トランプ氏は中国、メキシコ、カナダへの追加関税を表明した=ロイター
【ワシントン=八十島綾平】
トランプ次期米大統領は25日、中国からのほぼ全ての輸入品に対して追加で10%の関税をかけると表明した。自身のSNSに投稿した
。中国からメキシコなどを経由し、合成麻薬「フェンタニル」が米国に流入していることへの対抗措置と位置づけた。
トランプ氏は同日、カナダやメキシコについても2025年1月20日の就任初日に25%の関税を課すための大統領令に署名すると宣言した。
フェンタニルや不法移民の流入が終わるまで続けるとしている。
トランプ氏は選挙戦で不法移民対策を最大の争点の一つとしていた。その問題を解決するために関税を最大限活用する姿勢を明確にした。
米商務省によると米国の1〜9月の輸入額はメキシコからが3788億ドル(58兆円)、中国が3221億ドル、カナダが3093億ドルで1〜3位を占める。3カ国を合計すればすべての輸入額の4割に上る。
米国は、メキシコ・カナダとの間で米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を結び互いに関税を撤廃している。
トランプ氏が25%に関税を引き上げれば、事実上のUSMCA停止に近い状態になる。カナダ・メキシコ側の反発は必至だ。
中国からフェンタニルなどの薬物が米国に流入している問題について、トランプ氏は投稿で「中国と何度も話し合ったが無駄だった」と批判。
薬物が主にメキシコを経由して「これまでにない水準で米国に流れ込んでいる」と指摘した。
薬物の流入が止まるまで、中国から米国に入ってくる「製品すべてに(現在課している)追加関税を超える10%の関税を課す」と宣言した。
中国からの輸入品に対しては、通商法301条に基づく追加関税がすでにかかっている。対象品目は現状でもおよそ1万品目超に上り、バイデン米政権が9月末にバッテリーや電気自動車(EV)などで、さらに税率を引き上げたばかりだ。
第2次トランプ政権ではさらに税率が上乗せされることになる。例えば中国産のバッテリーには現在すでに25%の追加関税がかかっているが、これが35%に上がる。
トランプ氏は選挙期間中、すべての中国からの輸入品に最大60%の追加関税をかけると宣言していた。中国側の対応次第では今後さらに税率が変わる可能性も否定できない。
メキシコ、カナダについても違法薬物や不法移民に関して対策を取らない限り両国が「大きな代償を払う」と述べた。
選挙期間中、メキシコに対して一部の製品に200%の関税を課すという案を披露したことはあるが、カナダも含めた関税引き上げ案は初めて出てきた。
調査機関タックス・ファンデーションは2018〜19年の関税によって米国民が約800億ドルの負担を負い、バイデン政権がそれを引き継いだことで長期的に国内総生産(GDP)を0.2%押し下げたと推計する。
トランプ米大統領は当時「輸入洗濯機の関税を上げたら米国内に工場が増えそうだ」と発言したが、米連邦準備理事会(FRB)の研究者らによると米国民は年15.5億ドルの負担増となった。洗濯機だけでなく、対象外だった乾燥機まで12%値上がりした。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
米国と中国の2国間貿易は大きく縮小しましたが、メキシコなどMUSCAを通じた経路やベトナムなどアジア経由への迂回が進んでいることが貿易や直接投資のデータなどから推察されてきました。
アジアへの扱いが今後どうなるのか注目です。
今回は2回目の政権となるので、人事や経済政策プラン等の事前準備が早く、政策の遂行は1回目よりも迅速になりそうです。
中国に対してはとりあえず10%追加し、交渉の余地を残すようにもみえます。
国務省、商務省、財務省のトップの人事案がいずれも対中強硬派で固めています。
来年実際に政策の実践がはじまり、中国は報復関税をすると予想されますが、中国以外のどの国が報復関税をするのかも注目点です
そもそも関税を決める権限があるのは議会なのですが、「安全保障」名目での関税引き上げなのかと想像します。
中国は手始めに10%。いずれは60%といわれています。それよりも公約の「国境封鎖」にメキシコだけでなく隣接するカナダにも関税を使うことを明言。
このトランプ氏の主張は、米国の労働者を守り製造業の国内回帰を促すための高関税とは別物でしょう。
フェンタニルや不法移民の流入阻止も重要な選挙公約でしたが、流出側のメキシコ、カナダ、中国に関税引き上げという脅しで圧力を掛けて流出を止めさせるという同氏の新たな発想か側近の助言の採用では。
これで中国への60%関税が遠のいたのではなく、関税を貿易以外でも交渉の取引材料に使うというトランプ氏の宣言と捉えるべき。
同氏が選挙公約の実現、支持基盤の労働者の救済にどれだけ懸命かの表れでしょう。
選挙戦では、トランプ氏は労働者が合成麻薬のせいで寿命が短くなり、不法移民に雇用を奪われていると強く訴えていました。
カナダも含めた関税となるのはやや予想外だった。
トランプは関税を「懲罰的措置」と見ており、実際の経済的な効果よりも政治的な効果を狙ったものと思われる。
薬物の管理の問題は以前からあったが、子ブッシュの時は薬物との戦いだとしてコロンビアなどに軍を出したりしていたが、トランプはメキシコやカナダにその責任を負わせるというあたりがユニーク。
それでどうにかなるのであれば、もうなんとかしているはずなのだが…。
直近1年間の輸入額に基けば総額2,710億ドル(年率)の”増税”の発表。
かつての対中関税の50倍以上、税引後企業利益の8%以上が失われる規模。カナダ、メキシコへの25%関税が極めて深刻。
在墨日系企業への影響も懸念されます。今晩の米国市場の反応が心配です
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