この記事の3つのポイント
- 俳優・渡辺哲氏が推薦する「西の横綱」と称されるやきとん店
- 店主は包丁を使えない状態から飲食店の修行をスタートさせた
- 秘伝の味噌ダレを学び独立、今や味を伝承する“秋元系”は約50店舗
俳優の渡辺哲さんは、名バイプレーヤーとして活躍する一方、芸能界きっての飲んべえとしても知られている。
渡辺さんに本連載50回の記念に取材した「創業74年、赤羽の老舗うなぎ居酒屋 家族経営で危機を乗り越える」の記事を送ったところ、「昔よく通っていた。名店だね」という返事が。
「他に、まるます家さんのような名店はありますか?」と尋ねると、「東は立石の『宇ち多゛』、西は野方の『秋元屋』で決まりでしょう」と教えてもらった。
今回は60回目の節目として、西の横綱と称される「やきとん 秋元屋本店」を取り上げる。あなたがフリーターで年齢が43歳、飲食のスキルも一切なしだとしよう。そんな状況で、果たして飲食店を始めるという無謀なチャレンジができるだろうか。
限りなく100%に近い負け試合をひっくり返した、飲んべえフリーターの大逆転人生は、セカンドライフを考えている40代以上の大人たちに夢と希望を与える。
テーマは「年齢にもスキルなしにも、負けない」だ。
フリーターだった43歳のときに奮起し、紆余曲折しながら、45歳で1号店をオープンさせ、時間をかけて成功し、3店舗まで広げた。
さらにビジネスでのつながりはないが、“味の伝承”という部分だけの系列店、いわゆる秋元系の店は、弟子や孫弟子の店まで含むと50軒にも及ぶという。
そこには、味の伝承にまつわる信じられないほど漢気(おとこぎ)と優しさにあふれるエピソードが隠されていた。
アクセスは、まず西武新宿線の各停で西武新宿駅から約15分の野方(のがた)駅で下車する。改札を出て左側にある南口を階段かエレベーターで下り、マクドナルドのある商店街を少し進み、1つ目の角を左折。10メートルほど歩くと、白いライト看板と赤いちょうちんが見えてくる。
店舗の正面には、紺色で横幅が広い大きなのれんが2枚掛けられている
店舗は、むき出しの電球がつるされたオープンスタイルで、開放感にあふれるつくりだ。
店は中央の柱壁面を境に右側と左側のスペースに分かれている。店前の飲料ケースには、空けられたビールやサワーの瓶が次々と入れられていく。店の前を通ると、ふと一杯ひっかけたくなる魅力がある。
左側のエリアは、常連さんが好むこじんまりとしたコの字形カウンターがある。焼きを担当するのは松井康宏さん。一見クールで少し近寄りがたい印象だが、話すと親しみやすくファンになること間違いなし
右側の店内は奥に3席、10席、3席の合計16席のコの字形カウンターがあり、手前には6人掛けと8人掛けテーブルが1つずつ設置されている。
左側には5席、5席、3席の合計13席のコの字形カウンターがある。奥には隠れ8人席(同店は、基本予約できないが、この席のみ平日限定で3人以上から予約ができる)があり、手前に6人掛けテーブルが2つある。総席数は64席。
正面から見た店舗。中央で左右に分かれている
名店と称されるやきとん屋は、いくつかの独自ルールが存在することが多いが、秋元屋にはそれほど厳しいものはない。
強いて言えば、飲み物を頼んだ後に、メモ用紙の真ん中に横線を引き、上半分に頼みたいやきとんメニュー(1本から注文可能)を、下半分に食べたいサイドメニューを記入し、スタッフに渡すことくらいだ。
やきとんの味付けは、塩・タレ・味噌ダレと3種類あるが、初めての来店なら焼きを担当するスタッフに任せるのが間違いない。最もおいしい味付けで提供してくれる。
生ビールは、飲んべえにはうれしい「サッポロ生ビール黒ラベル 中」(660円、以下、価格は全て税込み)。瓶ビールは、サッポロ赤星(大瓶)が770円、アサヒマルエフ(大瓶)が770円、黒ラベル(小瓶)が517円、アサヒスタウト(小瓶)が550円。サイドメニューは、すぐに提供してもらえる「キャベツ味噌」(242円)がおすすめ。少しだけ同店秘伝の味噌を付けて食べ、この後に焼き上がるもつ焼きを心して待つべし。
お酒がどんどん進むキャベツ味噌。1品目として頼む常連客も多い。生ビールとの相性もバツグン。
写真は黒ラベル生ビール 中(660円)
日経記事2024.11.18より引用