https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0918I0Z00C24A8000000/
中国やロシアなどが開発するマッハ5(音速の5倍)以上で飛ぶ「極超音速兵器」を探知する体制づくりを進める。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新型無人補給船「HTV-X」に赤外線センサーを搭載し、防衛省が同兵器を検知できるか確認する。迎撃が困難な新兵器への対応を急ぐ。
HTV-XはJAXA補給船「こうのとり」の後継機だ。
国際宇宙ステーション(ISS)のほか、米国主導の有人月探査「アルテミス計画」で月の周回軌道に整備する有人拠点への輸送を担う構想もある。2025年度に初号機を打ち上げる。
防衛省は実証実験としてHTV-Xに赤外線センサーを取り付ける。ISSでの補給任務を終えたあと、1年ほど地球を周回する間に実験を想定する。
日本の周辺で極超音速兵器に模したものを発射し、その熱源を補給機から観測して捕捉する能力を測る。実際に運用を開始する際はHTV-Xを使わず、センサーを取り付けた人工衛星などの活用を検討する。
発射後すぐに日本に近づく極超音速兵器は発射直後に探知しなければ避難の呼びかけや迎撃が間に合わない。地上からの観測では地球の丸さなどが理由で死角が生じる。防衛省は宇宙から捕捉すれば早期探知できると期待する。
米国も探知体制の確立に取り組んでいる。米国防総省は22年に極超音速兵器を探知・追跡できる衛星網を構築するため、米企業2社と総額13億ドル(およそ2050億円)超の契約を結んだ。日本と同じように赤外線センサーを使って監視する。
極超音速兵器は通常の弾道ミサイルより低い軌道を長時間飛び、任意のタイミングで速度や高度を変える機動性を持つ。探知や迎撃が困難で、既存の防空網では対処できない可能性がある。
開発は特にロシアや中国が先行する。ロシアはウクライナへの攻撃で用いた。米政府の分析によると、中国は20年に極超音速兵器を搭載できる中距離ミサイル「DF17」を実戦配備した。
北朝鮮の動向も懸念材料となる。朝鮮中央通信は7日、北朝鮮が6日に新型の「極超音速弾道ミサイル」の発射に成功したと報じた。21年以降、発射実験を繰り返している。
防衛省・自衛隊は日本周辺での脅威に対処するため迎撃態勢を準備する。日米で迎撃用の新型ミサイルを開発する。
米ノースロップ・グラマン社の案をベースに日本はミサイルのロケット部分と弾頭の推進装置を担当する。30年代の完成を見込む。
極超音速兵器の開発も始めた。25年度予算案で開発と製造施設の整備に2976億円を計上した。30年代前半の導入を目指す。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が手掛ける大型ロケット「H2A」や新型ロケット「H3」、イーロン・マスク氏が率いるスペースXなど、世界中で官民が宇宙開発競争を繰り広げています。ロケット開発や実験、衛星など最新ニュースをまとめました。
続きを読む