グリーンランドは米欧各国にとって軍事的な要衝に位置する=AP
【ワシントン=飛田臨太郎】
トランプ次期米大統領は22日、デンマーク領グリーンランドの購入に意欲を示した。第1次トランプ政権の時にデンマークに提案し、拒否された経緯がある。「絶対に必要」と改めて力説した。
自身のSNSに投稿した。「国家安全保障や世界の自由のために、米国はグリーンランドの所有権と管理が絶対に必要だと感じている」と記した。
グリーンランドは天然資源が豊富で、北極海と北大西洋の間という戦略的要所に位置する。ロシアのウクライナへの侵略後、米国や北大西洋条約機構(NATO)にとって軍事的な重要性が一段と高まった。
AP通信によると、グリーンランドの自治政府はトランプ氏の投稿に「グリーンランドは売り物ではないし、今後も決して売り物にはならない」との声明を出した。
19年にトランプ氏が意欲を示した際には当時のデンマークの首相が「ばかげた議論」と一蹴し、関係が悪化した。
今回も実現性は現時点で高くないとみられるが、トランプ氏がデンマークとの軍事面や経済面での「ディール(取引)」の材料にする可能性がある。
トランプ氏は21日、中米にあるパナマ運河についても「道徳的、法的な原則が守られないのなら、我々に全面返還することを求めるだろう」と投稿した。
米国の軍艦や民間船舶が高額の通航料を徴収されていると不満を持つ。通航料を引き下げるようパナマ政府に圧力をかけた形だ。
米国は1903年にコロンビアから独立したパナマと条約を締結し、14年にパナマ運河の完成に尽力した。99年に運河の管理をパナマに全面返還した。
トランプ氏はカナダのトルドー首相を10日に「(米国の)偉大な州知事」とSNSでやゆした。カナダ政府が不法移民や麻薬の米国への流入を止めなければ、カナダからの全輸入品に25%の関税を課すと表明している。
「関税と貿易に関する詳細な話し合いを続けるために、再び知事と会うのを楽しみにしている」と書き記した。
トランプ氏は米国が超大国であるという立場を生かし、他国に無理難題を要求したり、荒唐無稽な中傷を浴びせたりして、妥協案を引き出す手法をとる。
2025年1月20日の大統領就任を前に、トランプ流の「ディール外交」が本格的に動き始めた。
日経記事2024.12.24より引用