「タコマ」を増産する(エブラルド経済相=中央、トヨタメキシコのロサノ社長
=㊧から2人目)、メキシコ政府提供)
【メキシコシティ=市原朋大】
トヨタ自動車は8日までに、メキシコ国内の生産拠点に14億5000万ドル(約2200億円)を投資する計画を明らかにした。
米国向け輸出車を増産するが、米大統領選挙で再選を確実にしたトランプ前大統領はメキシコ車に高率の関税を課すと宣言している。
トランプ氏は1期目の大統領就任直前、トヨタがメキシコ工場新設を決めたことに強く反発した。今回の投資を巡ってさや当てが始まる可能性もある。
北米向けピックアップトラック「タコマ」の次世代モデルと、プラグインハイブリッド車(PHV)モデルを増産する。
トヨタは2000年代初頭に北部バハ・カリフォルニア州で生産を開始し、19年から中部グアナフアト州にも進出し生産台数を増やしてきた。
両工場の生産設備を増強し、年末までに1600人規模の新規雇用を見込む。
トヨタによると、新たな投資額はこれまでメキシコに投じてきた額の約7割にあたる規模だ。トヨタのメキシコからの輸出台数は1〜10月で約19万8000台。台数を明らかにしている大手全体の7%程度を占め、多くを北米向けに輸出している。
インフレや労働争議などで米国の賃金水準が上がり、条件を満たせば米国向けの関税をゼロにできる自由貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」も利用できるメキシコ工場の戦略性は高まっている。
トヨタメキシコのルイス・ロサノ社長は7日、「メキシコは北米の地域競争力を維持するのに不可欠。投資が経済、環境、社会の発展につながると信じている」と地元メディアにコメントした。
ロサノ氏と会談したメキシコのエブラルド経済相は「より多くの投資を呼び込み、質の高い雇用を創出するために引き続き取り組む」も話した。
メキシコでは近年、日米欧の自動車メーカーが相次いで増産投資を発表しており、トヨタもメキシコ工場を北米向けの主要拠点と位置づけてきた。
シェインバウム大統領は8日朝の記者会見で「メキシコ投資への関心は高い」と強調した。
焦点はトランプ氏が宣言した通りにメキシコからの輸入に厳しい制約を課すかどうかだ。
次期大統領に返り咲くトランプ氏と電話協議したシェインバウム氏は、お互いの当選を祝福する「友好的な会話だった」と強調した。新政権同士となる25年1月以降の米国との関係で、不法移民と通商は2大テーマだ。
トランプ氏は第1次政権でUSMCAを結んでいる。ただし、一方でトヨタのメキシコ投資に撤回を要求した過去がある。
大統領1期目の就任を前にした2017年、メキシコ工場の新設を表明したトヨタに「米国に工場を建てろ」と方針の撤回を要求した。今回の投資についても、米国生産を避けてメキシコで増産するとみれば反発する懸念がある。
トランプ氏は今年9月には米農機大手のディアに対し、生産拠点を米国からメキシコに移すなら「200%の関税を課す」と警告した。
トランプ氏の関税政策を巡っては、電気自動車(EV)大手の米テスラと中国・比亜迪(BYD)がメキシコ新工場計画の始動を大統領選後に先送りしてきた。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
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日経記事2024.11.09より引用