、民主47で共和が多数派とはいえ小差だ。上院共和で対立が激しくなれば、スーン氏はとりまとめに苦しむ可能性もある。
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日経記事2024.11.22より引用