パナマ運河のバルボア港(2月)=ロイター
【ニューヨーク=伴百江】
世界最大の資産運用会社、米ブラックロック率いる投資家連合は4日、パナマ運河の港湾事業を香港の複合企業、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)から買収することで合意した。
金額は228億ドル(約3兆4000億円)。トランプ米政権は中国系企業によるパナマ運河の管理を巡りパナマ政府への圧力を強めていた。
ブラックロック傘下のインフラ投資会社ブラックロック・インフラストラクチャー・パートナーズとスイスの投資会社ターミナル・インベストメントが、CKハチソンの子会社ハチソン・ポーツからパナマ運河の港湾事業の支配権90%を取得する。
さらに世界23カ国で港湾43カ所を運営するハチソン・ポーツの株式80%も取得することで合意した。
CKハチソンは裸一貫で巨大複合企業を築き「香港の超人」と呼ばれた李嘉誠氏が創業。香港や中国本土の不動産事業で飛躍し、2010年代には中国経済の変調を嗅ぎとり、世界中で通信やエネルギー、水道など幅広いインフラ運営を手掛ける体制にシフトした。
パナマ運河は1997年からCKハチソンの傘下企業が太平洋側のバルボア港と大西洋側のクリストバル港の2港の支配権をもつ。支配権は2021年に更新され、47年まで続く予定だった。
中国が香港への統制を強めるなか、トランプ大統領はパナマ運河における中国の影響力を制限するよう圧力をかけてきた。
パナマのムリノ大統領は中国支配の印象を打ち消そうと、中国の広域経済圏構想「一帯一路」から離脱すると表明したほか、CKハチソン子会社との契約解除を検討しているとも報道されていた。
米ブラックロックがパナマ運河の支配権を獲得することは、トランプ米政権にっては勝利といえる。
買収合意についてブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は「世界的規模の港湾への投資は、我々の顧客投資家にとって世界規模の投資リターンにつながる」との声明を発表した。