ユーチューブに対する規制に反対する市民(7月、モスクワ)=ロイター
ロシア政府が米グーグル傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」への圧力を強めている。
8日にロシア国内でユーチューブを視聴できなくなる大規模障害が発生した。政府はユーチューブが反政府活動家などの情報発信源になっていることを問題視し、情報統制を一段と強める。
ロシアのインターネット監視サービスによると、8日にユーチューブを視聴できないなど数千件に及ぶ不具合が報告された。
外部のインターネットから組織内ネットワークに接続するための仮想私設網(VPN)経由でのみアクセスが可能となった。
ロシアでは7月からユーチューブのダウンロード速度の低下が頻発し、政府による故意の措置と指摘されてきた。
下院の情報政策委員会のアレクサンドル・ヒンシュテイン委員長は「ダウンロードの速度は最大で7割下がる」と警告した。
同氏はグーグルに対してロシア国内でサーバーセンターを設立したり、支店を開設したりすることを求めているが、実現していないと主張する。
ユーチューブへの規制を主張する下院の情報政策委員会のアレクサンドル・ヒンシュテイン委員長(1日、モスクワ)=ロイター
ロシア政界ではユーチューブに対する規制論が相次ぐ。ロシア南部チェチェン共和国のカディロフ首長は「ユーチューブはロシアとチェチェンの利益にかなう動画を排除している」と批判し、ロシアも対抗措置としてユーチューブの全面禁止に踏み切るべきだと主張した。
ロシアの通信監督当局であるロスコムナゾールによると、ユーチューブはロシア政府系メディアなど200超のチャンネルを禁止している。
一方でユーチューブは反政府組織や政府と距離を置く活動家が情報を発信する数少ないプラットフォームとなっており、ロシアの保守層は不満を強めている。
ロシア国内でユーチューブの利用者は9000万人に達するとされ、政府が全面禁止に踏み切るのは難しいとの見方が多い。次善の策としてダウンロードの速度を故意に引き下げて、視聴を妨害する狙いが浮かぶ。
ロシア政府はユーチューブに対抗するため、政府系ガスプロム傘下のアプリ「ルーチューブ」の利用を促す構えだ。
7月以降にルーチューブやロシア最大のSNS「VK」の動画共有サイト「VKビデオ」の利用者数が大幅に伸びたとの分析もある。
ウクライナ侵略が長期化するなか、政府は国内の引き締めを目的にネット上の情報管理が一段と強める。
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2022年2月、ロシアがウクライナに侵略しました。戦況や世界各国の動きなど、関連する最新ニュースと解説をまとめました。