7日の東京株式市場で日経平均株価は続伸し、前週末比の上げ幅は一時900円を上回った。
米景気の強さが確認され、中国も景気刺激策を打ち出している。世界景気への期待が高まり、投資家の間で「世界景気の敏感株」とされる日本株の再評価につながった。
なかでも株高が目立ったのは、世界景気期待が日本株に波及する経路のうち「第3の経路」といえる金融株だ。
日経平均の終値は697円(1.8%)高の3万9332円だった。
「米景気は本当に強いのだろう。9月の米雇用統計はその確証だ」。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは、週明けの株式相場の雰囲気に明るさが広がったと感じた。
「すでに開始された米利下げは景気後退の『予防』に間に合ったと素直に評価でき、市場には買い安心感が広がった」とみる。
4日発表の9月の米雇用統計は、雇用者数の伸びや失業率、時給の伸びとそろって好調さを示した。
日本株は自動車や電機・機械といった米国を中心とした海外で稼ぐ外需株の比率が、他の先進国よりも高い。
世界景気が好調だと為替相場で円安が進んで株価の追い風になりやすい特性もあり、「世界の景気敏感株」と位置づけられてきた。
世界景気の堅調さが日本株に波及する「第1の経路」は、輸出や海外事業で稼ぐ企業の株価上昇だ。
この日、代表格であるトヨタ自動車が一時3%高となった。海外売上高比率が5割を超えるファーストリテイリングの株価は分割後初めて5万円を超えた。
「第2の経路」となったインバウンド(訪日外国人)関連も高い。三越伊勢丹ホールディングスが一時9%高、ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは一時6%高となった。
この日の主役は「第3の経路」だ。
米国市場では景気の底堅さが確認され、米国の金利が上昇した。金利高が日本にも波及し、金利上昇の恩恵を受ける金融株が軒並み高となっている。
終値では業種別日経平均株価「銀行」は4%高、「保険」は3%高と全36業種のうち1位と2位に並んだ。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは「米景気の底堅さを確認し、日銀による年内の利上げに向けて一歩前進した」と指摘する。
金融株のなかでも地銀株は取引時間中に値上がりする展開となった。
ちゅうぎんフィナンシャルグループが一時7%高となるなど軒並み高い。
アイザワ証券の三井郁男投資顧問部ファンドマネージャーは「地銀各社が地方企業の再生に力を入れていくと発信してきた中で、石破茂首相の地方創生に取り組むとの表明がプラス効果になった。
バリュエーション(投資尺度)も割安で循環物色の対象となりやすい」と指摘する。
もっとも、8月急落後の戻り高値である3万9829円(9月27日)を上回るか市場には懐疑的な声も多い。
農林中金全共連アセットマネジメントの中尾真也ファンドマネージャーは「世界景気は回復を探ると考えつつも、足元では『全力リスクオン』になりきれない」と明かす。
中尾氏が警戒するのが、中間決算発表を控える個別株の動向だ。4日に2025年2月期の予想営業利益を下方修正した安川電機は一時2%安に沈んだ。
中国需要の回復が鈍い。3月期決算企業の中間決算に先駆けて決算を発表する安川電は各国の設備投資動向や景況感を占うとして注目度が高い。
中尾氏は、安川電の決算について「受注は期待に届かない内容で、世界景気の本格回復を織り込むには不足」と評し「下期回復を前提に業績予想を立てている企業が多いなか先行き不透明感は強い」と話す。
半導体製造装置大手のディスコ株も一時8%安と大幅に下げた。4日に発表した24年7〜9月期の個別出荷額(速報値)は846億円と前四半期(4〜6月期)から減少した。
半導体市況が踊り場を迎えるのではとの懸念が、日経平均の上値を重くしている。
(河井優香)
日経記事2024.10.07より引用