34年ぶりの高値を更新した日本株に対する個人の投資意欲は強い
個人投資家の日本株への前向きな姿勢が目立つ。日本経済新聞が実施したアンケートで、今後投資を増やしたい資産は「日本株」が最多だった。
日経平均株価は企業業績の改善や脱デフレなどを支えに最高値を更新した。バブル経済崩壊後に株式相場は長期低迷入りし、個人マネーは投資信託などを通じて海外に流出していた。日本株に個人マネーが戻ってくれば、相場全体の大きな支えになりそうだ。
アンケートは調査会社マクロミルを通じて3月25〜26日に実施した。20代から60代までの個人投資家2900人から回答を得た。
今後投資を増やしたい資産を複数回答で尋ねたところ、「国内株式」が54%で最も多かった。2位は「米国株投信」(33%)、3位は「国内株投信」(29%)で、日本株を選好する傾向が顕著だった。
首位の「国内株式」の回答を年代別に見ると、最も高かったのが60代の60%だった。最も低かったのは20代の49%で、代わりに米国株が41%と高かった。
日経平均は1989年末に記録した3万8915円を天井に、長らく低迷局面にあった。デフレの長期化や過度な円高、銀行の不良債権問題などが重くのしかかり、日本株から投資マネーは流出。中高年にとっては「株は上がらない」との判断につながっていた。
ただ、日本企業が守りから攻めの経営に転じ、海外投資家中心に評価を高めるなか、日本株を取り巻く環境は好転した。脱デフレや円安進行も買いを後押しし、2月22日に34年ぶりに最高値を更新。3月4日には史上初めて4万円の大台に乗せた。
転換点を目の当たりにしたことで、個人の考え方にも変化が生じているとみられる。
東京都の20代の会社員男性は「適度なインフレと賃金上昇、企業の利益増加が続けば株価もおのずと上昇する」として株高継続を予想した。
「バブル期と違い大手企業が地に足がついた経営をし、海外で稼ぐ力が大きい」(神奈川県の50代の会社員男性)との声もあった。
今年から始まった新しい少額投資非課税制度(NISA)も個人の背中を押す。株式や投信の売却益や配当が非課税となるのがメリットとの声は多く、「投資済み」との回答は65%だった。
「いずれ投資したい」の17%とあわせるとおよそ8割で、市場全体に与えるインパクトは小さくない。
フィデリティ・インスティテュートの浦田春河首席研究員は「今回の株高を通じて成功体験を得られたのは大きい。新NISAは『貯蓄から投資へ』を支える基盤になるだろう」と語る。
日経平均の最高値更新に関する評価も尋ねた。「過熱気味だが、バブルではない」が54%と最も多く、「バブルに見える」も25%あった。
およそ8割が「過熱気味」との回答といえる。短期的な高値警戒感が強いといえ、「違和感はない」(15%)と「まだ割安」(6%)を大きく上回った。
年代別にみると、最高値に慎重姿勢が際立つのが中高年だ。
「過熱気味」とする回答比率が60代で84%、50代で83%に上った。一方、20代は67%、30代は75%にとどまった。若年層は相対的に前向きな見方が目立つ。
株安の痛みを知る高齢層に対し、若い世代はそのトラウマがない。株式投資を最近始めた投資家が成功体験を得られていることも大きいとみられる。
もっとも、日々の生活で株高の恩恵を実感するのか聞いたところ、「感じない」が70%に達した。一部に利益が偏るなか、個人の裾野がどれほど広がるかが株高の持続力を左右しそうだ。